空き家の活用アイディア5選!使える制度や成功事例も詳しくご紹介
相続してしまったが、使う予定のない空き家。特に田舎の一軒家ともなると利便性の低さから買い手も付きづらく、運用するとしてもマンション経営などの一般的な賃貸経営は向かない場合があります。
そういった空き家を所有している場合、どのような土地活用が考えられるのでしょうか。
この記事では、そういった空き家の活用について詳しく解説します。空き家の活用アイディアを5選や、空き家活用にかかる費用、利用できる補助金などの制度、実際の活用事例についても説明します。
- 空き家活用のメリット・デメリット
- 空き家活用方法5選
- 空き家活用にかかる初期費用と運営費用、それらを節約するための具体的方法
- 空き家活用に利用できる、助成金や各種制度(空き家バンク・マイホーム借り上げ制度・住宅セーフティネット制度)について説明
空き家活用のメリット
まずは、空き家を活用することによるメリットを3つ確認していきましょう。
収入源となる
空き家は、所有しているだけで固定資産税や都市計画税、修繕費などの維持費用が発生します。もちろん、空き家を取り壊して更地にすれば、月極駐車場経営やトランクルーム経営などの活用もできます。しかし、更地は小規模住宅用地と一般住宅用地にかかる固定資産税の軽減措置の特例が適用されないことから、家屋がある場合と比較して固定資産税が最大6倍にもなる可能性があります。こういったことから、空き家を残して収益化すれば、固定資産税などの費用を賄うための収入源としての役割を期待できます。
地域活性化に貢献
空き家は放置すると雑草が生い茂り、害虫・害獣が住みつく恐れがあります。老朽化による倒壊やそれに伴う近隣トラブルの可能性を考えると、防災・防犯の観点からも活用することが望まれます。ただ居住するだけでなく、ビジネスとして第三者に利用してもらえれば、地域交流拠点として幅広くエリアを活性化することが期待できます。
資産価値の維持
空き家活用は資産価値の維持にも役立ちます。住宅の家屋は、定期的なメンテナンスが欠かせません。活用による収入で適切なメンテナンスを行えば、資産は長持ちします。そういった資産価値は、売却時の価格にも反映されます。より高く売却するためにも、空き家を活用することをおすすめします。
空き家活用のデメリット
空き家活用はメリットがあるものの、やはり活用するためには相当な負担がかかるだけでなく、リスクも存在します。それらのデメリットについても説明します。
運営負担
これまで居住していなかった空き家を活用するためには、いくらか修繕する必要が生じます。どこをどれだけ修繕するのかなど、オーナー自らが判断しなければなりません。また、活用方法によっては物件のオーナー自らが運営しなければならないものもあります。
空き家活用にはこういった運営負担が存在します。自らがどれだけ空き家活用に労力を割くことが出来るかきちんと判断した上で、適切な方法を取る必要があるでしょう。
リスクと責任
空き家を活用する上で、建築費などの金銭的リスクはどうしても付いて回ります。また、リスクは金銭面だけではありません。空き家の修繕が至っていない場合、入居者にケガを負わせる可能性もあります。こういった、賃貸物件を原因とする被害が発生した場合、建物の所有者が損害賠償責任を負わなければならない場合があります。そのことから、危険が発生しうる部分についてはオーナー自らしっかり点検し、物件に瑕疵があったと言われないようにすることが重要です。
空き家活用の方法とアイデア
空き家活用のメリットとデメリットを理解したところで、ここからは具体的な活用法についてチェックしていきましょう。活用方法の選択肢を5選、ご紹介します。
空き家を一般賃貸として使う
最も一般的な活用方法が、空き家をそのまま戸建て賃貸として貸し出し、家賃収入を得る方法です。一般的に、戸建て住宅は賃貸住宅としての供給量が多くない傾向にあります。賃貸に出してみることで、借主が見つかる可能性があります。戸建てを貸し出す上では、地域の不動産会社に仲介を依頼しましょう。賃貸の仲介に関する手数料は成功報酬制となっており、仲介手数料の上限は成約賃料の1ヶ月分となります。まずは、地域の不動産会社を相談先として検討すると良いでしょう。
空き家をシェアハウスとして使う
空き家が広い場合は、普通の一般賃貸として貸し出すのではなく、シェアハウスとして貸し出す方法もあります。シェアハウスとは、複数の入居者が1つの建物に共同で住むことを指します。トイレや浴室、リビング・ダイニング・キッチンなどを共同利用しながら、個人の独立した寝室を所有します。シェアハウスの場合、複数人を入居させることから通常より全体の賃料収入を多くできることがメリットです。しかし、他人である入居者が共同で住むということから、入居者それぞれを管理するノウハウや体制が必要となります。入居者同士のトラブルが発生する可能性もあることから、シェアハウスの管理会社に管理を依頼するのが安心です。
空き家を民泊として使う
