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不動産の登録免許税とは?計算方法や軽減措置、売却の際の注意点などを解説

空家ベース編集部

登録免許税とは、登記に伴い支払う税金です。

法務局で手続きをする際に納める税金ですが、司法書士に手続きと支払いのいずれも代行してもらうことが一般的であるため、多くの方はあまり支払った実感がないかもしれません。

本記事では、不動産取引で発生する登録免許税の概要、計算方法や軽減措置などを解説します。不動産売却時の注意点についても整理していきます。不動産取引を検討中の方や、取引が進行中の方はぜひ参考にしてみてください。

この記事でわかること

  • 不動産の登録免許税とは「法務局で登記手続きをする際に納める税金」である
  • 不動産の登録免許税は「登記の目的によって税率が異なる」ため、自身の登記目的が何かを理解しておく必要がある
  • 不動産の登録免許税には「軽減措置があり、適用されれば税金負担が大きく軽減できる」ため、適用要件をしっかりと確認する必要がある

不動産登録免許税とは?

はじめに不動産登録免許税とは何なのか見ていきましょう。

不動産登録免許税の概要

例えば、住宅を購入するときは、売主から買主へ、土地や建物の所有権の移転登記をします。所有権移転登記の手続きは、法務局(登記所)にある登記簿に土地や建物の所有権を記録して公示するために行います。登録免許税は、この登記手続きの際に国に納める税金のことです。一般的には、登記を依頼する司法書士を通じて法務局に支払ってもらうことが多いです。

登記時に課される税金とその特性

登記時に課される税金はいくつか種類があり、税率もそれぞれ異なります(表1)。

(表1)
登記時に課される税金

税額は基本的に土地や建物の固定資産税評価額に税率をかけて計算します。ただし、新築の場合は、建物に固定資産税評価額がまだ付けられていないため、法務局で認定した課税標準価格に税率をかけます。また、住宅ローンの借入をした際も、金融機関が土地や建物に抵当権を設定する登記が必要になるため、登録免許税がかかります。その他、登記の目的(地上権設定、抵当権抹消登記など)によって、計算方法や税率が異なります。

不動産取得税との違い

不動産取得税とは、不動産を購入や贈与によって取得した時や、新築・増築した時に生じる都道府県に納める税金のことです。

登録免許税の計算方法と手続き

ここでは、具体的な登録免許税の計算方法と手続きの流れを見ていきましょう。

所有権移転や抵当権設定時の計算方法

【所有権移転登記】
所有権移転登記は、不動産の所有権を誰か他の人に移すときの登記で、主に中古物件を売買したときに行います。計算方法は、次のとおりです。

式:登録免許税=課税標準価格×2.0%

建物、土地いずれも上記の税率を用います。

【抵当権設定登記】
抵当権は、住宅ローンを借りる際に、住宅ローンの返済滞納が起こった場合の対策として設定されます。そして、抵当権を設定するためには抵当権設定登記を行わなければなりません。計算方法は、次のとおりです。

式:登録免許税=借入金(債権額)×0.4%

所有権保存や抵当権抹消時の計算方法

【所有権保存登記】
所有権保存登記は、誰のものでもない不動産に所有権を設定するときの登記で、新築物件を購入したときに必ず行います。計算方法は、次のとおりです。

式:登録免許税=課税標準価格×0.4%

建物、土地いずれも上記の税率を用います。なお、軽減税率が適用されれば税率は0.15%に軽減され、さらに、認定長期優良住宅もしくは認定低炭素住宅の場合には税率が0.1%にまで軽減されます。

【抵当権抹消登記】
抵当権抹消登記は、登記簿に記載された抵当権情報を削除するときに行う登記で、主に住宅ローンを完済した場合に行います。計算方法は、次のとおりです。

式:登録免許税=不動産の個数×1,000円

登録免許税の納付方法とタイミング

登録免許税は、登記申請の際に納めます。原則、現金による納付となり、国税の収納機関である日本銀行、日本銀行歳入代理店(銀行や郵便局)や税務署で納付し、領収証書を登記申請書に貼り付けて法務局に提出します。その他に、オンライン申請でインターネットバンキング・モバイルバンキングやATMで納付(電子納付)することもできます。電子納付の場合も領収証書を法務局に提出します。なお、登録免許税額が30,000円以下の場合は、法務局で収入印紙を購入し、申請書に貼り付けて提出することができます。

納付書の入手方法と手続きの流れ

登録免許税の納付書は、最寄りの税務署、金融機関、または郵便局で入手できます。登録免許税の納付手続きの流れは納付書を入手したら、必要事項を記入し、納付書に記載の金額を納付し、領収書を受領します。

登録免許税の軽減措置と適用例

不動産購入の際にかかる登録免許税の税率について、軽減措置が設けられています。

軽減措置の内容と対象条件

令和8年3月31日まで土地の売買による所有権移転登記および土地の所有権信託登記に係る登録免許税の税率と、令和6年3月31日まで自己居住の用に供する家屋について、家屋を新築・取得した場合の所有権保存・移転登記またはその家屋の取得資金の貸付等を受けた場合の抵当権設定登記に係る登録免許税について、時限措置として税率が軽減されます。

