中古の物件を購入して入居者を募集し、戸建賃貸として利益を得るためには一戸建てが持つ投資物件としての特徴を理解しておく必要があります。
なぜなら戸建て投資は中古マンションを使ったマンション投資とノウハウが大きく異なり、中古物件ならではの修繕費や利回り、出口戦略といったポイントがあるからです。
投資を始めたばかりの初心者はただ物件価格が安いという理由で空き家を購入する傾向にありますが、購入後に賃貸物件として公開したものの入居者が集まらず、その結果思っていた家賃収入を得られないケースも少なくありません。
このような失敗を避けるためにも不動産投資における戸建とマンションの違いや比較検討は入念にしておくべきといえます。
この記事では投資用中古物件の魅力とメリット・デメリット、物件選びの方法と注意点、マンションとの比較について解説します。
これから戸建を購入して不動産投資を検討している人は、参考にしてください。
中古戸建を賃貸にだす投資には様々な魅力があり、売主としても築年数が古くても立地などの条件がよければすぐに売却できることから多くの収益物件が日々公開されています。
そのため中古戸建の投資は比較的スタートしやすく、需要の高さから選べる物件も多いので初心者に向いているケースもあります。
この章では中古戸建投資が持つ魅力について、解説します。
中古戸建の価値は土地と建物に分けられますが建物の価値は年月の経過とともに減少し、木造であればおおよそ20年を超えた段階でほとんどゼロになります。
しかし資産価値がゼロになったからといって住めないわけではなく、リフォームやリノベーションといった修繕をすることで快適な住まいに改善することが可能です。
こうした資産価値の減少はマンションよりも戸建ての方が早いとされており、不動産の価格にも大きく影響することから中古戸建の方が購入金額を抑えられる可能性は高くなることもあります。
不動産投資の初心者はローンを組まずに自己資金でスタートするケースが多いため、中古建てを中心に物件を検討することがポイントです。
中古戸建を投資家が選ぶ多くの理由として「高利回り」が期待できるという点があり、マンションよりも賃料を高く設定しやすいことからキャッシュフローが良いというメリットがあります。
キャッシュフローとは「お金の流れ」のことで不動産投資においては収益計画における重要な指標となっており、年間の総利益から所得税や住民税、さらに金融機関から融資を受けている場合はローン返済額を差し引いた収益を重要視します。
中古戸建の場合は初期投資を抑えることができれば高い家賃設定によって優れたキャッシュフローを実現することができ、その結果投資の回収時期を早めることができます。
資金回収が早期に実現できればそのまま賃貸を継続することも売却することも選択できるようになり、賃貸経営の幅が広がります。
このように戸建の賃貸物件は居住用だけでなく投資物件としても優秀であることから、日本だけでなく海外の投資家からの問合せも増えているそうです。
中古戸建を借りる人は単身ではなくファミリー層が多く、さらに入居期間が比較的長くなるという特徴があります。
なぜなら中古戸建はマンションよりも土地面積と建物面積が大きくなり、3LDKや4LDKといった間取りが多いことから一人暮らしよりも家族で住むのに向いているからです。
また日管協短観が公開しているデータによると単身者の平均入居期間は3.5ヶ月であるのに対し、ファミリー層は5.6ヶ月となることが分かり、頻繁に入居者を探す手間と費用を削減することもできます。
安定した家賃収入も期待できますので、中古戸建だけを購入して賃貸経営する投資家も多いです。
魅力とメリットが多く投資家からも注目されている中古戸建投資ですが、投資である以上リスクとデメリットもあります。
「不動産投資で不労所得を得て会社を辞めました!」といった成功事例をインターネットで見かけることは多いですが、そのためには実際には多くの知識と実践経験が必要となります。
なかでも投資が持つリスクへの対策は重要であり、長期間安定して投資を継続するのであれば必ず押さえておくべきポイントです。
この章では中古戸建て投資のリスクとデメリットについて、詳しく解説します。
不動産投資に慣れていない初心者は特に気を付けるべきポイントとなっていますので、必ずチェックしてください。
中古物件を購入した場合、築年数が古ければリフォームをする必要がありますが、マンションよりも戸建ての方がリフォーム費用は高くなりやすいです。
なぜなら戸建てはマンションよりも居住スペースの面積が広く、状態によっては外壁や屋根を修繕することになるからです。
特に耐震性が低い中古戸建は耐震補強工事をしなければ投資用ローンがおりなかったり地震保険が高額になるというリスクを抱えることになり、耐震補強工事の分リフォームコストがかかってしまいます。
そのため中古戸建は購入価格は安くなるものの状態が悪ければリフォームコストが高くなり、結果的に初期コストが高額になるデメリットがあることを知っておくことが大事です。
なお、戸建てのリフォームにかかるおおよその費用は次のようになります。
中古戸建はファミリー層に人気ですが中古マンションほど需要はないエリアが多く、入居者が退去すると借り手が中々見つからずに空室期間が長くなってしまうこともあります。
不動産投資において空室は利益を生み出さないことから空室対策の優先度は非常に高いといえますが、需要が少ないエリアの中古戸建を購入してしまうと対策できずに赤字が増えてしまうことも少なくありません。
投資目的で中古戸建を購入したもののすぐに売却したという失敗事例の多くは、こうした需要の見極めに失敗したことが原因となっています。
中古戸建は中古マンションよりも経年劣化しやすく、資産価値は年々低下する一方でメンテナンス費用は増加しています。
そのため家賃と維持費のバランスが崩れることも多く、収益計画が成り立たなくなることもあり得ます。
不動産のポータルサイトでは収益物件が多く公開されていますがこうした収益性の悪い物件も多く、立地が良くなければ投資用物件だけでなく入居用物件としても売却できなくなってしまいます。
つまり、中古戸建を投資目的で購入する際には家賃の高さだけでなく、将来維持費の増加によって利回りが悪化する点や売却のしやすさも踏まえて総合的に判断することが大切です。
中古戸建を購入して賃貸経営を行い安定した収益を得るためには「良い物件」を購入することが重要であり、他の投資家にスピードで負けないよう準備しておくことが大切です。
物件を選定するための正しいチェックポイントを知っておくことでスピーディーに物件の良し悪しを判断できるようになることから、これから不動産投資を検討する人は必ず知っておく必要があると思われます。
この章では不動産投資で成功するために知っておくべき、中古戸建ての選び方について解説します。
不動産投資が成功するかどうかの大きなポイントに「需要と供給のバランス」と「周辺環境」があり、どちらのポイントもクリアしていることが重要です。
築年数が浅くて価格が安い物件であったとしても、過疎化が進んでいるエリアでは借り手を見つけることは難しく、長期間募集し続けなければ空室を埋められないことも少なくありません。
また建物は誰も住んでいない空き家の状態が長くなると劣化しやすくなり、家賃収入がないにもかかわらずメンテナンスコストが発生することもあります。
このような中古戸建を購入してしまうと、思い描いた不動産投資ができないばかりか売却することもできず、赤字を生み出す負債になってしまいます。
その一方で立地が良く人気のエリアでは競合となる借家も多く、選んでもらうためには家賃を相場よりも下げたり外観を常にキレイな状態にするなどの手間がかかります。
つまり、ある程度立地が良いものの借家があまり公開されていないエリアにある中古戸建を重点的に検討することが大切だといえるでしょう。
これ以外にも工場や墓地、クリーンセンター、産業廃棄物処理場、養豚場などが近くになる場合は平日や雨の日に現地へ足を運び、臭いや塵埃、騒音をチェックすることもポイントです。
耐震基準は1924年に制定され、1981年に震度6強〜7程度の地震でも家屋が倒壊しない「新耐震基準」に改正されました。
その後2000年には地盤調査が義務付けられることで地震や台風などの自然災害に強い家が建てられるようになり、安心して住み続けられる家が供給されています。
新築住宅であれば現行法令に適合した基準となっていますが、中古戸建ては建築年月日によっては適法ではない仕様になっている可能性が高いといえます。
特に1981年以前の旧耐震基準は建築当時の耐震性がそもそも現行法令に適合しておらず、2024年時点で既に築43年を経過していることから耐震補強工事が必要になる場合も多いです。
また、耐震補強をしなければ火災保険や地震保険が高額になるだけでなく投資用ローンを組めないこともあり、なによりも倒壊のリスクを抱えることになります。
このような状態になっていると入居者の安全を確保できないことから物件購入後の修繕費が高額になってしまい、結果的に初期投資が膨らむ原因になってしまいます。
このような失敗をしないためにも中古戸建は価格で選ぶことなく、耐震基準を満たした家かどうかをチェックすることが重要です。
中古戸建を借家として借りる人は車を保有している人が多いですが、ライフスタイルが変わることで駐車スペースがさらに必要になることもあります。
そういった変化に対応できるよう駐車場が近くにあると借り手が見つかりやすいことから、アピールできる施設がないか周辺をチェックすることも重要です。
駐車場だけでなく複合施設などの建築が計画されている場合はエリア自体の需要が高まることもあるため、購入を決める重要な判断材料といえます。
株やFXと同様に不動産投資にもリスクがありますが、中古戸建を活用した賃貸経営ならではの注意点があります。
あらかじめ対策することで安全性の高い収益物件となることから、この章で解説する注意点を押さえておくことをおすすめします。
不動産投資において「利回りの高さ」は物件選定をする上で非常に重要な判断材料となり、利回りの一種である「実質利回り」を高めるためには初期費用だけでなく修繕費も抑える必要があります。
実質利回りは年間の収入から修繕費などの諸経費を差し引き、初期費用で割り戻すことで算出が可能です。
つまり物件価格を抑えても修繕費が高くなってしまうと結果的に利回りは悪くなってしまうため、大きな注意点といえます。
ホームインスペクションとは第三者の立場である住宅診断士が専門的な調査を行い、家の劣化状態や欠陥、修繕すべき箇所などを調査書にまとめてアドバイスを行う業務のことです。
住宅診断とも呼ばれるこの業務を実施することで購入する物件の瑕疵を早期に発見することができ、事前に対策することができるようになります。
入居者の安心材料にもなるため、ホームインスペクションはなるべく活用することをおすすめします。
ただしホームインスペクションを実施できるのは中古戸建を購入した後になるケースが多く、購入前に実施する場合は所有者の許可が必要です。
費用も数万円かかることから、実施する物件については慎重に判断することが重要といえます。
良い物件を購入するためにはなるべく多くの物件を比較検討し、収益とリスクのバランスを見定めることがポイントです。
そのためにも不動産会社から常に新着物件を紹介してもらえる関係性を構築しておき、鮮度が良い情報を持っておく必要があります。
その一方で優良物件は公開されてから数時間で売れてしまうこともあり、判断するスピードも重要です。
物件選定で後悔しないためにも複数の物件を比較検討しつつ、スピーディーに判断できる材料を常に持っておくことも不動産投資を成功させるためには大切だといえます。
中古戸建てと中古マンションのどちらを選ぶのかで、不動産投資の内容は大きく変わります。
この章では「購入価格」と「維持管理」、「売却」というポイントで中古戸建と中古マンションを比較し、解説します。
これから不動産投資を検討している人はチェックしてみてください。
中古戸建の価格は土地と建物の資産価値が考慮され、中古マンションの資産価値は主に専有面積の広さです。
つまり土地の資産価値が考慮されない分中古マンションの方が安くなる傾向があり、さらに居住スペースも戸建ての方が広くなりがちです。
そのため購入価格を抑えることを優先するのであれば、中古マンションの方がおすすめといえます。
また、中古戸建の方が中古マンションよりも家賃が高くなりやすいため高利回りを期待することができ、収益性の高い不動産投資を目指したい投資家は中古戸建てを選ぶ傾向にあります。
中古戸建は外壁や屋根の修繕や草むしりなどは全てオーナーが実施することになるため手間がかかりますが修繕費用は抑えることができ、中古マンションは管理会社に委託することっで維持管理の手間を減らすことができる一方、委託料がかかってしまいます。
ただし火災保険や地震保険、固定資産税などは中古戸建の方が高くなりやすいです。
このように維持管理の手間とコストは物件の種類だけでなく築年数や広さ、どこまで自己管理できるのかで大きく変わるといえます。
出口戦略とは収益物件を最終的にどのような形で処分するのかを決める計画のことで、一般的には売却しやすい物件かどうかを検討することを出口戦略と呼びます。
仮に同じエリアにある中古戸建と中古マンションで比較した場合、どちらもオーナーチェンジ物件として売却することができますが、入居者が退去し空室となっていれば中古戸建ては土地として売却することもでき、選択肢は多いといえます。
ただし物件の立地やオーナーのライフスタイルによっては自己利用したり親族が住むという出口戦略もあり、駅近であれば中古マンションの方が選択肢が増えるケースもあります。
そのため購入した不動産を将来どのような形で活用、もしくは処分するのかを先に決めておき、その上で物件を選ぶことがポイントです。
この章では中古戸建て投資をさせるために知っておくべきポイントについて解説します。
「投資」は投下した資金をなるべく早く、多く回収することが目的です。
そのためにはなるべく安く物件を購入した上で修繕費やランニングコストを抑え、なるべく高く家賃設定することが大切となりますが全ての不動産で達成することは難しいといえます。
また借り手をオーナー自ら探すという方法は手間も費用もかかり、効率は良くありません。
そこで不動産投資をスタートする際にはまず成功するためのポイントを把握し、確実に実行することをおすすめします。
不動産のメンテナンスや家賃回収はオーナーにとって大きな負担となるためストレスを感じる業務になりやすいことから、賃貸管理のプロに依頼するのがおすすめです。
賃貸管理会社に管理を依頼することでオーナーは工数をかけることなく家屋を快適に暮らすことができる状態に維持することができ、家賃回収や家賃滞納時の催促をする必要もありません。