民泊とは、住宅の全部または一部を活用し、旅行者等に宿泊サービスを提供することを指します。日本政府環境局によると、令和5(2023)年3月の訪日外国人旅行客数は、約182万人と、昨年10月の個人旅行再開以降で最高を記録しました。今後も、外国人旅行客の増加が期待できます。こういった旅行客にとって、日本の住宅に宿泊できる民泊は人気コンテンツと言えます。民泊を始めるためには、その運営方式によって、申請を行わなければなりません。また、宿泊施設として最低限、水回りなどのリノベーションは必要です。
民泊は営業できる日数が年間180日と定められています。営業日数の中で投資回収ができるか経営計画を立てることが重要と言えます。
リノベーション・リフォームして店舗やオフィス、コミュニティースペースとして活用する
リノベーションにより、住居から別の用途に変更するというのも考えられます。新型コロナウイルスの流行以降、リモートワークが浸透しコワーキングスペースやサテライトオフィスの需要が増えました。シェアオフィス以外にも、店舗やコミュニティースペースなど、その地域のニーズにあった方法を選び、リノベーションを行いましょう。注意点としては、住まいから別の用途に変更するために、解体費用がかかるということです。そのため、改修費用を回収できるのか、用いようとしている用途の需要がその地域にあるのか、十分に検討する必要があるでしょう。
イベントやワークショップを開催するスペースにする
イベントやワークショップを開催するための、時間貸しのレンタルスペースにすると言うのもよいでしょう。誕生日やクリスマスパーティ、写真撮影、各種教室など、ユニークな使い道も含めて、時間貸しで自由に利用できる場所の需要は一定数存在します。こういった時間貸しスペースを紹介するウェブサイトなどもあるため、そういったサイトを利用して集客を行います。ただし、こういった時間貸しは時期や時間により需要がばらついてしまうため、収益性の点では安定性を欠く傾向にあります。需要が少ない時間帯のプランを用意するなど、全ての時間帯を有効活用できるようにしましょう。
空き家活用にかかる費用と節約術
空き家の活用においては、初期費用としてリノベーション・リフォーム費用が、その後ランニングコストとして各種運営費用が必要です。それぞれ具体的に見ていきましょう。
リノベーション・リフォーム費用
築年数が浅く、物件の状態が良い場合は、壁紙など表層だけをリフォームするだけで事足ります。しかし、築年数が長く、柱・壁などの構造部に痛みが生じていると判断される場合には、構造部も含めたスケルトンリフォームを実施する必要があります。実施する内容にもよりますが、戸建ての表層リフォームとなると数十万~百万円、スケルトンリフォームとなると数百万円以上は発生すると考えておいた方がよいでしょう。
リノベーション・リフォーム費用の節約ポイント
リノベーション・リフォーム費用を節約するためには、まず複数の建築会社に見積もりを取ることが重要です。複数の会社に依頼することで、住宅の傷んでいる箇所を複数の視点から教えてもらうことができます。一般的に、大手ハウスメーカーより地域の工務店の方が価格が安い傾向にあります。
また、自分でできることは自分でやる、というのも大切です。昨今では、YouTube等の動画配信サービスで、様々なDIYのやり方が見られるようになりました。クロスや床板の張り替えなど、表層面の自分で出来そうなリフォームに関しては、自分でやることを心がけましょう。
ランニングコスト
空き家活用のランニングコストとしては、固定資産税(都市計画税含む)、修繕費の他、賃貸に出す場合は不動産会社へ支払う仲介手数料などが挙げられます。戸建て賃貸は建物・土地ごとまるごと入居者へ貸し出すため、アパート経営のように共用部の清掃・メンテナンスコストはかかりません。
ランニングコストが少ないことは、不動産投資としての空き家活用のメリットと言えるでしょう。
空き家活用のための助成金・補助金・制度
全国で増加傾向にある空き家問題を解決するために、様々な支援事業を設けています。中でも、自治体が用意する助成金で、空き家活用にかかる費用を賄うことができます。ここからは、空き家活用に使える制度をチェックしていきましょう。
助成金制度
空き家対策は行政にとっても解決すべき問題であるため、さまざまな市区町村が助成金・補助金制度を設けています。
例えば、東京都八王子市では、空き家の利活用等を促進するため、市内の施工業者が実施する空き家の改修工事について、対象工事費の3分の2 以内・上限100万円(1戸当たり)の事業費を交付しています。補助の対象となる工事は、地域の活性化に資する施設として市長が認める工事です。自治体によって、対象となる工事の適用要件や金額は異なります。「○○市 空き家」などの文言で検索し、自治体の制度を確認し、交付申請を行うのが良いでしょう。
空き家バンク
