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オーナーチェンジ物件の査定額は何割減? 相場が下がる「5つの理由と売却戦略」

空家ベース編集部

マンション売却には「居住用物件」と「オーナーチェンジ物件」があり、一般的に同じ築年数で同じ専有面積の中古マンションであればオーナーチェンジ物件の方が売却しにくいとされています。
その理由としてオーナーチェンジ物件にしかないリスクとデメリットがあり、不動産投資を目的として購入を検討している人が慎重になる投資用物件でもあります。
その一方で投資家としては居住用物件を購入してリフォームやリノベーションを行い、賃貸物件として公開するよりもメリットがあるケースも多く、オーナーチェンジ物件を優先的に検討する人もいます。
この記事ではオーナーチェンジ物件の売却価格が安くなる理由と売りにくい理由、高く売るためのポイントについて解説します。
オーナーチェンジ物件のメリット・デメリットも紹介しますので、売却を検討しているマンションやアパートの所有者や購入希望者は参考にしてください。

この記事で分かること

  • オーナーチェンジ物件の相場が安い理由
  • オーナーチェンジ物件が売れにくいといわれる主な理由
  • オーナーチェンジ物件を高く売るためのコツ・ポイント
  • オーナーチェンジ物件を売買するメリット・デメリット
  • オーナーチェンジ物件が売れないときの対処法

オーナーチェンジ物件とは?

オーナーチェンジ物件とは既に入居者がいる状態で公開されている物件のことで、購入後も所有者は住むことはありません。
所有者と賃借人は賃貸借契約を締結しており、家賃や修繕積立金の支払い方法や退去の条件、敷金と礼金の扱い方、修繕費用の責任負担などが細かく決められています。
オーナーチェンジ物件を購入した買主は売主から契約内容についても継承することになり、入居者には契約後にオーナーが変わったことが伝えられます。
稀に空室の状態で公開されている収益物件もありますが、このような物件は一般的に居住用として購入することも可能です。
そのため、オーナーチェンジ物件には必ず「入居者」が住んでいる状態の物件ということが分かります。

オーナーチェンジ物件の相場はどう決まる?

オーナーチェンジ物件の資産価値は一般的に収益性が大きく影響し、収益性は直接還元法で算出することができます。
直接還元法は収益物件から得られた1年間の純利益を還元利回りで割り戻し、価値を算出する方法のことで、具体的な計算式は次の通りです。

(1年間の利益合計‐1年間の支出合計)÷還元利回り

たとえば1年間の賃料合計が600万円で支出合計が120万円、利回りが8%だった場合、純利益480万円÷8%=6,000万円が資産価値となります。
つまり、この物件が6,000万円以下で公開されていれば割安となり、購入の検討がおすすめです。
ただし賃貸物件は地域の人気や物件の立地も大きく影響し、将来家賃を高くできる可能性や下がりにくい可能性も考慮して物件価格を設定します。
このことからもオーナーチェンジ物件の売却価格は直接還元法で算出された相場に対し、複合的な要因を検証して設定する必要があるといえます。

オーナーチェンジ物件の相場が安い理由

不動産をオーナーチェンジ物件として売却する場合と居住用物件として売却する場合はオーナーチェンジ物件の方が安くなりやすく、不動産売却における注意点です。
オーナーチェンジ物件は購入検討者のマーケットと資金計画、物件の資産価値を計算する方法が居住用物件と異なっており、販売期間も長期化する傾向にあります。
このように、オーナーチェンジ物件を売却するのであれば特徴を理解しておくことが大切です。
この章ではオーナーチェンジ物件の相場が居住用物件より安くなる理由について、詳しく解説します。

買い手が投資家に限られるから

居住用物件の購入検討者は自ら居住する人や投資家、不動産会社など多岐にわたります。
最終的な販売価格は買い手の目的によって大きく変わりますが、販売価格が不動産仲介の相場と大きく乖離していなければ一定数の反響を得ることは可能です。
一方、オーナーチェンジ物件は投資家と投資会社のみに限定されてしまい、一番ボリュームの大きい居住目的で物件を探している購入検討者は対象外となってしまいます。
これにより反響数が減ってしまい、販売が長期化する大きな原因となります。

室内の状況がわからないまま取引することになるから

オーナーチェンジ物件には既に賃借人が住んでいるため、室内を自由に内覧することはできません。
物件によっては賃借人の許可を得て内覧できるケースもありますが、クローゼットの中や水回りを細かくチェックできるわけではありませんので、部屋の状態を把握できないことも多いです。
そのため購入検討者は室内の状態を画像や売主が開示する付帯設備表で判断するしかなく、リスクの高い取引になる可能性もあります。

