コラム

長年放置していた古民家を手放そうと考えたとき、「本当に売れるのか」「修繕しないと買い手がつかないのでは」と不安を感じる方が多くいます。築年数が古く、雨漏りや傾きといった劣化が見られる建物は、一般の住宅と比べて需要が限られ、売却に苦戦するケースが多いのが現実です。

しかし、古民家だからこその魅力や価値に注目する買主も増えており、ポイントを押さえた売却方法を選べば、現状のままでもスムーズに売却できるケースもあります。費用や手間を最小限に抑えつつ、納得のいく条件で売却を進めるためには、物件の特性や市場の動向を踏まえた適切な対策が不可欠です。
この記事では、古民家が売れにくいとされる理由や事前に確認すべき項目、売却にかかる費用や税金、そして高く、早く売るための現実的な選択肢を解説します。

この記事でわかること

空家ベースは、空き家や古民家の売却を支援する全国対応のポータルサイトです。再建築不可や老朽化の進んだ物件でも無料で掲載でき、買い手とのマッチングをサポートします。未公開物件の配信も行っているため、まずは公式LINEからチェックしてみてください。

古民家が売れにくいと言われる理由

古民家には独特の風情や趣、そして地域ごとの文化や歴史が宿っており、一部の層からは根強い人気を集めています。しかし、不動産市場においては「売れにくい物件」と見なされることが多いです。特に築年数の古い建物は、現代の住宅性能や生活スタイルに適合していないことが多く、買主にとってはリフォーム費用や維持管理の負担が大きくなります。

加えて、立地が郊外や山間部に集中していたり、再建築不可といった法的制約を抱えていたりする物件も多く、市場評価が上がりにくい傾向にあります。売却を検討する際には、こうした特性と向き合い、適切な準備や戦略を立てることが欠かせません。
以下では、古民家が売れにくいとされる背景や、その対策を考えるための視点を整理して解説します。

古民家の定義と築年数の目安

「古民家」とは明確に法で定義されているわけではありませんが、一般的には築50年以上が経過した木造住宅を指すことが多く、築100年を超える例も見られます。太い梁や大黒柱、土壁、囲炉裏といった日本伝統の建築様式を備えた建物が多く、こうした構造は「文化的価値」や「情緒的な魅力」として評価される一方、現代住宅とは異なる基準で建てられているため、居住用としての再利用には一定のハードルがあります。

とくに耐震性の基準が見直された1981年(昭和56年)以前に建てられた古民家は、構造的に脆弱なケースが多く、売却時には住宅診断(インスペクション)などで指摘されやすいポイントとなります。床の傾きや柱の劣化、雨漏りなどの症状があれば、買主が敬遠する原因になるため、こうした点を事前に把握しておくことが重要です。
【参考:住宅・建築物の耐震化について – 国土交通省

なぜ古民家は売れにくいのか

古民家が売れにくい主な理由には、以下のような課題があります。

たとえば、築70年を超える古民家で雨漏りや白アリ被害が進行している場合、買主側のリフォーム見積もりが300万円~500万円以上に上るケースもあります。このように、物件取得後に多額の改修費がかかる可能性があると判断されると、購入に踏み切れない買主が増え、売却期間が長期化する傾向にあります。
さらに、現代の家族構成やライフスタイルに合わない間取り(6畳×8間の続き間)や、バリアフリー対応が難しい構造なども、否定的な評価につながりやすい要素です。

古民家の売却相場と査定のチェックポイント

古民家の売却価格は、土地の価値が基準になることが多く、建物自体には価格がつかない、または解体費用を差し引いて査定される場合もあります。売却相場はエリアによって差が大きく、観光資源のある地域や人気の移住エリアでは高値がつく一方、過疎地域では数十万円台で取引される例もよく見られます。
査定時に確認される主なポイントは次の通りです。

たとえば、道路幅が2メートル未満の接道しかない土地では「再建築不可」と判断されることがあり、建物の老朽化とあわせて市場評価が著しく下がります。また、相続登記がされていない物件は売主が不明確となり、売却手続き自体が停滞するリスクがあります。

こうした点を事前に洗い出し、「現状のまま売る」か「簡易な修繕をして売る」かを判断するには、不動産会社や建築士、司法書士などの専門家への相談が有効です。売主自身で判断しようとせず、複数の専門家に意見を求めることで、自分の状況に合った現実的な売却方法を見つけやすくなります。

売却前に必ず確認したいポイント

古民家をスムーズに売却するためには、売却活動を始める前に物件の状態や法的な条件をしっかりと把握しておくことが欠かせません。築年数が古い建物は、外観からは判断できない不具合やリスクを抱えていることも多く、それらを放置したまま売却を進めると、買主とのトラブルや価格交渉の難航につながる恐れがあります。
ここでは、売却前に必ず確認しておきたい3つの重要なポイントについて解説します。どれも、信頼される売主としての準備に直結する項目です。

耐震診断や劣化調査

築年数が長い古民家では、構造の劣化や耐震性の不足が懸念されることが多いため、専門家による建物診断(インスペクション)を受けておくと、買主に対する大きな安心材料になります。

特に1981年以前に建てられた建物は、現行の新耐震基準に適合していない可能性が高く、売却時に指摘されることも多く見られます。耐震診断の結果によっては、補助金を活用して一部改修することで、物件価値が向上する例もあります。
併せて確認しておきたいのが、屋根・外壁・基礎・柱・床下などの腐食や傾き、雨漏りの有無です。売却後のトラブルを防ぐためにも、事前に不具合を把握し、買主に正しく伝える姿勢が重要です。地方自治体によっては、インスペクション費用の一部を補助する制度が用意されていることもあるため、地域の窓口に相談するのが望ましいです。

【参考:不動産業:既存住宅流通について(建物状況調査(インスペクション)活用に向けて) – 国土交通省

境界線の確定と埋設物のチェック

古い住宅地に建つ物件では、土地の境界があいまいなケースが多く見られます。売却後に隣地との境界トラブルが発生すると、買主との関係が悪化するリスクがあるため、あらかじめ測量士による境界確定測量を行っておくことをおすすめします。
境界線が明確であれば、買主にとっても安心感があり、契約交渉がスムーズに進む可能性が高まります。法務局の地積測量図と現地の状況が一致しているかを確認し、必要に応じて杭の設置や隣地所有者との立ち合いも行いましょう。
また、敷地内に古い浄化槽・井戸・コンクリートガラ・解体後の基礎などの埋設物がある場合も要注意です。これらの撤去には10万円~30万円以上の費用がかかることがあり、売却条件や価格交渉に影響する恐れがあります。再建築を前提とした買主にとっては特に重要な判断材料となるため、現地調査で事前に把握し、説明できるようにしておくことが大切です。

残置物の撤去とクリーニング

古民家の売却を検討する際、多くの方が悩まれるのが家具や生活用品などの残置物の整理です。長年使用していない建物には、タンスや布団、家電、農機具などがそのまま残されていることが多く、片付けにかかる手間や費用が障壁となることがあります。
不動産仲介で売却する場合は、購入希望者の内見時に室内の印象が大きな判断材料になるため、可能な範囲で残置物を撤去し、簡易的なハウスクリーニングを行っておくと、成約率が高まります。費用の目安は、1軒分の片付けで10万~30万円程度が一般的です。
買取専門業者への売却であれば、残置物をそのままにしていても対応している場合がほとんどです。片付けや掃除が不要で、現状のまま売却できるのが大きな強みとなります。

「残置物がどの程度あるか」「処分が必要なものは何か」といった情報は、査定時に伝えられるようまとめておくと、売却手続きがスムーズに進められます。

古民家の売却方法

古民家を売却するには複数の方法がありますが、それぞれに適したケースとそうでないケースがあり、売主の目的や状況に応じて適切な手段を選ぶことが重要です。たとえば、「できるだけ高く売りたい」のか、「手間なく早く処分したい」のか、「地域の活性化につなげたい」のかによって、選択肢は異なってきます。
また、築年数が古く状態が悪い物件は、一般的な流通ルートでは買い手が見つかりにくくなる傾向があり、売却手段そのものが成否を分ける要因となることもあります。

ここでは、古民家を売却する代表的な4つの方法について、それぞれの特徴や注意点を解説します。

不動産仲介で売却する

最も一般的な方法が、不動産会社に売却活動を依頼する「仲介」です。不動産仲介では、売主の代わりに買主を探してくれるため、市場価格に近い金額で売却できる可能性があります。売却額を重視したい方にとっては、有力な選択肢です。
ただし、仲介は買主が現れるまでに時間がかかることが多く、数か月~半年以上かかるケースも少なくありません。また、内見対応・交渉・契約手続きなど、売主側にも一定の手間が発生します。
さらに、築年数が古く状態が悪い物件では、内見時の印象や建物の状態が成約に直結するため、清掃や残置物の撤去、軽微な補修などが必要になる可能性があります。成約時には、仲介手数料(上限:売買価格の3.3%+66,000円/税込)も発生します。
築浅の物件や立地条件の良い古民家、少しでも高く売りたい場合に適した方法です。

空き家バンクに登録する

空き家バンクとは、各自治体が運営する空き家の利活用を目的としたマッチング制度です。地域内の移住希望者や地元企業などと空き家所有者をつなぐ役割を果たしており、登録料は無料または数万円程度で済むため、費用負担が少ない点が特徴です。
特に、地域活性化や定住促進を目的とする自治体では、空き家バンク経由での物件取得に補助金や支援制度を設けているケースもあります。そのため、移住希望者やリノベーション志向の買主にアプローチしやすい点もメリットです。

一方で、空き家バンクへの掲載だけではすぐに買主が見つかるとは限らず、成約までに時間がかかるケースも多いのが実情です。また、掲載にあたっては市町村との協議や調査、写真提出、現地確認などが求められる場合もあり、最低限の対応が必要です。
成約後は地元の不動産会社を通じて契約することが多く、結果として仲介手数料が発生することもあります。

【参考:建設産業・不動産業:空き家・空き地バンク総合情報ページ – 国土交通省

空き家マッチングサービスを利用する

民間が運営する空き家マッチングサービスは、空き家専門のポータルサイトやマッチングプラットフォームを通じて売主と買主をつなぐ仕組みです。近年では、古民家好きや地方移住希望者など、ニッチなニーズを持つ利用者が集まるマッチングサービスも増えており、一般の不動産サイトでは出会いにくい買主層とつながる可能性があります。
代表的なプラットフォームには、「家いちば」や「みんなの0円物件」などがあり、それぞれ特色があります。例えば、家いちばは写真や詳細コメントの自由度が高く、売主の想いも伝えやすいのが特徴です。
ただし、これらのサービスでは掲載作業を自ら行い、買主対応や交渉もある程度自分で進める必要があるため、一定の手間や知識が求められます。掲載料や成功報酬が発生するサービスもあります。
物件の魅力を発信したい方や、相場より高く売るチャンスを探したい方には、有効な手段の一つです。

空き家マッチングのメリット・デメリットは?サイト3選とおすすめの物件購入方法も解説

空き家・古民家に強いプラットフォームを利用する

築年数が古く、再建築不可や大量の残置物があるなど、いわゆる「訳あり」の物件は、一般的な不動産市場では敬遠されがちです。こうした物件の売却を検討する際には、空き家や古民家の取り扱いに特化した専門のプラットフォームを活用することが有効です。

たとえば「空家ベース」は、全国の空き家情報を集約し、売主と買主をつなぐマッチングサービスを提供しています。築年数が古い住宅や再建築不可物件など、通常の仲介では売却が難しい物件にも対応しており、無料で掲載できます。エリアや物件状態に応じて、「現況使用可」から「解体推奨」まで、さまざまな状態の物件を取り扱っています。

このようなサービスを活用する大きな利点は、空き家を活用したい購入希望者に直接アプローチできる点です。「現地に行かずに売却の相談ができる」「残置物の処理や修繕前でも掲載可能」など、売主側の負担が少ない仕組みが整っています。
売却が難しいと思われていた物件でも買い手が見つかる可能性が広がるのは、大きなメリットと言えるでしょう。遠方に住んでいて管理が難しい方、売却を急ぎたい方、古民家の売却方法に悩んでいる方にとって、こうしたプラットフォームは有力な選択肢となります。

古民家売却にかかる費用と税金

古民家を売却する際には、売却益が得られるだけでなく、さまざまな費用や税金が発生します。手取り額を正確に把握するためには、事前に発生する費用を把握しておくことが重要です。
以下では、売却に関わる代表的な費用や税負担、さらに活用できる補助金制度について解説します。

登録費用・印紙税・仲介手数料

古民家売却に伴う一般的な諸費用は以下のとおりです。

項目 内容 費用の目安
登録免許税 所有権移転登記などの登録にかかる税金 固定資産税評価額×2.0%
印紙税 売買契約書に貼付する印紙 契約金額により200円〜10万円
仲介手数料 不動産会社へ支払う報酬 売買価格×3.3%+6.6万円(税込)

不動産会社を通じて仲介で売却する場合、仲介手数料が最も大きなコストになります。反対に、買取業者に直接売却する場合は仲介手数料が不要なため、トータルの負担を軽減できます。

譲渡所得税・住民税

古民家を売却して利益が出た場合、譲渡所得税と住民税が課される場合があります。譲渡所得とは、売却価格から取得費用・売却費用を差し引いた利益のことです。
所有期間によって税率が異なり、長期保有の場合は軽減措置が適用されます。

所有期間 税区分 税率(所得税+住民税)
5年以下 短期譲渡所得 約39.63%
5年超 長期譲渡所得 約20.315%

上記の税率は、所得税、住民税、および復興特別所得税(2037年まで)を合計したもので、内訳は以下の通りです。
・長期(5年超): 15% (所得税) + 5% (住民税) + 復興特別所得税 (15%×2.1%) = 20.315%
・短期(5年以下): 30% (所得税) + 9% (住民税) + 復興特別所得税 (30%×2.1%) = 39.63%
ただし、相続で取得した古民家の場合は「取得費が不明」になるケースが多く、「概算取得費(売却額の5%)」として計算されることがあります。適用可能な特例や控除があるかは、税理士や市区町村の相談窓口で事前に確認しておきましょう。
【参考①:No.3208 長期譲渡所得の税額の計算|国税庁
【参考②:No.3211 短期譲渡所得の税額の計算|国税庁

解体・リフォームでの追加費用

老朽化した古民家では、売却前に建物を解体したり、最低限の修繕を行ったりする必要が生じる場合があります。ただし、これらは必須ではなく、売却方法によって判断が異なります。

項目 費用の目安 備考
建物の解体 100万円〜300万円以上 坪単価3万円前後が目安
リフォーム 50万円〜数百万円 売却価格への上乗せは不確実
ハウスクリーニング 3万円〜10万円程度 仲介売却時の印象改善に有効

再建築不可物件や「古家付き土地」として売却する場合は、解体せずそのまま売る方が費用負担を抑えられるケースもあります。一方で、高値売却を目指すなら最低限の清掃・補修は有効です。

活用できる補助金・助成金の探し方

自治体によっては、空き家や古民家の解体・改修・活用に対する補助制度を用意している場合があります。これらの制度を活用することで、費用負担を大幅に抑えることも可能です。

活用できる制度の例:

補助金制度の有無や内容は自治体によって異なるため、まずは物件所在地の市区町村役場や公式ホームページを確認することが第一歩です。「空き家 補助金 ○○市」などと検索することで、該当制度を見つけやすくなります。

適切な売却価格を設定する

売却価格が相場から大きく乖離していると、買い手が見つかりにくくなり、売却までに時間がかかる可能性があります。特に古民家の場合は、建物の価値が評価されにくく、土地の条件や再建築の可否などが価格に大きく影響します。
価格設定の際は、以下の点を確認しましょう。

不動産会社や買取業者に複数査定を依頼することで、相場感を把握しやすくなります。高すぎず、安すぎず、適正と感じられる価格帯で価格を設定することが、成約への近道です。

写真撮影と広告戦略

仲介での売却を希望する場合、写真は物件の印象を大きく左右します。古民家特有の風合いや梁、縁側、庭の景観など、魅力的なポイントを丁寧に撮影することで、物件の価値を伝えやすくなります。

加えて、不動産ポータルサイト、空き家専門のプラットフォーム、SNSなど、複数の媒体で情報発信することで、より多くの購入希望者にアプローチできます。

契約不適合責任のリスク管理

売却後に「説明されていなかった不具合があった」などとトラブルになると、売主が契約不適合責任を問われる可能性があります。特に古民家では、売主自身が建物の状態を正確に把握していないこともあり、慎重な対応が求められます。
以下の対応が有効とされています。

少しでも不安がある場合は、司法書士や宅建士など専門家のアドバイスを受けると安心です。事前の情報開示と書面による確認が、売主・買主双方にとってトラブル防止につながります。

