コラム

「投資用に購入した古民家の利回りを高めたい」「相続した築古空き家を収益化したい」といった方々に、セルフリノベーションが注目されています。

低予算かつ自由なデザインで建物をキレイにできるセルフリノベーションですが、実は、知識や技術がない方にはおすすめできません。利回りを高めるどころか、かえって損失を大きくし失敗に終わる可能性すらあるからです。

本記事では、セルフリノベーション失敗のメリット・デメリットや失敗事例などを紹介しつつ、失敗や後悔をしないためのコツを解説します。

この記事でわかること

古民家や築古空き家のセルフリノベーションは増えているが注意が必要

セルフリノベーションの注意点
古民家や築古空き家をセルフリノベーションする方が増えています。

セルフリノベーションとは、部屋や建物などのリノベーションを行う際、業者に依頼せず自分の手で設計・工事を行うことです。いわゆる、DIYでリノベーションすることです。低予算で建物や居室などを改装できるため、多くの古民家・築古空き家の所有者に注目されています。

しかし、素人や初心者が行うと、時間や労力がかかったり、中途半端な仕上がりで借り手が見つからなかったりと逆効果になる可能性があるため注意が必要です。

セルフリノベーションのメリット

セルフリノベーションには、主に以下の4つのメリットがあります。

  • 業者や専門家に依頼するよりもリーズナブル
  • クロスの色味などを自由にデザインできる
  • 工期の制限がない設定できる
  • DIYの知識や技術が身に付く
  • 最も大きなメリットは、費用を安く抑えられる点です。趣味に近い感覚でDIY作業を行える方は負担に感じないかもしれません。

    セルフリノベーションのデメリット

    主に、費用面でメリットを受けられるセルフリノベーションですが、実はデメリットもあります。

    セルフリノベーションのデメリットは、主に以下の5点です。

  • DIY可能な範囲の区別が難しく、役所に申請が必要なケースもある
  • 専門資格保有者でないと行えない作業がある(電気工事士など)
  • 業者や専門家に比べて仕上がりに差が出やすい
  • 特に初心者は時間や体力が必要になる
  • 大怪我につながることがある
  • 時間や体力はどうにかなるかもしれませんが、専門資格を持たなかったり、役所への申請を怠ったりすると法律違反にあたるため注意しましょう。

    また、SNSやYouTubeで紹介されているケースと全く同じ物件・建物でDIYを行うことは極めて少ないため、仕上げた後に「満足できる品質じゃない」とやり直しを余儀なくされることも珍しくありません。

    例えば、塗装やクロスの張り替えなどは素人でも取り組みやすい部類のDIYですが、完成までにそれなりの時間がかかります。DIYの難度が高くなるほど、失敗とやり直しを繰り返すことになりますが、トータルの時間と労力を考えればプロに依頼した方が安く済むケースもあります。

    セルフリノベーションで失敗するとどうなる?

    SNSやYouTubeなどで「セルフリノベーションすると高利回りを狙える」と聞いた方などは、セルフリノベーションに興味をお持ちかもしれません。

    しかし実は、セルフリノベーションで失敗すると、高利回りどころか損する可能性すらあります。

    例えば、「中途半端な仕上がりで借り手が見つからない」「作業中に足を滑らせて大怪我してしまい作業が進められない」などにより、契約締結やDIY完成までに時間がかかると、空室期間が長くなります。空室期間が長引けば、その分機会損失は膨らむばかりです。

    また、DIY作業に費やす自分自身の人件費を考慮すると、熟練した技術と知識がない場合は、DIYで安くリノベーション・リフォームできるとは言い難いのです。

    セルフリノベーションで失敗した事例・体験談

    セルフリノベーションで失敗した事例は、以下のようにさまざまです。

  • 想像以上に作業日数がかかり、工数と費用が倍になった
  • 仕上がりが汚く、何度もやり直すことになった
  • 止水栓が折れてキッチン周りが大洪水になった
  • (マンションの)管理規約に違反してしまった
  • また、実際にセルフリノベーションで失敗した方の体験談もご紹介します。

    セルフリノベーション
    壁紙を雑に剥がして、剥がし方を知る
    パテ塗りして埋めて削って、粉塵で掃除機つまる
    とりま一面貼る
    下地処理が適当過ぎて、浮きまくる
    何事も下準備が大切だと実感
    失敗した経験が、次に繋がるハズ pic.twitter.com/5eFLRlKW56

    — くーちゃん's (@qoochantoosanpo) May 23, 2022

    セルフリノベーションを検討中の方は、比較的取り組みやすいクロスの張り替えでさえ、失敗する可能性があることを念頭に置いておきましょう。

    セルフリノベーションで失敗する前にプロに相談しよう

    実は、プロの業者がセルフリノベーションを手伝ってくれる「DIYサポート」という頼もしいサービスがあります。

    「DIYの知識や技術がなくて、不安」「セルフリノベーションに興味はあるけど、一歩が踏み出せない」という方は、ぜひ参考にしてみてください。

    リノルティ

    「リノルティ」は、立地の良いリノベ済みの既存物件の仲介と、機能性を高める小規模リノベーションをワンストップで提供する不動産デジタル仲介サービスです。

    既存物件に機能をプラスする小規模リノベーションを行い、自分のスタイルに合った、特別な物件・特別な住まい空間を作り上げることができます。

    リノベーションのカテゴリーはキッチン収納棚や洗面・トイレ収納の設置などを含む8つあり、マンションと戸建ていずれにも対応しています。

    LOHAS studio

    「LOHAS studio」はリノベーション・リフォームのほか、新築・注文住宅を提供しています。

    DIYで可能なこと、できないことをアドバイザーと相談しながら一緒に判断できるため、初心者でも安心です。また、DIYできない部分はLOHAS studioが工事の手配をしてくれます。

