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市街化調整区域は建て替えや増改築ができる条件は?活用方法や売買まで解説!

空家ベース編集部

「相続した空き家が市街化調整区域にあり、対処に困っている」
「市街化調整区域の戸建て住宅を購入したけど、老朽化しているから建て替えしたい」

市街化調整区域にある建物は建て替えができるものの、一定の条件を満たす必要があります。また、いざ売ろうと考えても、買主が見つからずなかなか売却できないといったデメリットもあり、売買の場面では慎重に判断しなければなりません。

本記事では、市街化調整区域での建て替えや増改築が可能になる一定の条件や、その他の活用方法について解説します。

この記事でわかること

  • 市街化調整区域とは「都市化・市街化を抑制する地域」のことである
  • 市街化調整区域で建て替えを行うためには「都市計画法第34条に定められたとおり、都道府県知事からの許可が必要」である
  • 市街化調整区域で建て替えを行うメリットは「固定資産税が安い」「静かな環境で過ごせる」などがある

市街化調整区域とは

土地、管轄する自治体によって都市計画で「都市計画区域」と「それ以外の区域」を定めています。

そして、都市計画区域は、市街化区域と市街化調整区域、非線引き区域に分かれます。

市街化調整区域とは?

市街化区域と市街化調整区域

「市街化区域」は、街の活性化を目的とする地域で、人々が住みやすくなるように、インフラ整備や開発などが積極的に行われます。

一方、「市街化調整区域」は、都市化・市街化を抑制する地域です。原則として、積極的なインフラ整備や開発は行われず、人々が住むための住宅や商業施設などの建築が認められないエリアです。

「非線引き区域」は、区域区分が定められていない区域で、市街化区域でも市街化調整区域でもない区域を指します。

このなかでも「市街化調整区域」は、自分が所有する土地でも、自治体の許可がなければ自由に建物を建てたり、建て替えたりできません。中古住宅を安く購入した後に「再建築不可だった」と気付く方も一定数存在します。

市街化調整区域の特徴と目的

市街化調整区域の特徴は、大きく以下の4つです。

  • 静かな環境で過ごせる
  • 土地価格が安い傾向にある
  • インフラ整備が十分でないことが多い
  • 利便性の高い施設が近隣にないこともある多い
  • 市街化調整区域の目的は、都市化・市街化の抑制です。無秩序な発展や市街拡大を防ぐために上記のような特徴を持っています。

    市街化調整区域での建て替え・増築はできるの?

    積極的なインフラ整備や開発が行われない市街化調整区域では、条件さえ満たせば、建物の建て替えや増改築、リフォームが可能です。

    建て替えや増築が可能なケース

    市街化調整区域で、建物の建て替えや増築を行うには、都市計画法第34条に定められた要件を満たし、都道府県知事などから許可を得なければなりません。

    条文のままでは表現が難しいため、条文の一部を簡単に要約したものをご確認ください。

  • 居住中の住民に有益な店舗の建築
  • 危険物の貯蔵や処理を目的とする施設
  • 既存の工場に関連する事業場や中小企業を振興する施設
  • 市街化区域に隣接または近接し、市街地の一部と認められる地域への建築
  • そのほか、開発審査会からの許可を得たもの
  • 要件を満たし、市街化調整区域への建築が止むを得ないと判断される場合に、建築許可が下ります。もちろん、立地や自治体の都市計画などによって要件は異なります。管轄する自治体の窓口で確認するようにしましょう。

    参考:都市計画法第34条|e-Gov法令検索

    建て替えや増築が難しいケース

    「市街化調整区域にもともと建っている既存の住宅でも、建て替えや増築はできないの?」と疑問に思うかもしれませんが、このようなケースでも都道府県知事からの許可を得る必要があります。

    ただし、絶対に許可が下りず建て替えや増築ができないというわけではありません。建て替えや増築を検討中の方は、自治体の窓口や市街化調整区域内で不動産売買に実績のある不動産会社に確認するとよいでしょう。

    市街化調整区域での建て替え手続き

    市街化調整区域において、既存の居住住宅や相続により取得した空き家などを建て替える際の手続きの流れは以下のとおりです。

  • 自治体への事前相談・事前協議
  • 開発許可申請の手続き
  • 建築許可申請の手続き
  • ひとつずつ見ていきましょう。

    自治体への事前相談・事前協議

    市街化調整区域に建築物を建てる場合、まずは自治体に事前相談します。

    事前相談の際は、「位置図」「住民票」「現況写真」など各書類が必要です。相談の結果、建て替えの計画が具体化されたら、市街化調整区域で実際に建築可能か、許可手続きが必要かなど、自治体と事前協議を行います。

    協議後、自治体から開発許可を取得できるかどうかの回答があり、問題がなければ、開発許可や建築許可などの手続きを進めていきます。

    事前相談や事前協議では、必要書類の提出を求められるため、あらかじめ自治体の担当窓口に確認しておくと安心です。また、不動産関連の専門知識も必要になるため、市街化調整区域の土地活用や建物に詳しい不動産業者に相談すれば、サポートやアドバイスを受けられるでしょう。

