コラム
不動産売却

相続した不動産を売却した後に確定申告は必要?利益・費用の計算方法と合わせて解説!

空家ベース編集部

「相続した不動産を売却したけれど、確定申告は必要?」
「そもそも確定申告ってどんなタイミングで行うの?」

上記のようなお悩み・不安を抱えている方、少なくないと思います。特に不動産の売却を初めて行う場合だと、どのような手続きを踏めば良いのか心配になってしまうのも無理はありません。

そこで本記事では、上記のようなお悩みを解決するべく、相続不動産を売却した後の確定申告について詳しく解説していきます。確定申告の基礎事項も合わせて解説していきますので、確定申告を初めて行う方でも無理なくお読み頂けます。ぜひ最後までご覧になってください。

相続した不動産を売却したら確定申告は必要?

相続した不動産を売却した際、利益が生じた場合は確定申告が必要です。不動産売却によって生じた利益には「所得税」が発生します。不動産売却によって得られた所得は、税法上「譲渡所得」という区分に該当します。

利益が出ていなければ不要

相続した不動産を売却した際、利益が出ていなければ確定申告は不要です。上述した通り、不動産売却によって生じた「利益」に対して所得税がかかるため、利益が出ていなければ課税対象となりません。相続した不動産の中には、老朽化が進んでいたり築年数が古いために、損失を出した状態で売却するケースも見られます。

遠方に住んでいる等の理由で、損失を出してでも不動産を売却したい方は一定数いらしゃいます。損失を出した状態で売却すれば、所得税が生じないため確定申告の必要はありません。ただし、利益が生じた時点で確定申告の必要があるので注意してください。

そもそも確定申告とは?

そもそも確定申告とは?

確定申告とは、1年間の所得額・納税額を計算して税務署に申告・納税する手続きのことです。会社員の方の場合、給料所得に関しては会社が代行して納税しています。給料金額から各種税金が天引きされますが、この金額を会社が代わりに納税している形です。このため、多くの会社員の方は確定申告を行う必要がありません。

ただし、給料以外の所得が生じた場合は確定申告の必要性が生じてきます。給料以外の所得に関しては、一部の所得を除いて税金が引かれていません。すべての所得が天引きで税金が引かれる訳ではないため、所得の種類・金額に応じて税金を納める必要があります。

利益の計算の仕方

確定申告の利益計算は、収入金額から必要経費を差し引いて計算します。たとえば、不動産売買における「譲渡所得」の計算では「取得費」と「譲渡費用」を必要経費として差し引くことが可能です。下記、譲渡所得の計算式になります。

譲渡所得=譲渡収入金額-(取得費+譲渡費用)

取得費とは、売却した不動産の購入代金や購入時に支払った仲介手数料などを指します。不動産の購入代金自体も経費として差し引くことが可能です。

譲渡費用は、不動産を売却した際に支払った仲介手数料や測量費用など不動産売却のために支払った費用です。

不動産売却においては、取得費と譲渡費用を経費として差し引いて利益額を算出します。経費額が高額になれば課税対象の利益金額も少なくなり、所得税を抑えることが可能です。

取得費の計算方法

取得費の計算方法

取得費を計算する際、土地であれば購入金額をそのまま取得費として使用できます。ただし、建物の場合だと購入代金・建築費をそのまま取得費として使用できるとは限りません。建物の場合、年数の経過によって価値が下がっていきます。この価値の減少分(減価償却費相当額)を差し引いたした上で取得費を計算する必要があります。

減価償却費相当額は、建物が「事業用」か「非事業用(住宅など)」のいずれかで計算方法が異なります。本記事は相続した不動産の確定申告がテーマですので、「非事業用」のパターンを見ていきましょう。

非事業用の不動産の減価償却費は、下記の計算式を用いて算出します。

非事業用不動産の減価償却費=建物購入代金など取得に要した費用×90%×償却率×経過年数

上記計算式における「償却率」は、住宅の構造によって異なってきます。非事業用の建物の場合、償却率は下記の通りです。

住宅の構造 償却率
木造 0.031
鉄筋コンクリート造 0.015

たとえば、購入代金が5,000万円の木造住宅(築20年)を売却する場合、減価償却費は下記の通り算出できます。

5,000万円×0.9×0.031×20=2,790万円

購入代金の5,000万円から上記の減価償却費2,790万円を差し引いた金額(5,000万円-2,790万円=2,210万円)が、譲渡所得の計算で差し引ける取得費となります。