    ただし、サポート地域が一都三県(東京都・千葉県・埼玉県・神奈川県)のみである点にご注意ください。

    toolbox

    「toolbox」は、DIYのデザインや設計、施工までをサポートしてくれ、塗装や床の張り替え、タイル貼りや解体など、幅広いニーズに対応しています。

    DIYの段取りや作業のやり方をはじめ、道具の使い方といったことまで丁寧に教えてくれるため、初心者やDIY未経験者でも安心してDIYに取り組むことができます。

    セルフリノベーションで失敗・後悔しないためには?

    古民家や築古物件のセルフリノベーションで失敗しないためには、事前準備が重要です。

    セルフリノベーションを成功させたとしても、そもそも需要がない物件では、収益化はおろか、リノベーション代すら回収できない可能性があります。

    そうならないためにも、リノベーションの「範囲」と「方法」をあらかじめリサーチし、「費用」の見通しを付けて、適切なプロの手を借りながら設計・施行することが大切です。そして、「借り手」または「買い手」を見つけておくと、なお安心です。

    借り手・買い手とのマッチングは「空家ベース」にお任せください

    プロの力を借りながらセルフリノベーションすることで、失敗を防ぎつつ、低予算で良質な仕上がりが実現できます。

    しかし、その古民家や築古空き家などの借り手や買い手が見つからなければ、機会損失は膨らみ、最悪の場合、赤字になってしまいます。そのため、肝心なのは、その物件を「借りたい」「買いたい」という方をいち早く見つけることです。

    「空家ベース」は、全国各地の古民家・空き家の豊富な売買実績を持つ不動産ポータルサイトです。借り手と貸し手、売り手と買い手の希望条件とマッチングする物件を紹介しています。

    物件掲載料や登録料は無料です。どなたでもお気軽に利用いただけます。「古民家を探している」「空き家を所有して困っている」など、お困りごとがある方はぜひ一度「空家ベース」にお声がけください。

    「築古物件を購入してリフォームして貸し出したい」「空き家投資で一定の不労所得を得たい」などの理由から、空き家の購入を検討している方も多いのではないでしょうか。

    空き家探しにはいくつかの方法があります。一般的な賃貸物件や戸建て物件の探し方とは若干異なるため、肝心の空き家の探し方がわからず、困っている方は少なくありません。

    そこで本記事では、空き家の探し方を中心に、空き家を探すうえでの注意点、購入前に考慮すべきポイントなどを解説していきます。

    この記事でわかること

    空き家の探し方を知る前に

    具体的な空き家の探し方を知る前に、価格の低い不動産(500万円以下など)は不動産会社が広告費をかけにくいため露出しにくい、ということを念頭に置いておきましょう。

    主な理由は、「価格の高い不動産=需要が見込まれる不動産」に比べて売却までの期間が長く、広告費をかけても費用対効果が悪いからです。

    空き家だからといって簡単に見つかるわけではない点に注意しましょう。

    空き家を手放したい人は多いのか?

    「空き家は売却しないでそのまま所有したい人が多いのでは?」と疑問に思う方もいるでしょう。

    しかし、空き家を所有したまま放置するのはデメリットばかりであるため、「手放したい」「売却したい」という所有者は多いのです。

    さらに、国は空き家の増加を食い止めるため「空き家対策特別措置法」を設けました。適切に管理されていない空き家を「特定空き家」に指定し、所有者に対し、罰金や固定資産税の増税などの罰則を科せるようになったのです。

    このような背景から、「どうせなら空き家を売って現金化したい」と考える人が多くなり、市場に出回る空き家は今後も増えると考えられます。

    参考:「危険な空き家」税負担増、活用促進で歯止めを 法改正案を閣議決定|朝日新聞 DIGITAL

    空き家の探し方を知ろう

    ここからは空き家の探し方を紹介していきます。

    空き家の探し方には、以下のような方法があります。
    空き家の探し方

  • 空き家バンク
  • 不動産ポータルサイト
  • 地元の人や不動産会社
  • 各自治体の空き家募集ページ
  • 空き家の探し方|空き家バンク

    「空き家バンク」とは、自治体や民間企業が主体となって空き家の情報を提供しているサービスのことです。

    所有している空き家を貸したい人や、売りたい人が登録し、空き家バンクを介して自治体や民間企業が情報を提供しています。

    参考:長野市空き家バンク|長野県長野市

    空き家の探し方|不動産ポータルサイト

    不動産ポータルサイトは、SUUMOやアットホームなどのことで、不動産会社などが物件情報を掲載しているウェブサイトです。

    物件数も豊富で、物件情報も詳しく確認できるため、ほかの方法に比べて最も効率的かつより多くの空き家を探せる方法です。各種ポータルサイトで、無料の空き家や賃貸の空き家などが幅広く掲載されています。

    空き家の探し方|地元の人や不動産会社

    地元にある空き家を探したり、空き家のオーナーに直接交渉したりする探し方もあります。

    また、地域密着型の不動産会社や地元の物件情報に精通した不動産業者に「空き家を探している」ことを伝えるという方法も、地道ですが優良な物件が見つかる可能性があります。