まとめ

古民家は、風情や素材の良さといった魅力を持ちながらも、築年数の古さや立地、構造的な問題などから「売れにくい物件」とされがちです。特に、耐震性や断熱性など、現代の住宅に求められる性能面では課題が多く、買主にとってはハードルの高い物件と見なされることもあります。
しかし、売却前に建物や土地の状態を整理し、リフォームの必要性や権利関係を確認することで、よりスムーズな売却につなげることが可能です。特に最近では、古民家ならではの価値に注目する買主や、古民家再生に意欲を持つ層も増えており、一定の需要が見込まれます。
早期売却や手間の軽減を重視する場合には、古民家や空き家に特化したプラットフォームを活用するのも有効です。現状のままでも買い手が見つかるケースがあるため、自身の状況に合わせて最適な売却方法を選択することが重要です。
空家ベースは、日本全国の空き家・古民家を取り扱うポータルサイトです。未公開物件の配信や、現状のままで掲載可能な柔軟な対応が魅力です。買い手との出会いを広げたい方は、ぜひ公式LINEに登録して、気軽に物件掲載から始めてみてください。

サラリーマンの副業として注目されている不動産投資。実は、多くの企業では副業禁止規定があっても、不動産投資は“資産運用”として扱われるケースが多く、問題になりにくいのが特徴です。ただし、事業規模が大きくなると、副業とみなされる可能性もあります。

本記事では、不動産投資が副業と見なされる条件、会社に知られないための工夫、そしてリスクを抑えながら資産形成を進める方法を具体的に解説します。副業規定が気になる方や、少ない資金で将来の安定収入を得たい方は、参考にしてください。

この記事でわかること

不動産投資は副業とみなされないことが多い

会社員の方が不動産投資を始める際、副業規定に該当するかを不安に感じるケースは多くあります。不動産投資は「資産運用」に分類されるため、副業とは扱われにくい傾向があります。

特に戸建てを活用する投資では、管理業務を外注すれば本業に支障が出にくく、取り組みやすい点が特徴です。ただし、5棟10室以上の「事業的規模」に該当する場合は、副業と判断される可能性があるため、勤務先の就業規則や投資規模の確認が必要です。

労働ではなく資産運用だから

不動産投資が副業にあたらない理由は、労働ではなく資産を活用した運用であるからです。

企業が禁止する副業とは、勤務時間外に別の仕事をして、労働の対価を得る行為を指します。一方、不動産投資は自己資金で物件を取得し、賃貸収入を得る仕組みで、株式投資や投資信託と同じ位置づけです。多くの企業の就業規則では、株式などと同様に不動産投資も禁止対象に含まれていません。

賃貸管理を外部に任せれば、所有者自身が日常的に動かなくて済みます。入居者募集や家賃管理などは専門会社が対応するため、会社員の方が労働を伴わずに取り組む資産形成手段として選ばれています。

相続などでやむを得ない理由がある場合も想定されるから

企業が不動産投資を副業と扱わない背景には、本人の意思とは無関係に物件を所有・運用するケースが存在する点が挙げられます。

たとえば、親族からの相続や転勤によって、マイホームを賃貸に出す状況です。これらを副業と一律に制限すると、不合理な制約となるため、多くの企業では除外対象としています。

地方にある空き家を相続し、戸建てとして賃貸活用する場面でも、資産管理と見なされるケースが一般的です。会社員の方が収益化を目指す際にも、副業規定との関係を整理しておくと安心です。

本業に支障が出にくいから

不動産投資は、運用方法を工夫すれば本業に影響を与えにくい特徴があります。

たとえば、管理会社に業務を委託すれば、日常の対応を手放せます。入居者募集や家賃回収、修繕対応などを外部がするため、所有者は平日の日中も勤務に集中できます。

一方、自主管理の場合は夜間や休日に対応が必要になり、本業に悪影響が出る可能性があります。会社員として安定した勤務を維持したい方は、管理委託型の不動産投資を選ぶことがおすすめです。労働を伴わない運用であれば、副業としても指摘されにくくなります。

情報漏洩のリスクが低いから

副業を禁止する理由の一つが、社外への情報漏洩リスクです。しかし、不動産投資はこのリスクが低い運用形態です。

入居者とのやりとりは契約関係に限られ、勤務先の業務情報と交わる場面はありません。そのため、企業秘密が外部に漏れる心配がなく、副業禁止規定の目的に反する行動には当たらないと判断される傾向にあります。

会社員の方が安心して取り組める投資手段として、不動産活用が選ばれています。

こちらの記事も参考にしてください。
初心者必見!戸建て投資の始め方と成功のポイント

副業禁止の会社で問題になるポイント

不動産投資は資産運用に分類されるため、副業に該当しないケースが多くあります。ただし、「運用規模の拡大」や「職業上の制限」によって、副業と見なされる可能性がある点には注意が必要です。

会社員が不動産投資を始める場合でも、就業規則や副業禁止の対象条件を確認することが前提になります。戸建て投資家として物件数を増やすときも、勤務先が定める副業規定や規模制限を把握しておくと、トラブルを避けやすくなります。

事業規模が大きくなる場合

5棟10室の基準を超えると、不動産投資は事業と見なされる可能性があります。国税庁では、戸建て5棟または10室以上の貸付を「事業的規模」としています。

事業的規模になると、本業への影響が疑われ、副業扱いになるリスクが高まります。戸建てを活用する場合は、物件数を5棟未満に抑えることで、副業と見なされにくくなります。

また、自己管理によって対応に追われると、会社からの指摘対象になる可能性もあります。物件管理は必ず外部の専門会社に委託し、労力を最小限にとどめることが必要です。

参考:No.1373事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分|国税庁

公務員や銀行員の場合

公務員や金融機関職員には、副業や投資に関する制限が法律や社内規定で設けられています。

国家公務員法と地方公務員法では副業を原則禁止とし、人事院が定める規定により、一定規模の不動産投資には事前の承認が必要です。この基準は、戸建てで5棟以上、賃貸物件で10室以上、または年間家賃収入が500万円を超える場合とされています。人事院規定は、国家公務員の副業制限を明文化した公的な基準です。

戸建て投資家が公務員である場合、5棟未満に抑えることでリスクを避けやすくなります。また、物件管理は外部に委託し、職務に影響が出ないよう配慮することが求められます。

事前に不動産投資の所属先ルールを確認し、運用可否を明確にしておく必要があります。

参考:人事院規則14―8(営利企業の役員等との兼業)の運用について|人事院

会社にバレたくない場合はどうすべき?

不動産投資は資産運用と見なされるケースが多い一方で、会社に知られる不安を感じる会社員の方も少なくありません。

特に初めて戸建て投資を始める場合は、対策が不明なまま進めてしまうリスクもあります。会社に投資が発覚する原因の多くは、住民税の増額です。対策としては、確定申告の実施・住民税の納付方法・SNSでの配慮が挙げられます。

税務処理と情報管理を見直すことが、安定運用につながります。

確定申告を必ず行う

不動産所得が年間20万円を超える場合、法律上は確定申告が必要です。

会社に知られたくない気持ちがあっても、申告を怠るとペナルティが発生し、結果的に会社へ通知が届く恐れがあります。申告を省略する行為は、かえって発覚リスクを高める原因になります。戸建て投資をする方も、必要経費や減価償却を適切に計上し、収支を把握したうえで申告することが基本です。

なお、不動産所得が20万円未満でも、市区町村への住民税申告が別途必要になるため、注意が必要です。

住民税を自分で納付する

不動産投資が会社に発覚する最大の要因は、住民税の通知内容です。

副収入による増税により、給与所得だけでは説明できない税額が会社へ通知されることで、投資の存在が判明するケースが多くあります。このリスクを避けるには、確定申告時に「住民税の自分で納付」を選択することが有効です。

確定申告書の第二表にある「住民税に関する事項」で「自分で納付」にチェックを入れると、不動産所得分の住民税は自宅に納付書が届く形になります。給与分はこれまで通り会社が特別徴収をする仕組みです。この手続きをするだけでも、会社への情報流出を抑えられます。

SNSでの発信に注意する

SNSでの発信内容から不動産投資が発覚するケースも増えています。

実名アカウントでなくても、写真や投稿内容から身元が特定されるリスクがあります。勤務先に投資を知られたくない場合は、アカウントの非公開設定や投稿内容の見直しが欠かせません。

不動産投資が副業と見なされない場合でも、副業禁止の会社に勤務している場合は、社内に話すのは控えるのがおすすめです。情報発信の際は、内容や掲載タイミングに配慮し、不必要なリスクを避けることが求められます。

不動産投資のメリットとリスク

不動産投資には、安定収入や資産保全といった利点がある一方で、空室や修繕費などのリスクも存在します。戸建てを使った投資では、外部委託により本業との両立が可能な点も魅力です。収益だけでなく支出面も理解し、事前に備える姿勢が求められます。

メリット1:安定収入とインフレ対策になる

不動産投資は、長期的に安定した家賃収入を得られる資産運用手段です。株式のように価格変動の影響を受けにくく、毎月の固定収入が見込める点が特徴です。

ローン完済後は、経費を差し引いた家賃が手元に残り、老後の収入源にもなります。
さらに、物価上昇に強い現物資産としてインフレ対策にも適しています。

メリット2:ローン優遇や生命保険代わりになる

会社員は安定収入があるため、銀行融資を受けやすい傾向があり、自己資金を抑えつつ物件購入が可能です。家賃収入を活用し、借入を活かした資産が形成できます。

また、ローン契約時に加入する団体信用生命保険(団信)は、死亡時に残債を完済する仕組みです。契約者に万が一のことがあっても、物件が遺族に残り、家賃収入や売却益で生活資金を補えます。

リスク1:空室リスク・家賃滞納の可能性がある

空室や家賃滞納により収入が減少するリスクがあります。

特に戸建て投資は、入居者不在で収入がゼロになるため、物件選びが運用の安定に直結します。立地や設備条件を重視し、入居希望者に選ばれる物件を選定することが欠かせません。

滞納リスクへの対策としては、入居審査の強化や、家賃保証付きの管理委託契約が有効です。

リスク2:物件修繕・老朽化コストがある

築年数が進むと、修繕や設備交換などの費用が発生します。給湯器や水回り、外壁などの老朽化により、急な出費がキャッシュフローを圧迫する可能性があります。

事前に収支を見積もり、家賃収入の一部を修繕費として積み立てておく対応が必要です。また、購入時のリフォーム費用を抑える工夫も収益性を左右します。
地震や火災に備えて保険に加入し、災害に強い物件を選ぶ判断もリスク管理に役立ちます。

不動産投資を始めるための基本ステップ

不動産投資は、段階的に準備を進めることで、経験がなくても始めやすい副業です。

特に戸建て投資では、少額からのスタートも可能なため、会社員が本業と並行して資産を形成する手段として注目されています。投資目的の明確化、物件選定、融資準備、管理体制の構築という4ステップを押さえることが、安定運用への土台となります。

STEP1:投資目的と予算を明確化しよう

不動産投資を始める前に、収支や資金の全体像を把握することが必要です。

なぜ投資するのか、どの程度の収益を目指すのかによって、選ぶ物件や戦略が変わります。老後資金を補う目的と、短期の利益を重視する目的では、購入判断も異なります。

また、自己資金と借入額を明確にし、想定利回りと毎月の収支バランスを把握しておくことが大切です。戸建て投資では、少額から始められる一方、修繕費や固定費の支出もあるため、余裕を持った予算設計が求められます。

STEP2:物件の種類とエリアを選定する

目的と予算を固めたら、次は物件とエリアの選定です。

新築か中古か、都市部か地方かで運用の難易度やコストが変わります。戸建て投資では、空き家再生や地方物件の活用も選択肢に入ります。

信頼できる不動産会社に相談しながら、収益性と管理のしやすさの両面から判断することが必要です。物件選定時には、実際に現地へ足を運び、周辺施設や治安、交通アクセスも自分の目で確認することが欠かせません。

加えて、最小限のリフォームで改善できるか、修繕コストを抑えられるかも確認すべきポイントです。

STEP3:融資の検討と事前審査を受ける

物件が決まったら、融資の申請準備に進みます。多くの会社員は、安定した収入と勤務実績により金融機関の信頼を得やすく、ローンを活用した投資がしやすい傾向にあります。

自己資金が少なくても、借入を通じて収益物件を購入し、レバレッジを効かせた運用が可能です。ただし、空室やトラブルによる家賃停止時も返済は続くため、毎月の支払い額は余裕を持って設定する必要があります。

収入と支出のバランスを見極めたうえで、金融機関と返済条件を調整することが、長期運用を続けるための土台となります。

STEP4:管理会社を選定し、運用計画を立てる

物件購入後は、信頼できる管理会社に業務を委託することで、投資と本業を両立しやすくなります。

入居者募集や家賃回収、トラブル対応など、日々の業務を代行してもらうことで、運用の手間を削減できます。
手数料は家賃の5〜10%が目安ですが、本業に集中できる環境を整える価値は十分にあります。管理会社を選定する際は、入居率やクレーム対応の実績、保証制度の有無なども確認すると安心です。

あわせて、空室期間を想定して修繕費を見積もり、年間のキャッシュフローを可視化した運用計画を立てておくと、想定外のトラブルにも対応しやすくなります。

事業拡大を目指すなら押さえたいポイント

不動産投資で収益を伸ばすためには、物件数を増やす戦略が有効です。ただし、管理の手間や勤務先への影響が大きくなるため、運用負担の調整が不可欠です。

戸建てを使った投資では、5棟以上になると税法上「事業的規模」とみなされ、会社からの監視リスクも高まります。本業と両立しながら資産形成を進めるためには、管理体制と業務負担を見直すことが重要です。

管理と経営の手間が増すリスクをどう抑える?

物件数が増えると、入居者対応や修繕などの業務が比例して増加します。会社員として本業を続けながら運用する場合は、管理会社への委託を前提に考える必要があります。

管理会社は、入居者募集・契約対応・家賃回収・設備トラブルの初動などを一括で代行してくれます。自主管理のまま拡大を進めると、緊急連絡や作業対応に追われ、本業の時間が削られる恐れがあります。

家賃の5〜10%程度の手数料が発生しますが、運用の持続性を優先するなら必要経費と捉える判断が現実的です。管理業務から距離を置くことで、空室率の改善や資金調整といった中核業務に集中できる環境を確保できます。

本業とのバランスを取ることが大切

会社員が不動産投資を拡大する際は、本業への影響を抑える判断が不可欠です。多くの企業が副業を制限する理由は、本業の成果が落ちることを懸念しているためです。

戸建て投資を進める過程で、日中に対応が必要な業務が増えたり、休日に現地へ通う時間が長くなったりすると、仕事への集中力が低下するリスクがあります。

管理会社への外注を徹底し、意思決定や資金計画といった業務だけに関与する体制を整えることで、本業への影響を抑えつつ資産形成が継続できます。

本業の収入を基盤とし、不動産投資は副次的な運用手段として位置づける視点が、会社員にとっては現実的な戦略です。

不動産投資で安定収入を得るための具体的なコツ

家賃収入を安定させるには、物件管理・資金計画・専門家との連携が不可欠です。
戸建て投資では、空室や修繕リスクが避けられないため、物件価値を維持し、数字で運用状況を管理し、外部と連携する体制づくりが求められます。

リフォームで物件価値を高める

空室を減らすには、入居者に選ばれる条件を整える必要があります。
築古物件では、過剰投資を避けつつ、ニーズのある設備に絞って改修することが効果的です。

たとえば、モニター付きインターホンやWi-Fi環境など、入居者の満足度に直結する設備は一定の需要があります。
修繕前に費用と想定家賃を試算し、投資効果を見極める判断が求められます。

キャッシュフローを管理し適切に運用する

毎月の利益を確保するには、収支全体を把握しておくことが欠かせません。
購入前に収支シミュレーションをして、空室や突発費用を含めた赤字ラインを確認しておくと安心です。

収益計算では、表面利回りではなく、管理費・修繕費・税金を含めた実質利回りが基準となります。
ローンの返済条件も慎重に設定し、空室時にも返済が滞らないよう備える必要があります。

不動産会社・管理会社と良好な関係を築く

安定した運用を実現するには、外部パートナーとの連携が欠かせません。

不動産会社には、物件紹介だけでなく、家賃設定や空室対策の相談も依頼できます。
管理会社は、入居者対応・家賃回収・修繕手配などの実務を代行し、日常の負担を軽減してくれます。

信頼できる会社を選ぶには、入居率・クレーム対応・修繕対応の実績を事前に確認することが必要です。定期的な情報共有により、トラブル時の対応も円滑になります。

まとめ

不動産投資は「副業禁止の会社でも取り組みやすい資産運用」として、働きながら収益を得たい人に適した選択肢です。事業規模が大きくなりすぎなければ、会社に申告が必要ない場合もありますが、確定申告や住民税の手続きには注意が必要です。

安定した運用を続けるためには、リフォームによる価値向上やキャッシュフロー管理など、地道な工夫が欠かせません。初期投資を抑えて始めたい方は、まず小規模物件から実績を積み上げていくのが現実的です。

空家ベースは空き家を売りたい人と買いたい人を繋ぐプラットフォームです。全国の物件を掲載しており、都市部だけでなく地方の収益物件も見つかります。不動産投資に興味のある方は、ぜひ空家ベースの掲載情報をご覧ください。

マンション売却には「居住用物件」と「オーナーチェンジ物件」があり、一般的に同じ築年数で同じ専有面積の中古マンションであればオーナーチェンジ物件の方が売却しにくいとされています。
その理由としてオーナーチェンジ物件にしかないリスクとデメリットがあり、不動産投資を目的として購入を検討している人が慎重になる投資用物件でもあります。
その一方で投資家としては居住用物件を購入してリフォームやリノベーションを行い、賃貸物件として公開するよりもメリットがあるケースも多く、オーナーチェンジ物件を優先的に検討する人もいます。
この記事ではオーナーチェンジ物件の売却価格が安くなる理由と売りにくい理由、高く売るためのポイントについて解説します。
オーナーチェンジ物件のメリット・デメリットも紹介しますので、売却を検討しているマンションやアパートの所有者や購入希望者は参考にしてください。

この記事で分かること

オーナーチェンジ物件とは?

