戸建ての傾きはどこまで許容範囲?購入基準と修繕リスク
築古の戸建て投資を検討している投資家にとって、「家の傾き」は重要なポイントとなります。家の傾きが大きいと、暮らしにくさや安全面の不安が生じるだけでなく、修繕費用も高くなりやすいためです。
内覧時には傾きのチェックを行い、売主に対してもヒアリングを行うことが大切です。とはいえ、価格の安い空き家の場合、全く傾きがないケースは少なく、ある程度は許容しなければならないことも多くあります。
本記事では、戸建ての傾きについて、どこまでが許容範囲か、購入時にどう判断すべきか、修繕リスクとあわせて分かりやすく整理します。
内覧時にできるセルフチェックポイントについても紹介しますので、これから戸建ての投資を検討している方はぜひ参考にしてください。
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不動産投資では、取得費や維持コストを抑えて利回りを高めることが重要です。特に、戸建てを安く仕入れることは、そのまま収益性の向上につながります。
しかし安い物件には様々な問題があることが多く、特に築年数が古い物件や、過去にシロアリ被害や雨漏りがあった場合は、建物が傾いている可能性があります。こうした傾きは居住性や安全性に直結し、結果として退去の一因となることもあります。
また、将来売却しようとしても買い手が見つかりにくくなり、思い描いた賃貸経営が実現できなくなる可能性もあります。
一方、家の傾きを修繕することで退去率は改善し、資産価値も向上することで売却しやすくなりますが、家が傾いている原因によっては数百万円の修繕費がかかってしまい、利回りが確保できないケースも多くあります。
内覧時の傾きチェックと修繕費の試算は、戸建て投資における最初の関門です。利回りと出口戦略を見据えながら、修繕ありきで収益が成立するかを冷静に判断することが求められます。
【国土交通省基準】戸建の傾き、どこまでが許容範囲?
戸建てを購入する際に家の傾きをチェックするにしても、どこまでの傾きならOKとするのかを決めておくことは重要です。なぜなら全く傾きのない戸建ては築年数が浅く、購入金額が高くなってしまうからです。
不動産投資を成功させるうえでは物件の購入金額を抑える必要があり、そのためにも傾きの許容範囲を決めておくことがポイントです。
この章では国土交通省が公開している資料をベースに、傾きの許容範囲について解説します。
一般的な許容範囲は「3/1,000〜6/1,000未満」
国土交通省が定めた「住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準」では、床の傾きが「3/1,000〜6/1,000未満」になると、建物の構造に何らかの欠陥(瑕疵)が潜んでいる可能性があるとされています。
つまり、この数値が「建物に問題があるかもしれない」と疑い始める最初のボーダーラインになります。この基準となる6/1,000を超える傾きがある戸建てでは、4m×4mの部屋で例えると、手前から奥に向かって約24㎜(2.4cm)も床が沈んでいる計算になります。
これほどの傾きであっても、人によっては体感できないこともありますので、内覧時に不動産会社や売主へのヒアリング、あるいは測定器を活用して客観的にチェックするのが望ましいでしょう。
参考:住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準 - 国土交通省
角度にすると何度?体感的な違和感の目安
6/1,000という傾きは角度にすると約0.34度となり、人によっては眩暈や頭痛、立ち眩みに似た症状が出ることもあります。場合によってはさらなる健康被害が発症し入居者からクレームを受けることもあり、注意が必要です。
日本建築学会からは建物の傾きによる健康被害について次のような目安を公開していますので、傾きのある戸建てを検討する際の参考にしてください。
- 5/1000(0.29°):傾斜を感じる。
- 6/1000(0.34°):不同沈下を意識する。
- 8/1000(0.46°):傾斜に対して強い意識、苦情の多発。
- 1/100程度(0.6°程度):めまいや頭痛が生じて水平復元工事を行わざるを得ない。
- 〜1/60(〜1°):頭重感、浮動感を訴える人がある。
- 1/44(1.3°):牽引感、ふらふら感、浮動感などの自覚症状が見られる。
- 1/34(1.7°):半数の人に牽引感。
- 1/30~1/20(2°~3°):めまい、頭痛、はきけ、食欲不振などの比較的重い症状。
- 1/15~1/10(4°~6°):強い牽引感、疲労感、睡眠障害が現れ、正常な環境でものが傾いて見えることがある。
- 1/8~1/6(7°~9°):牽引感、めまい、吐き気、頭痛、疲労感が強くなり、半数以上で睡眠障害。
※()内は傾斜角度
参考:建物の傾きによる健康障害|復旧・復興支援WG「液状化被害の基礎知識」 - 日本建築学会
なぜ家は傾くのか?主な原因と戸建て投資において警戒すべきリスク

家の傾きは入居者の生活に大きな影響を与えてしまうことから、傾きが大きい戸建てへの投資リスクは見過ごせません。しかし、傾きを是正するには修繕費がかかり、初期コストが高くなる場合があります。
安定した賃貸経営には、傾きの原因の把握と将来的な悪化リスクの見極めが欠かせません。