    空き家の探し方|各自治体の空き家募集ページ

    自治体によっては、空き家バンク以外にも各自治体サイトに空き家の募集ページがあります。自治体の募集ページは利用者がそこまで多くないため、掘り出し物件や割安な空き家が見つかる可能性もあります。

    自治体の空き家購入やリフォームの支援制度を活用すると、とてもお得に空き家に移住できるかもしれません。

    参考:あまくさライフ|熊本県天草市

    空き家を探すなら不動産ポータルサイトを活用しよう

    いろいろな空き家の探し方をお伝えしてきましたが、最もおすすめしたい方法は不動産ポータルサイトの活用です。

    ここからは、具体的なポータルサイトとその特徴を紹介します。

    アットホームなら「割安な空き家」が見つかる

    割安な空き家を買いたい場合は、アットホームがおすすめです。なぜ、割安になるかというと、不動産会社の広告費が他の媒体に比べて安く、掲載のハードルが低いためです。

    自治体が運営する空き家バンクと提携したアットホームのサイトもあります。

    「掘り出し物件が見つかるかもしれない」不動産ジャパン

    不動産ジャパンは、不動産会社が加盟する4団体が運営するポータルサイトです。

    不動産会社の掲載料は無料であり、空き家情報掲載のハードルが低いです。また、そこまでメジャーではなく、見る人が少ないため、掘り出し物件が見つかる可能性があります。

    「個人間でのやり取りもある玄人向きな」空き家ゲートウェイ・家いちばなど

    そのほか、「空き家ゲートウェイ」「みんなの0円物件」「家いちば」なども活用すると、優良な空き家が見つかるかもしれません。

    ただし、個人間でやり取りする機会も多く、若干玄人向きな面がある点には注意しましょう。

    「空き家の売買実績が豊富な」空家ベースがおすすめ

    「空家ベース」は、空き家を売りたい人と買いたい人を繋ぐ、空き家に特化したポータルサイトです。

    これまでも数多くの空き家の売買をサポートしてきました。登録や掲載料は無料で、他の不動産会社や空き家バンクで売れなかった物件なども多数売買しています。全国各地で、空き家のほか、古民家や再建築不可物件なども取り扱っているため、「掘り出し物件を探している」「地方の空き家を買いたい」という方は、お気軽にお声がけください。

    「古家付き土地」という検索方法もある

    どれだけ探しても自分にぴったりの空き家が見つからない、という可能性もゼロではありません。

    そのようなときは、不動産ポータルサイトに限らず、検索条件を「土地」にして「古屋付き」で探してみるのもおすすめです。「建物がもう使えない」と不動産会社が判断して土地価格で売り出されている物件が見つかることがあります。

    仮に「古家付き土地」を購入して建物が使えなかったとしても、リフォーム・リノベーションをして賃貸物件として活用することも可能です。また、建物を解体して更地にした後、駐車場として収益化するという活用方法もあります。

    さらに、地方活性化や社会貢献にもつながることから、「再生された古民家空き家に住みたい」という買手や借手は増加傾向にあり、賃貸活用を希望する方にとっては追い風となっています。

    参考:築50年の空き家に入居者続々 空き家の新たな活用法とは?|NHK クローズアップ現代

    空き家探しにおける注意点

    空き家探しでは、以下のようなポイントに注意しましょう。

    ・空き家になっている理由がネガティブなものではないか
    ・空き家があるエリアに問題はないか(隣人トラブル、災害エリアなど)
    ・空き家となっている物件自体に問題はないか(設備、老朽化、シロアリなど)

    自身や家族で住むのであれば我慢すればやり過ごせるかもしれませんが、賃貸物件としての活用や将来的な売却を予定している場合は、借手や買手がつきにくくなるため、特に注意が必要です。

    空き家探しで見つけた物件を購入する前に考慮すべきポイント

    見つけた空き家の購入で失敗しないために、以下のポイントを十分に考慮しましょう。

    ・購入した空き家はすぐに売却できない
    ・無償譲渡や0円物件でも、贈与税や手続きにお金がかかる
    ・トラブル回避のため、個人間で契約せず、不動産会社や弁護士などに契約を見てもらう

    まとめ

    空き家の探し方は、大きく分類すると「空き家バンク」「不動産ポータルサイト」「地元の人や不動産会社」「各自治体の空き家募集ページ」の4つです。

    より多くの候補の中から、自分の希望条件にマッチする空き家を効率的に探したい方は、不動産ポータルサイトがおすすめです。

    そして、空き家探しでお困りの方や、空き家を買って再生したいという方は全国各地の空き家の豊富な売買実績を持つ「空家ベース」までお声がけください。

    TwitterやInstagramなどのSNSを通じて物件情報をイチ早く発信、公式LINEでは非公開物件情報を不定期で配信しているため、優良な掘り出し物件と巡り合えるかもしれません。

    登録料は無料です。自分にぴったりの空き家探しをご希望の方も、「どんな空き家があるのか気になる」という方も、お気軽に利用いただけます。

    売買取引や、契約書作成などの法律事務に携わる方にとって、債権・債務という用語は出くわす場面が多い重要な用語です。
    このコラムでは、そんな債権について詳しく説明します。債務との違い、双務契約と片務契約の違いなどわかりやすく解説します。

    この記事で分かること

    債権と債務の基本

    まずは、債権と債務の定義と、違いについて確認していきましょう。

    債権とは?

