空き家の民泊ビジネスとは?必要な許可や手続き、法規制、運営に必要な準備やコストを解説
空き家活用の代表的な方法として民泊があり、空き家対策として推奨している自治体も多いです。
そのため所有している空き家をリフォームやリノベーションして民泊事業を行う所有者も増加しており、さらに民泊ビジネスのために空き家バンクで物件を探して購入する投資家もいます。
このように使用していない建物を有効活用する上で民泊ビジネスは人気の方法ですが、2018年に旅館業が改正されて施行された民泊新法によって住宅を民泊として運営するには様々な条件や届出が必要となりました。
そのため所有した不動産を宿泊施設として管理するためには多くのステップと知識を知っておく必要があるでしょう。
この記事では空き家を民泊ビジネスとして利用するための必要な手続きと制限、メリット・デメリットについて解説します。
- 現在の空き家事情
- 空き家を民泊として活用するメリットとデメリット
- 民泊ビジネスに関連する3つの法律
- 空き家で民泊ビジネスをする際の注意点
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日本では空き家が増え続けている
団塊の世代が住宅を購入し日本の着工棟数は多く増加しましたが、その後人口が減少し結果的に空き家が増加することになりました。
これにより管理できていない空き家が倒壊したり火災の原因になるなどのトラブルが発生するようになり、近隣住民がリスクを負うケースも少なくありません。
この章では日本の空き家事情について解説しますので、これから民泊を検討する人は参考にしてください。
国内の空き家数は900万戸で過去最多
総務省統計局が公開したデータによると全国の空き家の数は住宅全体の13.8%にあたる900万戸となり、前回の調査から51万戸増加したとのことです。
この数字は過去最多で東京や大阪、神奈川県など人口が多い都市部の増加が目立ちましたが空き家の割合は地方が高く、和歌山県や徳島県、山梨県、鹿児島県は20%を超えました。
2033年頃には空き家数が2,150万戸となり、全体の30%以上が空き家になると言われています。
このような問題を解決するために各自治体は特定空き家の認定や家屋の解体に対する補助金制度を推進していますが、人口減少と過疎化の影響は大きく今後も空き家は増加する見込みです。
空き家が増えている理由
空き家が増える理由として「空き家活用や土地活用しても管理できない」という点や「売却や処分するのに費用がかかる」という点があります。
築年数が古い建物は設備や躯体が老朽化している可能性が高く、住める状態にするためにはリフォームやリノベーションをする必要があります。
また所有している空き家が遠方にある場合は自己活用できないため売却や家屋解体することがおすすめですが、買い手が見つからなければ売却することができず解体にも費用がかかります。
このように所有者にとって活用方法がない空き家は放置される傾向にあり、さらに住宅の需要低下によって売りたくても売れないという状況が空き家増加に拍車をかけています。
空き家対策特別措置法について
空き家増加に歯止めをかけるため、国土交通省は「空き家等対策の推進に関する特別措置法」を施行し、この法律によって空き家を特定空き家として認定することで自治体は空き家の所有者に対し、勧告や命令が可能となりました。
適切に管理されていない空き家の所有者に管理の指導や勧告をすることで危険な空き家を減らすことが目的ですが、所有者が改善しない場合は固定資産税の優遇措置が撤廃されることもあります。
場合によっては家屋の強制解体を行政代執行によって実施されるケースもあるため、管理できないからといって空き家を放置することは大きなリスクを伴うことになるでしょう。
こうしたリスクを排除するためにも建物を宿泊客に提供するビジネスは有効であり、民泊事業について自治体に相談する所有者も増えています。
民泊とは
民泊について定義はないものの、国土交通省は民泊について「住宅(戸建住宅やマンションなどの共同住宅等)の全部又は一部を活用して、旅行者等に宿泊サービスを提供することを指す」としています。
引用元:国土交通省|はじめに「民泊」とは
つまり所有している不動産を宿泊目的で宿泊者に提供した時点で、民泊とみなされるようです。