空き家バンクとは、行政が運営する空き家の物件情報サイトです。空き家の持ち主が物件を登録し、空き家を借りたい人・購入したい人から申し込みを受けることができます。田舎の空き家は情報として出回りづらいことが多く、空き家の情報が掲載されている空き家バンクは持ち主、利用者双方にとってメリットがあるサービスです。本来ならば不動産仲介業者に支払っていたであろう仲介手数料も節約できます。一方、自治体によっては、空き家バンクにおける利用者との交渉は持ち主が直接行う必要がある場合もあります。まずは一度、地域の空き家バンクウェブサイトを確認してみるとよいでしょう。
全国の空き家バンクについては、国土交通省のHPでリンクを確認することができます。
建設産業・不動産業:全国地方公共団体空き家・空き地情報サイトリンク集 – 国土交通省 (mlit.go.jp)
マイホーム借上げ制度
マイホーム借上げ制度とは、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構(JTI)が提供する制度です。JTIが空き家のオーナーから借家契約で建物を借り上げ、入居者に転貸します。入居者とのやりとりはJTIが行ってくれるため、オーナーの手間がかからないのがメリットです。入居者とJTIの契約は契約期間の定めがある定期借家契約で締結されるため、契約期間満了後に入居者が居座るというようなトラブルも発生しづらいメリットがあります。ただし、利用するためにはオーナーの年齢条件と住宅の条件どちらもクリアする必要があります。家の条件については、建物診断が実施されていること(ただし、1981年6月に建築されたことが確認できる家は不要)などの条件があるため、まずは条件を満たすか確認してみるとよいでしょう。
住まない家を活用する「マイホーム借上げ制度」|JTI|一般社団法人 移住・住みかえ支援機構
セーフティネット住宅
住宅セーフティネット制度とは、低額所得者や被災者、高齢者、障碍者、子育て世帯等、住宅の確保に配慮が必要な入居者が増えているにも関わらず、公営住宅の数の増加が見込めないことを受け、国が整備した制度です。空き家のオーナーは、自らの物件を自治体窓口に登録します。その情報は「セーフティネット住宅情報提供システム」に掲載され、誰でも閲覧できるようになります。入居者となるのは、上述した要配慮者の方々となります。
セーフティネット住宅として登録できる住宅は、以下の基準を満たす必要があります。
- ① 耐震性を有すること
- ② 住戸の床面積が原則25㎡以上であること
- ③ 家賃の額が近傍同種の住宅の家賃の額と均衡を失しないこと(周辺より家賃が高すぎないこと)
このセーフティネット登録住宅には、改修に対する補助制度や入居者に対する家賃補助制度があります。住宅の登録基準や、補助の有無や内容については自治体により異なるため、詳しくは自治体HPを確認しましょう。
住宅セーフティネット制度について – 国土交通省 (mlit.go.jp)
空き家活用の成功事例とヒント
空き家活用の成功事例として紹介したいのが、空き家再生に取り組む不動産投資家であるeclairさんのケースです。
eclairさんは、手元資金40万円と言う状態から格安の空き家を購入し、費用を浮かすため自ら修繕工事を実施し戸建て賃貸で貸し出し、賃料収入を得ることに成功しました。eclairさんはインタビューを行った2022年5月現在、戸建て10戸、アパート1戸、倉庫1戸、山1つ、更地1つを運用しています。
このように、訳アリの空き家であっても、費用を切り詰め、リノベーションを実施し安価に貸し出せば、入居者は見つかります。空き家再生を楽しむ心を持つことが、成功には必要不可欠と言えるでしょう。
eclairさんへのインタビューについては、以下のコラムからご覧いただけます。
空き家活用に向けた準備と手続き
空き家を活用するための具体的な準備としては、自治体や不動産会社、建築会社に相談することが挙げられます。今回ご紹介した通り、地方自治体では、空き家を減らすための様々な施策を用意しています。補助制度もあることから、まずは相談してみることをおすすめします。
また、建物の状態や最適な活用方法については、プロである不動産会社、建築会社に相談するのが重要です。複数の企業に客観的な意見をもらい、最適な方法を考えましょう。
まとめ
今回は、空き家活用について説明しました。空き家を活用することで、地域貢献しながら収入を得て、資産価値を維持・向上することができます。活用するためにはリノベーション・リフォームにかかる初期費用が必要ですが、ランニングコストは他の不動産投資と比べても低い傾向にあります。リノベーションにかかる費用をうまく節約することで、より安く貸し出すことが成功のコツと言えるでしょう。まずは自治体や不動産会社、建築会社に相談しながら、最適な活用方法を検討しましょう。
空家ベース編集部です。空家と書いて「ソライエ」と読みます。Twitter・Instagram・公式LINEなどでも物件情報を随時配信しています。空き家を買って再生したい方、他では売れないと言われてしまった空き家をご所有の方はぜひご相談ください!