ローンの金利が高くなるから

買い手がオーナーチェンジ物件を購入するために金融機関から融資を受ける場合、居住用物件よりも金利が高くなります。
なぜなら一般的に金利が低い住宅ローンは債務者が対象物件に居住することを条件に融資されるからであり、居住できないオーナーチェンジ物件は不動産投資ローンを利用することになるからです。
不動産投資ローンは住宅ローンよりも金利が高く、利回りとのバランスが悪くなることも多いです。
これにより物件が気に入ったとしても購入時点の収益性を維持することができず、購入を見送る原因になることもあります。

入居条件を設定することができないから

収益物件の所有者は人権侵害にならない内容であれば入居条件を設定することができ、安心して貸すことができる入居者を選定することができます。
たとえば既にペットを飼っている世帯の場合、臭いや壁紙の汚れがひどくなることを懸念しなければなりません。
オーナーチェンジ物件は売主と賃借人が締結した賃貸借契約を継承することになり、物件の所有者が変わったとしても入居条件を変更することはできません。
不動産の資産価値をできるだけ長く維持し、利益を確保し続けるという意味で入居者の住まい方は重要なポイントであることから、オーナーチェンジ物件を避ける投資家も多いです。
なお、入居者の退去が決まっており近い将来空室になる可能性が高い場合は、新しい入居者と希望の入居条件で賃貸借契約を締結することができますので、このような心配はありません。

収益還元法と取引事例比較法の査定方法では差が出るから

不動産を査定する場合、不動産投資であれば収益還元法を採用し居住目的として売却するのであれば取引事例比較法を採用します。
前述した直接還元法は収益還元法の1種で、もう1つのDCF法とあわせて代表的な投資物件の査定方法です。
どちらの方法も「利益」をベースに算出するため、利益率が重視されます。
一方、取引事例比較法は査定物件の周辺で過去に成約となった物件を抽出し、築年数や間取り、階層が似ている物件の成約事例をベースに平均値を計算します。
そのため価格の根拠が明確になり、買い手も販売価格に納得しやすくなりますが、収益還元法は想定通りの家賃収入があり、将来売却できることが前提条件です。
このようにオーナーチェンジ物件と居住用物件では販売価格のベースとなる査定方法が異なり、オーナーチェンジ物件の方が価格の整合性を判断しにくいという特徴があります。

オーナーチェンジ物件が売れにくいといわれる主な理由

オーナーチェンジ物件は自ら居住することを目的としたターゲット層が買い手になることがなく、居住用物件よりも反響が少なくなります。
投資目的で検討している投資家であれば購入検討者となりますが、入居者がいるため室内をチェックすることが難しく、想像で設備や壁紙の状態を判断しなければなりません。
また、オーナーチェンジ物件は住宅ローンではなく不動産投資ローンの対象となるため金利が高く、思い描いた資金計画を実現できないケースも多いです。
賃貸経営は市場や金利の影響を受けやすく、状況によっては高い収益力を維持できなくなることもありますので、経営リスクもオーナーチェンジ物件が売れにくい理由の一つといえます。
オーナーチェンジ物件が売れにくい理由について、詳細は以下の記事を参考にしてください。
オーナーチェンジ物件が売れない?理由と売れないときの対策を解説 – 空家ベース

オーナーチェンジ物件を高く売るためのコツ・ポイント

入居者と賃貸借契約を締結した場合、賃貸人は正当な理由がなければ契約を解除して退去してもらうことができなくなります。
そのため不動産を活用して賃貸経営をする場合には将来を見越して判断する必要がありますが、状況が変わって経営難に陥ったり収益性が低いオーナーチェンジ物件を相続することもあります。
このような状態になってしまうと収益物件としての魅力が少ないことから、売却してしまうのがおすすめです。
オーナーチェンジ物件は売りにくい不動産ではありますが、高く売るためのコツはあります。
この章ではオーナーチェンジ物件を高く売るためのコツとポイントについて、解説します。

空室率を下げて家賃収入を安定させる

1棟マンションなど複数の部屋で家賃収入を得られるオーナーチェンジ物件の場合、空室をできる限り減らすことで家賃収入を安定させることができます。
家賃収入が安定している投資物件の利回りは高く、その結果収益還元法によって算出された査定額も高くなります。
このように収益物件の最大の魅力といえる「収益性」を改善することで、オーナーチェンジ物件を高値で売却できるようになります。

入居者とのコミュニケーション体制を整える

不動産投資において賃借人と頻繁に顔を合わすことは少ないですが、LINEやグループチャットなどを使って円滑にコミュニケーションが取れる状態にしておくこともポイントです。
たとえば設備の不具合や壁紙の剥がれが発生した場合、すぐに対処することで資産価値を維持できることも多いです。
このようなトラブルが発生した際に入居者からすぐに連絡を受ける体制を整えておくことで、築年数が古いオーナーチェンジ物件であっても販売価格を高く設定しやすくなります。
また、入居者との関係が良好であれば内覧に協力してくれることもあり、部屋を隅々までチェックさせてもらえれば買い手のリスクを下げることに繋がります。
オーナーチェンジ物件を高く売るためにはこうした入居者とのコミュニケーションも重要ですので、積極的に連絡を取るよう心がけることをおすすめします。

