住宅セーフティネットとは?活用方法とデメリット・注意点を解説
「住宅セーフティネット」という言葉をご存じでしょうか。
住宅セーフティネット制度は、住宅セーフティネット法に基づく制度で、場合によっては住宅の改修費に対する助成を受けることも可能です。
本記事では、住宅セーフティネット制度の概要や、活用方法、デメリットと注意点を解説します。
- 住宅セーフティネット制度とは「住宅確保要配慮者の住宅確保を支援する制度」である
- 不動産投資を行う場合に住宅セーフティネット制度は有効な選択肢の一つになる
- 住宅セーフティネット制度は、国と自治体の連携が不十分であることも多く、利用のハードルが高い
住宅セーフティネットとは?
住宅セーフティネットとは、住宅確保要配慮者の住宅確保を支援する制度です。
この制度には、住宅確保要配慮者に限定した登録住宅(セーフティネット住宅)のリフォーム費に対する補助金や助成金などが用意されています。
住宅確保要配慮者とは?
住宅確保要配慮者とは、低所得者、被災者、高齢者、障害者、子育て世帯などのことです。
住宅セーフティネット制度の利益を享受する人、と認識すると良いでしょう。
住宅セーフティネット制度が改正された背景とは
住宅セーフティネット制度は、住宅セーフティネット法(正式名称:住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律)に基づく制度です。
本法律が改正された背景を見ていきましょう。
空き家の増加を抑えるため
現在日本では空き家・空室が増加傾向にあり、平成25年7月の段階で820万戸に上っています。全国の820万戸の空き家・空室などのうち、駅から1km圏内にあり、かつ耐震性が備わっている賃貸用の物件は137万戸存在し、全体の約52%です。
これでは住宅ストックが適切に活用されているとは言い難い状況です。これは、空き家の増加を抑える目的が本法律の改正された背景の一つです。
住宅確保要配慮者の増加を抑えるため
住宅確保要配慮者に該当する「低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子どもを育成する家庭その他住宅の確保に特に配慮を要する者」の数は、増加しています。
一方で、住宅確保要配慮者は、孤独死や家賃滞納の可能性があるとの理由により、大家から賃貸物件の入居を拒否されてしまう場合が多い、という問題があります。
このような問題を解決するため、空き家の活用を通じて、住宅のセーフティネット機能を強化するという方針が定められました。
住宅セーフティネット制度を利用した空き家・古民家の活用方法とは?
住宅セーフティネット制度を利用した空き家や古民家の活用方法として、低所得者向け賃貸住宅経営があります。
全国的に空き家や古民家が増え続けているなか、相続や贈与によって手に入れた空き家や古民家を再活用しながら住宅確保に苦戦する層に住宅を提供できるため、二重の意味で社会貢献につながります。
空き家は物件価格が非常に低くなっているため、物件を購入する初期費用の抑制が可能です。賃貸住宅の整備に要する費用に対する助成や家賃の減額に対する助成を行う制度(地域優良賃貸住宅制度)を活用してさらに低廉な家賃を導入すれば、住宅確保要配慮者向けの住居提供がしやすくなるでしょう。
そのほか、空き家や古民家の再活用を促すために、独自の補助金制度や支援事業を実施している以下のような自治体もあります。
・東京都:貸主応援事業(補助金)
・兵庫県:空き家活用支援事業
・大阪市:空家利活用改修補助事業
各自治体によって、毎年このような補助金や支援事業の制度があるとは限りませんが、制度が更新されれば、空き家の性能を向上する工事や地域まちづくりに資する工事に対して補助金を受けることができます。ただし、この後に紹介する空き家再活用の補助金と地域優良賃貸住宅の制度が併用できるかは、各自治体に確認が必要です。
セーフティネット住宅として登録するためには
物件をセーフティネット住宅に登録する場合、「セーフティネット住宅の情報提供システム」から申請する必要があります。
セーフティネット住宅の登録手順は以下のとおりです。
・登録窓口への事前確認
・事業者のアカウント登録
・登録申請
・登録情報の公開
上記の流れを通して、物件情報を公開できます。
物件を登録するには、耐震性を有すること、住戸の床面積が25㎡以上であることなど登録基準に適合する必要があります。
また、「セーフティネット住宅情報提供システム」では、自分の所有する賃貸物件を無料で登録し、広く情報公開することが可能です。登録には2種類あり、要配慮者のみが入居可能な専用住宅と、要配慮者以外でも入居可能な登録住宅のどちらにするかを選べます。
一般の賃貸住宅の登録基準は都道府県によって異なる場合がありますが、主な基準は2つあり、耐震基準を満たすこと、および、一つの住戸の床面積が25㎡以上であることです。
登録は1部屋から可能で、入居者が決まりにくい部屋だけ登録することや、現在空室の1部屋だけ登録することもできます。
登録した場合も、全ての要配慮者を受け入れなければならないわけではなく、対象者を「高齢者のみ」「子育て世帯のみ」などと限定することも可能です。
住宅セーフティネット制度のデメリットとは?