また退去が決まった時点で新しい入居者を募集してくれますので空室期間を短くすることができ、安定した収益にも繋がります。
管理手数料などのランニングコストはかかってしまいますが、オーナーの負担を考えると依頼した方が得になるケースも多いです。
そのため中古戸建て投資をスタートするタイミングで複数の管理会社に相談し、費用やサービス内容を比較検討することがポイントとなります。
一戸の中古戸建てを運用するよりも複数の戸建てや中古マンションを同時に運用することで空室発生による減益リスクを下げることができ、常に収益がある状態を維持することができます。
そのため購入資金も複数の不動産を購入する前提で資金計画するのが成功のコツとなっており、一戸の戸建てで予算を使い切らないよう注意する必要があります。
減価償却や損益通算など、不動産投資を使った節税や経費削減方法はいくつか公開されています。
これらの方法については税務署からアドバイスがあるわけではなくオーナー自ら調べて活用しなければならないため、注意が必要です。
利益を最大化する収益計画にするためにも、中古戸建てを購入するタイミングで不動産会社や会計士、税理士に相談することが重要といえます。
中古戸建てを投資目的で購入する人にはいくつか特徴があります。
この章で詳しく解説します。
中古戸建ての入居者は中古マンションよりも入居期間が長く、退去しにくい傾向があります。
そのため、頻繁に入退去が発生する中古マンションよりも長期的に安定した賃貸経営をしたい人には、中古戸建ては向いています。
築年数の古い中古戸建ては価格が安くなる一方でリフォームや修繕費用が高くなることがありますが、壁紙や設備を自ら選定したりDIYが得意なオーナーであれば費用を抑えることができます。
特にDIYが趣味の人は楽しみながら収益物件を修繕することができるため、進んで購入する人も多いです。
このようにリフォームの内容検討やDIYの時間を設けられる人に、中古戸建て投資はおすすめといえます。
空き家が増えると治安の悪化や火災の発生など地域の評判が悪くなり、その結果転出者が増加することでさらに空き家が増えるという悪循環となってしまいます。
そこで故郷や気に入った地域にある空き家を購入して賃貸にすることで空き家を減らすだけでなく転入者を増やすこともでき、地域創生の力になることができます。
このことからも、積極的に地域貢献したい人にも中古戸建て投資は向いているといえます。
中古戸建てを活用した不動産投資には中古マンションや土地活用にはない特徴やメリットがあるため、正しく理解することで安定した賃貸経営を実現することができます。
その一方でデメリットやリスクもあり、注意すべきポイントを抑えておかなければ失敗する可能性がある投資でもあります。
そのため中古戸建を投資目的で購入する際には価格だけでなく修繕費用やランニングコストをあらかじめイメージしておき、さらに将来売却できるかどうかも見定めた上で判断することが重要といえます。
不動産会社や賃貸管理会社はこうした投資に必要なノウハウを多く持っていますので、早めに相談することをおすすめします。
空家ベース編集部です。空家と書いて「ソライエ」と読みます。Twitter・Instagram・公式LINEなどでも物件情報を随時配信しています。空き家を買って再生したい方、他では売れないと言われてしまった空き家をご所有の方はぜひご相談ください!
不動産を売買や相続、贈与、離婚による財産分与といった理由で所有権を取得する場合は登記をするのが一般的ですが、そもそも所有権移転登記がどのような作業なのか知っておく必要があります。
なぜなら土地や建物の所有権を得たからといって必ず登記申請をしなければならないという法律はなく、当事者間の合意があれば移転することができるからです。
しかし不動産登記をせずに放置しておくことには大きなリスクがあり、場合によっては多額の損失を招くこともあり得ます。
そのため工数や費用の負担があっても所有権移転登記はすべきといえるでしょう。
この記事では所有権を移転登記した方がいい理由と各ケースにおける司法書士への費用相場、必要書類、安く抑えるためのポイントについて解説します。
所有権移転にかかわる税金についても合わせて紹介しますので、これから不動産を取得する予定のある人は参考にしてください。
不動産売買や生前贈与、相続、離婚による財産分与が発生し不動産の名義を変更する場合、法務局の窓口に登記申請書を提出して設定登記を行うことになります。
これにより公的文書である全部事項証明書に名義人の名前を記載することができ、第三者からも誰が所有者なのか明確になります。
この作業を所有権移転登記と呼び、登記事項証明書への記載が完了すると登記識別情報通知が郵送され、新しい所有者が受け取ると所有権の移転は完了です。
登記申請書の作成や申請は司法書士に依頼することが多く登記設定時に発生する登録免許税の支払いは司法書士への報酬と合わせて支払うことになりますが、必要とされる書類の一部は現所有者と新所有者が収集しなければなりません。
つまり、事前にどのような書類を準備しなければならないのかを知っておく必要がありますので、司法書士には早めに相談することが重要といえるでしょう。
このように、所有権移転登記はいくつかのステップと費用がかかることを知っておく必要があります。
所有権移転登記をすることで相続人や買主は所有権を主張することができ、不動産を安全に利用することができます。
そのため取得した不動産を売却したり有効活用する予定がある人は、なるべく早く登記手続きを進めることをおすすめします。
なお、令和6年4月1日より相続登記については義務化されることになり、相続を知った日から3年以内に相続を原因とした所有権移転登記をしなければなりません。
この法改正の効力は令和6年4月1日よりも前に相続した相続人に対しても遡及されることになり、違反すれば10万円以下の過料が科せられることになります。
遺産分割協議が難航しているなどの理由で法務局に相続登記を延期する相談などは可能ですが、原則は3年以内の登記が必須となっていることを覚えておきましょう。
【参考サイト:相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始) ~なくそう 所有者不明土地 !~:東京法務局】
相続登記を除く所有権移転登記は法律で義務付けられているわけではないため登記をしなくても違法ではなく、登記に関連する費用や工数を削減するために所有権移転登記がされていない不動産もあります。
しかし正しい所有者で登記されていない不動産はトラブルが起きやすく不動産を自由に扱えなくなるというリスクを抱えることになるため、おすすめとはいえません。
どのような原因で所有権を取得するにしろ、所有権移転登記をしなければ登記簿で所有権を確認することができないため、不動産を担保にしたローンの借入や不動産売却はできないことになります。
そればかりか第三者が登記してしまうとその不動産は第三者の名前で登記済となってしまうことから所有権を主張されてしまい、最悪の場合は不動産を奪われてしまいます。
この場合は登記の公信力を審議する裁判を申し立てることで所有権を奪還できることもありますが、長い時間と多くの費用がかかってしまうでしょう。
所有権を公的に主張できなければ不動産の有効活用も売却もできず安全も担保できませんので、所有権移転登記は必ずすべきだといえます。
所有権移転登記は主に「売買」「相続」「贈与」「離婚時の財産分与」の際に必要となります。
必要書類や費用相場もそれぞれ異なることから、想定される所有権移転のシーンについて確認しておきましょう。
この章で詳しく解説します。
売主から買主が不動産を購入する不動産取引の場合、以下の書類が必要になります。
売主/買主 | 必要書類 |
---|---|
売主 |
売買契約書 委任状 登記識別情報通知 印鑑証明書 身分証明書 実印 |
買主 |
売買契約書 委任状 住民票 印鑑証明書 身分証明書 実印 |
売主も買主も印鑑証明書と登録されている実印、身分証明書が必要となり、身分証明書は顔写真があれば1種類、なければ2種類用意しなければなりません。
そのためなるべく運転免許証やマイナンバー、パスポートなどを用意しておきましょう。
売主は登記識別情報通知が必要となりますが、この書類は再発行できないため紛失すると司法書士と事前面談する手間と追加費用がかかってしまいます。
通常であれば売主の所有権移転にかかる費用は1~2万円となりますが登記識別情報通知を紛失した場合は数万円追加されることになるため、注意が必要です。
つまり評価額が高い物件を購入すると所有権移転にかかる費用も高額になり、さらに司法書士への報酬も必要であることから事前に不動産会社へ概算の見積を依頼しましょう。
これ以外にも住宅ローンを組んだ際には抵当権設定に関する費用もかかります。
相続の場合は相続人が所有権移転登記を行いますが、評価額の0.4%が登録免許税としてかかります。
準備する必要書類は以下の通りです。
前述したように相続登記は相続を知ってから3年以内に登記する義務があるため、なるべく早く手続きを進めることをおすすめします。
なお、相続の場合は登記以外にも相続税が発生することになり、次の速算表が国税庁より公開されています。
法定相続分に応じた取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | – |
1,000万円超から3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超から5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超から1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超から2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超から3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超から6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
【参考サイト:No.4155 相続税の税率|国税庁】
生前贈与や遺贈によって不動産を取得する場合も所有権移転登記が必要となりますが、評価額の2%が登録免許税としてかかり司法書士への報酬も必要です。
必要書類は次のようになり、それほど多くないので比較的簡単に準備できるでしょう。
贈与は贈与税もかかるため、以下の速算表をチェックしておくことをおすすめします。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | 無し |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円を超える | 55% | 400万円 |
上記の表は他人や兄弟姉妹から贈与受けた場合や受贈者が未成年の場合に使われる速算表ですが、父母や祖父母といった直系尊属から贈与を受けた場合は以下の表が使われます。
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | 無し |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円を超える | 55% | 640万円 |
【参考サイト:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁】
婚姻期間中に得た資産は財産分与の対象となり、内容によっては不動産の名義変更が必要になります。
この場合の登録免許税は評価額の2%となり、以下の書類を準備することになります。
司法書士への報酬もかかりますが、一般的には財産分与される人が支払うことになります。
離婚による財産分与には注意点があり、住宅ローンが残っている場合は財産分与される人の経済力次第では金融機関が認めないケースがあります。
さらに不動産を名義変更することで財産分与に偏りが発生してしまう場合、名義変更によって不動産の所有権を得た人は代わりに資産を渡すことで分与の帳尻をつけることになります。
そのため金融機関の判断や財産の状況によっては名義変更ができず所有権が移転できないこともあり、離婚協議が難航することも想定しておく必要があるでしょう。
所有権移転登記には費用がかかることを解説しましたが、この章では費用内訳を登録免許税と司法書士に分け、詳しく解説します。
具体的な計算事例も紹介しますので、チェックしてみてください。
登録免許税の税率をまとめると、次のようになります。
売買:1.5%(令和9年3月31日以降は2%)
贈与、離婚:2%
相続:0.4%
たとえば評価額5,000万円の不動産を所有権移転登記する場合、売買は75万円、離婚と贈与は100万円、相続は20万円が登録免許税としてかかります。
これらの費用は所有権を新しく取得する人が支払うことになるため、あらかじめ用意しておきましょう。
日本司法書士会連合会が公開している資料によると、司法書士への報酬は売買で4~15万円、贈与と離婚で4~8万円、相続で6~11万円が相場となるようです。
ただし登記識別情報通知を紛失したり所有権移転に必要な手続きが複雑な案件は相場以上の報酬を請求される可能性があり、地域によっても報酬に差があります。
登記に関する費用は登録免許税と報酬を合わせた見積を事前に司法書士から提示してもらえますので、確認しておくことが重要です。
なお、一般的には司法書士への報酬は新しく所有者になる人が支払いますが、地域によっては現所有者と折半することもあるため不動産売買の売主だからといって登記費用が必ずしも安いわけではないことを知っておきましょう。
【参考サイト:日本司法書士会連合会】
司法書士の業務は書類を受け取り法務局へ提出するだけでなく、登記事項証明書の取得や案件によっては法務局へ照会をかけ、円滑に進めるための準備をすることも含まれます。
こうした不動産調査は報酬に含まれていますが、書類の取得費用などは別途請求されるケースがほとんどです。
たとえば登記簿は法務局にて1通600円で取得することができますが、委任状を使って住民票や戸籍謄本を取得した場合は数千円かかることも珍しくありません。
特に相続登記と合わせて遺産分割協議を司法書士に依頼してしまうと、相続人の多さによっては数十万円近く追加でかかってしまうケースもあります。
しかし不動産調査はトラブルなく所有権移転登記を進める上で必要な業務であるため、必ず請求されると想定しておきましょう。
本来登記申請書を除く書類は所有権移転登記を行う当事者が用意すべきですが、なんらかの原因があって用意できない場合は司法書士が委任状を使って収集することになります。