相続した建物を売却する際は、減価償却費を加味した上で譲渡所得を算出してください。

取得費が不明な場合

相続した不動産が代々受け継がれてきた土地であったり、売買契約書などの資料が残っていない場合は取得費の計算が困難なケースもあります。取得費が不明な場合は、売却した際の収入額の「5%」相当額を取得費と見なすことが可能です。ただし、5%の取得費を適用すると、売却金額によっては課税金額が大幅に増えてきます。

たとえば、先ほどの購入代金5,000万円の住宅を例に挙げると、この住宅を2,000万円で売却した場合、概算の取得費は「2,000万円×0.05=100万円」となります。計算式に基づいて取得費を算出した場合と比べて、取得費が大幅に低くなっているのが分かります。

今回の例では「2,000万円」で売却できたケースで取得費を算出しましたが、売却価格が更に低くなれば、概算の取得費も低くなります。5%適用のルールは、やむを得ない場合の最終手段と考えた方が良いでしょう。

取得費を算出する方法もある

証明する書類は残っていないものの、「この価格で取得したであろう」と客観的に証明できるようであれば、認められる可能性もあります。たとえば、購入した当時の不動産のチラシ・パンフレットに記載された金額を活用したり、登記簿謄本の抵当権の欄に記載された当時の住宅ローン情報から当時の購入金額を逆算することで、客観的に取得費を証明できます。また不動産鑑定士に過去の取得費を算出してもらうのも有効な方法です。

取得費が確認できない場合でも、上記の方法を活用して取得費を客観的に示していきましょう。ただし、最終的に取得費が客観的なものであると認められるかは、税務署の判断によって決まってきます。税務署と交渉する必要も生じてくるので、税理士や司法書士など専門家に取得費の証明を依頼するのがおすすめです。

確定申告をしない場合はどうなる?

確定申告をしない場合はどうなる?

相続した不動産を売却した際、利益を得ているにも関わらず確定申告を行わないと各種ペナルティが生じてきます。「確定申告を忘れていた」場合でもペナルティは免除されないので要注意です。それでは実際にどのようなペナルティが生じるのか詳細を確認していきましょう。

確定申告をしない場合のペナルティ

確定申告をしない場合に発生するペナルティとして、下記のペナルティが挙げられます。

  • 無申告加算税
  • 延滞税

無申告課税とは、確定申告書を3月15日までに提出しなかった場合に課される罰則的な税金です。無申告課税の金額は、納付税額に下記の税率をかけた金額になります。

納付税が50万円まで 15%
納付税額のうち50万円を超える部分 20%
税務署の調査を受ける前に自主的に期限後申告をした場合 5%

確定申告の期限を過ぎても、なるべく早いタイミングで自己申告すれば、無申告課税を5%に抑えることも可能です。確定申告の漏れは、遅かれ早かれ税務署に認知されますので、申告漏れがあればすぐに確定申告を進めましょう。

延滞税は、確定申告の期限である3月15日までに申告を行わなかった場合に、期限の翌日から実際に税金を納付するまでの日数に課される税金です。納付日が遅れるほど、延滞税も増えていきます。

無申告課税・延滞税ともに、確定申告をしなかった場合に発生する罰則税です。確定申告を期限内に実施すれば、上記のペナルティは課されることはありません。相続した不動産を売却する際は、期限内に確定申告するのを忘れないようにしましょう。

相続不動産売却の確定申告に必要な書類

相続不動産売却の確定申告に必要な書類

相続不動産売却の確定申告では、下記の種類が必要になります。

  • 確定申告書B様式
  • 確定申告書第三表
  • 譲渡所得の内訳書
  • 譲渡した不動産の全部事項証明書(所有権移転後のもの)
  • 売買契約書のコピー(取得時・譲渡時の両方)
  • 譲渡費用の領収書
  • 取得費の領収書
  • 源泉徴収票(会社員の方の場合)

上記書類のうち、「確定申告書B様式」「確定申告書第三表」「譲渡所得の内訳書」は税務署で取得、もしくは国税庁のホームページからダウンロード可能です。「全部事項証明書」は、法務局で入手可能です。

その他の書類に関しては、売主自身で用意する必要があります。譲渡費用・取得費の領収書はコピーでも問題ありません。

準部する書類が多いため、確定申告の時期までにゆとりをもって書類を準備しておきましょう。

不安な場合は専門家に相談を

不安な場合は専門家に相談を

相続した不動産を売却して利益を得た場合は、必ず確定申告を行う必要があります。確定申告を行わないと、無申告加算税・延滞税が課されるので注意してください。

また相続不動産の確定申告では、所得金額・費用の計算や必要書類の準備も必要です。確定申告の時期直前になってからの準備では、期限までに間に合わない可能性もあります。

相続不動産の売却後の確定申告を自分ですべて行えるか不安な場合は、税理士など専門家に早いタイミングで相談しましょう。