オーナーチェンジ物件とは既に入居者がいる状態で公開されている物件のことで、購入後も所有者は住むことはありません。
所有者と賃借人は賃貸借契約を締結しており、家賃や修繕積立金の支払い方法や退去の条件、敷金と礼金の扱い方、修繕費用の責任負担などが細かく決められています。
オーナーチェンジ物件を購入した買主は売主から契約内容についても継承することになり、入居者には契約後にオーナーが変わったことが伝えられます。
稀に空室の状態で公開されている収益物件もありますが、このような物件は一般的に居住用として購入することも可能です。
そのため、オーナーチェンジ物件には必ず「入居者」が住んでいる状態の物件ということが分かります。

オーナーチェンジ物件の相場はどう決まる?

オーナーチェンジ物件の資産価値は一般的に収益性が大きく影響し、収益性は直接還元法で算出することができます。
直接還元法は収益物件から得られた1年間の純利益を還元利回りで割り戻し、価値を算出する方法のことで、具体的な計算式は次の通りです。

(1年間の利益合計‐1年間の支出合計)÷還元利回り

たとえば1年間の賃料合計が600万円で支出合計が120万円、利回りが8%だった場合、純利益480万円÷8%=6,000万円が資産価値となります。
つまり、この物件が6,000万円以下で公開されていれば割安となり、購入の検討がおすすめです。
ただし賃貸物件は地域の人気や物件の立地も大きく影響し、将来家賃を高くできる可能性や下がりにくい可能性も考慮して物件価格を設定します。
このことからもオーナーチェンジ物件の売却価格は直接還元法で算出された相場に対し、複合的な要因を検証して設定する必要があるといえます。

オーナーチェンジ物件の相場が安い理由

不動産をオーナーチェンジ物件として売却する場合と居住用物件として売却する場合はオーナーチェンジ物件の方が安くなりやすく、不動産売却における注意点です。
オーナーチェンジ物件は購入検討者のマーケットと資金計画、物件の資産価値を計算する方法が居住用物件と異なっており、販売期間も長期化する傾向にあります。
このように、オーナーチェンジ物件を売却するのであれば特徴を理解しておくことが大切です。
この章ではオーナーチェンジ物件の相場が居住用物件より安くなる理由について、詳しく解説します。

買い手が投資家に限られるから

居住用物件の購入検討者は自ら居住する人や投資家、不動産会社など多岐にわたります。
最終的な販売価格は買い手の目的によって大きく変わりますが、販売価格が不動産仲介の相場と大きく乖離していなければ一定数の反響を得ることは可能です。
一方、オーナーチェンジ物件は投資家と投資会社のみに限定されてしまい、一番ボリュームの大きい居住目的で物件を探している購入検討者は対象外となってしまいます。
これにより反響数が減ってしまい、販売が長期化する大きな原因となります。

室内の状況がわからないまま取引することになるから

オーナーチェンジ物件には既に賃借人が住んでいるため、室内を自由に内覧することはできません。
物件によっては賃借人の許可を得て内覧できるケースもありますが、クローゼットの中や水回りを細かくチェックできるわけではありませんので、部屋の状態を把握できないことも多いです。
そのため購入検討者は室内の状態を画像や売主が開示する付帯設備表で判断するしかなく、リスクの高い取引になる可能性もあります。

ローンの金利が高くなるから

買い手がオーナーチェンジ物件を購入するために金融機関から融資を受ける場合、居住用物件よりも金利が高くなります。
なぜなら一般的に金利が低い住宅ローンは債務者が対象物件に居住することを条件に融資されるからであり、居住できないオーナーチェンジ物件は不動産投資ローンを利用することになるからです。
不動産投資ローンは住宅ローンよりも金利が高く、利回りとのバランスが悪くなることも多いです。
これにより物件が気に入ったとしても購入時点の収益性を維持することができず、購入を見送る原因になることもあります。

入居条件を設定することができないから

収益物件の所有者は人権侵害にならない内容であれば入居条件を設定することができ、安心して貸すことができる入居者を選定することができます。
たとえば既にペットを飼っている世帯の場合、臭いや壁紙の汚れがひどくなることを懸念しなければなりません。
オーナーチェンジ物件は売主と賃借人が締結した賃貸借契約を継承することになり、物件の所有者が変わったとしても入居条件を変更することはできません。
不動産の資産価値をできるだけ長く維持し、利益を確保し続けるという意味で入居者の住まい方は重要なポイントであることから、オーナーチェンジ物件を避ける投資家も多いです。
なお、入居者の退去が決まっており近い将来空室になる可能性が高い場合は、新しい入居者と希望の入居条件で賃貸借契約を締結することができますので、このような心配はありません。

収益還元法と取引事例比較法の査定方法では差が出るから

不動産を査定する場合、不動産投資であれば収益還元法を採用し居住目的として売却するのであれば取引事例比較法を採用します。
前述した直接還元法は収益還元法の1種で、もう1つのDCF法とあわせて代表的な投資物件の査定方法です。
どちらの方法も「利益」をベースに算出するため、利益率が重視されます。
一方、取引事例比較法は査定物件の周辺で過去に成約となった物件を抽出し、築年数や間取り、階層が似ている物件の成約事例をベースに平均値を計算します。
そのため価格の根拠が明確になり、買い手も販売価格に納得しやすくなりますが、収益還元法は想定通りの家賃収入があり、将来売却できることが前提条件です。
このようにオーナーチェンジ物件と居住用物件では販売価格のベースとなる査定方法が異なり、オーナーチェンジ物件の方が価格の整合性を判断しにくいという特徴があります。

オーナーチェンジ物件が売れにくいといわれる主な理由

オーナーチェンジ物件は自ら居住することを目的としたターゲット層が買い手になることがなく、居住用物件よりも反響が少なくなります。
投資目的で検討している投資家であれば購入検討者となりますが、入居者がいるため室内をチェックすることが難しく、想像で設備や壁紙の状態を判断しなければなりません。
また、オーナーチェンジ物件は住宅ローンではなく不動産投資ローンの対象となるため金利が高く、思い描いた資金計画を実現できないケースも多いです。
賃貸経営は市場や金利の影響を受けやすく、状況によっては高い収益力を維持できなくなることもありますので、経営リスクもオーナーチェンジ物件が売れにくい理由の一つといえます。
オーナーチェンジ物件が売れにくい理由について、詳細は以下の記事を参考にしてください。
オーナーチェンジ物件が売れない?理由と売れないときの対策を解説 – 空家ベース

オーナーチェンジ物件を高く売るためのコツ・ポイント

入居者と賃貸借契約を締結した場合、賃貸人は正当な理由がなければ契約を解除して退去してもらうことができなくなります。
そのため不動産を活用して賃貸経営をする場合には将来を見越して判断する必要がありますが、状況が変わって経営難に陥ったり収益性が低いオーナーチェンジ物件を相続することもあります。
このような状態になってしまうと収益物件としての魅力が少ないことから、売却してしまうのがおすすめです。
オーナーチェンジ物件は売りにくい不動産ではありますが、高く売るためのコツはあります。
この章ではオーナーチェンジ物件を高く売るためのコツとポイントについて、解説します。

空室率を下げて家賃収入を安定させる

1棟マンションなど複数の部屋で家賃収入を得られるオーナーチェンジ物件の場合、空室をできる限り減らすことで家賃収入を安定させることができます。
家賃収入が安定している投資物件の利回りは高く、その結果収益還元法によって算出された査定額も高くなります。
このように収益物件の最大の魅力といえる「収益性」を改善することで、オーナーチェンジ物件を高値で売却できるようになります。

入居者とのコミュニケーション体制を整える

不動産投資において賃借人と頻繁に顔を合わすことは少ないですが、LINEやグループチャットなどを使って円滑にコミュニケーションが取れる状態にしておくこともポイントです。
たとえば設備の不具合や壁紙の剥がれが発生した場合、すぐに対処することで資産価値を維持できることも多いです。
このようなトラブルが発生した際に入居者からすぐに連絡を受ける体制を整えておくことで、築年数が古いオーナーチェンジ物件であっても販売価格を高く設定しやすくなります。
また、入居者との関係が良好であれば内覧に協力してくれることもあり、部屋を隅々までチェックさせてもらえれば買い手のリスクを下げることに繋がります。
オーナーチェンジ物件を高く売るためにはこうした入居者とのコミュニケーションも重要ですので、積極的に連絡を取るよう心がけることをおすすめします。

投資家目線で利回りや将来性をアピールする

オーナーチェンジ物件を購入するのは投資家のため、投資家が魅力を感じるようなアピールポイントをピックアップし、不動産会社から伝えてもらうことも大切です。
特に利回りや室内の状態、設備の交換時期などは投資家にとって重要な判断材料であり、修繕履歴があれば安心して購入しやすくなります。
具体的に購入を検討している人がいれば収益計画を把握できるレントロールを開示し、経営のイメージを持ってもらうこともポイントです。
最寄りの駅や地域で再開発計画が決まっている場合は将来の資産価値が向上することもありますので、オーナーチェンジ物件が持つ「魅力」と「将来性」は必ず買い手に伝えることが高値売却のコツといえます。

不動産会社選びに注意する

不動産会社といっても「賃貸」や「仲介」、「買取専門店」など様々な種類があり、オーナーチェンジ物件の売却を依頼する場合は不動産仲介会社になりますが、収益物件の売却に慣れていない不動産会社も多いので注意が必要です。
不動産会社目線でも居住用物件よりもオーナーチェンジ物件の方が売却は難しくなりますが、その理由として買い手がプロの投資家であることが多いというポイントがあります。
魅力的な物件であっても不動産会社が投資家の質問に対して明確に答えられない場合、不安を与えてしまいます。
収益物件に関する専門知識が少ない担当者だった場合、契約時や引渡し後に大きなトラブルが発生することもあります。
このような失敗を防ぐためには売却を依頼する不動産会社選びが重要となり、複数の会社に査定を依頼して査定額と売却プランをチェックし、信頼できる会社をピックアップすることが大切です。

オーナーチェンジ物件を売買するメリット・デメリット

この章ではオーナーチェンジ物件を売買するメリット・デメリットについて、売り手側と買い手側に分けて解説します。

売り手側のメリット・デメリット

オーナーチェンジ物件を売却する場合、販売中であっても家賃収入を得られるという点がメリットです。
空室を居住用物件として売却する場合、維持管理するための手間や費用がかかります。
自己利用している自宅を売却する場合は特別な維持管理をする必要はありませんが、固定資産税や都市計画税といった税金は発生してしまいます。
その点、オーナーチェンジ物件は入居者が生活しやすいよう掃除やメンテナンスを行い、さらに家賃収入を税金の支払いに充当することができます。

一方、オーナーチェンジ物件のデメリットは販売が長期化しやすく、居住用物件よりも売却価格が安くなりやすいという点です。
そのためオーナーチェンジ物件を売却する際には比較的長めの販売期間を想定する必要があり、なるべく早く売却したい人にとって不利なケースが多いといえます。

買い手側のメリット・デメリット

買い手側のメリットとして、すぐに家賃収入を確保できるという点があります。
オーナーチェンジ物件の購入希望者は投資家のため、既に入居者がいて家賃が発生する物件は魅力があります。
さらに利益や支出が購入前に明確なため収益計画を立てやすく、物件次第では最初から安定した経営を実現することができます。
ただしオーナーチェンジ物件は入居者を選ぶことができず、室内の状態も不明瞭なままで契約することになるため、購入後に問題が発生することも少なくありません。
このようにオーナーチェンジ物件の購入を検討するのであれば、リスクとリターンのバランスを十分に検証する必要があるといえます。

オーナーチェンジ物件が売れないときの対処法

どうしてもオーナーチェンジ物件が売れない場合は空室率を改善し、収益物件としての魅力をできるだけ多く買い手に伝える工夫が必要です。
また、反響が極端に少ない場合は依頼している不動産会社の対応が十分でないことも考えられますので、時期を見て不動産会社を変えることもポイントです。
なお、どのようなオーナーチェンジ物件であっても居住用物件より販売は長期化しやすいことから、なるべく早く現金化したいのであれば不動産買取業者に相談し、直接買い取ってもらうことをおすすめします。
オーナーチェンジ物件が売れないときの対処法について、詳しく知りたい人は以下の記事を参考にしてください。
オーナーチェンジ物件が売れない?理由と売れないときの対策を解説 – 空家ベース

まとめ

オーナーチェンジ物件は不動産売却の中でも販売が難しく、売れ残っている物件も多いです。
売れ残る理由としては「入居者が選択できない」「投資家や不動産会社しか購入検討者にならない」などがあり、対策しなければ何年も売れ残ってしまうこともあります。
一方、オーナーチェンジ物件は家賃収入があるため売れ残っていても収益を得ることができるなど、メリットも多いです。
そのためオーナーチェンジ物件を売却するのであればまず複数の不動産会社に相談して収益物件の売却に強い会社を見つけ、販売計画を綿密に立てることが重要といえます。

戸建てや土地、マンションを売買する際には一般的に不動産会社が売主と買主を仲介することになりますが、個人間売買を希望する人も少なくありません。
宅地建物取引業者を介さずに不動産取引を行うことにはメリットがあり、インターネットでも個人売買の流れや注意点が公開されていることから積極的に検討する売主も多いです。
その一方で個人売買にはデメリットとリスクがあり、トラブルを避けるためにも慎重に判断しなければならないポイントもいくつかあります。
この記事では不動産を個人売買で進める際のメリットとデメリットについて、解説します。
個人売買が向いているケースと不向きなケース、トラブル事例と対処法も紹介しますので、これから不動産を個人売買する予定のある人は参考にしてください。

この記事で分かること

個人売買で家を売ることは可能?