収集する書類が増えれば増えるほど費用が追加されますので、以下の相場を参考にしながらなるべく自分で集めることをおすすめします。
所有権移転登記には決して安くない費用がかかるため、コストダウンできる方法を知っておく必要があります。
ただし登記費用のコストダウンにはデメリットとリスクもあるため、バランスを見極めつつ検討することが大切です。
この章では所有権移転登記を抑えるための一般的な方法について、解説します。
自分で登記手続きをするのであれば司法書士への報酬をカットできるためコストダウンになりますが、いくつか注意点があります。
まず全ての必要書類を収集し、次に申請書を正しく記入した上で法務局に提出することになります。
書類の不足や申請書に不備があると法務局から指摘を受け、補正するまでは登記手続きが停止してしまいます。
さらに一度手続きが完了してしまうと修正するのに多くの時間を費やすことになり、修正が必要な理由を法務局に説明する手間も発生します。
これ以外にも相続や贈与、財産分与のケースであれば多少の猶予がありますが不動産売買は住宅ローン融資が通らないというトラブルが発生する可能性があることから、司法書士に依頼する人が楽だと考える人は多いでしょう。
法務局は平日しか稼働していないため自分で登記するためには仕事を休んで何日も通うことになる点も、おすすめできないポイントです。
司法書士の報酬はある程度相場によって決まっていますが一律というわけではないため、複数の司法書士事務所から見積を取得することで安い事務所を見つけられる可能性が高くなります。
実際には相見積もりをしてもほとんど変わらないことが多いですが、報酬を安く抑えるのであれば報酬の比較検討はやっておくべきでしょう。
なお、大手事務所よりも個人で経営している司法書士事務所の方が安くなる可能性は高いようです。
登録免許税の軽減措置とは一定期間の間に取得した土地や家屋の税率を軽減させる措置のことで、以前より実施されていた軽減措置が令和6年の税制改正によって延長されたため継続して使用できるようになりました。
土地の売買は2%から1.5%に軽減され、住宅用家屋は2%から0.3%に軽減されます。
たとえば評価額3,000万円の住宅用家屋を登記する場合、12万円を4.5万円まで削減できます。
このように国税庁が公開している制度を積極的に使用する方法も、おすすめです。
【参考サイト:土地の売買や住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る 登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ】
国税庁では業務の用に供される資産に係る租税を必要経費に算入させることを認めており、登録免許税も必要経費として計上することができます。
ただし登録免許税は「債務」ではないため、たとえば相続税における被相続人の債務控除として計上することはできないなどの問題が発生します。
これ以外にも勘違いによって計上できないケースが多いことから、あらかじめ会計士など専門家に相談しておくことが大切です。
【参考サイト:No.2215 固定資産税、登録免許税又は不動産取得税を支払った場合|国税庁】
この章では所有権移転登記の手続きについて、流れを解説します。
必要な書類の準備と司法書士に依頼する場合のステップ、全体のスケジュールを確認してください。
登記手続きを自分でするにしても司法書士に依頼するにしても、必要な書類を準備する必要があります。
前述した各シーンの必要書類をまとめましたので、参考にしてください。
所有権移転登記のシーン | 必要書類 |
---|---|
売買 |
<売主> ・売買契約書 ・委任状 ・登記識別情報通知 ・印鑑証明書 ・身分証明書 ・実印 <買主> ・売買契約書 ・委任状 ・住民票 ・印鑑証明書 ・身分証明書 ・実印 |
相続 |
・相続人全員の住民票 ・相続する不動産の固定資産課税明細書 ・相続人全員と被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 ・被相続人の除票住民票 ・遺産分割協議書 ・相続人全員の実印 ・相続人全員の印鑑証明書 |
贈与 |
・贈与者の印鑑証明書 ・贈与対象不動産の登記識別情報通知 ・贈与対象不動産の固定資産評価証明書 ・受贈者の住民票 ・登記原因証明情報(贈与契約書等) |
離婚による財産分与 |
・夫婦どちらかの戸籍謄本 ・対象不動産の評価額が分かる書類(固定資産税課税明細書など) ・対象不動産の登記識別情報通知 ・財産分与される人の住民票 ・財産分与される人の印鑑証明書 ・財産分与協議書 |
司法書士の手配は売買であれば不動産会社が提携している司法書士事務所を紹介してくれますが、相続や贈与、離婚による財産分与の場合は自分で探す必要があります。
司法書士事務所は各シーンに特化しているケースが多いため、「相続専門」や「財産分与」などのキーワードを含めてインターネットで検索し、最寄りの司法書士を探しましょう。
司法書士に依頼して登記申請を行い、不備がなければ10日から2週間で完了します。
登録免許税や報酬は依頼時点で司法書士に支払うことが多く、後日郵送で登記識別情報通知が届くことになりますが、法務局は平日しか稼働していないため土日祝が続く月は登記手続きが遅延しやすいことから、急ぐ場合はなるべく早くに依頼する必要があります。
これ以外にも登記識別情報通知は再発行できないという特徴があることから紛失しないよう注意する必要があり、届いたら地震や洪水など万が一の際に持ち出して避難できるよう分かりやすい場所に保管しておくことが大切なポイントといえます。
なお、登記識別情報通知に貼られているシールの下には登記に必要な暗号キーが記載されており、暗号キーが第三者に知られてしまうと所有権を移転される可能性があります。
そのためシールは剥がさないままにしておくことがおすすめです。
不動産の所有権を譲渡する場合、当事者間の合意があれば登記をしなくても所有権の移転は可能ですが登記をしなければ所有権を公的に主張することはできず、第三者が登記してしまうと所有権を奪われてしまうこともあり得ます。
このようなリスクを避けるという意味でも必要書類を準備する工数や司法書士の報酬などがかかっても所有権移転登記することのメリットは大きいといえるでしょう。
所有権移転登記に必要となる準備物や登録免許税は所有権移転の原因によって異なり、売買、贈与、相続、財産分与のそれぞれで相場を把握しておくことが大切です。
安全に所有権を取得し不動産を有効活用するためにも所有権移転登記は重要なポイントといえることから、流れや必要書類、おおよその報酬額をなるべく早い段階で確認し準備を進めることをおすすめします。
空家ベース編集部です。空家と書いて「ソライエ」と読みます。Twitter・Instagram・公式LINEなどでも物件情報を随時配信しています。空き家を買って再生したい方、他では売れないと言われてしまった空き家をご所有の方はぜひご相談ください!
不動産を使って賃貸経営する際には購入した物件の内、建物の減価償却をどのように計上するのかで収益計画が変わります。
建物が持つ会計上の資産は法定耐用年数までの年数によって大きく変わり、さらにRC造や木造など構造によって耐用年数は異なります。
そのため中古物件は新築よりも減価償却がしにくいというデメリットがありますので、償却資産としての価値と価格のバランスを見極めることが大事です。
この記事では賃貸経営や土地活用をする際に税務上知っておくべき知識として、建物の耐用年数と減価償却を計算する方法について解説します。
住宅用ではなく不動産投資を目的として木造アパートや中古住宅の購入を検討している人は、参考にしてください。
住宅やアパート、マンションといった建物には耐用年数という考え方があり、構造や使用の仕方によって年数は異なり国税庁の耐用年数表によって確認することができます。
別の考え方に「寿命」がありますが厳密にいえば建物に寿命はなく、耐震工事や大規模修繕といったメンテナンスをすることで何十年経っても安全に利用することができます。
そのため耐用年数と寿命は全く別であることを理解し、耐用年数は経過年数によってどのくらい資産価値が減価したのかを判断する指標であることを知っておきましょう。
法定耐用年数とは、不動産などの固定資産において会計上の資産価値が残存する期間のことです。
固定資産は使用頻度や経過した期間によって劣化するため資産価値も減少することから、一定の価値を永久に担保できるものではありません。
そこで国税庁は固定資産の価値が消滅してしまう期間を構造別・用途別に定めており、耐用年数表を公開しています。
これにより期間中は減価償却できることが可能となり事業経営者は税金を節税できることから、設備投資しやすくなるというメリットがあります。
耐用年数表をあらかじめ確認し物件の購入を検討することで償却費を収益計画に組み込むことができ、より精度の高い経営ができるようになるでしょう。
このことからも法定耐用年数と減価償却について正しく理解することは、費用とリスクを分散するという意味でも必要なポイントといえます。
【参考サイト:耐用年数表】
中古住宅の耐用年数には「物理的耐用年数」「法定耐用年数」「経済的残存耐用年数」の3つがあり、それぞれ次のような特徴となります。
減価償却の計算式では法定耐用年数のみを利用することになりますが、中古住宅の場合は構造によっては法定耐用年数を購入時点で既に超過しているケースもあるため、注意が必要です。
超過していた場合は法定耐用年数の20%に相当する年数を見積耐用年数とすることになり、例えば法定耐用年数22年の住宅で10年超過していた場合の見積耐用年数は次のようになります。
なお、計算上の見積耐用年数は2年以下の場合は2年とし、小数点は切り捨てになるというルールがあることを知っておきましょう。
【参考サイト:No.5404 中古資産の耐用年数|国税庁】
事業用不動産とは事務所用や店舗用などに利用する不動産のことで、貸付用物件ともいわれます。
不動産の取得費用を減価償却によって耐用年数分のみ経費に計上できることから事業用不動産を保有している人にとって大きな経費削減となるため必ず利用しておきたい方法といえ、メリットも多いです。
さらに中古資産を事業用に変更する場合は法定耐用年数ではなく事業用として利用開始した以降の使用可能期間を見積年数に加算することができます。
これにより償却期間を住宅用よりも長く設定することができ、長期間償却することが可能となります。
使用可能期間の年数を見積もることが難しい場合は簡便法と呼ばれる方法がおすすめで、資産の全部が超過するかどうかで計算方法が次のように異なります。
ただし購入時に取得価額の50%を超える資本的支出を行った場合は上記の方法は使えませんので、注意しましょう。
国税庁が公開している耐用年数表によると建物の構造と種類によって法定耐用年数は異なることが分かるため、所有している固定資産をあらかじめチェックしておくことをおすすめします。
また同じ構造であっても仕様や利用用途によっても変わり、特に鉄筋コンクリート造は鉄骨材の厚みが耐用年数に大きく影響します。
この章では建物の構造別、種類別耐用年数について国税庁の公開データを基に紹介しますので、不動産を所有し減価償却する予定がある人はチェックしてください。
鉄筋コンクリート造は鉄筋によって補強されたコンクリートのことで、柱や梁がコンクリートによって強度アップされた建物です。
使用方法によって次のように耐用年数が異なりますので、どのように建物を使うのかが減価償却において重要なポイントといえるでしょう。
使用方法 | 耐用年数 |
---|---|
事務所用 | 50年 |
住宅用 | 47年 |
飲食店用 (延べ面積のうちに占める木造内装部分の面積が30%を超えるもの) |
34年 |
飲食店用 (上記以外) |
41年 |
旅館用・ホテル用 (延べ面積のうちに占める木造内装部分の面積が30%を超えるもの) |
31年 |
旅館用・ホテル用 (上記以外) |
39年 |
店舗用・病院用 | 39年 |
車庫用 | 38年 |
公衆浴場用 | 31年 |
工場用・倉庫用のもの (一般用) |
38年 |
鋼で柱や梁といった重要な躯体が鉄骨造となっており、コンクリートをさらに追加すると前述した鉄筋コンクリート造となります。
強度は骨格材が大きく影響することから耐用年数は骨格材の厚みによって分けられるという特徴があります。
鉄骨を主軸としたハウスメーカーはそれほど多くありませんが、テナントが多い賃貸マンションなどは鉄骨造で建築されがちです。
そのため、耐用年数の違いは知っておく必要があるでしょう。
使用方法 | 耐用年数 |
---|---|
事務所用 (骨格材の肉厚:4㎜超) |
38年 |
事務所用 (骨格材の肉厚:3㎜超4㎜以下) |
30年 |
事務所用 (骨格材の肉厚:3㎜以下) |
22年 |
店舗用・住宅用 (骨格材の肉厚:4㎜超) |
34年 |
店舗用・住宅用 (骨格材の肉厚:3㎜超4㎜以下) |
27年 |
店舗用・住宅用 (骨格材の肉厚:3㎜以下) |
19年 |
飲食店用・車庫用 (骨格材の肉厚:4㎜超) |
31年 |
飲食店用・車庫用 (骨格材の肉厚:3㎜超4㎜以下) |
25年 |
飲食店用・車庫用 (骨格材の肉厚:3㎜以下) |
19年 |
旅館用・ホテル用・病院用 (骨格材の肉厚:4㎜超) |
29年 |
旅館用・ホテル用・病院用 (骨格材の肉厚:3㎜超4㎜以下) |
24年 |
旅館用・ホテル用・病院用 (骨格材の肉厚:3㎜以下) |
17年 |
公衆浴場用 (骨格材の肉厚:4㎜超) |
27年 |
公衆浴場用 (骨格材の肉厚:3㎜超4㎜以下) |
19年 |
公衆浴場用 (骨格材の肉厚:3㎜以下) |
15年 |
工場用・倉庫用(一般用) (骨格材の肉厚:4㎜超) |
31年 |
工場用・倉庫用(一般用) (骨格材の肉厚:3㎜超4㎜以下) |
24年 |
工場用・倉庫用(一般用) (骨格材の肉厚:3㎜以下) |
17年 |
木造や合成樹脂によって作られた一戸建てやアパートは多く不動産投資用の物件を探している人によっては頻繁に見かける構造といえますが、鉄骨よりも全体的に耐用年数は短い傾向にあります。
耐火性も鉄骨やレンガ造よりも劣るケースが多いことから、火災保険などの諸費用も確認した上で購入を検討すべきといえます。
他の構造と同様に、木造・合成樹脂造も使用方法によって耐用年数は次のように異なります。
使用方法 | 耐用年数 |
---|---|
事務所用 | 24年 |
店舗用・住宅用 | 22年 |
飲食店用 | 20年 |
旅館用・ホテル用・病院用・車庫用 | 17年 |
公衆浴場用 | 12年 |
工場用・倉庫用(一般用) | 15年 |