投資家目線で利回りや将来性をアピールする

オーナーチェンジ物件を購入するのは投資家のため、投資家が魅力を感じるようなアピールポイントをピックアップし、不動産会社から伝えてもらうことも大切です。
特に利回りや室内の状態、設備の交換時期などは投資家にとって重要な判断材料であり、修繕履歴があれば安心して購入しやすくなります。
具体的に購入を検討している人がいれば収益計画を把握できるレントロールを開示し、経営のイメージを持ってもらうこともポイントです。
最寄りの駅や地域で再開発計画が決まっている場合は将来の資産価値が向上することもありますので、オーナーチェンジ物件が持つ「魅力」と「将来性」は必ず買い手に伝えることが高値売却のコツといえます。

不動産会社選びに注意する

不動産会社といっても「賃貸」や「仲介」、「買取専門店」など様々な種類があり、オーナーチェンジ物件の売却を依頼する場合は不動産仲介会社になりますが、収益物件の売却に慣れていない不動産会社も多いので注意が必要です。
不動産会社目線でも居住用物件よりもオーナーチェンジ物件の方が売却は難しくなりますが、その理由として買い手がプロの投資家であることが多いというポイントがあります。
魅力的な物件であっても不動産会社が投資家の質問に対して明確に答えられない場合、不安を与えてしまいます。
収益物件に関する専門知識が少ない担当者だった場合、契約時や引渡し後に大きなトラブルが発生することもあります。
このような失敗を防ぐためには売却を依頼する不動産会社選びが重要となり、複数の会社に査定を依頼して査定額と売却プランをチェックし、信頼できる会社をピックアップすることが大切です。

オーナーチェンジ物件を売買するメリット・デメリット

この章ではオーナーチェンジ物件を売買するメリット・デメリットについて、売り手側と買い手側に分けて解説します。

売り手側のメリット・デメリット

オーナーチェンジ物件を売却する場合、販売中であっても家賃収入を得られるという点がメリットです。
空室を居住用物件として売却する場合、維持管理するための手間や費用がかかります。
自己利用している自宅を売却する場合は特別な維持管理をする必要はありませんが、固定資産税や都市計画税といった税金は発生してしまいます。
その点、オーナーチェンジ物件は入居者が生活しやすいよう掃除やメンテナンスを行い、さらに家賃収入を税金の支払いに充当することができます。

一方、オーナーチェンジ物件のデメリットは販売が長期化しやすく、居住用物件よりも売却価格が安くなりやすいという点です。
そのためオーナーチェンジ物件を売却する際には比較的長めの販売期間を想定する必要があり、なるべく早く売却したい人にとって不利なケースが多いといえます。

買い手側のメリット・デメリット

買い手側のメリットとして、すぐに家賃収入を確保できるという点があります。
オーナーチェンジ物件の購入希望者は投資家のため、既に入居者がいて家賃が発生する物件は魅力があります。
さらに利益や支出が購入前に明確なため収益計画を立てやすく、物件次第では最初から安定した経営を実現することができます。
ただしオーナーチェンジ物件は入居者を選ぶことができず、室内の状態も不明瞭なままで契約することになるため、購入後に問題が発生することも少なくありません。
このようにオーナーチェンジ物件の購入を検討するのであれば、リスクとリターンのバランスを十分に検証する必要があるといえます。

オーナーチェンジ物件が売れないときの対処法

どうしてもオーナーチェンジ物件が売れない場合は空室率を改善し、収益物件としての魅力をできるだけ多く買い手に伝える工夫が必要です。
また、反響が極端に少ない場合は依頼している不動産会社の対応が十分でないことも考えられますので、時期を見て不動産会社を変えることもポイントです。
なお、どのようなオーナーチェンジ物件であっても居住用物件より販売は長期化しやすいことから、なるべく早く現金化したいのであれば不動産買取業者に相談し、直接買い取ってもらうことをおすすめします。
オーナーチェンジ物件が売れないときの対処法について、詳しく知りたい人は以下の記事を参考にしてください。
オーナーチェンジ物件が売れない?理由と売れないときの対策を解説 – 空家ベース

まとめ

オーナーチェンジ物件は不動産売却の中でも販売が難しく、売れ残っている物件も多いです。
売れ残る理由としては「入居者が選択できない」「投資家や不動産会社しか購入検討者にならない」などがあり、対策しなければ何年も売れ残ってしまうこともあります。
一方、オーナーチェンジ物件は家賃収入があるため売れ残っていても収益を得ることができるなど、メリットも多いです。
そのためオーナーチェンジ物件を売却するのであればまず複数の不動産会社に相談して収益物件の売却に強い会社を見つけ、販売計画を綿密に立てることが重要といえます。