コラム
再建築不可

再建築不可物件で後悔しないために知っておくべき3つのこと

空家ベース編集部

「相場より安い再建築不可物件を買いたいけど、買っても平気なの?」
「再建築不可物件を買って後悔したりしないの?」

不動産の相場価格に比べて安い再建築不可物件を目にすることがあります。価格が安い理由は再建築不可であるからに他なりませんが、理由や起こりうるリスクを承知したうえで購入するのであれば、とても良い買い物といえるでしょう。

そこで本記事では、再建築不可物件の購入を検討している方や相続で譲り受ける予定の方を中心に、再建築不可物件で後悔しないために知っておくべき注意点を3つご紹介します。

この記事で分かること

  • 再建築不可物件でよくある後悔は売りに出したい時に時間がかかる、割安になる、リフォームや解体が割高になること
  • 再建築不可物件にはローンが組めない、流動性が低い、権利関係のリスクなどがある
  • 再建築不可物件で後悔しないためには、現状把握・権利関係・隣地の購入ができるかなどの確認が大切

再建築不可の物件とは?

再建築不可の物件とは?
図1
(図1)

「不動産を購入したい」「建物が古くなってきたから建て替えたい」「不動産を売却したい」と考えた時に、その敷地(土地)が建替(再建築)可能かを知っておくことは大切です。敷地(土地)の形状や接道の要件によって、「再建築不可」となってしまう場合があるからです。

再建築不可物件とは、「現在建っている建物を取り壊し、更地の状態にして新たに建物を建てようとしても建てられない敷地(土地)」のことです。再建築不可物件は、内装のみのリフォームをすることは可能ですが、建築確認申請を要する再建築や増改築については、原則、行政の建築許可はおりません。

そして、建物を建てる際は「建築基準法」で定められた「接道義務」を果たさなければなりません。接道義務は原則、以下2点を満たしていることを意味します(図1)。

  1. ① 幅員4m以上の建築基準法上の道路である
  2. ② 上記①の道路に、敷地(土地)が2m以上接道している

以下に要件をまとめました。

①「幅員4m以上の建築基準法上道路」とは?
建築基準法上の道路とは、「建築基準法」で定められた道路のことです。種類は次のものなどをいいます。

  1. 1. 幅員4m以上での道路法による道路で、いわゆる「公道」を指す。
  2. 2. 都市計画法による開発行為や土地区画整理事業等によりつくられた道路で幅員4m以上のもの。公道・私道どちらもある。
  3. 3. 建築基準法施行時(昭和25年)に既に幅員4m以上で存在していた道路。古くからある道路のため、道路位置や幅員の特定が難しい場合が多い、公道・私道どちらもある。
  4. 4. 都市計画法や土地区画整理法などにより2年以内に事業が行われる予定のある道路で、特定行政庁が指定したもの。公道・私道どちらもある。
  5. 5. 建物を建てるための道路で、特定行政庁からその位置の指定を受けた幅員4m以上の道路。公道・私道どちらもある。
  6. 6. 建築基準法施行時(昭和25年)に既に存在する幅員4m未満の道で、特定行政庁が指定したもの。再建築等を行う場合、幅員4m以上の道路になるように原則、敷地(土地)の後退をしなければならない。公道・私道どちらもある。
②「(幅員4m以上の建築基準法上道路に)敷地(土地)が2m以上接道」とは?

上記の①の要件を満たしていても、敷地(土地)が2m以上道路に接していないと接道義務を満たしているといえません。

例えば、街中で通路部分があり奥まった所に建物が建っている敷地(土地)を見たことはないでしょうか?このような敷地(土地)を「旗竿地」や「路地状敷地」といいます(図1)。通路の横幅が2m未満の場合は、この②の要件を満たしておらず接道義務を果たしているとは言えません。

また、旗竿地の場合、通路の入口部分が幅2m以上あっても、通路部分すべての横幅が2m以上ないと接道しているとはいえないことに注意しましょう。

出典:e-Gov法令検索『建築基準法』
なお、接道義務を満たしていない場合の対処方法として「セットバック」があります。セットバックをすることで再建築可能になる場合があります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
セットバックとは?費用はいくらになる?計算方法や助成金、メリットデメリットを解説

再建築不可の物件でよくある後悔

再建築不可の物件でよくある後悔

再建築不可物件を相続で譲り受けたり購入したりする際、後悔しないですむように、または、後悔をなるべく引きずらないようによくある後悔を3つお伝えしておきます。

  • 売却に時間がかかる
  • 価格が割安になってしまう
  • リフォームや解体が割高になることがある

ひとつずつ見ていきましょう。

売却に時間がかかる

再建築不可物件をいざ売りに出そうと考えても、売却に時間がかかる点はあらかじめ肝に銘じておきましょう。最も大きな理由はローンが組みにくい点です。金融機関は物件の担保価値の範囲で融資額を決めるため、活用方法が限定的な再建築不可物件ではローンが組めない可能性が高まります。したがって、買主は現金で購入資金を用意するか、金利が高いノンバンクローンで借入せざるを得ず、結果としてすぐに購入できる人が限定的になりやすいです。

価格が割安になってしまう

再建築不可物件は、既存の建物を建て替えて新しい建物にしたいと思っても再建築できません。例えば、自然災害による家屋倒壊などによって建て替えざる得ない状況であっても同じです。そのため、長期的にみると、売買においての買主側のリスクも大きいといえますし、活用性が低く、市場のニーズも低いため通常物件の価格よりも割安になるといわれています。

リフォームや解体が割高になることがある

再建築不可物件は、そもそも接道していない、もしくは接道していても間口が狭く、重機やトラックが敷地内に進入できないことが多いです。建物のリフォームやリノベーション、解体時に重機やトラックが入らないことで、建物の解体や廃棄物の運搬などを手作業で行う必要があり、通常の倍以上の費用がかかることもあります。

再建築不可物件のリスクとは?