レンガや石、ブロックによって作られた建築物は木造やRC、SRC造ほどみかけることはありませんが比較的耐用年数が長いという特徴があるため、投資に向いている構造です。
また耐火性や耐久性に優れていることからメンテナンス費用が少なくてすむというメリットもありおすすめですが、購入費用が高額になりやすいというデメリットもあります。
そのため購入を検討する際には次の耐用年数を使ってどのくらい減価償却できるのかをチェックし、収益計画が成立することを確認しておくことが大切です。
使用方法 | 耐用年数 |
---|---|
事務所用 | 41年 |
店舗用・住宅用・飲食店用 | 38年 |
旅館用・ホテル用・病院用 | 36年 |
車庫用 | 34年 |
公衆浴場用 | 30年 |
工場用・倉庫用(一般用) | 34年 |
減価償却費を計算する方法には定額法と定率法があり、基本的な計算方法は次のようになります。
2007年4月1日以前に取得した建物を定額法で計算する場合、取得価額×90%×旧定額法の償却率という計算方法が採用されます。
そのためどのタイミングで取得したのかが重要といえ、物件の取得金額は事前にチェックしておきましょう。
なお、平成28年度の法改正によって2016年4月1日以降に取得した建物と建物付属設備の償却は定額法を採用することが決まっており、定率法は利用できなくなりました。
これにより定率法を使って減価償却の計算ができるのは機械及び装置、船舶、航空機、車両運搬具、工具並びに器具、備品ということになります。
つまり不動産投資を目的として購入した物件であれば全て定額法で計算することになるため、定額法の計算方法をメインに把握することをおすすめします。
【参考サイト:減価償却に関する改正】
定額法で減価償却を計算するためには建物の取得金額と経過年数、耐用年数、償却率を調べる必要があります。
建物の取得金額が分からない場合、消費税が分かっていれば「消費税÷購入時の消費税率」で算出することができますが、居住用であれば国税庁が公開している建物の標準的な建築価額表を使って調べる方法もあります。
その後、これにより定額法の計算で必要となる取得金額と償却率を求めることができ、掛け合わせることで減価償却費を算出することができます。
【参考サイト:建物の標準的な建築価額表】
【参考サイト:「減価償却費」の計算について|国税庁】
中古不動産と新築不動産では減価償却に大きな違いがあり、新築不動産は耐用年数が長いため減価償却はゆっくり進み、中古不動産は急激に進みます。
これは法定耐用年数における残存期間が少ないことが理由となっており、中古不動産を購入する際には残存期間がどのくらいあるのかが重要な判断材料になるといえます。
そのためなるべく築浅の中古不動産を購入したいと考える人は多いですが、築浅になると購入金額が高くなるため、バランスの見極めが大切です。
購入価格と減価償却の最適なバランスを知るという意味でも、中古不動産における減価償却の計算方法は正しく理解しておくことをおすすめします。
具体的な計算方法のステップは、次のようになります。
中古不動産は新築とは別の計算式が用意されており、事業所得や不動産所得といった必要経費に算入される償却費の累積額を考慮することになります。
将来不動産を売却する際には売却益に応じて譲渡所得税が発生し、譲渡所得課税額の計算をする際には減価償却費を差し引くことになります。
居住用財産を売却する場合は譲渡所得税が高くなりすぎないよう減価償却費は小さく計算されることで取得費を多く計上できるようになっていますが、中古の事業用不動産、賃貸用不動産の減価償却計算においては経過年数が耐用年数を超えるかどうかが重要なポイントです。
たとえば鉄筋コンクリート造で建物の取得金額が4,000万円だった場合、経過年数によって法定耐用年数は次のようになります。
鉄筋コンクリート造の償却率は0.015であることから、それぞれの経過年数で計算した場合の減価償却費は次の通りです。
このように中古不動産は耐用年数の残存期間によって償却費用が大きく異なることが分かり、購入するタイミングまでに償却費をある程度イメージしておくことが大切だといえるでしょう。
不動産を購入した賃貸経営や事務所、店舗として活用する人にとって、減価償却費は経営における重要な判断材料です。
購入費用が高額になっても長期間減価償却できるのであれば所得税を減らすことができるため結果的に多くの利益を見込むことができ、減価償却費が少ないと購入金額が安くても損をすることもあります。
また減価償却は建物の構造や使用方法によって耐用年数が大きく変わり、耐用年数と残存期間が償却期間を決める要素であることから、不動産を購入する時点であらかじめチェックしておくべきポイントといえるでしょう。
特に中古不動産の購入は残存期間が元々短いだけでなく耐用年数を超過するかどうかで計算方法が変わるため、中古不動産ならではの注意点といえます。
減価償却をうまく活用することで所得税を節税し、投資資金を増やすことが不動産投資のセオリーといえます。
このことからも不動産投資をこれから始める人は勿論ですが、現在様々な固定資産を保有し経営を実践している人も減価償却に関する法律はチェックし、節税に関連する最近の情報として習得することをおすすめします。
空家ベース編集部です。空家と書いて「ソライエ」と読みます。Twitter・Instagram・公式LINEなどでも物件情報を随時配信しています。空き家を買って再生したい方、他では売れないと言われてしまった空き家をご所有の方はぜひご相談ください!
土地や建物を投資目的で購入し賃貸経営を試みる場合、自己資金だけでなく金融機関から融資を受けるケースも多いですが、融資額が少ない場合に「共同担保」を検討する投資家も多いです。
共同担保を設定することで本来受けられない額の融資を受けることもでき、さらに融資条件が良くなることもありますので、投資ローンを検討する人にとってはメリットのある方法といえます。
その一方で共同担保にはデメリットやリスクもある上に設定するための物件には条件があることから、注意が必要です。
この記事では不動産を活用した資産運用を考えている人向けに、共同担保のメリットやデメリット、基礎知識について解説します。
融資を利用した上で不動産投資を検討している人は、参考にしてください。
共同担保とは抵当権を設定する物件とは別の不動産に担保権を設定することで、自分だけでなく他人が所有している物件であっても合意があれば設定が可能という特徴もあり、主に融資額が不足する際に利用する資金調達方法です。
たとえば郊外にある空き家や築年数が古い戸建ては修繕費が高くなるため物件購入価格を超過した融資を検討することもありますが、物件によっては資産としての価値が低いと判断されてしまい、その結果希望額よりも低い融資になってしまうことがあります。
そこで別の不動産を担保として提供することで金融機関からの融資額を増やし、思い描いた不動産投資を実現できるようになります。
共同担保は個人の投資家だけでなく分譲地や分譲住宅の開発業者も積極的に活用していることから、投資の幅を広げたい人に向いている方法といえます。
共同担保を活用することで本来受けられない融資を受けることができますが、それ以外にもメリットがあります。
この章では共同担保設定が持つメリットについて、詳しく解説します。
金融機関や債務者の属性、購入予定の物件によっては共同担保を設定した方が有利な条件で借入できることもあり、今後の投資活動に良い影響を与えられることもあります。
債権者である金融機関にとってはリスクの少ない債権である方が好条件を提示しやすく、資産価値の高い不動産を担保に入れることは信用性の高い債務者として判断されます。
こうした信用は通常よりも低い金利で借入するために利用できることから、長期的に借入を検討する投資家にとっては大きなメリットといえます。
土地と建物をセットで共同担保に設定することで評価額を高くすることができるため、融資額も増やすことができます。
特に購入予定の物件が前面道路以外にも私道に隣接している場合などは不動産の活用方法が広がることになるため、積極的に共同担保を検討するケースも多いです。
これ以外にも土地と建物の所有者が分かれている場合は共同担保を設定することでトラブルを回避できる、といったメリットもあります。
共同担保設定は融資額を増やすだけでなく、借入期間が優遇されることもあります。
なぜなら共同担保によって担保に入れる物件の資産価値が増えることになるため債務リスクが下がり、金融機関としても好条件が提示しやすくなるからです。
そのため、購入する予定の物件だけでも十分な融資を受けられる場合であっても共同担保を設定するケースもあります。
有利な条件で融資を受けることは不動産投資において重要なポイントであるため、共同担保を積極的に活用する投資家も多いです。
しかし共同担保には知っておかないといけないデメリットと注意点があり、大きな損失に繋がるリスクも抱えています。
この章では共同担保のデメリットについて解説しますので、前述したメリットと合わせてチェックしてください。
共同担保が設定されている物件の登記事項証明書には共同担保設定した不動産情報が記載されることになり、抹消の手続きをしなければ売却ができません。
抵当権や担保権は所有権を阻害する権利であるため、売却した後に債務者が支払いを放棄してしまうと不動産を購入した人は所有権を失ってしまう可能性があります。
このようなリスクを避けるためにも、不動産を売却する際には抵当権抹消だけでなく共同担保の設定も解除する必要があります。
またローンの借り換えも共同担保を含めた借入を一度全て完済しないと受付してくれない金融機関も多く、自由に資金調達ができなくなってしまうトラブルが発生しやすくなります。
このように共同担保設定は不動産投資において有利になるだけでなく不利になるケースもあり、大きなデメリットです。
共同担保はあくまでも抵当権を設定する不動産に対する「担保の補完」であるため、ローンを完済して抵当権を抹消するなどの対応をしなければ共同担保を外すことは難しくなります。
そのため共同担保を設定した不動産を売却したりさらに別の融資に対して担保設定する場合は金融機関の合意が必要となりますが、金融機関としてはただリスクが増すだけのため合意することはほとんどありません。
つまり共同担保は物件の流動性を極めて低下させる可能性が高いといえるため、注意が必要です。
金融機関は細かく対応エリアが設定されており、エリア内の物件でなければ共同担保に設定することはできません。
特に地方銀行や信用金庫は同じ都道府県でもエリアが分かれることがあるようですので、共同担保に利用できる物件かどうか事前に確認する必要があります。
自宅に共同担保を設定し融資額を増やすケースは多いですが、万が一支払いが滞納してしまい返済不能になってしまうと自宅を競売によって失う可能性があります。
購入物件だけに抵当権が設定されていた場合であれば支払いが滞納しても任意売却や債務整理によって完済できる可能性は残りますが、自宅に担保権が設定されると同一の資産として差し押さえの対象になってしまいます。
これにより投資用物件だけでなく自宅も失うことになり、人生が大きく変わってしまうことにもなりかねません。
このようなリスクを避けるためにも、自宅を共同担保に設定する場合は十分に検討した上で判断することをおすすめします。
共同担保はデメリットとリスクを把握することがポイントで、正しく活用することで不動産投資に有効な方法となります。
しかしどのような物件でも共同担保が設定できるわけではないことも、知っておきましょう。
この章では共同担保にできる物件の代表的な特徴を紹介します。
抵当権を設定する不動産では不足する資産価値を担保するのが共同担保の目的となることから、設定する物件には所有権を阻害する抵当権が設定されていないことが条件です。
そのため相続や贈与などで取得した物件やローンが完済された物件などが共同担保の対象物件となりますが、物件や金融機関の判断によっては残債が残っていても半分以下であれば設定できるケースもあります。
ただし残債が残っている場合はその分担保評価額も下がってしまい、たとえば3,000万円の価値がある物件でも残債が半分あると2,500万円以下の評価額になってしまいます。
このことからも担保額が足りない場合は一度ローンを完済し、抹消手続きをした上で担保設定するという方法も検討する必要があります。
金融機関によって営業エリアが限定されていることがあり、信用金庫や労働金庫、信用組合などは地域に根付いた融資を優先する傾向にあります。
そのため共同担保が設定される物件も同じエリアである必要があり、どれだけ資産価値が高くても遠方にある物件に共同担保は設定できないことが多いです。
一方、財閥系大手金融機関であれば全国展開しているため営業エリアの限定はなくなりますが、離島や郊外など利便性が悪い場所にある物件は断られることがあります。
このように共同担保を設定する前提で融資を組む場合は、まず複数の金融機関に相談し、設定できる物件かどうかを確認した上で決断することがポイントです。
共同担保目録は全部事項証明書に記載されている項目の一つで、最下段に記載されます。
所有している不動産に共同担保が設定されている場合に表示され、共同担保目録に記載されている物件全てが共同担保ということになります。
全部事項証明書は法務局で誰でも閲覧、取得ができる書類となっており、購入を検討している人は抵当権と合わせてチェックします。
そのため共同担保目録に記載されている物件が多いと抹消手続きに時間がかかる可能性が高いといえ、購入に時間がかかると考える投資家もいます。
このように共同担保は融資を受ける上で便利である一方で売却時に担保権の情報を開示することになり、場合によっては売却に影響が出てしまうことも注意点です。
不動産投資において資金の調達は重要なポイントであり、共同担保は他の不動産を担保として提供することで好条件の借入が期待できるため積極的に活用する人もいます。
また担保設定することで資産価値が向上するケースもあり、使い方次第では非常に有効な資金調達方法といえます。
しかし共同担保が設定できる物件には条件があり、さらに共同担保が設定された物件と抵当権が設定された物件はどちらも売却することが難しくなり、自宅を担保として提供した際には自宅を失うリスクを抱えることになります。
このように共同担保は不動産投資がうまくいかなかった場合の損失が生活に影響を与えるほど大きくなる可能性があるといえることから、共同担保を使う必要がある場合は融資を依頼する金融機関だけでなく、不動産会社や身近にいる投資家に相談することをおすすめします。
空家ベース編集部です。空家と書いて「ソライエ」と読みます。Twitter・Instagram・公式LINEなどでも物件情報を随時配信しています。空き家を買って再生したい方、他では売れないと言われてしまった空き家をご所有の方はぜひご相談ください!