不動産売買において必ずしも不動産会社に仲介してもらう必要はなく、当事者が全ての必要書類を準備して適切に手続きを進められるのであれば個人売買であっても問題ありません。
また、所有権移転登記を法務局で申請する場合や農地転用の申請も司法書士や行政書士に依頼することなく、自分で手続きすることも可能です。
このように専門家に依頼をしなくても不動産取引を完了することができることから、不動産関連の専門知識を有している人であればスムーズに個人売買を進められる可能性は高いといえます。

家の個人売買で得られるメリット

家の個人売買には多くのメリットがあり、不動産会社に仲介してもらうことなく自分で買い手を見つけて取引を進める売主もいます。
この章では家の個人売買で得られるメリットについて、解説します。

仲介手数料を節約できる

不動産会社に仲介を依頼した場合、売買契約が締結された時点で仲介手数料の支払い義務が発生します。
仲介手数料は国土交通省によって上限が設定されており、上限額の計算方法は次の通りです。

売買価格が200万円以下:売買価格×5%+消費税
売買価格が200万円を超え400万円以下:売買価格×4%+2万円+消費税
売買価格が400万円を超える:売買価格×3%+6万円+消費税
低廉な空家等の売買:30万円+消費税

一般的に不動産会社からは報酬額の上限で仲介手数料を請求されることになり、たとえば1,000万円の不動産を売買すると1,000万円×3%+ 6万円=39万円(税抜)を支払うことになります。

売買価格が高額になるにつれ仲介手数料も高額になることから、個人売買によって仲介手数料が節約できるという点は大きなメリットといえます。
【引用サイト:仲介手数料の基本的な考え方
【引用サイト:空き家等に係る媒介報酬規制の見直し

売却活動や交渉を自分のペースで進められる

売主と買主のペースに合わせて契約や引渡しの準備を進められるのも、個人売買のメリットです。
仲介の場合は不動産会社が契約と決済日を設定し、それに合わせて売買契約書を作成します。
そのため契約のスケジュールによっては慌てて事前準備しなければならないこともあり、時間がない売主だと大きな負担になってしまうケースも少なくありません。
その点、個人売買であれば当事者が合意したペースで進めることができ、スケジュールの微調整も容易です。
このことからも、焦ることなくゆっくりと自分のペースで手続きをしたい人に、個人売買はおすすめだといえます。

知人間取引なら早期に話がまとまりやすい

買主が知り合いであれば細かな調整もしやすく、個人売買を安全に進められる可能性が高くなります。
たとえば仲介の場合だと内覧の予定調整や価格調整などを不動産会社が行うため、調整にタイムラグが発生してしまいます。
その点知り合い同士の個人売買であればストレスを感じることなく直接話し合って決められますので、大きなメリットとなります。

家を個人売買するデメリット

家の個人売買は仲介手数料を節約することができ、さらに自由に価格設定や売却スケジュールを決められるというメリットがありますが、デメリットもありますので注意が必要です。
この章では家を個人売買するデメリットについて解説しますので、前述したメリットと合わせてチェックしてください。

売り出し価格の設定が難しい

仲介の場合は不動産会社に査定を依頼して相場を確認し、そのうえで売却価格を設定することになります。
不動産会社から価格設定のサポートを受けるため不動産の価値と売却価格が大きく乖離することは少ないですが、個人売買の場合は売主が全て判断しなければなりません。
そのため価格設定が難しい物件では適切でない価格で売り出してしまうこともあり、買い手が見つかりにくい不動産売却になってしまうこともあります。
このように売り出し価格の設定が難しいという点が、個人売買のデメリットです。

住宅ローン審査のハードルが上がる

不動産売買において不動産会社は当事者の代わりに売買契約書を作成することになりますが、合わせて重要事項説明書も作成します。
この書類は物件の所在や法令制限、特約などが記載されており、宅地建物取引士が買主に対して説明する重要書類となっています。
金融機関は契約書と重要事項説明書の内容をチェックし、融資に問題がないか確認することになりますが、重要事項説明書がなければ融資のリスクが高くなり、その結果住宅ローン審査が通らない可能性が高くなってしまいます。
特に前面道路が狭い物件や公道でない場合は再建築に影響が出る可能性が高く、融資を断る金融機関も多いです。
融資を受けられないと物件の購入資金が用意できなくなり契約が白紙になってしまいますので、個人売買の大きなデメリットといえます。

トラブル発生時の責任が重くなる

不動産の取引は動産と違って予想外のトラブルが発生することも多く、不動産会社にとってこうしたトラブルに対応することが役割の一つとなります。
確定測量時の隣人トラブルや町内会長への説明、雨漏りやシロアリ被害の責任負担など、専門知識と豊富な経験がなければ解決できないトラブルも多いです。
また、買主が住宅ローン融資を受ける場合は期限内に融資を通す必要があり、通らなければ契約内容によっては違約金を売主に支払わなければなりません。
このように不動産取引は売主と買主のどちらにも責任とリスクが発生することになり、不動産会社が調整しなければ取引を完了できなくなることもあります。
特に知り合い同士で個人売買を行いこのようなトラブルが発生すると関係性に影響が出てしまいますので、注意が必要です。

物件の売却期間が長引く可能性もある

不動産会社は売主から販売の委託を受けると物件を不動産ポータルサイトやレインズに公開し、新聞折込やポスティングによって近隣住民に物件の公開を周知します。
このように物件の露出を増やすことで購入予定者からの反響を獲得し、契約の確度を高めることができます。
一方、個人売買では不動産ポータルサイトやレインズを使うことができず、ポスティングスタッフを自分で手配することになります。
その結果不動産会社に依頼するよりも反響数が少なくなってしまいますので、売却期間が長くなりやすいです。
また、内覧や物件説明も売主自ら対応することになり、うまく説明できなかったり内覧の都合がつかずに商談自体がなくなってしまう機会損失が起こりやすいという点が、個人売買のデメリットです。

個人売買が向いているケース・不向きなケース

個人売買にはメリットもデメリットもありますので、個人売買が自分に合っているかどうかの見極めが重要です。
実際に個人で不動産取引をしている人もいますので、どのようなケースであれば個人売買を選択しても問題ないか知っておく必要があります。
この章では個人売買が向いているケースと不向きなケースについて、詳しく解説します。

親戚・友人など信頼関係がある相手への売却

たとえば実家を売却する場合で親戚や友人が買い手となる場合、家の状態や間取りをよく知っている人が購入することになります。
このような関係性であればトラブルが起こりにくく、さらに音信不通になる可能性も低いのでリスクを下げつつ取引することができます。
内覧の都合もつけやすく契約の準備や場所の設定もしやすいことから、個人売買で進めやすい代表的なケースです。
一方、「家を買いたい」と突然訪ねて来た人やメールだけのやり取りで本人確認が難しい人との契約は非常にリスクが高く、個人売買は向いていないといえます。

売主・買主双方に不動産売買の知識や資格がある場合

個人売買のリスクとして「不動産関連の専門知識がない」という点がありますが、売主と買主のどちらにも知識があればリスクを抱えることなく個人売買を進めることができます。
特に宅地建物取引士や司法書士の資格を所有しているのであれば不動産会社に依頼した場合と変わらない内容で取引できますので、安心です。
ただし重要事項説明書は宅地建物取引士ではなく宅地建物取引業者が作成しますので、資格があっても金融機関の融資に影響が出てしまう可能性があり、注意点といえます。

買主が現金一括購入を検討している場合

重要事項説明書がない個人売買は住宅ローン審査が大きなネックとなりますが、買主が現金で一括購入するのであれば心配ありません。
現金一括購入は契約から決済までの期間を短くできるというメリットもあり、個人売買の方がスムーズに進められることもあります。
特に郊外にある空き家を売却する場合は現金で購入するというケースも多く、積極的に個人売買を進める売主も多いです。

想定されるトラブル事例と対処法

個人売買は不動産取引を全て当事者間で進めることになり、不動産会社のサポートを受けられません。
そのためできる限り起こり得るトラブルを想定し、対処できるよう準備しておくことが重要です。
この章では想定されるトラブル事例と対処法を紹介しますので、チェックしてください。

契約不適合責任(瑕疵担保)をめぐるトラブル

契約不適合責任とは、引き渡した後に一定期間売主が負う責任のことで、期間内に雨漏りやシロアリ被害が発生すると売主の責任で対応しなければなりません。
期間は売主と買主の合意によって設定することができますが、万が一契約書類に期間を記載し忘れた場合、「買主が知ってから1年間」が期間になります。
売主にとって契約不適合責任は大きなリスクとなりますが、契約不適合責任に対する解釈が当事者間で異なり、その結果トラブルになることもあります。
そのため内覧時には売主と買主のどちらも設備の不具合や建物の劣化についてできるだけ細かくチェックし、書類にまとめたうえで責任の所在を明確にすることが重要です。
場合によってはインスペクションを利用し、建物の状態を第三者機関に確認してもらうのもおすすめの対処法です。

価格や物件状態の行き違い

不動産の販売価格はあくまでも「本体価格」という位置づけであり、引き渡し条件を満たすために追加でかかる費用もあります。
たとえば古家付き土地として販売している物件を中古戸建として購入する場合、売主は解体費や測量費がかからないことになりますが、その分値引きできると決まっているわけではありません。
また、現存している戸建てが建築される前の状態は内覧で確認することは難しく、契約後に「実は井戸が埋まっている」と知らされることもあります。
個人売買の場合、売主はどこまで買主に説明すればいいか分からず重要な項目を伝え忘れることもあり、その結果重大な行き違いが発生することも少なくありません。
こうしたトラブルを防ぐためにも、内覧時に家の状態を伝えるポイントをまとめておくことをおすすめします。

引き渡し後の修繕・クレーム対応

契約不適合責任に該当するトラブルだけでなく、給湯器の破損や太陽光発電の不備など引き渡し後に発生する問題は多いです。
破損個所を売主が把握できていないことも多いですが、「騙された」と感じる買主もいます。
親戚や知人同士の場合だとトラブルが原因で関係性が悪化してしまうこともありますので、自治体やNPO法人など相談できる窓口をあらかじめ調べておくことが大切です。

個人売買のリスクを抑えるための対策

不動産会社が仲介していれば起こらないトラブルも、個人売買では頻繁に発生することもあります。
そのため起こり得るリスクをイメージして発生時に対応できるよう準備しておくことも大切ですが、そもそもリスクを抑える対策も重要です。
この章では個人売買を進めるうえでやっておきたいリスク対策を紹介します。

物件情報を正直に開示し、書面で残す

売主が知っている物件情報は全て買主に開示し、物件状況告知書や付帯設備表にまとめて買主に渡すことで、大部分のトラブルを防ぐことができます。
特に水回り設備や外壁の状態、火災や雨漏り、シロアリ被害、家の傾き、浸水被害、近隣住民とのトラブル有無などは契約前に必ず伝えておきたいポイントです。
これ以外にも町内会のルールや近隣にクリーンセンターや産業廃棄物を処理する施設などの建築が予定されている情報なども、積極的に伝えることをおすすめします。

契約書類を専門家にチェックしてもらう

売買契約書は本来、売主と買主の解釈がズレないよう注意しながら作成しますが、契約書類の作成に不慣れな売主の場合、正しくない表現が使われてしまうこともあります。
契約条項や特約条項の解釈が異なることで発生するトラブルも多いことから、契約締結前に契約書類を専門家にチェックしてもらうことがポイントです。
ただし個人売買の場合は不動産会社にチェックしてもらうことは難しく、司法書士や行政書士は専門外のため正しいアドバイスを受けられないこともあります。
そのため費用はかかっても不動産を専門としている弁護士に相談し、チェックしてもらうことをおすすめします。

個人売買と不動産仲介・不動産買取の比較

不動産売却の方法として個人売買と不動産仲介がありますが、不動産買取という方法もあります。
どの方法を選ぶのかでリスクや売却価格が異なりますので、それぞれの売却方法について正しく知っておくことが大切です。
それぞれの売却方法について特徴をまとめると、次のようになります。

売却方法 価格設定 スケジュール 書類の作成 契約のリスク
個人売買 自由 当事者間で調整 当事者が作成 高い
不動産仲介 自由 不動産会社が調整 不動産会社 普通
不動産買取 買取価格=売却価格 不動産会社が調整 不動産会社 低い

この章では個人売買と不動産仲介、不動産買取の違いについて解説します。

仲介売却との違いと向き・不向き

不動産会社に何も依頼しないのが「個人売買」で、不動産会社に仲介や買取を依頼するという点が異なります。
個人売買は価格設定もスケジュール調整も自由ですが、契約書類を作成する手間がかかり内容に不備があることでトラブルが起きることもあります。
また、契約前に買主と音信不通になることもあり、契約後のクレームに自分で対応することになるのも大きなリスクです。

不動産買取との違いとメリット・デメリット

不動産仲介と不動産買取は契約書を自分で作成する必要がないため手間はかかりませんが、不動産会社が調整したスケジュールで進めることになります。
さらに不動産仲介の場合であっても契約不適合責任などのトラブルは発生し、対応しなければなりませんので注意が必要です。
その点、不動産買取の場合は契約不適合責任を免責で進めることもでき、家屋の解体や不用品の処分をすることなく引き渡しできるというメリットもあります。
ただし、不動産買取は買取業者が提示する買取価格が売却価格となるため価格調整がしにくく、個人売買や仲介よりも安くなるケースも少なくありません。
このようにどの売却方法にもメリットとデメリットがありますので、自分に合った方法を選ぶことが重要です。

よくある質問(FAQ)

この章では個人売買でよくある質問を紹介します。

Q1. 個人売買で必要な資格や免許はある?

個人売買を制限する法律はなく、資格や免許も不要です。
ただし宅地建物取引士や司法書士、行政書士、弁護士といった資格があれば安全に進めることができます。

Q2. 個人売買で司法書士や行政書士への依頼は必須?

司法書士は所有権移転登記、行政書士は農地転用など公的書類の作成時に依頼する士業ですが、どちらの作業も個人で行えますので必須ではありません。
ただし所有権移転登記も農地転用も非常に複雑な申請書類となっていますので、依頼した方が手間がかからないケースも多いです。

Q3. 価格交渉はどのように進めればいい?

個人売買で価格交渉をする場合、理由を明確にするのがポイントです。
住宅ローンの審査結果やリフォームの見積書などを売主に開示し、誠実に相談することで価格交渉が成功する可能性を高めることができます。

Q4. 買主が見つからないときの対処法は?

どうしても買主が見つからない場合は不動産会社に仲介や買取を依頼し、スピーディーに売却してしまうのがおすすめです。
まずは個人売買で売却できないかチャレンジして買い手が見つからなければ不動産会社に仲介してもらい、それでも見つからないのであれば買取を依頼するという売主も多いです。

まとめ

不動産売買において不動産会社に仲介を依頼しない個人売買はメリットが大きく、不動産取引に慣れた売主であればおすすめの方法です。
ただし個人売買はメリットと同じくらいデメリットも多く、大きなトラブルが発生することも少なくありません。
そのため想定されるリスクのピックアップと対処方法、リスクを未然に防ぐ対策が重要なポイントといえ、十分に時間をかけて準備することが重要です。

会社員として働きながら、不動産収入を得る「大家さん」に関心を持つ人が増えています。とはいえ、物件の選び方や融資、入居者対応など、未経験では不安も多いはずです。

本記事では、初心者が知っておきたい「大家さんの役割」や「物件の種類」、実際に始めるまでの流れをわかりやすく解説します。空室や家賃滞納などのリスク対策も紹介していますので、資金が限られている副業希望者や、不動産事業に挑戦したい方はぜひ参考にしてみてください。

この記事でわかること

大家さんとは何をする人?

大家さんは、不動産を貸し出して家賃収入を得る賃貸経営者です。
所有するだけでなく、入居者対応や建物管理など多岐にわたる業務を担います。

入居者関連では、募集・審査・家賃回収・トラブル対応・退去手続きなどが発生します。
建物面では、共用部の清掃・設備点検・修繕計画の作成などが求められます。

これらの業務をすべて一人で行うのは負担が大きくなりやすく、副業で取り組む方には現実的ではありません。
国土交通省の調査では、大家の約8割が管理会社へ業務を委託しており、実務の多くは外部に任せています。

参考:賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査(家主)|国土交通省

どんな種類の物件を扱う?

不動産投資では、物件の選択が初期費用や管理負担、収益性に直結します。
扱う物件は、一棟アパート・区分マンション・戸建ての3種が中心です。
それぞれ投資額や管理の手間が異なるため、資金計画に応じて選定する必要があります。
戸建ては中古活用でコストを抑えやすく、資金が限られた投資家にも適した選択肢です。

一棟アパート経営のメリット・デメリット

一棟アパートは、複数の入居者から家賃収入を得られるため、空室時の影響を分散できます。団信付ローンを使えば、債務免除による資産承継も可能です。

税制面では、住宅用地の特例による固定資産税軽減や、評価額圧縮による相続税対策が期待できます。

一方、物件価格は高額になりやすく、購入時に1,000万円単位の自己資金が必要なケースもあります。外壁や屋根の修繕もすべてオーナーが担うため、長期の修繕費用を想定した資金準備が求められます。

参考:固定資産税|総務省
参考:No.4124_相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁

区分マンション投資のメリット・デメリット

区分マンションは、1,000万〜2,000万円程度で購入可能な物件が多く、比較的手軽に始めやすい点が特長です。ローンを利用しやすく、会社員など安定収入がある層は金融機関の信用も得やすくなります。

不動産資産はゼロになりにくく、売却や相続対策としても一定の価値が残ります。

一方、部屋が1戸のため空室が出ると収入が途絶える点がリスクです。
安定した需要を見込める立地や設備の整備が不可欠で、税負担や流動性の低さにも注意が必要です。

戸建て不動産投資のメリット・デメリット

中古の戸建ては価格帯が幅広く、数百万円台から始められるケースも多いため、資金が限られている方に適しています。ファミリー層や転勤者など、長期入居の見込み層に需要がある点も特長です。

また、空き家活用による地方移住を目指す投資家にも現実的な選択肢となります。

ただし、入居者がいなければ家賃収入はゼロになり、収支が不安定になります。
建物の劣化状況によっては、1部屋あたり50万〜300万円のリフォーム費用がかかる可能性もあります。

購入時には、取得税や仲介手数料などの諸経費も現金での支払いが必要な場合があるので事前に確認することをおすすめします。

大家さんになるまでの主な手順

大家になるには、物件購入だけでなく、目的の明確化・資金計画・契約・管理まで一連の手順を踏む必要があります。不動産は高額な取引であり、法律・税制・利回り計算の理解を事前に深めておくことが前提です。

知識と段取りを押さえれば、資金が少ない方でも段階的に大家業へ進めます。ここでは具体的に大家さんになるまでの手順を解説します。

①資金計画を立てる

物件価格の1〜2割に加え、取得税・仲介手数料などの諸費用も自己資金で用意します。
戸建て投資なら、500万円の物件に対して100万円以上の現金が必要になるケースが一般的です。

融資を使う場合でも、自己資金が多ければ、借入額を抑えて返済条件が有利になります。
さらに、空室時に備えた運転資金(50〜100万円)も別途確保しておくと安心です。

②物件探しと購入

予算内で物件を選ぶ際は、長期的な賃貸需要が見込める立地を重視してください。
駅からの距離・生活施設の充実度・治安・人口推移などを総合的に判断します。

戸建ての場合は、構造や築年数に応じて修繕コストを見積もることが欠かせません。
購入前には、収支シミュレーションと現地調査を実施し、実質利回りを基準に検討します。

③融資の検討と契約

物件が決まったら、融資を検討しつつ売買契約の準備に入ります。
会社員は収入が安定しているため、審査に通過しやすい傾向がありますが、頭金として物件価格の2〜3割を求められるケースが一般的です。

契約時には、宅建士から重要事項説明書の説明を受けて、法的な確認を済ませてから手付金を支払います。返済額と家賃収入のバランスを重視し、ローンの金利や頭金の比率も調整しておくことが必要です。

④入居者募集と物件管理

物件取得後は、空室期間を短くするため、速やかに入居者募集を開始します。
全国の大家の多くが、不動産管理会社に委託して客付けやトラブル対応を任せています。

賃貸条件を明確にし、入居審査を丁寧に行うことで、トラブルを未然に防ぐことができます。副業として運営する場合は、管理会社を活用しながらストレスの少ない運用体制を構築することが現実的です。

必要な資金と融資のポイント

大家業を始めるには、初期費用と融資条件を正確に把握する必要があります。
戸建て投資など低予算で始める選択肢もありますが、自己資金・諸費用・運転資金の準備が欠かせません。

金融機関からの融資を活用するには、返済能力と担保評価に応じた戦略が求められます。
キャッシュフローを意識した事業計画が、安定経営につながる基盤になります。

自己資金はどのくらい必要?