再建築不可物件のリスクとは?

再建築不可物件が抱えるリスクを見ていきましょう。

  • 再建築ができない
  • 建築確認申請を伴うリフォームが不可
  • ローンが組めない
  • 流動性が低く現金化に時間がかかる
  • 権利関係の問題があるケースが多い

主な5つのリスクについて、ひとつずつ見ていきましょう。

再建築ができない

再建築不可物件はその名の通り再建築ができないため、建築確認申請を必要としない内装のみのリフォームなどしかできず、増改築や大規模な模様替えなどはできません。住んでいくなかで、築年数が古くなったなどの理由で建物を取り壊して、新たに再建築することもできません。一度取り壊してしまったら、そのあとは建物を建てることができないため、建築確認申請を必要としないリフォーム工事で建物の修繕をしていくしかありません。

建築確認申請を伴うリフォームが不可

床面積10㎡を超える増築・改築工事には建築確認申請が必要です(防火地域・準防火地域については床面積の㎡数に関わらず、すべての増築・改築工事に建築確認申請が必要)。
再建築不可物件=建築確認申請の許可が降りず、建築確認申請が必要な行為ができないため、建物の全部を取り壊さない増築や改築であっても建築確認を必要とする増築・改築工事もできません。

ローンが組めない

再建築不可物件は資産価値と担保価値が低いため、住宅ローンを組めない可能性が高いです。住宅ローンは、金融機関が物件の担保価値の範囲内で融資を認めるため、担保価値の低い再建築不可物件では住宅ローンを組みにくいのが現状です。再建築不可物件の購入を希望する方は現金を用意しなければならないため、注意が必要です。

流動性が低く現金化に時間がかかる

上記の理由によって、再建築不可物件の不動産市場における需要は低くなる傾向にあります。そのため、価格を割安にしないと売れにくいことと、価格を割安にしても買主側が住宅ローンを組みにくく購入にあたって現金を用意しなければならないため、再建築物件の購入の条件に当てはまる人は少なくなります。したがって、再建築物件は流動性の低い資産であると認識し、すぐには現金化できないことをあらかじめ理解しておきましょう。

権利関係の問題があるケースが多い

図2
(図2)

建築基準法上の道路にそもそも接道していない再建築不可物件などは、必ず隣接地の敷地の一部を使用して道路に出る必要があります。特に、袋地のような再建築不可物件の所有者は、囲繞地を通行する権利(囲繞地通行権)が発生します(図2)。

ところが、使用する敷地の一部の所有者との「通行権」の取り決めが曖昧であったり、昔から存在する敷地(土地)で前所有者からの引き継ぎがうまくできていない場合など、隣接地と「通行権」の権利関係を巡ってトラブルになりやすいため注意しましょう。

後悔しないために知っておきたいこと3選

後悔しないために知っておきたいこと3選

再建築不可物件で後悔しないために知っておきたいことを3つ厳選しました。

  • 建物の状態を把握する
  • 通行権や掘削の承諾を得ているか
  • 隣地を買取させてもらえそうか

再建築不可物件の購入を検討している方や相続予定のある方は、ご参考としてください。

建物の状態を把握する

再建築不可物件は、上記でもお伝えしたとおり、建築確認申請を伴う再建築や増改築工事ができません。逆にいえば、それ以外の修繕工事は行うことができるのです。

あまりにも酷い状態では、売買はおろか、住むことさえできません。まずは、屋根・外壁や内装など建築確認申請を必要としない修繕工事だけで長い期間住み続けられそうか、再建築が必要な建物の状況ではないかを把握することが大切です。

通行権や掘削の承諾を得ているか

隣接地である他人の敷地の一部を使用して本地に行き来する場合は、使用する敷地の一部の所有者の通行のための許可が必要です。また、水道やガスなどライフライン関係に故障が出て他人所有の敷地の一部の掘削が必要になった場合には、掘削の承諾を取り交わしている必要があります。通行権や掘削の承諾を得ているかどうか、不動産会社や買主、前所有者などに確認をしましょう。

隣地を買取させてもらえそうか

図3
(図3)

再建築不可物件は隣地を購入して接道義務を果たせば土地の価値がぐっと上がります(図3)。隣接地のすべて又は一部を購入することで本地の接道義務を果たせる場合は、隣接地の所有者に近いうち売却する意t思はないか、接道義務を果たすために敷地の一部を購入されてもらえないかを交渉してみるのも一つの手段です。

まとめ

まとめ

再建築不可物件は、通常土地の価格よりも割安で販売されることが多いもの、将来に渡って接道義務を果たさない限り再建築ができないことや、購入にあたって住宅ローンの融資を受けられず現金での支払いをしなければならないなどのリスクを伴います。

もしも、再建築不可物件の購入を検討している方は、後悔しないためにもメリットとデメリットのどちらも知ったうえで購入を検討してみてください。

再建築不可物件の活用について他にも知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。但し書き道路の申請や隣地の買い取りなどの対処方法を解説しています。
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