不動産売却を検討する際には土地や建物の価値を正しく把握する必要がありますが、土地総合情報システムは不動産の相場を知る上で便利なシステムとなっており、おすすめです。
不動産会社が売却査定の参考として活用するケースも多く、戸建てやマンションの相続税や贈与税を調べる際にも利用できます。
この記事では土地総合情報システムの概要と使い方、検索の方法について解説します。
土地総合情報システムは円滑な不動産取引を目的としており、取引価格やハザードマップ、周辺施設など価格決定において必要な情報を一元管理しています。
不動産は車や時計のように誰もが判断できる相場価格がなく、価格に影響する要素が多いことから売主が自由に価格設定できてしまいます。
そのため不動産に詳しくない人が相場よりも高い金額で購入したり相場よりも安い金額で売却してしまうトラブルが起きることもあり、不動産を安全に流通させるためには解決しなければならない問題です。
土地総合情報システムはこうした問題を解決すべく重要なオープンデータを簡単に検索できるようになっており、これにより不動産のプロから一般人まで同じデータを使って価格の検証をすることができるようになりました。
SUUMOやアットホームといった不動産ポータルサイトは民間の企業が運営していますが、土地総合情報システムは国土交通省が運営しています。
そのため正確な情報が公開されており、公示価格や路線価といった不動産鑑定に必要な情報も確認することが可能です。
不動産売却における物件の価格設定にも役立てることから、不動産のプロだけでなく一般の売主も有効活用できるシステムといえます。
なお、土地総合情報システムは令和6年3月をもってサービス終了となっており、不動産情報ライブラリに統一されました。
【参考サイト:建設産業・不動産業:不動産取引価格情報提供制度 – 国土交通省】
【参考サイト:不動産情報ライブラリ】
地価公示とは地価公示法に基づいて不動産鑑定士が全国にある標準地を毎年1月1日時点の価値として鑑定し、国土交通省土地鑑定委員会によって公示される指標です。
これに対して都道府県地価調査は7月1日を基準日とした標準価格を都道府県知事が公表する指標となっており、どちらも公共事業用地の取得や相続税、贈与税の算出に使用されます。
不動産を所有している所有者が不動産を相続したり贈与する場合、正確な税額が分からなければ迂闊に所有権を移転することができなくなってしまいます。
税理士や会計士に税額計算を依頼することもできますが費用がかかってしまうため、不動産情報ライブラリで公開されている情報を使って自分で計算するのがおすすめです。
不動産を売却する際には売却価格を決める必要がありますが、成約価格が分からなければ適正価格で販売することは難しいといえます。
SUUMOやアットホームといった不動産ポータルサイトでは販売中の物件価格をチェックできますが実際にいくらで売れたのかは分からず、価格交渉の落としどころで悩んでしまう売主もいます。
その点不動産情報ライブラリでは実際に取引された価格イメージを確認することができ、売却価格の重要な判断材料にすることができます。
価格の根拠としても効力がありますので、すぐに閲覧できるようホームページをお気に入り登録している売主も多いです。
不動産情報ライブラリは不動産を実際に購入した人がアンケートに回答し、その内容をデータとして活かしています。
主な活用目的に「公示地価の判定」や「基準地価の判定」、「不動産取引価格情報の提供」があり、不動産鑑定士の算出結果と実際の成約事例を精査することで精度の高い価格データを維持しています。
公示価格や路線価の鑑定は取引事例が多ければ精度が高くなりますが、過疎地や山奥などは取引が少ないため、サンプリングデータが少ない状態で算出することになります。
そこで実際の取引情報を取り入れることで計算を補完し、信頼性の高いデータとして抽出している点が、不動産情報ライブラリの特徴です。
【参考サイト:アンケートの目的】
不動産情報ライブラリでは一般の人でも閲覧することができ、住宅や農地、山林の価格相場や戸建て、マンションの成約相場を調べることができます。
不動産の取得や売却において重要な情報となりますので、この章では具体的に知ることができる情報を紹介します。
不動産情報ライブラリでは地価公示・都道府県地価調査を確認することができ、さらに不動産取引価格情報を検索することができます。
これにより全国の土地単価を調べることができ、不動産売却の価格設定だけでなく相続税や贈与税の課税額を算出することも可能です。
不動産銃砲ライブラリは誰でも閲覧できるため、当事者間で価格や価額を判断する上で公平なデータとして共有するケースも多いです。
農地や林地は取引事例が少ないものの面積が大きく、価格や課税額のイメージが持ちにくいという特徴があります。
たとえば500坪の農地を売却する場合、坪単価を2万円にすると売却価格は1,000万円ですが5万円にすると2,500万円です。
坪単価が3万円前後することは不動産取引においてよくありますが、面積が大きいとこのように価格へのフィードバックも大きくなってしまいます。
そこで不動産情報ライブラリを活用してなるべく精度の高い相場で売却価格を設定し、トラブルを起こすことなく売却することができるようになります。
不動産情報ライブラリは検索画面で宅地、土地、土地と建物、マンション、農地、林地を選択することができますので、気になるエリアの不動産種別相場を全てチェックすることができます。
この情報は不動産査定や売却価格だけでなく投資目的の物件を検討する際にも有効活用することができることから、投資家にもおすすめの検索方法です。
この章では実際の不動産情報ライブラリ画面を参照しながら、使い方を解説します。
調べたい用途別に紹介しますので、不動産情報ライブラリを使う際の参考にしてください。
土地の価格調査方法は次のようになります。
地図表示もしくは地域選択を選択。
価格情報を選択し、不動産取引価格情報を選択。
任意のエリアをズームして青い丸をクリックし、詳細表示を選択。
検索結果一覧に土地価格が表示される。上記のタグを開くと不動産種別や時期を変更することができる。
①インターネットで「不動産情報ライブラリ」を検索し、トップ画面から「地図から探したい方へ」を選択します。
特定の地域から探したい場合は「地域から探したい方へ」を選択します。
②日本の地図が表示されますので「価格情報」を選択し、プルダウンの中から「不動産取引価格」にチェックを入れて検索します。
③地図の中から任意のエリアをズームすると青い丸が表示されますのでクリックし、「詳細表示」を選択します。
④検索結果一覧で土地価格を確認できるようになります。
なお、上記画面の上部には「条件設定を開く」というボタンがあり、都道府県と市区町村、価格情報区分、不動産種別、時期を選択することができます。
ハザードマップの確認方法は次のようになります。
地図表示もしくは地域選択を選択。
防災情報を選択し、調べたいハザードマップを選んで決定を選択。
任意のエリアをズームし、凡例を使って危険度をチェック。
①日本地図の画面が表示されれば「防犯情報」をクリックし、ハザードの種類を表示して決定をクリックします。
②任意のエリアをズームすると、ハザードマップが該当しているエリアがハッチングされます。
たとえば洪水浸水想定区域(想定最大規模)を選択した場合は上記のような色で表示され、左側の凡例を開くと浸水想定の高さを確認できるようになります。
ただしハザードマップはある程度ズームしなければ表示されませんので、注意が必要です。
近隣の学校・病院・公園の確認方法は次のようになります。
地図表示もしくは地域選択を選択。
周辺施設情報を選択し、調べたい施設を選んで決定を選択。
任意のエリアをズームし、凡例を使って施設情報や範囲をチェック。
①日本地図の画面が表示されれば「周辺情報情報」をクリックし、調べたい周辺施設を表示して決定をクリックします。
②任意のエリアをズームすると、調べたい施設が表示されます。
上記の表示は小学校と中学校のエリアが表示されており、クリックすると学区を表示することができます。
これ以外にも病院や福祉施設などを同時に表示することができますが、これらの施設は記号でマッピングされます。
都市計画情報の確認方法は次のようになります。
地図表示もしくは地域選択を選択。
都市計画情報を選択し、知りたい都市計画や用途地域などを選び決定を選択。
任意のエリアをズームし、凡例を使って情報をチェック。
①日本地図の画面が表示されれば「都市計画情報」をクリックし、知りたい情報を表示して決定をクリックします。
②下記のように該当する情報を地図にマッピングすることができますが、ハザードマップと同様にある程度ズームしなければ表示されませんので、注意が必要です。
周辺人口・将来推計人口は次のようになります。
地図表示もしくは地域選択を選択。
人口情報等を選択し、知りたい情報を選んで決定を選択。
任意のエリアをズームし、凡例を使って必要な情報を確認。
①日本地図の画面が表示されれば「人口情報等」をクリックし、知りたい情報を表示して決定をクリックします。
②このデータは国土地理院の国勢調査などをベースにしていることから、確認時期によっては古い情報が使われていることもあります。
そのためあくまで参考情報として取り扱うことをおすすめします。
不動産の成約事例を調べるデータベースには不動産情報ライブラリ以外にもレインズがありますが、用途と利用の自由度に違いがあります。
レインズは公益社団法人が運営しているシステムのことで、販売中と成約済みの物件情報を閲覧、ダウンロードすることができます。
建ぺい率や容積率、面積、価格などが表示される点は不動産情報ライブラリと同じですが、レインズはさらに売主の属性や販売業者の連絡先の確認と資料のダウンロードが可能です。
また購入申し込みが入っている場合には左側に「申込あり」と表示されるため、物件がまだあるか一目で判断することができます。
このようにレインズは公開物件や成約物件を確認するのに特化しており、不動産情報ライブラリとの大きな相違点といえます。
ただしレインズは宅地建物取引業社しか利用できないという制限があり一般の人は使えませんので、注意が必要です。
国土交通省が公開している不動産情報ライブラリは公示価格や路線価、不動産取引価格情報を調べることができ、誰でも利用することが可能です。
そのため不動産会社や司法書士だけでなく不動産を売りたい所有者もよく利用するシステムとなっており、不動産の価値を調べる上で必要な情報を簡単に検索できるという特徴があります。
また不動産の資産価値だけでなくハザードマップや都市計画情報、人口推移を調べることもできるため、購入を検討している人にとっても便利なシステムといえます。
無料で何度も利用できますので、不動産の取得や売却を検討している人はすぐに見れるブックマークしておくことをおすすめします。
空家ベース編集部です。空家と書いて「ソライエ」と読みます。Twitter・Instagram・公式LINEなどでも物件情報を随時配信しています。空き家を買って再生したい方、他では売れないと言われてしまった空き家をご所有の方はぜひご相談ください!