    債権とは、民法に定められる特定の人にお金や行為などを請求できる権利のことを指します。
    例えば誰かに金銭を貸す場合、貸している人は借りている人に対して「お金を返してもらう権利」を持っています。このように、誰かに何かを請求できる権利を債権と言います。
    なお、同じ「さいけん」と読む用語として「債券」がありますが、これば国や企業が発行する国債や社債などを購入し、利子を受け取る債券投資などで用いられる用語であり、今回説明する債権とは異なります。

    債務とは?

    債権の対義語が債務です。債務とは、特定の人にお金を渡したり、行為を行う義務のことを指します。上記の事例では、借りている人は「お金を返さなければならない義務」を持っています。この義務を債務と言います。
    債権を持っている人のことを「債権者」、債務を持っている人のことを「債務者」と呼びます。

    債権と債務の違いとは?

    債権と債務は、それぞれ権利と義務ということから、相対する関係にあります。例えばコンビニで商品を買うとしましょう。買主は金銭を引き渡すという債務を履行することで、商品をもらうという債権を得ることができます。コンビニは商品を引き渡すという債務を履行することで、金銭をもらうことができます。このように、多くの取引では、債権と債務をお互い保有しており、債務をお互いに履行することで債権を回収しています。

    債権と物権の違いとは?

    よく似た言葉として「物権」がありますが、物権は対象としているものが異なります。債権の対象は「人」であり、人に何かをしてもらう権利です。一方、物権の対象は「物」であり、ある物を支配する権利のことを指します。物権の具体例としては、所有権や占有権、抵当権などが挙げられます。いずれも特定の物を支配する権利です。

    契約種別別の債権債務関係

    先ほどコンビニの例では、顧客とコンビニがそれぞれ債務を履行することで債権を得るという説明をしました。このように、双方が債務を負担する契約のことを双務契約といいます。
    ここからは契約種別による債権と債務の関係を紹介していきましょう。

    双務契約と片務契約の定義と違い

    当事者の両方が債務を負う契約のことを「双務契約」、当事者の片方だけが負う契約のことを「片務契約」と言います。
    双務契約の具体的な契約例は以下の通りです。いずれも、片方がお金を払うという債務を履行することで、物や労力の提供という債権を得ています。

  • 売買契約:お金を払う代わりに、物をもらう
  • 雇用契約:お金を払う代わりに、働いてもらう
  • 賃貸借契約:お金を払う代わりに、物を貸してもらう
  • 請負契約:お金を払う代わりに、工事などを請け負ってもらう
  • 一方、片務契約の具体的な例は以下の通りです。いずれも、片方だけしか債務を履行しません。

  • 贈与契約:譲渡人が、物を渡すという債務を履行する契約です。
  • 消費貸借契約:借金など、金銭の貸し借りなどで用いられる契約です。借主が借りたものを返還するという債務を負います。
  • 使用貸借契約:使用貸借とは、物を対価なく(無料)で貸すことを指します。借主が借りたものを返還するという債務を負います。
  • 相殺とは?債権債務関係での役割

    債権債務は、相殺により消滅させることができます。相殺とは、当事者がお互い同じ種類の債権を保有している場合に、お互いの債権同士を帳消しにすることを指します。例えば、BさんがAさんに対して、金銭消費貸借契約1万円のお金を貸していたとします。その後、AさんがBさんに対して、売買契約を元とする1万円の金銭を受け取る債権を保有しました。この際、AさんとBさんはお互い、相手方に1万円を請求する債権を有していることとなります。この場合、相殺することで金銭の移動をすることなく、お互いの債権を消滅させることができます。

    相続時の債権債務

    債権や債務は、現金や預金と同じく、相続財産に含まれます。
    相続の際に対象となる遺産はプラスの財産とマイナスの財産の両方があります。プラスの財産には、現金や預貯金、株式などの有価証券、宝石、土地家屋などの不動産のほか、経済的価値のあるすべての資産が挙げられます。債権も、プラスの財産に含まれます。また、マイナスの財産としては、借金返済の債務などが挙げられます。例えば、相続財産を単純承認により全て相続する場合、被相続人が借金を有していた場合はその借金の返済義務を負わなければならないため、注意しましょう。

    債権者と債務者の権利と義務

    債権者には、債務者が債務を履行しない(債務不履行)の場合に備えて、権利がいくつか備わっています。ポイントを確認していきましょう。

    債権者が債務者にできる主な権利

    債務不履行の場合に備え、債権者には以下の権利が法律上認められています。

    ・給付保持力
    法的な手続きを介することで、債務者の所有する財産を債権者に移すことができる権利のことを指します。

    ・訴求力
    債務者が債務を履行しなかった場合に、訴訟などで債権があることを裁判所に確認してもらえる権利のことを指します。

    ・執行力
    裁判所の判決にしたがい、差し押さえなどの強制執行を申し立てる権利を指します。

    ・貫徹力
    債務不履行の場合に、債務者の意思によらず債権の内容を強制的に実現出来る権利を指します。

    ・掴取力
    債権がそのままの内容で実現できない場合、それに相当する金銭の支払いを強制する権利のことを指します。

    債務不履行が発生した場合の対応

    債務不履行が発生した場合、債権者は以下の対応を取ることができます。

    ・履行の督促
    債務を履行するよう、電話やメールなどで催促します。それでも効果がなければ、督促状を作成し、内容証明郵便で送付します。内容証明郵便は、内容や日付を郵便局が証明してくれるサービスです。法的手続きの際に証拠となるため有効です。

    ・訴訟
    再三の督促をしたにも拘らず履行がされない場合は、裁判所を介した手続きを取ることとなります。債権の金額や内容によって、少額訴訟や和解など負担の少ない方法をとりましょう。

    債権と第三者の関係性

    法律上、債権は一つの権利として、第三者に売却や譲渡を行うことが可能です。このような、債権と第三者の関係性についてチェックしていきましょう。

    債権執行とは?