物件価格の10〜20%程度が自己資金の目安とされています。
たとえば2,000万円の物件であれば、200〜400万円の現金を用意します。
戸建て投資なら、500万円の中古物件に対して100万円以上あれば購入が視野に入ります。

購入時には、仲介手数料や取得税など物件価格の5〜10%の諸費用も別途必要です。
空室対策や突発的な修繕費に備え、50〜100万円の運転資金も確保しておくと安心です。

ローン審査で気を付けること

会社員は給与所得の安定性により、返済能力が評価されやすい傾向があります。
一方、借入可否は年収・資産・既存借入・物件評価によって決まります。

金融機関は担保物件の収益性や流動性など5原則に基づき融資判断を行います
年収の10〜20倍が借入限度の目安とされ、提携先金融機関を利用すると手続きがスムーズです。頭金は物件価格の2〜3割が推奨され、借入額を減らすことで金利条件も有利になります。

返済シミュレーションの確認

購入前に、家賃収入と支出のバランスを可視化する返済計画が必要です。
単なる表面利回りではなく、実質利回りで収益性を正確に判断します。

管理費・修繕費・税金・空室率を反映させ、収益シミュレーションを行うことで赤字リスクを回避できます。

中古物件の場合は、将来の修繕費も見積もり、計画的な積立も意識します。
頭金を増やし低金利ローンを選ぶことで、返済負担の軽減につながります。

リスクと失敗を防ぐポイント

大家業は、リスクを把握し事前に対策を講じることで失敗を防ぐことができます。特に、空室や滞納、災害による損壊などは避けられない懸念です。資金に余裕のない投資家は空室による収入途絶で経営が不安定になりやすいため、物件選びや管理体制を整える必要があります。

信頼できる不動産管理会社の選定や、設備投資による入居者確保が対策になります。ここでは、大家業における代表的なリスクと、それに対する具体策を解説します。

空室リスクへの対策

家賃収入が止まると経営が不安定になります。戸建ては1戸の空室でも収入ゼロとなるため、空室リスクは特に重くなります

立地選びでは、駅からの距離や生活施設の有無、地域の人口推移などを総合的に確認してください。築年数が古い物件は、リフォームや設備更新をして、入居者のニーズに合う仕様に整える必要があります。

インターネット無料や宅配ボックスの導入も有効です。家賃設定は周辺物件と比較して、競争力を維持してください。

入居募集や客付けは、実績ある管理会社に委託することで空室期間を短縮できます。

家賃滞納やトラブルの対応

入居後のトラブルもリスク要因です。家賃滞納やクレーム対応は、精神的負担が大きくなる傾向があります。

契約前に保証会社の利用を条件とし、家賃回収の担保を確保する仕組みを導入してください。既存入居者付き物件では、購入前に滞納履歴を確認することが必要です。

募集前には賃貸条件を明示し、ペット可否・設備使用ルールなどを事前に定めておくとトラブルを避けやすくなります。

クレーム対応や夜間トラブルには、24時間体制の管理会社との契約が有効です。

火災・災害リスクと保険の活用

自然災害や火災による損傷も、経営を揺るがす大きなリスクです。
被害発生時には多額の修繕費や建て替え費用が必要となるため、火災保険・地震保険の加入が必須です。物件選定では、ハザードマップや地盤状況を確認し、災害リスクの少ないエリアを選んでください。

築年数が経過した物件では、将来的に大規模修繕費がかさむ可能性があるため、早期から積立を計画しておく必要があります。

国土交通省の「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」などを活用し、長期修繕計画を立てることが推奨されます。

参考:民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック|国土交通省

成功する大家さんの共通点

成功する大家さんは、物件を「経営の対象」として捉え、長期的な視点で計画的に管理しています。建物の老朽化に備えて費用を積み立てるなど、利益を急がず堅実に運用している点が特徴です。

多くの業務は無理に自力で行わず、専門知識を持つ管理会社と連携して効率化を図っています。

ターゲット層に合わせた物件づくり

空室対策には、入居希望者のニーズに合った設備や間取りの整備が欠かせません。
宅配ボックスやネット無料など、需要の高い設備を導入することで物件価値を維持できます。

入居者が単身かファミリーかに応じて、設備や立地の選定基準も変わります。
物件選定前に周辺の家賃相場や競合の空室率を調査し、需要のある層を想定して準備する必要があります。

プロとの連携や管理会社の選定

安定経営には、信頼できる管理会社の活用が現実的な選択肢となります。
管理会社は家賃回収やクレーム対応を代行し、副業でも負担を抑えた運営が可能になります。

対応が丁寧か、空室対策に実績があるかなど、慎重に委託先を選定してください。
不動産業者や他の大家からアドバイスを受けるなど、周囲の知見を取り入れる姿勢も成果を後押しします。

まとめ

大家さんとして安定した副収入を得るためには、物件の選定から資金計画、リスク対策まで段階的に準備することが欠かせません。本記事で紹介した手順やポイントをもとに、少額から始められる区分投資や空き家購入など、初心者でも現実的にスタートできる手段があります。

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日本の古い住宅地では、建物を建て替えようとすると「セットバック」が必要になるケースが少なくありません。
セットバックとは、敷地の一部を道路として提供するよう求められる制度です。
所有しているにもかかわらず、自由に使えない土地が発生するという点に戸惑う方も少なくありません。
中でも、「セットバックした土地は誰のものになるのか?」という疑問は、所有権の行方や固定資産税の課税、建築制限や近隣トラブルなどに直結する、実務にも直結する見逃せないテーマです。
実際には、見た目は道路でも、法的には私有地のままという扱いになることが多く、正しく理解していないと、思わぬ不利益を被る可能性もあります。
本記事では、セットバックの定義や対象となる土地の条件から、所有権の扱い・税制上の非課税ルール・売買時の注意点・トラブル回避策まで、実務に役立つ情報をわかりやすく解説します。

この記事でわかること

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セットバックとは?

セットバックとは、不動産を取得・活用するうえで避けて通れない法的なルールの一つです。
特に、古い住宅街や狭小地を中心に「セットバックが必要な土地」は多く存在します。
セットバックの制度を正しく理解しておかないと、建築計画や売買時に思わぬ制約を受ける可能性があります。
ここでは、セットバックの基本的な仕組みと、どのような土地に必要となるのかを詳しく解説します。

セットバックの定義と目的

セットバックとは、建物を新築・増改築する際に、敷地の一部を道路として後退させることを指します。
セットバックの制度は、建築基準法第42条第2項に基づき、幅員(ふくいん)4メートル未満の道路に接する敷地に適用されます。
具体的には、敷地が接している道路の幅が4メートルに満たない場合、道路の中心線から2メートルのラインまで敷地を後退させる必要があるとされています。
制度の目的は、災害時の避難や救急車・消防車の通行を確保するための道路整備です。
古くからある住宅地では、2項道路(幅員4メートル未満で建築基準法の道路とみなされる私道など)に面した物件が多く、セットバックが必要となるケースが多数あります。
【参考:建築基準法 | e-Gov 法令検索

セットバックが必要となる土地の条件

セットバックの対象となる土地には、以下のような条件があります。

セットバックの対象となる土地

重要なのは、セットバックの判断は建築確認申請時に行政が行うため、事前の相談や確認が必須という点です。
「後から知って慌てる」という事態を避けるためにも、不動産購入や建築計画の初期段階で専門家や自治体と連携することが大切です。

セットバックした土地は誰のものになる?

セットバックによって道路として使われる部分の土地は、誰の所有になるのでしょうか?
「他人のものになるのか?」「税金はどうなるのか?」といった疑問は、多くの所有者や投資家にとって気になるポイントです。
ここでは、セットバック後の土地の所有権の取り扱い、固定資産税の課税有無、建ぺい率などの法的制約について、実例を交えながらわかりやすく解説します。

所有権は個人のまま残るのが基本

セットバックによって後退した土地は、見た目には道路の一部となりますが、法的には所有者個人の私有地として扱われます
セットバック=所有権の移転と誤解されることもありますが、これは正しくありません。
寄付などの手続きを経ない限り、土地は所有者の私有地として残ります。
ただし、建物や塀の設置は禁止され、通行の妨げとなる利用も制限されるため、自由に使うことはできず、土地としての資産価値も制限を受けることになります。

非課税になる固定資産税

後退部分の土地は、実質的に道路として機能していることから、固定資産税が非課税となるケースが一般的です。
固定資産税が非課税となるのは、各自治体の課税要綱にもとづき、一定の条件を満たした土地が「公共用地扱い」とされ、課税対象から除外される仕組みがあるためです。
ただし、自治体によっては自動適用ではなく申請が必要な場合もあるため注意が必要です。
評価対象から外れていても、所有者が申告を行わなければ課税されてしまうこともあるため、必ず確認しましょう。
【参考:道路非課税の申告をお願いしています|固定資産税・都市計画税(土地・家屋)|東京都主税局

建ぺい率・容積率への影響

セットバックが求められる土地では、敷地面積が小さくなることで、建ぺい率や容積率にも影響が出る可能性があります。
建ぺい率・容積率は、「敷地面積」に対する建物の大きさや延床面積の割合を示す都市計画上の制限です。
建ぺい率とは、敷地面積に対して建築面積(建物が地面と接している部分)が占める割合、容積率とは、敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合を指します。
セットバックによって敷地面積が減少すると、これらの制限も厳しくなり、建てられる建物の規模が小さくなるため、建築計画に大きな影響を及ぼします
たとえば、以下のような影響が考えられます。

項目 通常の土地 セットバック後の土地
敷地面積 100㎡ 90㎡(10㎡後退)
建ぺい率 60% 60㎡まで建築可 54㎡までに制限される
容積率 150% 延床150㎡まで可 延床135㎡までに制限される

このように、セットバックは建築計画全体に影響を及ぼすため、土地購入前の調査が非常に重要です。

【参考:建築基準法制度概要集

売買・建て替え時に知っておくべきこと

セットバックが必要な土地は、通常の土地と比べて、売却や建て替え時に特有の制約やコストが発生します。
知らずに購入・売却を進めると、「建物が思ったより建てられない」「思ったより安くしか売れない」といった問題が起こる可能性もあります。

ここでは、セットバックが土地の売買価格や建築計画にどのような影響を与えるのかを解説します。あわせて、混同されやすい「私道負担」との違いや、近隣トラブルを防ぐための注意点についても整理してお伝えします。

売買価格への影響と注意点

セットバックが必要な土地は、「有効宅地面積が狭くなる」「建築の自由度が下がる」といった理由から、同じ広さの土地でも市場価格が安くなる傾向があります。

以下のような影響があります。

さらに、不動産広告や売買契約書では、「セットバック要」「要後退」などの表記がされ、瑕疵ではなく「現状有姿」として取引されるのが一般的です。
買主が建築を前提としている場合、セットバックが必要であることを把握していないと、購入後に建築不可となるリスクがあります。
売主としては、建築可能範囲や行政との協議の内容を、事前に明確に提示しておくことが求められます。

私道負担とセットバックの違い

セットバックと混同されがちな概念に「私道負担(しどうふたん)」があります。
どちらも土地の一部に建物が建てられないという点では共通していますが、性質と扱いはまったく異なります。

項目 セットバック 私道負担
原因 建築基準法による道路後退義務(道路幅員4m未満) 通行確保や接道義務を満たすための私道使用
所有権 原則として個人の所有地(寄付しない限り移転しない) 共有持分や通行承諾付きが一般的
固定資産税 非課税になる場合が多い(自治体による) 課税対象となるケースが多い
不動産表記 「要セットバック」「SB」など 「私道負担あり」「私道持分あり」など
使用の自由度 道路機能を妨げる用途不可(構造物の設置・占有は禁止) 通行確保を条件に、共有者間の合意である程度使用可能

セットバックは公共性を確保するための義務的な制度である一方、私道負担は土地の立地・通行事情により個別に設定される調整的な負担です。
どちらも不動産の資産価値や利用可能面積に影響を与えるため、購入時には「どのような形で土地の一部が制限されているか」をしっかり確認することが重要です。

近隣トラブルを防ぐためのポイント

セットバックを行う際、後退部分が「見た目は道路」になることで、近隣住民との認識のずれやトラブルが生じることがあります。
たとえば以下のようなトラブルが考えられます。

これらを防ぐためには、以下のポイントを意識する必要があります。

「道路として提供しているが私有地である」という認識の共有が、近隣トラブル防止のカギとなります。

よくある質問

セットバックに関しては、専門的な法律や税制が関わるため、実際に土地を所有している方や購入を検討している方から、さまざまな疑問が寄せられます。
ここでは、特に多くの方が悩む4つの質問に対し、具体的かつわかりやすく回答します。
事前に疑問を解消しておくことで、トラブル回避やスムーズな不動産取引につながります。

セットバックした土地は私有地ですか?

はい、セットバックした土地は原則として私有地のままです。
セットバックとは、建築基準法に基づいて敷地の一部を道路として後退させる制度ですが、
後退部分の土地は、特別な手続きをしない限り所有者にそのまま帰属します。
ただし、以下のような制限があります。

こうした制限が課されるため、実態としては「使えない私有地」となり、土地の自由度が制限されます。

セットバックした土地を自治体に寄付できますか?

セットバックによって道路として使用される部分の土地について、自治体へ寄付できる可能性はあります。
ただし、自治体ごとに対応は異なり、、条件を満たすことで寄付が可能となる場合がある一方で、原則として寄付を受け付けていない自治体も存在します。
たとえば、神奈川県横浜市では「横浜市道の認定、廃止及び区域変更基準」などの条件を満たす必要があることが明記されています。
一方、愛知県安城市では「狭あい道路拡幅整備協議」において、私道に接する後退用地の寄付は受け付けていないことが明記されています。

【参考:私道の寄附(公道移管)・ 道路敷地の払下げ 横浜市
【参考:安城市/狭あい道路拡幅整備
また、以下のような条件を満たす場合には、個別判断により寄付が認められる可能性があります。

寄付が認められるための主な条件 内容の説明
公共性の認定 道路拡幅や防災機能向上など、公益性があると自治体に判断される必要がある
測量・整備の完了 寄付対象部分が境界確定済みかつ整備済みで、トラブルのリスクがない状態である
隣接地との整合性 接道状況や隣接する土地との間で物理的・法的に支障がない
費用は所有者負担 測量・登記・境界確認など、寄付にかかる諸費用は原則として寄付者が負担する

なお、寄付が受け入れられた場合でも、受理までに時間がかかることがあり、すべてのケースでスムーズに進むとは限りません。
セットバック部分を寄付したい場合は、まず所轄の市区町村の道路管理課や都市整備課に事前相談することが不可欠です。

セットバックの管理責任は誰にある?