不動産会社に仲介してもらった上で不動産売買や賃貸を行う場合、売主と買主、貸主と借主は不動産業者へ仲介手数料を支払う必要があります。
仲介手数料は成約した時点で媒介契約書に記載された手数料を報酬として支払うことになりますが、売買価格に応じて上限金額が設定されています。
そのため不動産売買で必ずかかる費用として予算確保しておくべきですが、具体的なサービス内容や支払いタイミングを知っておくことで納得した上で支払うことができます。
また個人間売買を選択することで仲介手数料を無料にすることができますが、リスクが高いためおすすめできません。
この記事では不動産売買における仲介手数料の仕組みや支払いタイミングについて、解説します。
個人間売買のリスクについても紹介しますので、これから不動産売買を検討している人は参考にしてください。
そもそも不動産取引は不動産会社の仲介をしなくても進めることができ、売買契約時に書類を取り交わす必要もありません。
しかし内容の確認不足や勘違い、引渡し時にトラブルが発生しやすくなり、さらに急速な市街化によって土地や建物の形状が複雑になることで専門知識のない当事者間での取引が難しくなりました。
そこで昭和27年に宅地建物取引業法が施行され、法律に沿った円滑な売買契約が推奨されることになり、不動産会社が仲介に入ることが一般的になりました。
不動産の売買では売主、買主ともに仲介手数料の請求を受けることになりますが、納得した上で支払うためにもそれぞれのサービス内容を知っておくことが大切です。
この章ではどのようなサービスに対して仲介手数料が発生するのかについて、解説します。
不動産売却を検討する売主にとっては、手間をかけることなくスピーディーかつ高値で物件を売却することが重要なポイントとなります。
立地が良い中古住宅や土地であれば看板を置いておくだけでも売却できるかもしれませんが、実際には多くの人に検討してもらうため広告を出さなければなりません。
さらに不動産を売却する際には告知書の作成や契約不適合責任の設定、確定測量や解体実施の有無など売主にとって決めなければならないことは多いです。
不動産会社は売主に対して売買価格の相場となる査定額と売却プランを提案し、多くの反響を得るために紙媒体やインターネットを通じて物件を広告します。
値引き交渉や契約条件の交渉もサービスに含まれていますので、売主は不動産会社に仲介を依頼することで安心して売却できることが分かります。
なお、依頼する不動産会社は媒介契約の種類によって変わり、たとえば専属専任媒介契約や専任媒介契約を選んだ場合は1社しか選択できません。
どの媒介契約を選んでも売却時の仲介手数料や売却価格は変わりませんので、次の特徴をチェックした上で判断することをおすすめします。
媒介契約の種類 | 同時依頼できる不動産会社の数 | 自己発見取引 | 契約の期間上限 |
---|---|---|---|
専属専任 | 1社 | 不可 | 3ヶ月 |
専任 | 1社 | 可能 | 3ヶ月 |
一般 | 制限なし | 可能 | 制限なし |
不動産会社が買主に行う仲介業務として情報の提供と安全に購入するための段取りがあります。
具体的には広告を見て問い合わせした買主への物件紹介や案内の誘致、値引きの交渉、契約の調整が主な業務となっています。
住宅ローンの斡旋や税金を含めた諸費用の確認、資金計画の作成も業務に入っていることから、買主にとっても不動産会社の仲介は重要です。
このように買主は不動産会社に仲介を依頼することでスピーディーな情報収集だけでなく契約成立までに必要なアドバイスを受けることができ、仲介手数料に含まれているサービスといえます。
売主と買主が依頼する不動産会社が全く同じとなった場合、どちらかが仲介手数料無料になったり半金になるのではなく1つの会社に対して双方とも満額の手数料を支払うことになります。
ただし売主と代理契約を締結している場合は買主の仲介手数料はゼロになり、負担が軽減されるケースもあります。
こうした取引態様は物件ごとに設定されておりSUUMOやアットホームでも確認することができますので、買主は物件選定時にチェックしておくことがポイントです。
不動産売買において仲介手数料は売買契約が締結された時点で支払い義務が発生することになり、契約時や決済のタイミングで支払うケースが多いです。
地域や不動産会社によって「契約時に半額、決済時に半額」や「決済時に全額」というように支払いタイミングが変わり、媒介契約書に明記されることになります。
そのため支払いタイミングは事前に知ることができますが、契約時に支払う場合は住宅ローンに仲介手数料を組み込むことができませんので注意点といえます。
不動産売買の仲介手数料は国土交通省によって上限が設定されていますが、計算式がありますので不動産会社と媒介契約を締結する前に調べることが可能です。
また売却価格が一定以下の空き家や空き地については特例が設けられていることから、空き家の所有者にとっては注意点といえます。
この章では仲介手数料の上限額を計算する方法について解説します。
仲介手数料の上限額は売買代金によって計算式が異なり、「200万円以下」「200万円超400万円以下」「400万円超」の3段階で次のようになります。
たとえば100万円の不動産を取引する場合、税抜きで5万円が仲介手数料の上限となり、500万円の場合は200万円×5%+ 200万円×4%+ 100万円×3%=21万円です。
このように価格帯を超える部分に応じた計算式を使って算出することになりますが、間違えやすいため次のような速算式がよく使われます。
上記の速算式を使うと売買代金500万円の場合は500万円×3%+ 6万円=21万円と簡単に計算できるようになります。
不動産会社は特別な事情がない限り仲介手数料の上限額で請求しますが、売買代金によって変動するため、安価な不動産の取引は赤字になる可能性があります。
物価や人件費高騰の影響を受けることで儲けが少ない不動産の売却を断られるケースも増えており、特に山奥や郊外にある空き家や空き地は査定すらしてくれないこともあります。
このような状況に対応するため国土交通省は売買・交換特例に係る低廉な空家等の取引については特例を設けており、800万円以下の空き家、空き地の売買では30万円+消費税が上限となっています。
そのため800万円以下の空き家や空き地を取引する際には注意が必要です。
【参考サイト:空き家等に係る媒介報酬規制の見直し】
売主と買主が知り合いだったり親族の場合は不動産会社に仲介を依頼せず取引するケースがあり、個人間売買と呼ばれています。
この方法は当事者間で話し合いをして取引をするため、契約書や重要事項説明書、告知書などを作成せずに取引完了するケースも少なくありません。
売主と買主は仲介手数料をコストカットできるというメリットがある一方、思わぬトラブルが起きたり司法書士や土地家屋調査士などの手配を全て当事者が行うことになるというデメリットもあります。
場合によっては仲介手数料以上の費用負担が発生することもありますので、個人間売買はなるべく避け不動産会社に依頼することをおすすめします。
不動産売買は不動産会社に仲介を依頼し、契約の成功報酬として仲介手数料を支払うのが一般的です。
仲介手数料を支払うサービスとして、売主は売却する不動産の査定や物件の公開、価格の交渉対応があり、買主は物件の紹介や内覧の準備、住宅ローンの斡旋があります。
また仲介手数料は円滑に契約を締結し所有権移転登記をするための必要経費として考える必要がありますが、仲介手数料の計算式は国土交通省から公開されているため事前にチェックすることができます。
そのため不動産取引をする際にはどのくらい仲介手数料がかかるのかを調べておき、売買にかかる費用を正しく把握することがポイントです。
空家ベース編集部です。空家と書いて「ソライエ」と読みます。Twitter・Instagram・公式LINEなどでも物件情報を随時配信しています。空き家を買って再生したい方、他では売れないと言われてしまった空き家をご所有の方はぜひご相談ください!
不動産を売却したり購入する際には不動産会社に仲介を依頼し、円滑に取引できるようサポートしてもらうのが一般的です。
仲介手数料はこうしたサポートに対する報酬として支払う費用となっていますが、いくら支払う必要があるのか事前に知っておくことも重要といえます。
売買代金によっては通常の仲介手数料よりも高くなるケースもありますので、売買をする前に不動産会社から説明を受けておくことをおすすめします。
この記事では不動産売買でかかる手数料について、解説します。
仲介手数料は一律ではなく売買代金によって変動することから、どのくらいの額になるのか事前にイメージしておくことが大切です。
この章では不動産売買でかかる仲介手数表をおおまかな価格帯で分けて表にしていますので、参考にしてください。
売買代金が50万円から400万円の取引では、次のようになります。
200万円までは同じ計算式で計算することができ、200万円を超えると計算式が変わる点がポイントです。
売買代金が450万円から800万円の取引では、次のようになります。
400万円を超えると計算式が変わりますが、この金額ライン以降は「売買代金×3%+ 6万円+消費税」の計算式で計算できます。
ただし売買する不動産が一定条件を満たす800万円以下の空き家もしくは空き地の場合は後述する「低廉な空家等の媒介特例」が適用されますので、注意が必要です。
売買代金が850万円から1200万円の取引では、次のようになります。
売買代金が1300万円から2000万円の取引では、次のようになります。
不動産を売却したり購入する際にかかる仲介手数料は売買価格に応じた計算式が用意されているため、自分で計算して事前に確認することも可能です。
仲介手数料の計算は一定の金額ラインを超える度に売買代金を分割して計算しなければならないことから、慣れない人が計算すると間違えることも多いです。
そのため速算式も用意されていますので、正規の計算式と速算式の両方を知っておくことがポイントです。
ただし一定条件を満たす800万円の空き家、空き地については別の上限額が設定されているため、注意が必要といえます。
この章では仲介手数料の計算方法について解説しますので、これから不動産売買を検討している人は参考にしてください。
仲介手数料の上限額は売買代金によって計算式が異なり、「200万円以下」「200万円超400万円以下」「400万円超」の3段階で次のようになります。
たとえば100万円の不動産を取引する場合、税抜きで5万円が仲介手数料の上限となり、1000万円の場合は200万円×5%+ 200万円×4%+ 600万円×3%=36万円です。
このように価格帯を超える部分に応じた計算方法を使って算出することができますが、200万円を超える場合は売買代金を分割して計算するため間違えやすいことから、次のような速算式がよく使われます。
売買代金が400万円超の場合は18万円(200万円×5%+200万円×4%)が必ず含まれていることから上記の速算式が利用でき、売買代金1,000万円の場合は1,000万円×3%+ 6万円=36万円と簡単に計算できるようになります。
この速算式は不動産会社も利用している代表的な計算方法となっており、売買を検討している不動産の仲介手数料を事前に計算するのに便利です。
仲介手数料は国土交通省によって上限が設定されていますが、上限額で請求しなければならないというルールはありません。
しかし仲介手数料は不動産業者にとって主な収入源となっているため上限額で請求するのが一般的となっており、理由もなく仲介手数料の値引きに応じる不動産会社はほとんどいないと考えておく必要があります。
中には最初から仲介手数料が上限額よりも安い不動産会社もありますが稀なケースであるため、不動産取引にかかる費用を見積もる際には手数料を上限額で想定しておくことをおすすめします。
ただし売主が宅建業者であったり仲介している不動産会社が売主と代理契約を締結している場合、買主に限り仲介手数料が値引きされることもあります。
このような特例は取引態様が「売主」や「代理」となっているケースで適用されますので、不動産を購入する際には物件情報の取引態様をチェックすることがポイントです。
山奥や郊外にある不動産を売買する場合は売買金額が相場よりも低くなる傾向があり、その結果仲介手数料も安くなってしまいます。
不動産仲介業者は仲介手数料が主な収入源となっていますので、販売金額によっては消極的な対応をする会社もあります。
しかし不動産の売却は不動産会社の販売力に依存する部分が多いことから、不動産会社が赤字にならないよう価格が安い物件の取引については通常の計算式とは別に上限額を設定する必要がありました。
そこで国土交通省は売買・交換特例に係る低廉な空家等の取引については特例を設け、これにより800万円以下の空き家、空き地の売買では30万円+消費税が上限となっています。
このことからも、800万円以下の空き家や空き地を取引する際には注意が必要です。
【参考サイト:空き家等に係る媒介報酬規制の見直し】
不動産売買をする際には仲介手数料を支払う前提で資金計画を組む必要がありますが、不動産会社に仲介を依頼するメリットや支払うタイミングを知っておくことで円滑な売買が可能となります。
売主と買主が直接売買する個人間売買でも取引は可能ですが、その場合は契約書類の作成から司法書士の手配など全て当事者で行うことになり、非常に手間がかかります。
また法令を遵守していない手続きをした場合には後から大きなトラブルになったり損失が発生することもありますので、個人間売買ではなく不動産会社に仲介を依頼することがおすすめです。
この章では仲介のメリットと支払いタイミングについて解説しますので、参考にしてください。
仲介は売主と買主のどちらにもメリットがありますが、それぞれ不動産会社から受けるサービスの内容が異なります。
売主が不動産売却をする際には不動産会社に査定を依頼し、売却価格と依頼する不動産会社を決めます。
査定額はエリアの成約価格をベースにして算出していることから、売主は査定を通じて相場を知ることができます。
物件価格が決まれば不動産会社が物件を紙媒体やインターネットを通じて公開し買主を募集してくれますので、売主は基本的に反響を待つだけで問題ありません。
このように売主は不動産会社に仲介を依頼することで最適な価格で販売することができ、手間をかけることなく物件を売却することができます。
一方、買主は不動産会社が公開した物件をチェックし購入を検討するようになりますが、物件の詳細確認や内覧をするためには不動産会社のサポートが不可欠です。
さらに売主と買主の条件が整えば契約書類に署名捺印し代金の支払いと所有権移転を行うことになりますが、書類の作成と決済の段取り、住宅ローンの進捗確認、司法書士の日程調整は全て不動産会社が実施してくれます。
仲介手数料はこのような不動産会社の仲介業務に対して支払われる成功報酬となっており、専門知識がない売主と買主がスムーズに不動産取引を完了させるために必要なサポートといえます。
仲介手数料の支払いタイミングは不動産会社と締結した媒介契約書に記載されており、「売買契約時に全額支払い」や「売買契約時に半額、不動産決済時に残額支払い」、「不動産決済時に全額支払い」などいくつかパターンがあります。
不動産会社のルールや地域によって変わりますので、事前に確認しておくことをおすすめします。
なお、契約締結後に契約が解除になった場合は仲介手数料の支払い義務が発生するケースと発生しないケースがあります。
支払いが必要なケースは契約締結時に不動産会社から説明を受けますので、不明点がないよう正しく理解することが大切です。
仲介業務は「事業者が事業として対価を得て行うサービス」であるため課税対象となり、消費税がかかります。
土地や戸建て、マンションの販売価格には消費税がかからないため混同しやすいことから、注意が必要です。
これ以外にも登記費用や測量費、解体費、水道メーター負担金なども消費税がかかります。
安心かつ安全な不動産取引をするのであれば専門知識を有する不動産のプロが仲介する必要があり、不動産会社は仲介手数料の支払いを受ける代わりに売主と買主の円滑な不動産取引を実現しています。
そのため仲介手数料は支払う前提で考えておくべきですが、仲介手数料の上限額は売買代金さえ決まれば事前に計算することができるため、資金計画に組み込むことができます。
支払いタイミングや契約後の支払い義務発生については不動産会社から説明を受けられますので、取引をする前に相談しておくことがおすすめです。
空家ベース編集部です。空家と書いて「ソライエ」と読みます。Twitter・Instagram・公式LINEなどでも物件情報を随時配信しています。空き家を買って再生したい方、他では売れないと言われてしまった空き家をご所有の方はぜひご相談ください!