    債権執行とは、債務者の務める会社や預金を預ける銀行に対して、その給料や預金を差し押さえ、取り立てる回収方法のことを指します。通常、債権は債務者から直接取り立てるのが原則です。しかし、債務者から直接の取り立てが不可能である場合は、履行不能である旨を証明し、かつ裁判所の判決をもらうことで、債務者へ債務がある第三者から取り立てることが可能となります。最終手段として覚えておきましょう。

    債権譲渡の手続きと効果

    債権譲渡とは、自らが保有している債権を譲り渡すことを指します。これは一般的に商業取引でよく利用されます。自社が取引先であるA社に対して100万円の未払いの金銭債務を負っており、かつB社に100万円の金銭債権を有しているとします。この場合に、B社から100万円を受け取る債権をA社に譲渡することで、A社の債務100万円を弁済することができます。実際の金銭の引渡しなく債務を弁済できるため、企業の資金繰りを良くするために重宝されています。

    債権者代位権の行使

    債権者代位権とは、債権回収を確実に実施するために、裁判所の判決や債務者からの許可なしで債務者が保有する債権を代わりに行使することを指します。実質的な差し押さえになりますが、この債権者代位権を行使するためには以下の要件を全て満たさなければなりません。

  • 保全しようとする債権が弁済期に達している
  • 債務者に資力がなく、債務が履行できない
  • 代位の対象となる権利について、債務者が権利を行使する前である
  • 代位の対象となる権利が債務者の一身専属(その人でなければ行使できないこと)ではない
  • 債権に関するよくある質問

    最後に、おさらいとして、債権に関する基礎的知識をQ&Aの形で見ていきましょう。

    Q1 債権とは何ですか?

    債権とは、特定の人にお金や行為などを請求できる権利のことを指します。

    Q2 債権と債務の違いは何ですか

    債権の反対にあるのが、債務です。債務とは、特定の人にお金を渡したり、行為を行う義務のことを指します。債権と債務は、それぞれ権利と義務ということから、相対する関係にあります。

    Q3 双務契約と片務契約の違いは何ですか?

    双務契約は当事者がお互いに債権を有している契約、片務契約は当事者の一方だけが債権を有している契約です。
    双務契約の例としては、売買契約、雇用契約、賃貸借契約、請負契約などが挙げられます。
    片務契約の例としては、贈与契約、消費貸借契約、使用貸借契約などが挙げられます。

    まとめ

    今回は、債権について解説しました。今回ご説明した通り、債権者には自身の債権を回収するために様々な手法や権利が法律上認められています。債務者がきちんと履行しなかった場合は、適切な対応を取るようにしましょう。

    土地の売却を考える場合、土地の価格を正しく知ることから始めましょう。

    土地の価格を算出する際は公的機関が公表する価格を基準にしますが、この価格は実際の売買価格と異なる点に注意が必要です。

    本記事では、土地の価格を決める3つの公的な価格(路線価・公示地価・基準地価)のうち、公示価格の概要と他の公的な価格との違いについて解説します。

    この記事でわかること

    公示価格の基本理解

    まずは、公示価格の基本的な知識について見ていきましょう。

    公示価格とは

    「公示価格」は、毎年1月1日時点の土地の価格を2人以上の不動産鑑定士が鑑定し、国土交通省が毎年3月下旬に公表します。
    基本的に対象は都市計画区域内ですが、都市計画区域以外でも不動産の取引が行われると予想される土地に関しては鑑定が行われます。

    公示価格の定義と概要

    公示価格は、1969年より施行された「地価公示法」に基づき、土地に適正な指標を示すことが目的です。

    評価対象の土地は以下のいずれかに分類されています。

    ・住宅地・商業地・宅地見込地・準工業地・工業地・調整区域内宅地

    土地取引をおこなう不動産仲介会社や公共事業が公示価格をもとに土地の価格を算定することで、土地価格の乱高下や市場崩壊を防いでいます。

    公示価格と実勢価格の違い

    「実勢価格」とは、市場で実際に売買された価格を指します。 売り手と買い手の間で実際の取引が成立する価格のことです。

    公示価格と実勢価格の差は、不動産の需要と供給のバランスによって異なります。不動産の需要が供給を上回っている場合は実勢価格は公示価格よりも高くなりますし、土地の供給が需要を上回っている場合は実勢価格は公示価格よりも低くなります。

    土地取引の指標として国土交通省が地価の目安となる公示地価を公開していますが、同じ価格で必ず取引されるわけではありません。

    公示価格とその他の価格指標の違い

    「路線価」とは、調査地点となる路線(道路)に面する土地1㎡あたりの価格のことです。

    税額を算出する際の指標に用いられる路線価は、「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の2つに分類できます。

    「相続税路線価」は、相続税や贈与税を算出する際に用いられる評価額となります。「固定資産税路線価」は土地の固定資産税評価額を決める際の基準となります。

    「基準地価」は、各都道府県が主体となって毎年7月1日の評価が9月20日頃に公表されます。基準地価の評価方法は公示地価とほぼ同じですが、都市計画区域内以外も含まれる点と、公示地価では鑑定する不動産鑑定士は2人以上であるのに対し、基準地価は1人以上という点が異なります。