この章では家が傾く原因と、知っておくべきポイントについて、解説します。
地盤沈下・液状化:地盤に問題がある場合
日本には湾岸の埋立地をはじめとした軟弱地盤の地域があり、不同沈下が起きやすいエリアもあります。
不同沈下とは、地盤の軟弱さなどが原因で建物の基礎が均等に沈まず、一部が不揃いに沈下して建物が傾く現象のことで、築浅の物件でも家が傾く可能性があります。
こうした地盤沈下は保険の対象外となることも多く、修繕や地盤改良工事の費用を自己負担しなければならない可能性があります。また、購入時に傾きがなくても、将来的に発生することもありますので、購入時には地盤の強度まで視野に入れておきたいところです。
また、液状化しやすい地盤では、軽微な地震でも家が傾くリスクがあります。これらのケースでは大掛かりな修繕工事が必要になることも少なくなく、その場合は実質建替えレベルの費用が発生してしまいます。
地盤沈下や液状化が起きやすいエリアへの投資は、修繕費が青天井になるリスクを抱えています。エリア選定の段階から地盤の強度を確認しておきたいところです。
シロアリ被害・腐朽:構造材に問題がある場合
地盤が強固であっても家の状態が悪化し、傾いてしまうこともあります。
たとえばシロアリや雨漏りの被害によっては柱や床下の耐久性が低下してしまい、家全体のバランスが崩れてしまうことで傾くケースがあります。
シロアリは防蟻処理、雨漏りは屋根の修繕で対策できます。ただし、処置前のダメージは構造に残るため、入居後に傾きが進行するケースも珍しくありません。
その結果、入居者からクレームを受けることもありますので、シロアリや雨漏り被害のある戸建ては注意が必要です。
経年劣化・施工不良
床下にある根太(床板を支える横材)や床束(根太を下から支える短い柱)は経年劣化によって床が軋むようになり、そのまま放置していると家が傾いた状態になってしまいます。
ただし、地盤沈下による傾きや、シロアリや雨漏り被害が原因のケースと違い、根太や床束を修繕するだけで改善することも多いのが特徴です。
家全体が傾いているわけではないため修繕費も安く済むことから、購入を検討している家に傾きがある場合は原因を特定し、軽微な修繕で対応できるか検討することが重要です。
一方、施工会社の工事が不十分という原因も考えられます。
築年数が古い戸建ては当時の施工会社が既に倒産しており、原因を追及できないことも少なくありません。
建築基準法の整備が不十分だった時代の戸建ては耐久性や耐震性に問題のあるケースも多く、悪質な施工業者が基礎に産業廃棄物を混ぜていたという事例もあります。
このような原因で発生した傾きは対策が難しいことから、可能であれば大手ハウスメーカーや地元で有名な工務店が建築した戸建てを優先的に選ぶことも大事です。
【投資家向け】傾き物件の修繕費用の目安と工法

戸建て投資において家の傾きは重要な判断ポイントですが、価格が安くて傾きが全くない戸建てを購入することはなかなか難しいのが現実です。
そのため、ある程度の傾きは許容、もしくは修繕する前提で検討する必要があるといえます。
国土交通省の資料では「6/1,000未満」の傾きであれば許容範囲となっていますが、快適に生活できるかどうかは入居者の体感によって変わります。
傾きを放置したままでは入居者トラブルや退去率悪化につながりかねません。修繕コストをあらかじめ収益計画に織り込んでおくことが、安定した賃貸経営への近道です。
この章では家の傾きを修繕する際の費用について、目安と工法を紹介します。
床だけを直す場合
家の傾きが地盤沈下や液状化が原因ではなく、さらに家全体が傾いていないと判断できた場合、1階の床だけが傾いている可能性が高いです。
この場合は根太を入れ替えたり床束を調整することで改善することが多く、1方向にのみ傾いているケースでは、油圧ジャッキで床を持ち上げて水平を取り直す方法で対応できることもあります。
こうしたケースでは数万円から数十万円の範囲で修繕できるケースが多く、収益計画への影響も比較的小さくなりやすい物件です。
家全体(基礎ごと)直す場合
家の経年劣化や地盤沈下などが原因で家が傾いている場合、大掛かりな工事が必要です。
代表的な工法としてアンダーピニング工法があり、この工法では傾いた建物の基礎下を掘削して、油圧ジャッキと鋼管杭を設置し、地盤の固い層まで杭を圧入・固定することになります。
これにより水平を維持することができますが工期が長く、工事中は投資を行うことができなくなります。
また、硬化時間を調節できる薬液を地盤中に圧入し、地盤強化を図る薬液注入工法という選択肢もあります。しかし複雑な傾きには対応しにくく、場合によっては傾きが改善しないというデメリットもあります。
どちらも数百万の費用がかかる工法となっていますので、収益計画に影響が出やすく、慎重な判断が必要です。
傾きのある戸建ては「買い」か?投資判断を左右する3つのポイント
これまで述べた通り、戸建てを購入して不動産投資を行うのであれば初期投資を抑える必要があり、なるべく安く戸建てを購入することが重要です。
一方、安い戸建ては築年数が古いケースが多く、さらに家の傾きが安価の理由になっていることもあります。
購入を検討する際は、修繕費を加えた上で収益計画が成り立つかどうかの見極めが判断の軸になります。この章では、傾きのある戸建てを購入すべきかどうか、投資判断として抑えておきたい3つのポイントについて解説します。
修繕費用を引いても利回りは確保できるか?