不動産売買をする際には売主と買主は不動産会社へ仲介手数料を支払う必要がありますが、仲介手数料は売買金額によって異なるため注意が必要です。
仲介手数料は国土交通省によって上限額が設定されている上に計算方法も公開されていることから、事前にいくらかかるのか自分で計算しておくことも大切です。
個人間売買によって仲介手数料が無料となるケースもありますが、不動産業者の仲介業務は安全な売買を実現する上で重要な役割を担っていますので、仲介手数料は必ず発生する初期費用として考えておくことをおすすめします。
この記事では不動産売買の仲介手数料相場と計算方法、注意点について解説します。
不動産売買は賃貸よりも取引金額が大きく、不動産の売却と購入を安全に完了させるためには法律と売買の条件を遵守した手続きが不可欠です。
しかし専門知識を持っていない売主と買主だけではリスク回避や取引の進め方が分からず、その結果大きな損失に繋がることも少なくありません。
そこで宅地建物取引業法では宅建業者が売主と買主が円滑に取引できるようサポートし、契約の成功報酬として仲介手数料を請求することが定められています。
不動産会社の具体的なサポートとして査定額と売却プランの提案、物件の公開、買主の問い合わせや値引き交渉の対応、住宅ローンの斡旋、売買契約書類の作成、士業の日程調整があります。
つまり、不動産会社に仲介手数料を支払うことで不動産取引に必要な作業を一任することができるといえ、不動産取引において重要なサポートだといえます。
不動産売買の仲介手数料は国土交通省で上限額が設定されており、計算式も公開されていますので事前に費用をチェックすることができますが、一定条件を満たす物件については特例の上限額が設定されています。
この章では仲介手数料の計算方法を紹介しますので、正しく仲介手数料を計算するためにもチェックしてください。
国土交通省が定める仲介手数料の上限額は次の計算式で算出することが可能です。
たとえば売買代金2,000万円の中古一戸建てを売買した場合、2,000万円×3%+ 6万円=66万円が税抜き価格となります。
ただし新築の戸建てや新築マンションには売買代金に消費税が含まれてますので、仲介手数料を計算する際には税抜き価格に割り戻して算出する必要があります。
この場合は物件資料に記載されている売買代金で計算した仲介手数料よりも安くなることがポイントです。
売買する不動産の種類と売買代金によって仲介手数料は変動しますので、正しく計算することが資金計画で失敗しないコツといえます。
不動産会社にとっては仲介手数料は重要な収入源ですが売買代金によって請求できる金額が大きく変わるため、金額が安い物件を売買してしまうと赤字になることがあります。
このような問題を解決するために国土交通省は売買・交換特例に係る低廉な空家等の取引については特例を設けており、この特例によって物件価格が800万円以下の空き家、空き地の売買では30万円+消費税が上限となりました。
そのため800万円以下の空き家や空き地を取引する際には通常の計算方法とは別の上限額が設定されることになり、売主と買主にとっては大きな注意点といえます。
【参考:空き家等に係る媒介報酬規制の見直し】
ほとんどの不動産会社は仲介手数料の上限額で請求しており、特別な事情がなければ値引きすることはありません。
そのため不動産売買の予算を検討する際には必ず仲介手数料の上限額で組み込むことがポイントです。
おおまかな売買代金と仲介手数料を知りたい人は、「不動産仲介手数料 早見表」の記事をチェックしてください。
不動産売買では仲介手数料以外にも「印紙税」や「登録免許税」、「司法書士への報酬」、「譲渡所得税」がかかります。
この章ではそれぞれの諸費用について、詳しく解説します。
印紙税とは契約書類に貼付する印紙代のことで、仲介手数料と同様に売買価格に応じて次のように課税額が変わります。
印紙はコンビニやショッピングモールでも購入可能ですが1,000円を超える印紙は郵便局や法務局でなければ取り扱っていないため、注意が必要です。
売買価格 | 印紙代 |
---|---|
10万円を超え50万円以下 | 200円 |
50万円を超え100万円以下 | 500円 |
100万円を超え500万円以下 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 10,000円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 30,000円 |
1億円を超え5億円以下 | 60,000円 |
5億円を超え10億円以下 | 160,000円 |
10億円を超え50億円以下 | 320,000円 |
50億円を超える | 480,000円 |
なお、印紙は契約書の原本に貼付するのがルールとなっており、不動産を手放す売主は契約書の原本ではなくコピーを保管するのであれば印紙は不要です。
不動産の所有権移転や抵当権の設定、新築マンションや新築戸建てを法務局に登記する場合には登録免許税がかかり、後述する司法書士への報酬と合わせて支払うのが一般的です。
居住用財産の登記については次のような軽減税率が設定されています。
〈土地〉
所有権移転登記:固定資産税評価額×1.5%(令和8年3月31日まで)
〈建物〉
所有権保存登記:固定資産税評価額×0.15%(令和9年3月31日まで)
〈抵当権〉
抵当権設定登記:債権額×0.1%(令和9年3月31日まで)
(参考:No.7191 登録免許税の税額表|国税庁)
司法書士に登記を依頼する場合は報酬が発生し、登録免許税と合わせて「登記費用」という名目で資金計画に組み込まれます。
地域によって報酬額は変動しますが、1万円〜10万円前後であることが多いようです。
不動産売却において売主が売却することで利益が発生した場合、利益を課税額とした税金が発生します。
譲渡所得税と呼ばれるこの税金は、以下の計算方法で課税額を計算することができます。
たとえば3,000万円で購入した不動産を4,000万円で売却した場合、売却時と購入時の諸費用が共に150万円とすると700万円が譲渡所得課税額です。
この課税額に税率を掛け合わせることで譲渡所得税を計算することができますが、税率は税率は所有期間によって次のように変動します。
課税額700万円のケースでは、5年以内に売却すると譲渡所得税は約277万円となり、6年目以降であれば約142万円です。
このことからも、不動産を売却する際には売却価格だけでなく取得期間も注意する必要があるといえます。
なお、売却する物件がマイホームの場合は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を利用することができ、利用することで課税額から3,000万円を控除して譲渡所得税を計算することができます。
このように特定条件を満たすことで節税する方法がありますので、利用できる特例がないか不動産会社に相談しておくことも大切です。
【参考サイト:No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁】
不動産を売却したり購入する際には不動産会社に仲介手数料を支払いサポートしてもらうケースが一般的であり、安全に不動産取引を完了するためにも必要な諸費用として考えておく必要があります。
仲介手数料の上限額については計算式が公開されているため、事前に計算しておくことも可能です。
また仲介手数料以外にも不動産売買では費用が発生しますので、不動産会社に諸費用の総額を計算してもらうことも重要です。
空家ベース編集部です。空家と書いて「ソライエ」と読みます。Twitter・Instagram・公式LINEなどでも物件情報を随時配信しています。空き家を買って再生したい方、他では売れないと言われてしまった空き家をご所有の方はぜひご相談ください!