しかしプロの管理業者が運営しない民泊事業は地域のルールに違反したり外国人の宿泊者や観光客とトラブルになるなどの問題が発生しかねないことから、「旅館業法の許可」か「国家戦略特区法(特区民泊)の認定」もしくは「住宅宿泊事業法の届出」が必要となっています。
この章では上記の制度について、詳しく紹介します。
旅館業法 (簡易宿所) |
国家戦略特区法 (特区民泊に係る部分) |
住宅宿泊事業法 | |
---|---|---|---|
所管省庁 | 厚生労働省 | 内閣府 | 国土交通省 厚生労働省 観光庁 |
許認可等 | 許可 | 認定 | 届出 |
住専地域での営業 | 不可 | 可能 | 可能 |
営業日数の制限 | 制限なし | 2泊3日以上の滞在が条件 | 年間提供日数 180日以内 |
宿泊者名簿の作成・ 保存義務 |
あり | あり | あり |
玄関帳場の設置義務 | なし | なし | なし |
最低床面積、 最低床面積の確保 |
33㎡ | 原則25㎡以上/室 | 3.3㎡/人 |
必要な衛生措置 | 換気、採光、照明、 防湿、清潔等 |
換気、採光、照明、 防湿、清潔等の措置、 使用の開始時に清潔な居室の提供 |
換気、除湿、 清潔等の措置、定期的な清掃等 |
非常用照明等の 安全確保の措置義務 |
あり | あり | あり |
消防用設備等の設置 | あり | あり | あり |
近隣住民との トラブル防止措置 |
不要 | 必要 | 必要 |
不在時の管理業者 への委託業務 |
規定なし | 規定なし | 規程あり |
引用元:国土交通省
旅館業法(簡易宿所)
旅館業は厚生労働省によって「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と定義されており、許可を得ることで営業することが可能です。
営業日数に制限がないためもっとも収益化しやすい民泊形態にすることができ、本格的な賃貸経営をしたい人に向いている制度といえるでしょう。
ただし最低床面積が33㎡と広いため、初期費用が他の制度よりも高くなる可能性があります。
国家戦略特区法(特区民泊に係る部分)
国家戦略特別区域は東京都大田区や大阪府の一部地域が対象となっており、この地域で民泊することは特例として認められています。
「国家戦略特別区域法に基づく旅館業法の特例」と呼ばれる制度は民泊を利用する外国人に向けて外国語の案内や説明を提供することを義務付けており、他のエリアよりも施設の準備物が異なる傾向にあります。
また国際的なイベントなどが発生すると立ち入り調査や指導の内容が変わることがあり、たとえばAPECや万博などが開催される時期になると外国語が堪能なスタッフの配置を指示されることもあるようです。
さらに、これらの指示は案件によって異なるため窓口に問い合わせしても「ケースバイケースです」という回答になることも少なくありません。
このことからも、特区民泊は比較的運営が難しいという特徴があります。
住宅宿泊事業法
平成29年6月に成立された住宅民泊事業法は安全面・衛生面の確保や地域ルールの順守を目的とした法律となっており、観光旅客の宿泊ニーズが多様化することで問題が発生することを抑制する目的があります。
この法律を利用して民泊運営するためには届出をする必要がありますが、届出には「住宅宿泊事業者」「住宅宿泊管理業者」「住宅宿泊仲介業者」を明記することになります。
それぞれ次のような役割が義務付けられているため、事前に内容をチェックしておきましょう。
住宅宿泊事業者 | 宿泊者に住宅を提供し住宅宿泊仲介業者に物件情報を提供する。 また不在型の場合は住宅宿泊管理業者へ管理の委託をする。 活動するためには都道府県知事への届出が必要。 |
住宅宿泊管理業者 | 住宅宿泊事業者から委託を受け住宅を管理する。 活動するためには国土交通省に事業登録をする必要がある。 |
住宅宿泊仲介業者 | 住宅宿泊事業者から物件情報を入手し宿泊客が検索できるように情報公開する。 また、宿泊客の予約や支払いの役割も担う。 活動するためには観光庁へ事業登録する必要がある。 |
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空き家で民泊ビジネスをするメリット
空き家を使った民泊ビジネスは定期的に清掃やメンテナンスをする必要があるため、しっかり管理された建物となります。
そのため自己利用も売却もするつもりがない空き家であれば民泊として公開することがおすすめですが、これ以外にも民泊ビジネスにはメリットがあります。