    開発許可申請の手続き

    開発許可申請は、建て替えや建築に先立ち、土地の掘削や整備工事などの許可が必要と判断された場合に行います。

    開発許可を申請し、申請に伴う手数料の納付を済ませ、開発許可書の交付を受けます。

    建築許可申請の手続き

    開発許可を得て、開発行為が完了した後に、建て替えや建築する建物に関して建築許可申請が必要です。

    建築許可とは、建築物の新築や、既存建築物の建て替えや増改築、第一種特定工作物の新設などで必要な手続きです。もちろん、開発許可同様、建築許可が不要な場合もあります。

    建築許可は、建築計画に関する自治体との事前相談や、敷地内権利者との同意、建築基準法を含む各種法令の違反確認などが済むことで、申請に移ることができます。

    必要書類を提出し、審査で問題がなければ、手数料の納付を行い、受理後に建築許可が下ります。

    市街化調整区域での建て替えのメリットとデメリット

    市街化調整区域内で、建て替えをするメリットとデメリットを見ていきましょう。

    建て替えのメリット

    市街化調整区域に建て替えや増築を行い、住むことで得られるメリットは以下の4つです。

  • 土地の価格が安く、広い敷地を確保しやすい
  • 固定資産税が安く、家計への負担が少ない
  • 都市計画税が課税されない
  • 静かな環境で過ごせる
  • 市街化調整区域は、土地の評価額が低いため固定資産税が安く、都市計画税はそもそも課税されません。また、近隣に商業施設が少ないため、広い敷地を確保でき、騒音に悩むことなく静かな環境で過ごせるというメリットがあります。

    建て替えのデメリット

    一方、デメリットとして以下のようなことが挙げられます。

  • 近隣に学校や病院、利便性の高い商業施設などがないことがある
  • 新築や増改築、リフォームなどに制限がかかる
  • インフラ整備が遅れる
  • 市街化調整区域は、インフラの整備や開発が積極的に行われないことが多く、「生活上、不便かもしれない」と懸念する人は少なくありません。そのため、将来的に売却を考えている場合は、上記のデメリットをあらかじめ念頭に置いておきましょう。

    市街化調整区域で建て替える際の注意点

    市街化調整区域に住む方や移住を検討している方、相続や遺贈によって地方の空き家や古家付き土地を取得した方が、もしも建て替えや増改築を検討しているのであれば、押さえておくべき注意点が3つあります。

  • 既存住宅制度の廃止に伴う影響
  • インフラ整備が不十分な土地の対処法
  • 将来的に売却を考える場合の注意点
  • ひとつずつ見ていきましょう。

    既存宅地制度の廃止に伴う影響

    以前は、例外的に一定の条件を満たせば開発許可を得ることなく、開発や建築を行える「既存宅地制度」がありました。

    しかし、既存宅地制度は2001年に廃止され、現在では特例措置を設けている一部の都道府県を除き、既存宅地であっても開発や建築を行うことは難しくなっています。

    建て替えや増改築を検討中の方は、所有する土地や建物のある市区町村では既存住宅制度の特例措置が設けられているかどうか、自治体の窓口に確認してみましょう。

    インフラ整備が不十分な土地の対処法

    市街化調整区域の土地活用例

    インフラ整備が不十分な土地は、建て替えや増改築以外でも十分に有効活用できます。

    以下は、土地活用の一例です。

  • 駐車場
  • 医療施設
  • 墓地や霊園
  • 資材置き場(トランクルーム不可)
  • ソーラーパネル設置(太陽光発電)
  • 社会福祉施設(特養老人ホームなど)
  • 高齢者施設(サービス付き高齢者向け住宅、住宅型有料老人ホームなど)
  • 老朽化で住むことが困難になった戸建てや、相続や遺贈で取得した空き家を増改築するつもりがなく持て余している場合は、更地にして別の方法で土地を活用することも検討しましょう。

    将来的に売却を考える場合の注意点

    市街化調整区域内の不動産売買は、不動産会社によっては仲介に難色を示されることも多く、売却が不利になることもあります。ただ「絶対に売れない」というわけではありません。

    市街化調整区域でも、開発許可の要件が緩和されていれば、その土地は比較的売却しやすい傾向にあります。特に、土地の地目が宅地の場合や、農地ではない場合、などは売却しやすいため、将来的に売却を考えるのであれば、開発許可要件の緩和や、地目などを確認しておくと安心です。

    また、建て替えや増改築が許可されにくい土地であっても、敷地が広く、周辺環境が良好であれば、事業用に土地を購入したいという買主も一定数存在します。ただ、そのような買主を自ら探すのはとても手間と時間がかかるため、市街化調整区域の売買や仲介に詳しい不動産会社を頼るという方法もおすすめです。

    まとめ

    本記事では、市街化調整区域における建て替えや増築が可能になる条件や、その他の土地活用方法、市街化調整区域で建て替えを行う際の注意点について解説しました。

    市街化調整区域にある土地は、自分の土地や建物であっても、都道府県知事からの許可がなければ自由に行えないなど、制限が設けられています。購入時の費用や固定資産税の負担は少ないものの、不動産売却という面では不利に働くケースもあります。買主からの声が掛かるのを待っているだけでは、なかなか難航するでしょう。

    市街化調整区域内の不動産売却を検討している方は、区域内にある土地や建物の売買実績が豊富な不動産会社に相談した方が、スムーズに売却できます。ただ、取扱実績がない不動産会社も多く、最初から「市街化調整区域内の物件はお断り」ということもあるでしょう。

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    不動産売買について相談がある方やお困りごとをお持ちの方は、お気軽にご相談・お問い合わせください。