    公示地価、路線価との関連性・違い

    路線価は公示地価を基に算定されています。

    公示地価と路線価の違いは、算定方法と用途です。公示地価は、地価公示法に基づいて算定され、適正な地価の形成に役立てるために用いられています。一方、路線価は、相続税や贈与税の課税評価のために設定され、税金の算定に用いられています。

    公示価格の調べ方

    では、ここからは公示価格の調べ方について見ていきましょう。

    公示価格の探し方

    各都道府県の公示価格の探し方は、国土交通省が掲載しているWEBサイトから閲覧することができます。

    公式な機関と資源: 国土交通省と土地総合情報システム

    国土交通省が運営する「土地総合情報システム」の「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」は、不動産取引価格、地価公示・都道府県地価調査の価格を検索して閲覧することができる国土交通省のWEBサイトです。

    地価公示の調べ方

    国土交通省地価公示・都道府県地価調査のページにアクセスしたら、土地の価格を調べたい地域を選択し、調査年や用途区分、地価などの選択条件を指定していきます。検索条件を指定すると、条件に当てはまる同じ市町村内の全ての公示価格が表示されます。
    公示価格は、更地として考えたときの価格なので、土地や家を売却する際の価格の参考にはなりますが、あくまで参考値となります。土地の売却を考えていて実際に売却額に近い価格を知りたい場合は、実勢価格を考えるとよいでしょう。

    路線価図の活用方法と見方

    路線価図とは、国税庁が毎年1月1日時点の土地の価格を、相続税や贈与税の課税評価のために設定したものです。路線価図は、都道府県や市区町村の役所で閲覧することができます。

    路線価図は、相続税や固定資産税の評価額を計算する際や、不動産の売却価格を決める際の参考となります。

    路線価の調べ方の手順は以下のとおりです。
    1.評価をする土地の所在地を確認する
    2.路線価を確認する
    3.借地権や貸付地の場合は、借地権割合を確認する
    4.地区区分を確認する

    公示価格の計算と解釈

    ここでは、公示価格をもとに実勢価格を求める方法や、公示価格の見方について解説します。

    公示価格と地価の算出方法

    公示価格は、地価公示法に基づいて2名以上の不動産鑑定士によって鑑定評価されたものです。 それに対して基準地価は、国土計画利用法に基づいて1名以上の不動産鑑定士によって鑑定評価されたものです。

    公示価格から実勢価格を算出する方法

    公示価格は、土地の適正な価格を反映していると考えられていますが、必ずしも実勢価格と一致するとは限りません。

    公示価格から算出する土地の実勢価格の目安の計算式は以下のとおりです。

    土地の実勢価格の目安=土地の公示価格 × 面積 × 1.1(または1.2)

    公示価格の検索結果を参考に、価格を知りたい土地に近い条件(住所、形状、道路状況、周辺環境、用途区分など)の地価を確認したら、実勢価格の目安を計算することができます。

    公示地価の見方と解釈方法

    公示地価の見方は以下のとおりです。

    STEP.① 公示地価は、標準地・基準地検索システムの「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」のサイトにアクセスする。
    URL:国土交通省「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」

    STEP.② 調べたい不動産が所在する都道府県・市町村を選択する。

    STEP.③ 検索条件を選んでいく。
    該当する地域を指定したら、対象・調査年・用途区分・地価について、確認したい土地の条件を入力していきます。

    公示地価を確認したい場合、対象で地価公示のみを指定します。都道府県地価調査を含めると、基準地価も確認可能です。調査年は、こだわりがなければ最新調査年のみにチェックしても構いません。

    STEP.④ 表示された公示価格を確認する。

    条件を入力した後に検索をクリックすると、該当する土地の公示地価が表示されます。各不動産の「価格(円/m²)」の部分が公示地価です。

    公示価格と実勢価格の関係性

    「公示価格」と「実勢価格」はどちらも土地の価格を示すもので、不動産売買において土地の評価額を知りたい時に参考にする価格です。

    ここでは、公示価格と実勢価格にはどのような関係があるのか見ていきましょう。

    実勢価格とは何か

    実勢価格とは、土地を売買する際に、実際に取引が成立する価格(もしくは取引した価格)のことをいいます。その土地の特徴や当事者間の事情によって、実勢価格は適正価格より高くなることも低くなることもありえます。

    実勢価格と路線価との関連性

    路線価と実勢価格はどちらも土地の価格ですが、大まかに以下の2つの違いがあります。

  • 路線価:国税庁が発表する相続税・贈与税などの基準価格
  • 実勢価格:実際に土地を取引(売買)する際の価格
  • つまり、路線価が税金を算出するための金額なのに対し、実勢価格はその土地自体の金額になっています。

    公示価格を利用した実勢価格の見積もり

    実勢価格も路線価も、ベースとなるのは国土交通省が算出している公示価格になります。

    公示価格とそれぞれの価格の目安は、以下のとおりです。

  • 実勢価格:公示地価の1.1~1.2倍
  • 路線価:公示地価の0.8倍
  • つまり、路線価から以下の計算式で実勢価格を求めることができます。

    実勢価格=路線価÷0.8×1.1~1.2

    これはあくまで目安であり、実勢価格はその他の要素によって変化する可能性があります。

    実際の不動産の取引の場においては、公示価格を用いて土地売買を行うことはなく、実際の売却価格と公示価格には乖離性があります。

    実勢価格は、土地周辺の状況や土地の状態、面積、今後の需要バランスなど、様々な要素によって取引価格を増減させます。そのため実勢価格と公示価格の価格は一致しません。

    公示価格と不動産の取引・評価

    ここでは、公示価格と不動産売買の取引における評価方法について見ていきます。

    公示価格を活用した不動産取引の概要

    公示価格は、一般の土地取引に対して指標を与えるもので、不動産鑑定や公共事業用地の取得価格算定の規準となります。また、土地の相続税評価や固定資産税評価の基準としても活用されます。