詳しい税率は下記の表で押さえていきましょう。

土地と建物に適用される軽減措置の違い

【土地の売買等に係る登録免許税の特例】
土地の売買等に係る登録免許税の特例

参照:登録免許税に関する資料|財務省

【住宅に係る登録免許税の軽減措置】
住宅に係る登録免許税の軽減措置
参照:登録免許税に関する資料|財務省

住宅用家屋証明と軽減措置の関係

住宅用家屋証明とは、個人が自己の居住のための住宅を新築又は取得した際に、その住宅の所在地の市区町村に申請し交付される書類です。一定の要件に該当する場合、登記(所有権保存登記、所有権移転登記等)をする際に、住宅用家屋証明書を添付して登記を行うことで、登録免許税が軽減されます。

住宅用家屋証明書を添付して登録免許税の軽減措置を受けるためには、例えば、
・住宅を新築・取得した日から1年以内に登記を行うこと。
・住宅用家屋証明書を添付して登記を行うこと。
などの要件を満たすことが必要です。

登録免許税の軽減措置を受けるために必要な要件については、各市区町村に問い合わせるようにしましょう。

不動産取引の事例と登録免許税の計算

ここからは、新築住宅と中古住宅、抵当権設定の場合の事例に分けて登録免許税の具体的な計算について見ていきましょう。

新築住宅の取得事例と登録免許税の計算

新築住宅を購入した場合、新築住宅には固定資産課税台帳の価額がないため、各都道府県の法務官と税務署が「新築建物課税標準価格」を定め、それを基準に税率を掛けます。新築住宅の所有権保存登記の税率は0.4%です。これらのことから、課税標準価格が3,000万円の場合の登録免許税は、次のとおり計算します。

式:登録免許税=課税標準価格×0.4%=3,000万円×0.4%=12万円
※軽減措置が適用される場合は、税率が0.4%→0.15%となります

参考:東京法務局管内新築建物課税標準価格認定基準表|東京法務局

中古住宅の取得事例と登録免許税の計算

中古住宅を購入した場合、固定資産課税台帳の価額に対して税率を掛けます。所有権移転登記を行うため、税率は2.0%です。固定資産税評価額が1,000万円の場合の登録免許税は、次のとおり計算します。

式:登録免許税=固定資産税評価額×2.0%=1,000万円×2.0%=2万円
※軽減措置が適用される場合は、税率が2.0%→0.3%となり、特定増改築等がされた買取再販住宅を取得する場合は、税率が0.1%となります

抵当権設定の事例と登録免許税の計算

2,000万円の住宅ローンを組んだという事例を見ていきましょう。住宅ローンにおける抵当権設定登記にかかる登録免許税は、次のとおり計算します。

式:登録免許税=抵当権設定金額×0.4%=2,000万円×0.4%=8万円
※軽減措置が適用される場合は、税率が0.4%→0.1%となります

抵当権設定金額とは、債権額や借入金のことです。

不動産取引と関連するその他の情報

最後に、登録免許税以外の不動産取引に関するその他の情報について紹介します。

不動産売却時の税金とその計算方法

不動産売却時に、売却益(譲渡所得)が出た場合は、譲渡所得税がかかります。計算方法は以下のとおりです。

「土地を売却した価格(譲渡価格)」から、「売却するための必要経費(取得費と譲渡費用)」を差し引き、「売却益(譲渡所得)」を求め、所定の税率を掛ければ算出できます(図4)。

(図4)
譲渡所得税の計算方法

ローン返済中の家を売る際の注意点と対処法

住宅ローン返済中の不動産を売却するためには、
・住宅ローンを完済すること
・不動産に設定されている抵当権を抹消すること
この上記2つを満たすことで、売却が可能となります。

基本的に、抵当権が付いたままだと売却することができません。抵当権とは、金融機関が住宅ローンを貸し付ける際に不動産を担保にする権利のことです。

住宅ローン返済中に家を売却するには、ローンの残債がいくらなのか、家を売却したお金や自己資金で完済は可能なのかを確認する必要があります。

エコ住宅への補助金制度とその利用方法

エコ住宅とは、住まいの気密性や断熱性を高め、家庭の消費エネルギーを抑えた住宅のことです。
エコ住宅の補助金制度は、省エネ性能の高い住宅を新築・購入・リフォームする際に、国や自治体から補助金を支給する制度です。補助金の額は、住宅の省エネ性能や工事費などによって異なります。例えば、地域型住宅グリーン化事業、ZEH住宅補助金、長期優良住宅化リフォーム推進事業、低炭素住宅に対する所得税軽減、長期優良住宅の住宅ローン減税などがあります。

エコ住宅への補助金制度を利用するには、次の手順を踏みます。
1.補助金の対象となる住宅を探す。
2.補助金を申請する。
3.補助金の審査を受ける。
4.補助金が支給される。
補助金の申請方法は、自治体によって異なるため、自治体の担当窓口で確認しましょう。

まとめ

本記事では、不動産の登録免許税について解説しました。登録免許税は登記の目的によって税率が異なり、登記内容によっては高額になる場合もありますが、軽減措置が設けられている場合もあり、適用されれば税金負担が大きく軽減できます。

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