住宅セーフティネット制度には、デメリットがあることも念頭に置いておきましょう。
例えば、住宅確保要配慮者向け賃貸住宅に関して、主なデメリットは「入居者トラブルの発生の可能性が高い」という点です。高齢者であれば孤独死、低額所得者であれば家賃の不払いなどのトラブルが考えられます。
起こりうるケースを想定しつつ、セーフティネット住宅を活用した不動産投資を行うかを考えていきましょう。
住宅セーフティネット制度を利用する際の注意点
空室の解消など賃貸経営に効果的な住宅セーフティネット制度ですが、利用するにあたっては注意点もあります。
ここでは、住宅確保要配慮者向けの賃貸経営を行う際の注意点について説明しておきます。
入居可能な住宅確保要配慮者の範囲は法令主旨に沿った内容にする
住宅を登録する際、住宅確保要配慮者の範囲を自由に選択できますが、例えば「70歳以上の高齢者の入居は認めない」など、法令の主旨に反するような制限を加えることはできません。
また、家賃低廉化措置を受けた場合、入居者は月収15.8万円以下の世帯のみが認められることになるため、反対に一般の入居者を受け入れられなくなり、空室が発生してしまうリスクもあります。
家賃滞納のリスクがある
住宅確保要配慮者向けの住宅として登録した場合、生活保護費受給者や低所得者などの層の入居が考えられるため、家賃滞納のリスクが高まります。そのため、家賃債務保証や代理納付の制度を活用して、このリスクを適切に管理する必要があります。
家賃の制限がある
要配慮者の入居を拒まない住宅として登録する場合や改修費補助などを受ける場合、家賃に対して制限が加えられることがあります。登録住宅の家賃基準は、近隣住宅の家賃と同額レベル以下、改修費補助・家賃低廉化措置を受ける場合には、公営住宅の家賃以下となるため、収益がプラスになるような家賃収入が望めるのか計算する必要があります。
利用するためのハードルが高い
国がセーフティーネットの制度を定めているのに対し、運用をするのは自治体(市町村)であるため、国の方針に各自治体の動きが伴っていない現状も事実です。
制度の理解だけではなく、自治体窓口への確認、利用要件の詳細確認には手間を惜しまず取り組むことが必要になります。制度の利用で不安がある方は、不動産会社や専門家への相談も検討しましょう。
まとめ
空き家などを活用した住宅確保要配慮者向けの賃貸住宅経営は、不動産投資を行う場合の選択肢の一つになり、また、空き家を再活用しながら住宅確保に苦戦する層に住宅を提供できるため社会貢献につながります。
しかし、通常の賃貸経営に比べ、居者トラブルの発生の可能性が高い点や、国の定めた制度とそれを運営する各自治体の連携が上手くできていない部分もあり、賃貸経営のハードルが高いなどの注意点があることも事実です。
住宅セーフティネット制度を利用して空き家や古民家の活用を検討している場合は、メリット・デメリットを考慮し、自身に適した方法で行うようにしましょう。
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