    公示価格と不動産会社の査定

    公示価格は、土地を取引する際に国が示す土地の正常な価格を判定したものですが、全国すべての地点を調査しているわけではなく、全国に設定されている2万数千の標準地が対象になっています。そのため、地点以外の価格を知りたい場合は、実勢価格と同様に近くの標準地を参考にしなければなりません。

    公示価格と不動産の実勢価格の見積もり

    公示価格はその年の1月1日時点の価格ですが、不動産取引は毎日行われており、実勢価格は日々変化します。また、不動産の売買価格は、売主と買主双方の考え方に大きく左右されます。その他、物件の立地条件による需給バランスや、地勢や周辺環境などの条件も関係します。

    公示価格と実勢価格のどちらが重要であるかは一概にはいえませんが、公示価格はひとつの目安でしかありません。
    実勢価格は以下の計算式で求めることができます。

  • 路線価を基に計算する場合
  • 実勢価格=路線価÷0.8×1.1
  • 相続評価額を基に計算する場合
  •  実勢価格=相続税評価額÷0.8(公示価格)
  • 基準地価を基に計算する場合
  • 実勢価格=基準地価×1.1
  • 公示価格を基に計算する場合
  • 実勢価格=路線価÷0.8×1.1~1.2

    公示価格と不動産価格の過去の変動

    日本の地価は1991年のバブル崩壊をピークに下がり続け、2006年まで下がり続けます。その後、一旦は上昇するものの、2008年のリーマンショックによって再び下落します。その後、2013年頃から始まった日銀の異次元金融緩和政策により、住宅ローン金利が低下したことで、住宅取得需要が増加し不動産価格が上昇に転じていきました。

    公示価格と固定資産税評価、相続税評価額の関係

    ここでは、公示価格と固定資産税評価額および相続税評価額の関係について見ていきしょう。

    公示価格と固定資産税評価の関連性

    固定資産税路線価で求められる固定資産税評価額は、固定資産税や、都市計画税、登録免許税、不動産取得税の算出根拠となります。また、固定資産税路線価は公示価格の70%程度とされています。

    公示価格と相続税評価額の関連性

    相続税路線価で求められる相続税評価額は、相続税や贈与税の算出根拠となります。価格水準は、相続税路線価が公示価格の80%程度とされています。

    不動産価格と税金評価の特徴と相談

    不動産の売り出し価格や納税額には、不動産の価値を示す評価額が関わっています。一方、実際の不動産売買の取引に影響するのは、不動産市場の需要と供給のバランスを反映した時価です。しかし、納税額も不動産売買ほど時価の影響を受けることはないとはいえ、時勢によっては公的機関による評価の影響が及ぶ場合があると考えられます。

    不動産を売却したい、自身の不動産の評価額を詳しく知りたい場合は、不動産仲介会社などに相談しましょう。

    公示価格の活用と注意点

    最後に、公示価格の活用方法と注意点について見ていきましょう。

    公示価格の活用法とそのメリット

    公示価格のメリットは、次のとおりです。

  • 不動産の市場価値を把握することができる
  • 相続税や固定資産税の評価額を計算することができる
  • 不動産の売却価格を決めることができる
  • 不動産の投資判断をすることができる
  • 公示価格を活用する上での注意点

    公示価格は、不動産の市場価値を把握するための有効な指標ですが、あくまでも市場価格の一時点の値であり、実際の取引価格とは必ずしも一致するとは限りません。

    公示地価を参考にする際には、他の指標も併せて確認するようにしましょう。

    公示価格に関するよくある誤解とその解説

    公示価格に関するよくある誤解は、次のとおりです。

  • 公示価格は、実際の取引価格と同じである。
  • 公示価格は、相続税や固定資産税の評価額と同じである。
  • 公示価格は、不動産の価値を表す唯一の指標である。
  • 公示価格は、不動産の市場価値を反映した価格であり、相続税や固定資産税の評価基準としても使用されますが、実際の取引価格や不動産の価値を表す唯一の指標ではありません。

    公示価格は、不動産の市場価値を把握するための有効な指標ですが、あくまでも一つの指標として活用することが大切です。

    まとめ

    公示価格や路線価は不動産の価値や評価額を算出するのに参考の数値となりますが、実際の不動産売買取引においては、物件の立地条件や、その時の需要と供給のバランス、地勢や周辺環境などの条件なども物件の価格に影響してきます。

    不動産売却を検討されている方や、所有する不動産の市場価値を知りたい人は、不動産会社に相談してみるとよいでしょう。

    「空家ベース」では、空き家と売りたい人と買いたい人を繋ぐお手伝いをしております。全国の様ざま物件の取引実績があるため、処分に困っている不動産についてお気軽にご相談ください。

    不動産取得税は、不動産を取得したときに課される税金です。

    また、不動産取得税は不動産取得後60日以内に申告する必要があり、条件に当てはまれば税額の軽減措置を受けられますが、うっかり不動産取得税の申告を忘れた人もいるはずです。

    不動産取得税は、一定の期間内であれば納税後でも申告により払いすぎた税金を還付してもらえます。

    本記事では、60日を過ぎてしまった場合の不動産取得税の対応方法や、還付を受ける流れなどについて解説します。

    不動産取得税の軽減措置について理解し、還付請求をして節税していきましょう。

    この記事でわかること

    不動産取得税とは?