この章では民泊ビジネスのメリットについて詳しく解説します。
空き家活用で収益を得られる
民泊は宿泊客に宿泊を提供し、宿泊料をもらうビジネスです。
つまり、これまで固定資産税等の支払いなど支出しかなかった空き家を「収益を生み出す不労所得」にすることができ、大きなメリットとなります。
また収益が安定すると修繕費用や税金の支払いを全て収益から支払うことができ、民泊を複数所有することで所得を増加させることも可能です。
このように民泊ビジネスには「副業」としても優秀な側面があるといえます。
地方創生に貢献できる
空き家が多い地域は過疎化が進む傾向にあり、町の魅力も減ってしまいます。
そこで地元や好きな地域を活性化させるために空き家を民泊として再生させ、地方創生の足掛かりにする人もいます。
こうした目的での民泊ビジネスは自治体によっては補助金がでることもあり、初期費用を抑えられるケースもあります。
届け出や許可によっては後に売却できる
収益性の高い民泊ビジネスは収益物件としても価値が高いといえますが、届出や許可の内容によっては民泊事業を丸ごと売却することも可能です。
この方法は定期的な収益を得ることはできなくなる一方で、一度にまとまった利益を手に入れることができるというメリットがあります。
そのため空き家を民泊として活用するだけでなく、将来売却することも踏まえた収益計画を立てる場合は利用する制度から検討する必要があるといえるでしょう。
空き家で民泊ビジネスをするデメリット
空き家を使った民泊ビジネスは多くのメリットがありますが、デメリットもあるため注意が必要です。
この章では空き家で民泊ビジネスをする際のデメリットについて解説しますので、メリットと合わせて確認してください。
空き家が汚れたり、破損するリスクがある
不特定多数の人が住む民泊は何度も利用している内に汚れたり設備が破損することがあり、その度に清掃や修繕しなければならないという点がデメリットです。
民泊は衛生面について規定が設けられており、汚いまま放置していると事業停止の命令を受けることもあり得ます。
そのため民泊は常にキレイな状態を維持し設備のチェックが必要となりますが、外国人観光客などは文化の違いから悪気なく部屋を汚したり設備を壊したりすることがあります。
このようなデメリットは民泊事業の収益性を大きく下げる可能性があるため、注意点といえるでしょう。
リフォーム・リノベーションに費用がかかる
空き家の状態が悪ければリフォームやリノベーションを実施する必要があり、初期費用がかかってしまいます。
たとえばキッチンやバスルーム、トイレ、洗面台といった水回りを修繕すると100〜150万円ほど費用がかかることになります。
こうした費用は収益がプラスに転じる時期を大幅に遅らせることになることから、大きなデメリットといえるでしょう。
空き家を民泊施設にする条件
空き家を民泊施設として扱うためには国土交通省によって定められた規程をクリアする必要があり、設備と住環境についてそれぞれ異なる規程があります。
この章では国都交通省が公開しているminpakuで定められている条件について、解説します。
設備に関する要件を満たすこと
民泊事業を行うには「台所」「浴室」「便所」「洗面設備」を設置し届出する必要がありますが、これらは全ての建物に独立して設置する必要はなく、同じ敷地内で各建物に設けられた設備がそれぞれ使用可能であれば複数棟を一つの住宅として届けることが可能です。
つまり、建物1棟につき条件を満たす設備が全て必要というわけではないことが分かります。
ただし公衆便所や銭湯などを設備として扱うことは禁止されています。
住の要件を満たすこと
民泊を営む家屋は「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」か「入居者の募集が行われている家屋」、「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」という条件のいずれかを満たす必要があります。
特定の人が住んでいる家屋や年に1回以上の使用履歴がある家屋であれば条件を満たすことができ、さらに住宅宿泊事業を営んでいる期間中に分譲(売却)又は賃貸の形態で、居住用住宅として入居者の募集が行われている家屋でも可能です。