セットバックによって後退した土地の管理責任は、原則として所有者にあります。
たとえ見た目が道路の一部となっていても、所有権が自治体などに移っていない限り、清掃・除草・不法投棄対策などの管理は土地所有者が行う必要があります。
ただし、以下のような例外があります。

・寄付などにより、土地の所有権が自治体へ移転している場合
・都市計画事業等により、道路整備が完了し、管理主体が明確に変更されている場合

このように、セットバック部分は「他人の通行のために使われる私有地」という特殊な位置づけとなります。
境界の明示や立ち入り制限の確認、日常的な管理を怠らないことがトラブル防止に不可欠です。

セットバックした土地は分筆しない方がいいですか?

セットバック部分の土地については、原則として分筆しないまま管理するケースが多くなっています。
建築基準法上の「道路とみなす部分」として扱われるため、建物を建てられず、土地としての独立した利用価値が低いからです。
ただし、以下のようなケースでは分筆を検討することも可能です。

・不動産売買や相続の場面で、評価・登記整理が必要な場合
・自治体に土地の寄付をする際に、境界の明確化が求められる場合
・税務処理上の資産区分を整理したいとき

ただし、分筆にはメリットもデメリットもあるため、状況に応じた判断が必要です。
以下に、主な利点と注意点を整理しました。

メリット デメリット
建築用地と道路用地を登記簿上で明確に区別できる 測量や登記に関わる費用が発生する
固定資産税や資産評価の区分がしやすくなる 将来的に買主から敬遠される可能性がある
寄付や活用を前提とした資産整理が行いやすくなる 自治体によっては分筆を推奨していない、あるいは認めない場合がある

分筆の可否や必要性は、税理士・土地家屋調査士・不動産業者などの専門家に相談したうえで判断するのが最も確実です。

まとめ

セットバックは、狭あい道路に面する土地を所有・購入・建て替えするうえで非常に重要な制度です。

後退によって土地の一部が使用制限を受けるにもかかわらず、所有権はそのまま残るため、税金や管理の面で見落としがちな負担が発生する可能性があります。
特に注意すべき点は以下のとおりです。

・セットバック部分の所有権は個人に残るが、建築や利用には制限がある

・多くの自治体で固定資産税は非課税扱いだが、申請が必要な場合もある

・有効宅地面積が減るため、建物の規模や資産価値に影響を与える

・私道負担との違いや近隣との境界トラブルにも注意が必要

これらを踏まえ、購入前の情報収集や行政との事前確認がとても重要になります。
また、相続や売却時には、建築制限や資産評価を正しく理解したうえで、状況に応じた適切な判断が大切です。

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戸建て投資を検討している際、購入を考えている物件の敷地内に電柱が立っているのを見て、以下のような疑問に思う方もいるのではないでしょうか。

「賃貸物件としての価値や将来の売却に影響はないか」
「電柱敷地料が収益の一部になるのか」

電柱がある土地では、電力会社や通信事業者(NTT東西など)から「電柱敷地料」という形で使用料を受け取れるメリットがある一方で、景観の悪化や資産価値の低下といったデメリットも存在します。

本記事では、電柱敷地料の基礎知識から、電柱がある土地の購入・売却におけるメリットとデメリット、さらには移設・撤去の可能性や税金・確定申告について詳しく解説します。

資金は少ないが不動産事業に挑戦したい方や、副業として戸建て投資を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

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電柱敷地料の基礎知識

電柱敷地料
電柱敷地料とは、電柱の設置スペースを提供する土地所有者に支払われる賃料であり、不動産投資における副収入のひとつになります。

ただし、電柱の設置位置や本数によっては、賃貸物件としての見た目や売却時の評価に影響する可能性もあるため、収益面だけでなく物件全体への影響も考慮すべきです。

そもそも電柱とは?設置目的と管理主体

電柱敷地料を正しく理解するには、電柱の役割と管理会社の違いを知る必要があります。

電柱には主に2種類あり、電力会社が電気の供給のために設置する「電柱(電力柱)」と、通信会社が通信ケーブルを通すために設置する「電信柱」があります。都市部などでは、両方の用途を兼ねた「共用柱」も使われており、電力会社と通信会社のプレートが一緒に掲示されています。

各電柱には管理者名や電柱番号が記載されたプレートが付いており、管理会社に連絡する際はこの電柱番号を控えることで手続きがスムーズになります。敷地内にある電柱がどの会社の管理下にあるのか、事前に確認しておいてください。

電柱敷地料の仕組みと算定方法

電柱敷地料とは、電力会社や通信会社が敷地内に設備を設置する見返りとして支払う地代です。金額は法令(電気通信事業法施行令など)により基準が定められており、所有者側からの個別交渉による増額はできません。

金額は、地目(宅地・田・畑・山林など)ごとに年間料金が異なり、敷地の用途によって決まります。支払い方法は通常、3年分をまとめて一括で振り込まれるケースが多く、一部の事業者では毎年の支払いも選択可能です。

敷地料を受け取るには、土地所有者が契約手続きをする必要があり、電柱番号を確認のうえ、各事業者に連絡して申請を進めます。

電柱敷地料はいくらもらえる?

電柱敷地料は地目ごとに異なり、宅地は年間1,500円、田は1,870円、畑は1,730円です。

戸建て投資の場合は宅地である場合が多く、電柱1本で年間1,500円、3年で4,500円が支払われます。支線も1本としてカウントされるため、電柱と支線の本数分だけ敷地料が加算されます。

大手電力会社や通信会社も、基本的に同じ料金体系を採用しています。

参考:電気通信事業法施行令(昭和六十年政令第七十五号)(抄)|総務省

電柱がある土地を購入するメリット

空き家や戸建ての敷地内に電柱が設置されている土地は、見た目や利便性に課題があるように感じるかもしれません。しかし、不動産投資の視点から見ると、電柱敷地料による定期収入や、売買時の価格交渉が可能になる点など、複数の利点があります。

電柱を障害と決めつけるのではなく、収益向上の機会としてとらえることで、資金効率を高めた運用が可能です。

メリット①:電柱敷地料が継続的に入る

敷地に電柱が設置されていると、電力会社や通信会社から年間1,500円前後の電柱敷地料が支払われます。支線がある場合は別途料金が加算され、多くのケースで3年分を一括で受け取る形式です。

電柱敷地料の収入は空室や解約の影響を受けず、不動産収益に上乗せできる安定した副収入になります。ただし、受け取るには電柱番号を控えて申請し、管理会社と契約を交わす手続きが必要です。

未申請のままでは支払対象外となるため、電柱の有無と契約状況を事前に確認しておくことが重要です。

メリット②:価格交渉ができる可能性

電柱がある土地は、景観や使い勝手の面で敬遠される傾向があり、市場価格が下がる可能性があります。この特徴を踏まえると、購入時に値下げ交渉の根拠として活用しやすくなります

実際に相場よりも安く取得できれば、投資初期の資金負担を抑えつつ利回りの向上につながります。投資効率を重視する層にとって、大きな魅力となる要素です。

なお、すでに価格に反映済みの可能性もあるため、現地調査や売買履歴の確認などをして、冷静に判断することが求められます。

電柱がある土地を購入・売却するデメリットと注意点

空き家や戸建ての敷地に電柱がある場合、電柱敷地料による収入が見込める反面、いくつかのデメリットも存在します。景観の悪化や動線の制限、定期的な作業員の立ち入りが生活環境に影響する可能性があります。

物件の購入・売却を検討する際は、収益面だけでなく、これらの影響も踏まえて総合的に判断することが、不動産投資の安定運用につながります。

デメリット①:景観や安全面への影響

電柱や電線が視界に入ると、建物の外観や開放感が損なわれる可能性があります。室内からの眺望にも影響し、住環境に対する印象が悪くなる場合があります。また、電線には鳥が集まりやすく、糞による外壁や屋根の汚損、修繕費の増加も懸念されます。

支線がある場合は、人の出入りや駐車の動線が制限されるケースもあり、敷地設計の自由度が下がります。駐車場の出し入れが難しくなる場合もあるため、日常の利便性にも注意が必要です。

こうした影響は、賃貸募集時の印象や競争力に影響する要因になり得ます。電柱の配置や支線の位置は、物件選定時に確認すべきポイントの一つです。

デメリット②:資産価値の低下や作業員の立ち入り

電柱がある土地は、景観や利便性の面から資産価値が下がる可能性があります。移設が困難な場所にある場合や、周辺との位置関係が悪い場合は、買い手から敬遠される傾向があります。

また、定期的な点検や緊急工事の際には、電力会社や通信会社の作業員が敷地に立ち入ります。通常は事前連絡がありますが、停電や故障などの緊急対応では、夜間の立ち入りが発生する場合もあります。こうした状況に対して、入居者がプライバシーの不安を感じるケースも少なくありません。

このような要素は、物件の募集活動や将来の売却時にマイナスに作用する可能性があります。戸建て投資家は、収益性だけでなく、こうしたリスクも含めた判断が求められます。

電柱の移設や撤去は可能?手続きの流れ

電柱は公共インフラであるため、個人の都合だけで移動や撤去はできませんが、条件を満たせば対応可能です。新設の拒否や敷地内での位置変更、撤去などには事前の協議が求められます。

手続きは、まず電柱に貼られたプレートで管理会社と電柱番号を確認し、電力会社や通信事業者に連絡するところから始まります。移設の可否や対応方法は、現地確認のうえ事業者側が判断します。

現実的には、同一敷地内での移動が主な対応となり、公道への移設は安全性や条例の観点から難航するケースが多くあります。実施できたとしても、工事費は20万〜25万円程度の自己負担となる場合があります。

一方、敷地内での移設は原則費用が発生せず、生活動線の確保や建築計画に応じた柔軟な対応が可能です。スムーズな交渉のためにも、電力会社とは対立ではなく協力の姿勢で調整を進めることが大切です。

参考:電柱移設などのお申込み|東京電力パワーグリッド

電柱敷地料と税金・確定申告の関係

電柱敷地料は、設置されている土地の地目に応じて金額が定められており、宅地では1本あたり年間1,500円が基準とされています。支払いは電力会社ごとに異なり、多くは3年分をまとめて振り込む形式です。

受け取りには、所有者から電柱番号を添えて申請し、管理会社と契約を結ぶ必要があります。契約が完了していなければ、電柱があっても敷地料は発生しません。

電柱敷地料の収入は不動産所得に分類され、給与以外の副収入が年間20万円を超える場合は、確定申告の対象となります。電柱敷地料も申告が必要な副収入に含まれるため、忘れずに記載してください。

また、財務省は国有地を電柱敷地として貸す場合の基準を通達で示しており、電気通信事業法施行令や電力会社の内規に基づく金額で対応されています。金額はあらかじめ法律で定められているため、個別の交渉による増額は認められていません。

参考:No.1370不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)|国税庁

まとめ

本記事では、電柱敷地料の基本的な仕組みや、電柱がある土地の利点・不利な点、移設の可否、税金との関係までを整理しました。

宅地に設置された電柱には、年間1,500円程度の敷地料が発生し、多くのケースで3年分で支払われます。安定収入になる反面、景観や使い勝手の悪化、作業員の立ち入りといった懸念も無視できません。

移設は可能な場合もありますが、工事費や近隣対応を含めた検討が必要です。また、敷地料は不動産所得に含まれ、副収入が年間20万円を超える場合は確定申告が必要になります。

電柱がある土地を購入する際は、収入とリスクの両面を見極めたうえで、自身の投資方針に合うかどうかを判断してください。

空家ベースは空き家を売りたい人と買いたい人を繋ぐプラットフォームです。全国の物件が対象となっているため、都市部に限らず、郊外の不動産も公開・掲載ができます。不動産事業に興味のある方は、ぜひ一度お問い合わせください。

さらに、投資用物件をお探しの方にとっても、空家ベースは有益な選択肢です。収益物件としての可能性を持つ空き家を見つけたい場合は、ぜひ空家ベースの掲載情報をご覧ください。

ペット可賃貸は一見すると人気物件を作れる手堅い投資先のように思えますが、安易に始めると経営の失敗につながるおそれもあります。空室対策や家賃アップの可能性がある一方で、原状回復や近隣トラブルなどのリスクも見逃せません。

本記事では、ペット可賃貸のメリットとデメリットを客観的に整理し、収益性を高めながらもトラブルを回避するための具体策を紹介します。これから物件活用を考える方にとって、ペット可物件が本当に適した戦略かどうかを見極める判断材料としてお役立てください。

この記事でわかること

空家ベースは空き家を売りたい人と買いたい人を繋ぐプラットフォームです。全国の物件が対象となっているため、都市部に限らず、郊外の不動産も掲載可能です。不動産事業に興味のある方は、ぜひ一度お問い合わせください。

さらに、ペット可対策をしながら投資用物件をお探しの方にとっても、空家ベースは有益な選択肢です。収益物件としての可能性を持つ空き家を見つけたい場合は、ぜひ空家ベースの掲載情報をご覧ください。

ペット可賃貸の需要は増加傾向にある

ペット可賃貸
戸建て賃貸市場では、ペット可物件に対する入居者のニーズが明確に高まっています。
犬を例にあげると新規飼育数はここ数年で増加しており、ペットとの生活を希望する世帯が都市部・地方を問わず増えています。

一方、全国の賃貸住宅全体においてペット可物件が占める割合は依然として少なく、物件数が供給不足の状態が続いています。
集合住宅では管理規約によりペット飼育が制限されるケースも多く、入居希望者が諦めざるを得ないケースも目立ちます。

こうした背景から、ペット可戸建て賃貸への潜在的な需要は大きくなっており、賃料単価の維持や長期入居につながる可能性もあります。
需給ギャップを適切に捉えることで、空室リスクを抑えつつ、周辺エリアとの差別化を図る施策として不動産投資の運用効果が期待できます。

参考:令和6年(2024年)全国犬猫飼育実態調査_主要指標サマリー_4頁|一般社団法人ペットフード協会
参考:LIFULL HOME’S がペットとの住まい探しの実態調査を発表!ペット可物件のニーズを不動産会社は実感しつつも、物件数は全体の2割に届かず。|LIFULL

ペット可賃貸の3つのメリット

ペット可賃貸 メリット
ペット可の戸建て賃貸は、収益性と競争力の両面で投資家に有利な選択肢です。
空室リスクを軽減しやすく、長期入居を見込めることに加え、初期費用の調整による利回り確保にもつながります。競合が多いエリアでも差別化が図れ、他物件と比較して選ばれやすくなるのが利点です。
また、原状回復コストを見込んだ家賃・敷金の設定により、収支計画の精度も上げやすくなります。
少子高齢化や単身世帯の増加を背景に、市場縮小が見込まれる中でも、ペット需要を捉えた運用は、将来を見据えた合理的な経営判断といえます。

空室対策と入居率の向上につながる

ペット可の戸建て賃貸は、空室対策として有効な手段のひとつです。一般社団法人ペットフード協会の調査では、犬の新規飼育数は近年増加しており、ペットオーナーが拡大しています。一方、ペット可賃貸の割合は供給が不足しています。

集合住宅では規約上ペット飼育が難しく、多くの希望者が戸建てに流れる状況です。このようなニーズを捉えて物件を貸し出せば、「ペット可」という条件自体が強力な訴求ポイントとなり、他物件との差別化が可能です。その結果、一般的な不便や築年数の古さといった欠点も受け入れられやすくなり、空室リスクの低減につながります。

参考:令和6年(2024年)全国犬猫飼育実態調査_主要指標サマリー_4頁|一般社団法人ペットフード協会

長期入居による安定経営を目指せる

ペット可物件に住む入居者は、飼育環境の変化を避けたいという思いから、長く住み続ける傾向があります。条件に合う賃貸物件が限られるため、一度契約した物件に定着しやすいのが特徴です。ペット可物件は、長期入居による空室期間の短縮が見込めます。

また、入居者の入れ替えが減少すると、原状回復費や広告費の頻度も減り、コスト面でも有利です。結果として、毎月の家賃収入が安定し、収支予測の精度が高まります。安定収益を目指す戸建て投資家にとって、長期入居の傾向は収益基盤の強化に直結する要素です。

家賃・敷金の引き上げで収益アップを目指せる

ペット可の戸建て賃貸は、家賃や初期費用を高めに設定しても需要が維持されやすい傾向があります。ペット不可物件と比較して供給が少なく、相場より5〜10%高い家賃設定が可能になる場合もあります。また、退去時の原状回復費用は1.5〜2倍になるケースがあり、100万円近くに達する場合もあります。

これに対応するため、「ペット敷金」や追加の礼金などを設定し、初期費用を確保しておくと安心です。修繕費の備えとなり、実質的な利回り低下を防げます。加えて、契約書には国土交通省のガイドラインに沿って、原状回復の範囲や責任分担を特約として明記するのが欠かせません。入居前に合意を得ることで、退去時のトラブル回避と収益の安定化が両立できます。