不動産会社を通じて物件を売却したり購入した場合、仲介手数料の支払い義務が発生しますが仲介手数料の意味や計算方法を知らない人は意外と多いです。
売主は不動産業者に売却を依頼するタイミングで、買主は売買契約のタイミングで仲介手数料についての説明を受けることになります。
賃貸物件を借りる際にも仲介手数料を支払うケースもあることから「そんなものか」と深く考えず提示された媒介契約に署名押印してしまう人も多いですが、支払う理由を理解した上でサインすることをおすすめします。
この記事では不動産取引における仲介手数料の意味や仕組み、計算方法について解説します。
節約する方法とリスクについても紹介しますので、これから不動産売買を行う予定がある人は参考にしてください。
不動産会社を通じて不動産の取引をするのであれば仲介手数料を支払うケースがほとんどですが、国土交通省によって上限額が決められており、法外な金額を請求されることはありません。
そのため何も気にすることなく支払う売主や買主も多いですが、手数料を支払うことの意味を理解することでより納得のいく不動産売買になります。
この章では不動産会社における仲介手数料の意味と仕組みについて、解説します。
不動産における「仲介」とは売主と買主が売買契約を締結できるよう情報を提供したり物件を案内する業務のことで、仲介手数料は売買が成立したことへの報酬です。
宅地建物取引業では仲介業務における報酬は原則「成功報酬」のみとなっており、査定や売却の相談をしただけでは支払う必要はありません。
不動産仲介業はただ物件を紹介し契約するだけでなく、安全に取引できるよう住宅ローンの審査や解体、測量のスケジュール調整、決済日の設定など多岐にわたります。
これら全てを売主と買主だけで契約を遂行することは難しくトラブルも起きやすいことから、不動産会社が仲介することで安心して取引ができるといえるでしょう。
仲介手数料は売主と買主が契約できるよう媒介することに対しての報酬となり、どちらも国土交通省が定める規定によって算出されます。
賃貸物件のように貸主と借主からもらう手数料の合計に対して上限が設けられているわけではなく、売主と買主は別々に媒介契約を締結するためそれぞれ個別に支払うことになります。
そのため契約によっては売主と買主が支払う仲介手数料が異なる可能性もあり、手数料額についてはあらかじめ不動産会社に確認しておくことをおすすめします。
不動産仲介手数料は売買価格によって金額が変わることから、購入検討時には物件価格をベースに計算することでおおよその仲介手数料を把握することができます。
この章では仲介手数料の基本的な計算方法と速算で算出できる方法について、具体例を交えて説明します。
想定される売買金額に対する仲介手数料を表でまとめてますので、参考にしてください。
法律で定められている仲介手数料の上限額は売買金額によって計算式が異なり、基本計算式は次のようになります。
たとえば物件価格が100万円の場合、100万円×5%=5万円が仲介手数料の税抜価格です。
1,000万の不動産を取引した場合は3段階に分けて計算することになり、200万円以下の部分で10万円、200万円~400万円の部分で8万円、400万円以上の部分で18万円となり税抜価格の合計36万円となります。
このように売買金額が200万円、400万円を超えるかどうかで計算に使用する基本計算式が異なることが分かります。
なお、新築戸建や新築マンションを売買する場合は建物部分に消費税が含まれているため除外して計算する必要があります。
なぜなら仲介手数料は非課税業者でない限り課税対象の費用となっていることから、売買金額に含まれている消費税を抜かなければ二重課税となってしまうからです。
消費税が売買代金に含まれている場合の売買契約書には税抜きの建物と土地、消費税の内訳が記載されていますので、税抜きの建物と土地の価格を足した額を使って仲介手数料を計算することになります。
つまり新築物件の場合は内覧時に想定している仲介手数料よりも少し安くなることが分かり、資金計画を立てる上での重要なポイントといえるでしょう。
【参考サイト:消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ – 国土交通省】
基本計算式を用いた仲介手数料の計算は1,000万円を超えた時点で3段階となりますが、実際には200万円と200~400万円の手数料合計は18万円と決まっているため、売買代金から1,000万円を差し引いた部分のみを計算し18万円を足せば計算できることになります。
そのため仲介手数料の上限額は次のような速算式によって計算することができるため、この計算方法を覚えておくことをおすすめします。
たとえば物件価格2,000万円の税抜き仲介手数料を基本計算式と速算式で計算した場合、次のような違いがあります。
基本計算式:200万円×5%+200万円×4%+1600万円×3%=66万円
速算式:2,000万円×3%+6万円=66万円
不動産会社も間違いをなくすために速算式を用いて計算しています。
売買価格が5,000万円までの仲介手数料をまとめましたので、参考にしてください。
売買価格 | 税抜き仲介手数料 |
---|---|
800万円以下 | 30万円 |
1,000万円 | 36万円 |
1,500万円 | 51万円 |
2,000万円 | 66万円 |
2,500万円 | 81万円 |
3,000万円 | 96万円 |
3,500万円 | 111万円 |
4,000万円 | 126万円 |
4,500万円 | 141万円 |
5,000万円 | 156万円 |
仲介手数料には宅建業者に対して特例措置が設けられており、低廉な空き家や空き地を媒介する場合の仲介手数料は前述した計算式とは別の算出方法を使うことが認められています。
2017年12月8日に仲介手数料の上限額は一度見直しされており、物件価格が400万円以下の場合は売主から最大18万円受け取ることができるという特例措置が設けられました。
2024年7月1日より「低廉な空家等の媒介特例」がさらに追加され、800万円以下の空き家もしくは空き地を媒介する場合は税抜30万円を上限額にすることができます。
こうした特例が設置された理由の一つとして人件費や燃料費の高騰があります。売却価格が低いと物件の場所によっては不動産会社が赤字になってしまうからです。その結果低廉な空き家などは売却を断られることになってしまいます。
日本では空き家の増加が社会問題になっています。管理されていない空き家や空き地が増加してしまうと火災や倒壊、害虫・害獣の発生、さらには犯罪組織に使われるリスクを抱えることになるため、不動産会社が積極的に販売活動できるよう報酬額を見直す必要がありました。
「低廉な空家等の媒介特例」はこうした背景から設けられましたがあくまでも特例の上限額となっているため、不動産会社は媒介契約の締結時にあらかじめ特例の報酬額について依頼者に対して説明し合意を得ることが義務付けられています。
そのため不動産の売買をする際には媒介契約書の内容を十分に理解し、気になる点は不動産会社に確認しましょう。
【引用サイト:空き家等に係る媒介報酬規制の見直し】
物件が高額になると仲介手数料も高額になり、場合によっては仲介手数料が予算を圧迫してしまうケースもあります。
そのため仲介手数料を値引きできないか交渉し、少しでも余裕がある資金計画にできないか検討することもポイントです。
この章では仲介手数料を節約するための方法について、解説します。
仲介手数料は不動産会社の主な収入源となるため、原則値引きはできません。
しかし不動産の販売状況や不動産会社の事情によっては値引きできるケースもあり、たとえば販売が長期化している物件の購入交渉や不動産会社の決算月に入金できるケースが挙げられます。
このような特殊な状況や事情を活かして交渉した場合には、仲介手数料の交渉が成功することもあります。
その一方で仲介手数料の値引き交渉はリスクを伴うことも知っておく必要があり、おすすめはできません。不動産会社からすると、値引きされるより正規の手数料で契約してもらった方が当然利益は多くなりますから、他の買い手がいる場合はそちらが優先される可能性が高くなります。また、交渉にかかる時間や労力も重要なコストです。
仲介手数料の値引き交渉をする際には値引きが必要な理由を丁寧に説明し、お互いに気持ちの良い取引ができるよう注意することがポイントです。
仲介手数料は宅建業者である不動産会社が法外な価格を請求しないよう上限額が設定されていますが、特別な事情がなければ上限額のまま請求されることになります。
不動産会社は仲介手数料以外で原則収益を得ることはできず、査定料は相談料だけでなく売却に使用した広告料についても請求することはできません。
そのため上限額がある=価格交渉していいというわけではないことを知っておきましょう。
片手仲介とは売主もしくは買主のどちらか片方のみに仲介手数料を請求できるケースのことで、両手仲介は買主と売主のどちらにも請求が可能です。
売主に販売を依頼された不動産会社が買主を見つけた場合は両手仲介となり、他社が買主を紹介してくれた場合には売主にのみ仲介手数料を請求することになります。
そのため他社が販売している物件に買主を紹介した不動産会社は必ず片手仲介となり、両手仲介は売主側の不動産会社にしかできません。
つまり売主側の業者に直接問い合わせして物件を紹介してもらい契約を締結した場合は不動産会社の利益は倍になっていることが分かり、状況によっては多少の値引き交渉を受けられる可能性はあるといえるでしょう。
一方、片手仲介は通常通りの利益となることから値引き交渉は難しく、強引に依頼すると仲介を断られることもあるため注意が必要です。
仲介手数料は購入申込書を提出したタイミングではなく、関東では契約時と引渡し時に支払うことになります。ただし東海や関西、九州地方では決済時に一括で支払うのが慣例になっており、支払いタイミングについてはあらかじめ確認しておきましょう。
この章では仲介手数料の支払い時期と注意点について、解説します。
不動産売買は契約が締結されたタイミングで成立したとみなされるため仲介手数料が発生し、関東では契約時に50%、不動産決済時に50%支払うことになります。
そのため仲介手数料の半分は契約時に用意しておくことになり、自己資金から資金を使うことになるという点に注意が必要です。
また契約後に解約となっても残りの50%は支払う義務があり、媒介契約によって締結された報酬額を満額支払うことになります。
地方によっては不動産決済時に一括で支払うことになるため、住宅ローンを使って対応することもできます。
手数料を分割して支払うことは原則できず、媒介契約時に定められたタイミングで支払うことになります。
また仲介手数料の分割支払いは宅建業法47条で禁止されている「信用の供与」に該当する可能性があり、「手数料を分割でいいから契約して欲しい」という依頼をすることは手数料を貸付したことと同義になるため違反行為に当たる可能性があります(筆者が宅建協会へ確認し得た回答)。
このような理由から宅建業者が仲介手数料の分割に応じる可能性は極めて低いといえるでしょう。
不動産を購入する際には仲介手数料以外にかかる諸費用があるため、事前にチェックしておくことをおすすめします。
この章で詳しく解説します。
不動産を購入した場合には所有権移転登記を行うことになりますが、その際には登録免許税と呼ばれる税金が発生することになり、一般的には買主が負担します。
登録免許税は購入する不動産の評価額に対して税率0.2%を掛け合わせることで税額を算出することができますが、令和8年3月31日までの取引であれば税率を0.15%に軽減できるという特例があります。
また不動産を売却する売主も譲渡所得税という税金が発生する可能性があり、次の計算式でプラスになった額が譲渡所得課税額です。
上記計算によって算出された課税額に対して税率を掛けることで税額を計算することができますが、税率は所有期間によって次のように変わります。
たとえば課税額3,000万円の場合だと、5年以内に売却すると譲渡所得税は約1,188万円となり、6年目以降であれば約610万円です。
なお、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」を利用した場合は課税額から3,000万円を控除して譲渡所得税を計算することが可能となり、免税にできるケースも少なくありません。
こうした特例はいくつか公開されていますので、利用できる特例をチェックしましょう。
【引用サイト:No.7191 登録免許税の税額表|国税庁】
【引用サイト:No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁】
住宅ローンが残っている不動産を売却する場合は所有権移転登記時期までに住宅ローンを完済して抵当権を抹消し、買主に移転する所有権が阻害されない状態にしなければなりません。
実際には買主から支払われた代金を使って抹消するケースが多いため抵当権抹消と所有権移転を同時に実行することが多いですが、住宅ローンを一括返済するためには金融機関によって数万円かかることがあり、抵当権抹消には1,000円/本必要です。
そのため事前に金融機関へ売却することを伝え、一括返済にかかる費用を確認しておくことをおすすめします。
前述した諸費用以外にもかかる税金として印紙税があり、売買契約書に印紙を貼付し消印することで納税となります。
印紙税は売買金額に応じて次のように変更し、売買金額が高額になると印紙税も高額になります。
ただし印紙税は売買契約書の原本を保有する人が支払うことになるため、契約書の原本を使う場面のない売主は原本のコピーを補完することによって免税にすることができます。
売買価格 | 印紙代 |
---|---|
10万円を超え50万円以下 | 200円 |
50万円を超え100万円以下 | 500円 |
100万円を超え500万円以下 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 10,000円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 30,000円 |
1億円を超え5億円以下 | 60,000円 |
5億円を超え10億円以下 | 160,000円 |
10億円を超え50億円以下 | 320,000円 |
50億円を超える | 480,000円 |
仲介手数料は限度額で請求するのが原則ですが、仲介手数料を値引いた額で対応することをアピールしている不動産会社もいます。
この章では手数料が安い不動産会社の特徴と値引きできる理由、選ぶ際のリスクについて解説します。
仲介手数料は不動産会社にとって大きな収入源であるため一般的には値引きをすることはありませんが、売主側の媒介物件が多い会社は両手仲介になるため買主側の手数料をあらかじめ値引きし反響数を増やす戦略を採用するケースはあります。
また新築住宅を専門に取り扱っている不動産会社は新築住宅の建築会社から手数料をもらえるため両手仲介と同じような状態で取引できることから、仲介手数料の価格交渉に応じるケースもあるでしょう。
このように不動産会社が利益を担保できる後ろ盾があれば安全な取引が可能といえますが、そうではなく目先の利益を優先して手数料の値引きに応じる会社には注意が必要です。
仲介手数料を値引きしてしまうと当然その分多く契約しなければ利益を担保することができなくなるため、薄利多売のような状態になってしまいます。
さらに不動産仲介業はサービス業であるため手数料を値引きしたという情報は知れ渡ることが多く、一度値引きしてしまうと継続して対応することにもなりかねません。
その場合少なくなった利益に対して変わらない人件費や燃料費を投下することになるのでサービスが劣化することも考えられます。
つまり、中長期的な観点から値引きサービスを実施していない限り仲介手数料の値引きに応じる会社はサービスが悪い可能性があるといえ、コストとリスクのバランスを見極める必要があるといえるでしょう。
仲介手数料が安いと当然従業員への給料も安くなり、その結果サービスは悪くなります。
これはどの産業にも共通する労働と対価の常識となっており、仲介手数料を値引きさせた状態で最高のサービスは期待できないと考えるべきでしょう。
不動産の売買は一生に一度のケースがほとんどであるため、安全に取引を完了させることを優先することをおすすめします。
この章では不動産仲介手数料に関するよくある質問をまとめました。
仲介によって不動産を売買するのであれば、仲介手数料は原則支払う必要があります。
売主が宅建業者で自らも販売している場合は直接連絡し取引することで仲介手数料を無料にすることは可能ですが、多くの建築会社は販売を仲介業者に依頼しています。
そのため仲介手数料は必ず支払う費用だと考えて資金計画するのが安全だといえるでしょう。
仲介手数料が無料や割引されている物件を見つけた場合、理由を確認しましょう。
売主が販売店と代理契約を締結しており売主側からのみ仲介手数料をもらう販売形態やすぐにでも売りたい物件のため手数料を割引しているのであれば、安全に取引することができます。
一方、特に理由がなく手数料が値引きされている場合はサービスが悪い可能性があるため、注意が必要です。
空家ベース編集部です。空家と書いて「ソライエ」と読みます。Twitter・Instagram・公式LINEなどでも物件情報を随時配信しています。空き家を買って再生したい方、他では売れないと言われてしまった空き家をご所有の方はぜひご相談ください!