社員寮として入居希望社員の募集が行われている家屋や入居対象者を限定した募集がされている家屋であっても条件を満たすことができますが、入居者募集の意図がないことが明らかな募集をした場合は認可がおりないケースもあります。
空き家を民泊施設にする手順
空き家を民泊施設として活用するためには必要な手順がありますが、「旅館業法の許可」、「特区民泊の認定」、「住宅宿泊事業法の届出」のどれを選ぶのかで内容が異なります。
この章で詳しく解説しますので、それぞれのポイントをチェックしましょう。
必要書類を揃える
旅館業法の許可や住宅宿泊事業法の届出を受けるためには次の書類が必要です。
なお、特区民泊の認定については東京都大田区と大阪府で必要書類が異なる上に担当者から説明を受ける必要があるため、詳しくは直接自治体にお問い合わせください。
新法民泊の届出をする
上記の書類を全て準備できれば行政に提出し、施設によっては立ち入り検査を受けます。
書類や必要設備の不備があると運営開始のタイミングが遅れてしまうため、内容に間違いがないことをしっかり確認しましょう。
許認可は大体1か月ほどでおります。
民泊仲介サイトに登録する
許認可がおりれば民泊仲介サイトに登録し、宿泊客の予約を待ちます。
民泊仲介サイトはそれぞれ特徴が異なるため、複数サイトに登録するのがおすすめです。
空き家を民泊にする場合の注意点
空き家を放置していると大きなリスクを抱えることになりますが、民泊として有効活用することで収益を生み出す「財産」となります。
そのため国も自治体も活用していない空き家を民泊ビジネスとして推奨していますが、注意点があることも知っておきましょう。
この章では空き家を民泊として活用する場合の注意点について、解説します。
市区町村によって民泊の制限条例がある
多くの自治体が推奨する民泊ビジネスですが、市区町村によっては民泊を制限しているケースもあります。
特に重要文化財が多くある地域は観光客が文化財を損傷させないよう注視しており、そもそも民泊を推奨していないこともあります。
そのため民泊ビジネスを始める際には必ず市区町村のルールを確認し、地域住民とトラブルにならない方法でスタートすることをおすすめします。
家主不在型の場合は住宅宿泊管理業者の委託が必須
民泊には家主が居住している「家主居住型」と不在の「家主不在型」があり、空き家の多くは家主不在型です。
この場合は住宅宿泊管理業者の委託が必須となるため管理委託料がランニングコストとして発生してしまいます。
このことからも家主不在型の形態で民泊事業を運営するのであれば、管理委託料を踏まえた収益計画を立てる必要があるといえるでしょう。
確定申告をする
民泊によって20万円を超える収益を得た場合は不動産所得か雑所得の確定申告が必要となり、必要書類や記入方法が分からず手間取ってしまう人も多いです。
このような失敗を避けるためにも収益をチェックし、確定申告が必要と分かればなるべく早い段階で準備を進めることが大切です。
元本割れのリスクに注意する
民泊ビジネスは収益の安定性が高い物の、必ず儲かるわけではありません。
たとえば円高によって外国人観光客が減少したり民泊ビジネスをしているエリアの人気がなくなると宿泊客が減り、収益は悪化します。
また空き家を取得してリフォームやリノベーションを行った場合は初期費用が高くなり、投資ローンや管理委託料はランニングコストを圧迫します。
このことからも民泊ビジネスは元本割れのリスクを含んでいることが分かり、注意点といえるでしょう。
まとめ
空き家を民泊として活用することは倒壊や火災のリスクを下げ、利益を生み出すという意味で非常に効果的な方法といえます。
そのため多くの空き家所有者が民泊ビジネスを運営しており、人気エリアではわざわざ空き家を購入する投資家もいます。
その一方で空き家を民泊として活用することにはデメリットと注意点があり、さらに手続きと法律についても知っておく必要があります。
このことからも空き家を使った民泊ビジネスを始める際には、事前準備と情報収集が大切だといえるでしょう。
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どんな物件でも空き家ベースならメリット・デメリットを明確にしてご提案が可能です。他社では扱えないような物件も取り揃えておりますので、購入できる空き家の選択肢が非常に多いのが特徴です。
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