参考:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について|国土交通省

ペット可賃貸のデメリットと経営上のリスク

ペット可賃貸 デメリット
戸建て賃貸をペット可に設定する場合、空室対策や収益性向上といったメリットと引き換えに複数のリスクを抱えることになります。物件の損耗や近隣トラブルへの対応、運用方針の柔軟性の低下といった問題は、経営の安定性を損なう原因になりかねません。

特に修繕コストの増加や他入居者の退去リスクは、長期的な資産価値や収益力にも影響を与えます。また、一度ペット可として運用を始めると、後から方針を変えることが難しく、結果として運用の自由度を損ねる恐れがあります。導入前には、収支シミュレーションだけでなく、中長期的な視点での判断が求められます。

原状回復費用と修繕コストが増大する

ペット可賃貸にすると、退去時の原状回復費用や修繕コストが想定以上に膨らむ可能性があります。爪による壁や柱の傷、床へのマーキング、尿の臭いなど、ペット特有の損耗は一般の賃貸物件よりも補修内容が広範囲になります。

フローリングやクロスの張り替え、消臭クリーニングなどの費用は合計で数十万円以上になることも珍しくありません。中には原状回復費用が通常の1.5〜2倍、100万円近くに達するケースもあります。国土交通省のガイドラインでは、通常使用を超える損耗は借主負担とされていますが、入居時の契約内容次第では回収が困難になる場合もあります。

トラブルを防ぐためには、賃貸借契約書にペット飼育に関する特約を明記し、ペット敷金の徴収や負担割合の取り決めなど、具体的な条件をあらかじめ合意しておくことが不可欠です。

近隣トラブルとクレーム対応が大変

ペットの飼育を許可した賃貸物件では、騒音・臭い・毛の飛散などが原因で、他入居者や近隣住民との間にトラブルが発生するリスクが高まります。集合住宅の場合、犬の鳴き声や足音が騒音クレームに発展しやすく、隣戸・上下階との関係悪化につながるおそれがあります。

アレルギーや衛生面への懸念からペットに否定的な入居者がいる場合、退去や苦情対応の負担がオーナーにかかってくる可能性もあります。もともとペット不可だった物件を途中から条件変更すると、既存の入居者とのトラブル発生リスクが高まり、引っ越し費用の請求といった想定外の対応も必要になる場合があります。

途中から条件変更する対応は、入居率や物件の評判にも悪影響を及ぼします。そのため、入居前に飼育予定の有無を確認したり、共用部分でのルールや飼育マナーについて規約を定め、説明を徹底するなど、事前の仕組みづくりがオーナーに求められます。

ペット不可への変更は難しい

ペット可物件として一度運用を始めると、後からペット不可に変更するのは難しくなります。入居中の飼育者がいる限り条件変更はできず、契約期間が残っている場合も制約を受けます。

仮に全室退去したとしても、ペットの臭いや汚れを完全に除去するためには、大規模な消臭や修繕が必要になるケースが多く、追加コストがかかります。さらに、物件が過去にペット可であった事実は、ペットを飼わない希望者にとって不安要素になりやすく、集客にも影響します。

「ペット不可」として募集しても、消臭不足やトラブル履歴によって敬遠される場合もあります。こうした背景から、ペット可への変更は慎重な検討が求められ、原状復帰が困難である点を踏まえた長期的な運用判断が欠かせません。

成功事例に学ぶ!トラブルを防ぐための対策

ペット可賃貸 成功するポイント
ペット可賃貸を運営する際は、事前の対策次第でトラブルを回避し、安定収益につなげられます。ペットによる物件の損耗や近隣トラブル、退去時の高額な原状回復費用は、入居前の取り決めと物件設備の工夫、保険による備えによってリスクを軽減できます。

具体的には、賃貸借契約書に明確な飼育ルールを定めること、ペット対応設備をあらかじめ導入すること、火災保険や賠償責任特約などを活用して法的リスクを軽減することが求められます。事前の準備を徹底すれば、デメリットを抑えながらペット可賃貸の長所を活かした運営が実現できます。

契約書に盛り込むべきペット飼育ルール

ペット可賃貸を円滑に運営するには、賃貸借契約書に明確な飼育ルールを記載し、入居者と合意形成を図ることが不可欠です。

対象となる動物の種類・サイズ・頭数は、「小型犬・猫のみ可」「2匹まで」などの具体的な条件で制限します。また、共用部でのマナーも明文化し、「ベランダでの毛づくろい禁止」や「玄関・エレベーターではキャリー使用」などの行動ルールを設定します。さらに、原状回復に関しては、国土交通省のガイドラインを根拠に、ペット由来のキズや臭いは借主負担とする旨を特約で明記し、金額の目安まで具体的に示すのが望ましいです。

オーナーは契約時にルールを丁寧に説明し、入居後の確認体制も整えることで、トラブルを未然に防ぐことができます。

初期投資でトラブルを予防する

ペット可賃貸でのトラブルを防ぐためには、設備面の初期投資による予防策が有効です。

たとえば、ペットの足音を軽減し、傷が付きにくいクッション性のある床材の採用や、消臭効果のある壁紙の設置は、物件の損耗を抑えながら快適性も確保できます。また、防音・防臭の強化、ペット用の足洗い場などの導入により、近隣住民への配慮と入居者満足の両立が図れます。

設備面の工夫は、競合との差別化にもつながり、集客力や家賃設定の面で優位に立てます。初期費用はかかりますが、退去時の修繕費用の削減や長期入居による収益安定を考慮すれば、合理的な投資といえます。

オーナー保険と法的リスクヘッジ

ペット可賃貸を安定運営するには、保険と契約上の対策を組み合わせたリスクヘッジが欠かせません。

基本的な火災保険・地震保険に加えて、第三者に損害を与えた際の「賠償責任特約」や、災害による空室で家賃収入が減る場合の「家賃収入特約」などを活用すると安心です。さらに、退去時の費用負担に備えて、契約書にペット飼育のルールと負担条件を明記し、入居時に明確な同意を得ておくことも必要です。

保険と契約上の対策により、突発的な損害や法的トラブルに強い経営体制が整います。リスクに備える姿勢は、投資物件の資産性と収益の安定を守るうえで欠かせないポイントです。

まとめ|ペット可賃貸は儲かる?最終的な判断のポイント

戸建て賃貸をペット可に設定すると、空室対策や長期入居につながり、家賃や敷金を上乗せできる可能性があります。ペットの飼育増加により需要は高まっており、入居率や収益性の改善を期待できます。一方で、物件の損耗による原状回復費用が通常の1.5〜2倍、100万円前後に及ぶケースもあります。また、鳴き声や臭いによる近隣トラブル、ペット不可への変更が難しくなる運用リスクも無視できません。

これらに対応するには、契約書に飼育条件や原状回復の特約を明記し、入居者と具体的に合意しておくことが必要です。あわせて、傷や臭いに強い床材や壁紙など、予防的な設備導入も効果的です。さらに、賠償責任特約や家賃収入特約の活用、長期修繕計画の策定、修繕共済や保証制度の導入により法的リスクを軽減できます。

収益とリスクを総合的に評価し、対策を講じた上で運用方針を定めることが、ペット可賃貸での投資を成功させるポイントです。

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賃貸物件の多くは洗濯機の設置スペースが確保されており、室内で洗濯するライフスタイルが一般的です。
しかし築年数が古い物件はベランダなど室外に洗濯機を設置するタイプも多く、戸惑ってしまう人も多いです。
アパートによっては室外に置くことができないケースもあり、コインランドリーを利用しなければ洗濯できない物件も少なくありません。
室内に洗濯機がある生活に慣れている人にとっては違和感のある物件に見えてしまいますので、洗濯機の置き場所がない物件で不動産投資を行う際には注意が必要です。
洗濯機の置き場や洗濯パンがないことが入居者が集まらない原因になることもあり、リフォームによって設定場所を確保するなど対処法を検討することもポイントです。
この記事では洗濯機置き場がない物件で不動産投資を行う際の注意点と、洗濯機置き場の設置方法と費用について解説します。
築年数の古い物件を購入して収益化する予定のある人は参考にしてください。

この記事で分かること

空家ベースは不動産事業にチャレンジしたい人や、地方に空き家を買って移住したい人に日本全国の空き家を紹介するポータルサイトです。
空家ベースは空き家再生を通して空間を作ることの楽しさを広め、起業へのファーストステップを応援します。
公式LINEでは未公開物件の配信なども行なっていますので、ぜひ登録してチェックしてください。

洗濯機置き場がない物件の問題点

洗濯機置き場がない物件
都市部にある一部の賃貸を除いて室内で洗濯機を使うのが一般的なライフスタイルとなっており、人によってはそのまま洗濯物を室内で干すこともあります。
洗濯機が室内にある環境で生活してきた人は多く、洗濯するために屋外へ出たりコインランドリーを利用することに違和感を感じる人は少なくありません。
そのため内覧時に検討物件から外れてしまうこともあり、不動産会社も洗濯機置き場がない物件はおすすめしにくいというデメリットがあります。
その結果入居率が下がってしまい収益計画が不安定になり、計画通りに利益を得られない原因にもなりかねません。
また、洗濯機置き場がない物件は将来収益物件として売却する際にも買い手が見つかりにくく、相場よりも安い金額で売却する可能性が高くなってしまいます。
このように洗濯機置き場の有無は賃貸経営において重要なポイントとなっていますので、洗濯置き場の無い物件は対策が必要といえます。

室内洗濯機置き場を設置するメリット

防水パン
洗濯機置き場がない物件は借り手が見つかりにくいですが、リフォームによって設置スペースを確保することで改善することは可能です。
こうした工夫により築年数の古いアパートであっても収益性を向上させることができ、不動産投資の観点からも大きなメリットとなります。
また室内で洗濯機を稼働させることで騒音対策や振動対策にもなり、近所トラブルを減らせる効果も期待できます。
この章では洗濯機を設置することで得られるメリットについて詳しく解説しますので、洗濯置き場のないアパートの経営者はチェックしてください。

入居率アップと安定経営につながる

洗濯機を室内に置くライフスタイルは一般的であるため違和感なく内覧を進めることができ、賃貸契約の成約率がアップします。
入居者が増えれば増えるほど家賃収入は増加しますので、賃貸経営において入居率の向上は重要なポイントといえます。
また、入居者が快適に暮らすことができるようになりますので長期間契約してくれるようになり、空室リスクを減らせるという効果も期待できます。
このように、洗濯機置き場を設けることで入居率が低い部屋の収益を改善できるという点が、大きなメリットです。

物件の資産価値向上

配管工事をして排水と給水口を設置し、どのようなタイプの洗濯機も設置できるようにすることでアパートの資産価値は高くなります
賃貸経営の収益計画は家賃+売却益でプラスになるよう設計することが多く、将来高く売ることができれば家賃の収入が低くても利益を得ることができます。
収益物件の資産価値向上はこのような理由から常に検討しておくべきポイントといえますが、洗濯機置き場の設置は資産価値向上に加えて入居率もアップするため、おすすめです。
なお、最近の洗濯機は漏水する可能性が低いため、防水パンを設置しないリフォームが増えています。

水漏れ・騒音リスクの低減

家電量販店にある洗濯機は室内で使用することを前提にしていることが多く、室外で使用すると内部に水が侵入したり水漏れすることもあります。
このようなトラブルが起きると階下の住民に被害が出てしまい、さらに漏水によって建物が劣化してしまうことも考えられます。
また洗濯機は意外と稼働時の音が大きく、近隣住民の目を気にしながら洗濯しなければなりません。
室内に洗濯機を設置することでこうした問題を解決することができ、洗濯機を長持ちさせつつ気軽に洗濯することができるようになります。
これ以外にも人の目を気にせずに洗濯できることから、セキュリティ対策にもなるという点がメリットです。

室内洗濯機置き場の設置方法と費用

リフォーム 費用
洗濯機置き場を設けることで入居者は安心して洗濯することができ、長い間住み続けてくれるようになります。
また資産価値が向上するというメリットもありますので、洗濯機置き場がないアパートはなるべく設置スペースを設けることをおすすめします。
ただし洗濯機置き場は室内のどこに設置しても良いわけではなく、生活動線が良くなる場所を選ぶのがポイントです。
また設置にかかる費用や期間についても事前に調べておき、計画的に工事をする必要があります。
場合によっては工事の内容を住民に説明することもありますので、納得のいくリフォームプランを検討することが大切です。
この章では洗濯機置き場をリフォームによって設置する際のチェックポイントと費用、期間について解説します。

リフォームで室内に新設する際のチェックポイント

洗濯機を置くためにはまずコンセントが必要となり、さらに排水ホースと排水口、給水の蛇口が設置可能であることが重要です。
そのため物件の構造によってはどこにでも設置できるわけではなく、適切な場所でなければ必要以上の工事費用がかかってしまうこともあります。
一般的には水栓設備や配管が既にある手洗い場や洗面台、脱衣所、浴室の近くに設置することが多く、難しければキッチンの横などもおすすめです。
配管の位置などは業者でなければ把握できないことも多いことから、洗濯機の置き場を設置する場合は早い段階でリフォーム業者に相談することをおすすめします。

どこに作る?設置場所の選び方

入居者が暮らしやすい場所に設置することで入居率を向上させることができますので、なるべく生活動線が良くなる場所に設置するのが望ましいです。
また、洗濯機を置くことで湿度がこもってしまうリスクもありますので、換気しやすいスペースであることもチェックしておく必要があります。
このことからも設置する前には事前に自分で住んだケースをイメージし、動線や生活スペースに影響がないか確認しておくことが大切です。
これ以外にも家電量販店で一般的な洗濯機の内寸や高さといったサイズを調べ、ドラム式も含めて設置できるかチェックしておくことも大事なポイントといえます。

リフォーム費用と期間の目安

洗濯機置き場の設置にかかる時間は約1時間程度ですが、戸数や階層によって変動します。
また近隣住民やアパートの住民の生活に影響が出ないよう配慮する必要がありますので、余裕を持った計画を立てておくことがポイントです。
また、洗濯機置き場の設置には「防水パン」「水栓」「給排水管」「コンセント」「復旧工事」「諸経費」がかかり、内容と相場は次のとおりです。

工事名称 工事の内容 相場
防水パンの設置 洗濯機の漏水に対策できる防水パンの設置工事。幅64cm×奥行64cmや幅80cm×奥行64cmなどいくつか種類がある。最近の洗濯機は漏水しにくいため、設置しないケースもある。 3万円~5万円
水栓の設置 洗濯機にトラブルが発生し緊急的に止水するための水栓設置工事。洗濯機の給水ホースが接続できるタイプの水栓を設置する必要がある。 5,000円~1万円
給排水管の接続 既存の給排水管に洗濯機の給水、排水を接続する工事。配管の位置によって費用が変動し、場所によっては費用が高額になることもある。 2万円~10万円
コンセントの設置 洗濯機を稼働させるためのコンセントを設置する工事。漏電防止のためにアース線が付いているタイプがおすすめ。洗面台やキッチン近くに設置する際には水がかからないような位置になっているかチェックする必要がある。 1万円前後
復旧工事 内装や床などの復旧工事費用。給排水管の接続工事が大規模になると復旧工事の費用も増額されるため、注意が必要。 5万円~7万円
諸経費 工事の安全管理や工事の申請書類準備などにかかる費用。総額の割合で決められることが多い。 全体の5%前後

上記工事を実施した場合、相場は12万円〜25万円前後になることが分かります。

関連記事:空き家をリフォームする際の費用相場と、お得にリフォームする方法を解説

まとめ

アパート経営において入居率の向上は重要な問題ですが、洗濯機置き場の無い物件は生活がしにくく、空室が発生する原因になりかねません。
なぜなら洗濯機置き場がないと室外に洗濯機を置いたりコインランドリーを利用することになり、不便な生活になってしまうことが多いからです。
特に室外に洗濯機を設置すると騒音や漏水問題が発生してしまい、近所迷惑になるばかりか資産価値が低下することも考えられ、将来売却する際の査定額に影響が出てしまいます。
このようなトラブルを避けるためにも、洗濯機の設置スペースがない物件はリフォームして洗濯機置き場を設置し、住民が快適に生活できる空間を整備することが大事です。
リフォームの相場は1戸あたり12万円〜25万円となっており、配管図やアパートの耐久性によって変動します。
収益計画に影響が出てしまう可能性もありますので、複数のリフォーム業者に相談し最適な工事内容を選択することをおすすめします。