不動産投資において利回りは最も重要な指標となっており、初期投資費用を何年で回収できるのかを判断するためにチェックする必要があります。
利回りは「年間の収益÷初期投資費用×100」で計算することができ、理想の利回りは地域や不動産の資産価値によって変化しますが、初期投資費用が安いほど利回りは良くなることが分かります。
つまり、修繕費を加味した上で利回りが成立するかどうかが、購入判断の基準の一つになります。
さらに家の傾きを修繕することには退去率の低下や資産価値の向上といったメリットもありますので、総合的に判断する必要があるといえます。
入居者への告知義務と入居募集への影響
家の傾きによる影響は人によって異なり、内覧時に気づく人もいれば、入居してから数年後に気づく人もいます。
傾きを伝えないまま賃借人に貸してしまい、入居者の健康被害や家具・家電が倒れて破損するといったトラブルが発生してしまうと損害賠償を請求されることもあり得ます。
傾きは入居者への告知が必要になりますが、それが客付けに影響する可能性も念頭に置いておきましょう。
このように、修繕費を節約するために家の傾きを修繕しないまま不動産投資を行った場合、様々なリスクを抱えてしまうことも知っておくべきポイントです。
売却の難易度
不動産投資の利益は一般的に「家賃収入+売却益」で計算します。そのため戸建てを購入するタイミングで「家賃」と「投資期間」、「想定売却益」を決めておくことが重要です。
傾きのある家は家賃が安くなるだけでなく資産価値も相場より安くなることから、将来の売却益も低くなってしまう可能性があります。
さらに売却時には問い合わせが減ってしまい、販売期間が長期化するリスクも抱えることになります。
傾きのある家を購入する際、こうしたデメリットを把握したうえで収益計画を立てる必要があります。
家の傾きをはじめとする、築古物件投資全体のリスクとメリットを改めて整理したい方はこちらの記事も参考にしてください。
参考:築古物件投資のメリット・デメリットとは?初心者でも失敗しない購入戦略を徹底解説 │ 空家ベース
内覧時に自分でできる傾きのセルフチェック方法

不動産投資として活用する戸建てを検討するのであれば、内覧時に家の傾きについて入念にチェックしておくことをおすすめします。
建物の状態を判断する方法の一つとして、インスペクションがあります。インスペクションとは建物の状況診断のことで、住宅の構造や雨漏りなど、建物の劣化状況を専門の建築士が目視や計測で検査し報告書にまとめます。
売主がインスペクションを実施していれば、傾斜の状況をある程度把握した上で購入判断に臨めます。しかし、投資用物件は未実施のケースも多く、買主側が事前に行うには売主の承諾が必要となるため、実施のハードルが高くなります。
そこで、インスペクションほど専門的なチェックではないものの、内覧時にできるセルフチェックの方法を紹介します。
スマホアプリや水平器の活用
スマートフォンには水平器アプリが標準搭載されていることも多く、床の数カ所に置いて確認することで、傾きの有無や方向を確認することができます。
また、ビー玉を置いて一定方向に転がらないか確認する方法は、スマートフォンがない時代から利用されており、今でもおすすめの方法です。
傾斜の角度まで知りたい場合はレーザー測定器などが便利ですが、機器によっては高額になるため、経費として計上できるか事前に確認しておくと安心です。
建具(ドア・窓)の開閉と基礎のクラック確認
複数のドアや窓が開きにくく、引きずるような感触だった場合、家が傾いている可能性があります。
家全体に大きな傾きがある場合、水を張ると水面の傾きで確認できます。トイレや洗面に水を溜めてチェックするのも有効です。
これ以外にも基礎や外壁に大きなキズやクラックがあると家の荷重が偏っている可能性があり、傾斜が疑われます。
まとめ
戸建て投資において、家の傾きは収益性や出口戦略にも影響する大切なポイントです。
傾きの程度だけでなく、原因や将来的な進行リスク、修繕費用まで含めて確認しておくことが、失敗を防ぐうえで重要になります。
また、傾きは居住性や安全性に影響し、退去や売却のしやすさにも関わるため、収益計画全体への影響も踏まえて考える必要があります。
許容できる範囲かどうか、また修繕を前提にしても収益が見込めるかといった視点で、無理のない判断をしていきましょう。



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