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不動産売却を進める際、売主は不動産会社と媒介契約を締結することになります。
媒介契約にはいくつか種類がありますが専任媒介契約と専属専任媒介契約を選ぶ売主は多く、不動産会社の担当者も積極的に薦める契約形態です。
契約の有効期間内は物件の販売を不動産会社に一任できることから依頼者の手間がかからないというメリットがある一方で、販売委託した不動産会社の活動内容によっては買主が見つからず、販売が長期化することもあります。
そのため専任媒介契約を締結した不動産会社の営業活動に不安を感じた場合は契約更新せず、会社の変更を検討することがおすすめとなりますが、急を要する場合は契約解除が必要になることもあります。
契約期間中の解除は違約金を請求される可能性がありますので注意点といえますが、正当な理由であれば責任を追及されることなく途中解約が可能です。
この記事では専任媒介契約の更新手続きをしない場合に知っておきたい注意点やポイントについて、解説します。
不動産仲介業者の対応に信頼がないと感じている売主は、参考にしてください。

この記事で分かること

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専任媒介契約の基本ルールをおさらい

宅地建物取引業では、宅建業者は不動産の所有者から販売の委託を受ける場合、媒介契約を締結する必要があります。
専任媒介契約は媒介契約の1種となっていますが、どのような契約形態なのか売主は確認しておくことが重要です。
また専任媒介契約以外にも専属専任媒介契約、一般媒介契約があり、最適な契約形態を選ぶことが大切です。
この章では専任契約含め媒介契約を含めた媒介契約の種類を紹介しますので、一戸建てやマンションを売却する予定のある人はチェックしてください。
【参考サイト:宅地建物取引業法施行規則の規定による標準媒介契約約款

関連記事:専任媒介とは?特徴・メリット・デメリットをわかりやすく解説

専任媒介契約と他の媒介契約との違い

専任媒介契約は依頼する不動産会社が1社となっており、複数の会社に同時依頼することはできませんが、売主自ら買主を自己発見し取引することは可能です。
営業活動の報告は最長でも2週間に1度受けることができ、宅建業者は登録業務を行っている指定流通機構(レインズ)に7日以内に登録し、書面を売主に交付する必要があります。
専任媒介契約以外にも専属専任媒介契約と一般媒介契約があり、次のような違いがあります。

媒介形態 同時依頼可能者数 自己発見取引 営業報告の頻度 レインズ登録期日 契約の最大期間
専任媒介契約 1社のみ 可能 最長2週間に1度 7日以内 3ヶ月
専属専任媒介契約 1社のみ 不可 最長1週間に1度 5日以内 3ヶ月
一般媒介契約 複数可能 可能 規定なし 規定なし 規定なし

上記の通り、専任媒介契約と専属専任媒介契約は自己発見取引の可否と営業報告の頻度、レインズ登録期日が異なります。
一方、一般媒介契約は複数の不動産会社と同時に契約することができますが営業報告やレインズの登録義務もなく、契約期間も定められていないため活動内容が見えにくいという特徴があります。
専任媒介契約が選ばれる場合として、不動産会社に販売を一任しつつも売主の知人や親族などが不動産を購入する可能性があるケースが挙げられます。
自己発見取引をして売買契約を締結した場合、仲介していないことから仲介手数料はかからないというメリットがあります。
ただし契約書類の作成や土地家屋調査士、司法書士の手配などを全て当事者が行うことになりますので、自己発見取引であっても不動産会社に仲介してもらうケースも多いです。

契約期間は最長3カ月で自動更新はない

専任媒介契約には契約期間が定められていて最長でも3ヶ月となっており、自動更新はできません。
つまり、不動産会社は最低でも3ヶ月に1度売主とコンタクトを取り、媒介契約の更新について承諾を得る必要があります。
また、不動産会社は更新確認の意志を面談によって行い、価格改定や販売条件の変更といった調整も行います。
このように売主にとって媒介契約の更新は今後の販売活動を決めるうえで重要なポイントとなることから、不動産会社の変更も含めて検討することが大切です。

更新する場合は書面での手続きが必要

更新の場合は書面での手続きが一般的であり、不動産会社は期限を新たに設定した媒介契約書を作成するか媒介更新書を作成し、売主に署名押印してもらうことで更新完了となります。
なお、更新自体は売主と不動産会社は直接面談する必要はなく、書面の郵送でも可能です。
そのため不動産の所在地から遠方で生活している場合であっても、郵送と電話やメールで契約を更新することも可能です。
このことからも最寄りの不動産会社に必ずしも依頼する必要はなく、売却物件がある地域に詳しい会社を選定することができることが分かります。

専任媒介契約を更新しない主な理由

不動産を売却するためには不動産会社と媒介契約を締結することになりますが、一度依頼した契約を更新しないという選択に悩む売主は多いです。
しかし販売が長期化していたり売主が望む販売活動になっていない場合、専任媒介契約を更新せずに他社と契約するか売却を中止することになります。
不動産のプロに依頼してもこのようなケースは一定数発生しますので、注意が必要です。
この章では専任媒介契約を更新しない主な理由を紹介しますので、専任媒介契約を締結する予定のある人や既に専任媒介契約を締結していて売却活動がうまく進んでいない人は参考にしてください。

報告義務の不備や囲い込みなどへの不満

専任媒介契約を締結した際、不動産会社は最低2週間に1度のペースで売主に販売状況の報告をしなければなりません。
反響や案内の件数、問い合わせした人の反応を知ることで売主は価格や販売条件を調整することから、不動産会社からの報告は重要な情報です。
それにも関わらず2週間以上報告がなかったり内容が不十分だと適切に判断できなくなってしまうため、不動産会社に販売報告について指摘することをおすすめします。
また、反響や案内の件数が極端に少ない場合、囲い込み行為を疑う必要があります。
囲い込み行為とは一部の宅建業者が自社の利益のため、売主・買主双方の媒介を行うことを目的として情報を隠す行為のことです。
専任媒介契約を締結すると不動産会社は7日以内に指定流通機構へ物件情報を登録しなければなりませんが、登録せずに販売を行う行為が囲い込みと呼ばれています。
また、登録していても他社からの問い合わせに対して「商談中」と偽り、紹介しないというケースもあります。
囲い込み行為をされると適切な反響を得られないため販売が長期化し、売主は価格を下げるなど対策をしなければならなくなってしまいますが、不動産会社が得る利益はそれほど下がらないという特徴があります。
たとえば3,000万円の物件を2,800万円に価格変更した場合、売主と不動産会社の損失は次のようになります。

売主:2,800万円‐3,000万円=200万円
不動産会社:(2,800万円×3%+6万円)‐(3,000万円×3%+6万円)=‐6万円(税抜き)

上記のように売主は200万円の損失を被ることになりますが、不動産会社が得る仲介手数料は税抜きで6万円しか下がりません。
囲い込み行為については国土交通省も罰則の規定を強化するなど対策を講じていますが根絶には至っておらず、売主としても不動産会社の活動を注視することが重要です。
万が一依頼している不動産会社が囲い込み行為をしていると判明した場合、できるだけ早く契約を解除することをおすすめします。
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相場と乖離した売却価格設定

不動産の査定は一般的に「取引事例法」と呼ばれる方法が使われ、対象物件の周辺で成約事例を調べ、査定額を算出します。
査定額は周辺の成約事例などを基準とした適正な目安価格で設定されることから、売主は不動産会社が提示した査定額をベースに販売価格を検討することができます。
本来であればどの不動産会社が査定をしても同じ価格帯の査定額になりますが、中には極端に高い査定額で提示し、専任媒介契約を締結させようとする不動産会社もいます。
このような査定額を信じて売却価格を高く設定してしまうと反響が少なくなり、結果的に適正価格に変更することになってしまいます。
国土交通省が定める標準専任媒介契約約款にも「目的物件を売買すべき価額又は評額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにして説明する」と明記されており、納得できない価格を提案してくる不動産会社には注意が必要です。

積極的な販売活動が行われていない

専任媒介契約を締結したにもかかわらずレインズや不動産ポータルサイトへ掲載することなく、放置していると売れる不動産であっても販売は長期化してしまいます。
また、ポータルサイトに掲載している画像の質が悪かったりアピールポイントが少ないなど、積極的な販売活動が行われていない場合は契約の更新を見直す必要があります。
標準専任媒介契約約款には「契約の相手方を探索するとともに契約の相手方との契約条件の調整等を行い、契約の成立に向けて積極的に努力すること」と記載されていることから、消極的な販売活動を違反行為とみなし契約を更新しない売主も多いです。

契約期間満了前に行っておきたい手続き

不動産会社との専任媒介契約を取りやめたいのであれば契約を更新せず、期間満了するのが一番スムーズです。
しかし契約更新の面談時に突然更新しない旨を伝えるとしつこく理由を聞かれたり担当者から長時間説得されることもありますので、注意が必要です。
また、契約満了をまたずに契約を終了する場合、約款では違約金が発生する可能性について記載があります。
そのため専任媒介契約を解除したいのであれば、不動産会社への対応と違約金の発生有無について正しく理解しておくことが大切です。
この章では専任媒介契約を取りやめする際に、知っておきたいポイントについて解説します。

更新拒否の意思表示を早めに伝える

更新しないことを決めた際には、なるべく早い段階で不動産会社に伝えることがポイントですが、理由も明確にしておくことも重要です。
売主として不満に思っていた点を伝えることで不動産会社の対応が変わることもあり、希望していた不動産売却になる可能性もあります。
不動産会社が非を認めた場合は仲介手数料を交渉できるケースもありますので、まずは更新しない意思表示を行い、理由を不動産会社に伝える必要があります。

書面または内容証明郵便で証拠を残す

契約更新の拒否を伝える方法に法的な決まりはなく、電話やメール、LINEでも問題ありませんが、なるべく確実に伝わる方法を選ぶことをおすすめします。
なぜなら担当者が媒介契約の更新をしないことを会社に隠す可能性があり、契約期間満了後に不動産会社から頻繁に連絡があるなどトラブルに発展する可能性があるからです。
このようなトラブルを避けるためにも契約更新をしない意思表示はなるべく書面にして直接来店して手渡すか、内容証明郵便で送るなど工夫する必要があります。

途中解除と違約金のポイント

媒介契約は依頼者と宅建業者との契約ですので、契約を途中で解約するのであれば原則違約金が発生します。
標準専任媒介契約約款では「違約金額は報酬額の上限を超えてはならない」と記載されていることから、違約金額の上限額は以下の計算方法で計算することができます。

ただし重大な違反行為でない限り仲介手数料の上限額で請求されることは少なく、広告費や調査の実費が請求対象になるケースが多いです。

途中で解除できるケース

途中で解除できるケースとして、標準専任媒介契約約款では次のように定められています。

たとえば宅建業者が専任媒介契約を締結してから7日営業日以内にレインズに登録しなかったり、販売活動をスタートしない場合、途中解除できる要因となります。
また家屋の雨漏りやシロアリ被害、再建築不可であることを知りながら売主に告げなかった場合も不誠実な行為とみなされ、解除が可能です。

売主都合の解除で違約金が生じるケース

原則、専任媒介契約は一般人である依頼者を守り、宅建業者に対して制限と義務を負わせる内容となっていますが、全てのケースにおいて売主が有利になるわけではありません。
たとえば宅建業者の販売活動になんの落ち度もなく売主が解除をしたい場合は違約金を請求される可能性が高く、仲介手数料の上限額以下で設定された額を請求されてしまいます。
また、標準専任媒介契約約款第11条(直接取引)では次のように明記されています。

専任媒介契約の有効期間内又は有効期間満了後2年以内に、依頼者が宅建業者の紹介によって知った相手方と宅建業者を排除したうえで目的物件の売買または交換の契約を締結したときは、宅建業者は依頼者に対して契約の成立に寄与した割合に応じた相当額の報酬を請求することができます。

つまり、違約金が発生しない形で中途契約できたとしても、解約後2年以内に宅建業者が発見した買主と契約締結するなど不誠実な対応をした場合、宅建業者は報酬を請求できることが分かります。
このように売主都合で中途解除をする場合は不動産の取引が成立していなくても違約金を支払わなければならないこともあり、大きな注意点です。

専任媒介契約を更新しない場合の選択肢

不動産会社の活動に納得がいかず専任媒介契約を更新しないことを決めたとしても、そのまま放置していては不動産を売却することができません。
そのため専任媒介契約の期間満了と同時になんらかの対策を打つ必要があり、早めに検討しておくことが大切です。
この章では専任媒介契約を更新しない場合の選択肢について、解説します。

一般媒介契約へ切り替える

不動産会社の活動内容に問題がないにもかかわらず販売が長期化する場合、依頼した不動産会社の集客力が低い可能性があります。
その場合は集客力の高い会社と専任媒介契約を締結するのがおすすめですが、そのためには不動産会社について細かく調べる必要があり、手間がかかります。
そこで専任媒介契約の期間満了と同時に不動産会社と一般媒介契約を締結し、複数の会社と同時に契約できるように切り替える方法がおすすめです。
一般媒介契約は販売の委託を複数社に依頼できることから販売の機会を増やすことができ、早期売却に繋がることもあります。
専任媒介契約を締結していた不動産会社にも引き続き依頼することができますので、販売が長期化した場合は一般媒介契約への切り替えを検討するケースが多いです。
ただし一般媒介契約は販売報告とレインズの登録義務がなく、更新頻度もありません。
そのため専任媒介契約よりも対応が悪くなることもありますので、注意が必要です。

他の不動産会社と新たに専任媒介契約を結ぶ

集客力が高い不動産会社を見つけていれば、その会社と専任媒介契約を締結するのが効果的です。
不動産会社は媒介契約を締結した際、まずは既存顧客へ紹介します。
つまり、既存顧客が多い会社ほど早期売却に繋がりやすいといえ、売主にとって不動産会社を選ぶ際の重要なポイントといえます。
そのためには売却に強い不動産会社を見つける必要がありますが、不動産の一括査定サイトを利用するケースが多いです。
一括査定サイトは費用をかけることなく複数の不動産会社に査定を依頼することができ、連絡方法や時間帯を売主都合で設定することができます。
たとえば隙間時間に査定だけ依頼してメールで査定書を送ってもらい、週末にゆっくりチェックすることも可能です。
査定額や売却プランなどを比較し、「ここなら任せられそう」という会社を複数社ピックアップして面談し、信頼できる会社を見つけることで不動産売却を成功させることができます。

専任媒介契約を更新しないことで起こり得るデメリット

専任媒介契約を更新しないとその時点で不動産の販売活動はストップしてしまい、買い手探しが遅れてしまいす。
また、再開するのに時間がかかると不動産会社で情報共有に不備が出てしまい、最初の査定からやり直すことも少なくありません。
専任媒介契約を更新しない場合にはこのようなデメリットが発生しますので、注意が必要です。
この章ではこうしたデメリットについて詳しく解説しますので、チェックしてください。

売却活動の連続性が途切れるリスク

不動産を売却するためにはいつでも買い手が物件を見られるよう不動産ポータルサイトに公開し、他社に来店した顧客にすぐ物件を紹介できるようレインズに登録する必要があります。
また各社のストック顧客に内覧の提案をしたり物件の近隣にポスティングすることも重要な販売活動となっており、常に買い手の目に止まるように物件を露出しておくことが早期売却のコツです。
専任媒介契約を更新しないと満了日にレインズと不動産ポータルサイトから情報は削除され、顧客から問い合わせがあっても「販売が中止になりました」と伝えなければなりません。
つまり、不動産売却自体が停止されることでそれまで培ってきた販売活動が無駄になってしまうことがデメリットといえ、不動産を売却すること自体を止めないのであればできるだけ早く販売開始できる方法を選ぶことが重要です。

担当者交代による混乱や引き継ぎ不備

専任媒介契約を更新しないまま一定期間が経過すると不動産の状態が変化するため、売却を再開しようとしても査定からやり直すことになります。
そのため複数の不動産会社に物件を確認してもらい、面談する手間が発生してしまいます。
また、同じ会社と専任媒介契約を締結した場合でも同様に査定のやり直しは必要となり、さらに担当者が変わっていると物件や売主について細かい情報が引き継ぎされていないこともあります。
たとえば登記簿上の所有者と現在の所有者が異なっており相続登記の申請中だったり、住み替えのため引渡しを契約から半年後に設定する必要があるなど、売却に関わる重大な引継ぎ事項が漏れてしまうケースも多いです。
このような情報が抜け落ちたまま顧客に物件を紹介し、売買契約を締結してしまうと大きなトラブルに発展するリスクを抱えることになります。
このように専任媒介契約の中止はスムーズに売却活動を進められなくなる可能性が高くなるといえ、大きなデメリットです。

まとめ

専任媒介契約を宅建業者と締結した場合、売主は他の不動産会社に販売を委託できなくなります。
そのため締結した不動産会社の販売力が重要なポイントとなり、不動産売却が成功するか失敗するかを決めるカギといえます。
万が一販売活動に不信感を感じた場合は契約を更新せずに他社へ切り替えたり一般媒介契約に変更して複数社に依頼できるようにするなどの対策が必要となりますが、契約を途中解除する場合は違約金が発生することもありますので注意が必要です。
不動産売却で失敗しないためには不動産会社の検討と同様に媒介契約の約款についても正しく理解することが大切だといえますので、売却開始前に準備期間を設けて情報収集することをおすすめします。