    はじめに、不動産取得税の基本をおさえておきましょう。

    不動産取得税の基本的な概念

    不動産取得税は、土地や家屋の購入、贈与、交換、家屋の建築(新築・増築・改築)などによって取得した時に納める税金です。

    毎年納めなければならない固定資産税とは違い、取得時に一度だけ支払えば済みます。

    税率と計算方法

    不動産取得税の計算方法は原則、下記のとおりです。

    不動産取得税 = 固定資産評価額 × 税率4%

    なお、基本税率は4%ですが、軽減税率として土地と家屋については3%が適用されます。

    課税対象となる不動産

    課税される不動産(土地・家屋)の種類は下記のとおりです。

    不動産 種類
    土地 住宅地、田んぼ、畑、山林、牧場、原野など
    家屋 住宅、店舗、工場、倉庫などの建物

    不動産取得税が発生するケース

    不動産の取得とは、その不動産の所有権を現実に取得することをいい、登記の有無や有償・無償は問いません。不動産所有権を現実に取得することをいいます。

    不動産取得税の軽減措置とは?

    不動産取得税の軽減措置とは、住宅を取得した際に、条件を満たせば不動産取得税の課税標準額から一定額を控除し、不動産取得税の税負担が軽減される制度です。

    軽減措置の基本的な考え方

    不動産取得税は土地や家屋の取得の際に、3%の軽減税率が適用されます。これに加えて、新築住宅や中古住宅を取得した場合は、さらに、それぞれに対して課税標準額から一定の金額を控除する軽減措置があります。

    新築住宅と中古住宅に対する軽減制度

    不動産取得税の軽減税率は、新築住宅と中古住宅の建物の種類で要件や軽減内容が異なります。それぞれの適用要件と手続きの方法について見ていきましょう。

    軽減措置の適用条件

    軽減措置の適用要件については、各都道府県によって異なります。

    ここでは、東京都の軽減措置の適用要件を例に記載しています。

    【新築住宅の場合】

    控除額は、1,200万円となり、算出額は、(固定資産税評価額-1,200万円)× 税率3%となります。

    【中古住宅の場合】
    中古住宅の場合は、各要件のすべてを満たしている必要があります。

    ア:個人が自己の居住用に取得した住宅であること(住宅以外であった家屋を住宅にリフォームする場合は、取得前に当該リフォームが完了している必要がある)

    イ:一戸の床面積が50㎡以上、240㎡以下であること

    ウ:耐震基準について、①昭和57年1月1日以降に新築されたものであること、もしくは、②昭和56年12月31日以前に新築された住宅で、建築士等が行う耐震診断によって新耐震基準に適合していることの証明がされたもの(ただし、当該証明に係る調査が取得日前2年以内に終了しているものに限る。)

    控除額は、下記の表のとおりとなります。

    建築された日(新築時) 控除額
    平成9年4月1日以降~ 1,200万円
    昭和元年4月1日~平成9年3月31日 1,000万円
    昭和60年7月1日~平成元年3月31日 450万円
    昭和56年7月1日~昭和60年6月30日 420万円
    昭和51年1月1日~昭和56年6月30日 350万円
    昭和48年1月1日~昭和50年12月31日 230万円
    昭和39年1月1日~昭和47年12月31日 150万円
    昭和29年7月1日~昭和38年12月31日 100万円

    算出額は、(住宅の価格ー控除額) × 税率3%となります。

    軽減措置の申請方法と必要書類

    軽減措置を受ける場合は、申告又は申請が必要になります。

    STEP.1
    不動産取得日から60日以内に、不動産取得申請書を提出する
    STEP.2
    納税通知書が届いたら、税事務所や金融機関・コンビニエンスストア等で支払いをする
    STEP.3
    不動産取得税減額申請書と必要書類を提出し還付を受ける

    不動産を取得した日(登記が済んだ日)から、原則60日以内に所轄する都道府県税事務所へ不動産取得申告書及び必要な書類を提出します。一般的には各自治体が税額を算出して、納税通知書が送られてくることが多いです。

    申請時の必要書類は、以下のとおりです。

    など

    土地取得に対する軽減制度

    住宅用の土地を取得し、一定の要件を満たす場合は土地の税額から一定額が軽減されます。
    新築住宅用の土地と中古住宅用の土地とで要件や計算方法が異なります。

    適用条件と申請方法

    【新築住宅用の土地の場合】
    以下のアもしくはイに該当する場合が適用条件を満たしています。
    ア:土地を先に取得した場合
    土地を取得後3年以内に、当該土地上に住宅が新築されていること。ただし、次の①②のいずれかに該当する場合に限る。
    ①土地の取得者が、住宅の新築までその土地を引き続き所有していること
    ②土地の取得者からその土地を取得した方(譲渡の相手方)が、住宅を新築したこと

    イ:新築住宅を先に取得した場合(同時取得を含む)
    土地を取得後3年以内に、当該土地上に住宅が新築されていること。ただし、次の①②のいずれかに該当する場合に限る。
    ①住宅を新築した方が、新築後1年以内にその敷地を取得していること
    ②新築未使用の住宅とその敷地を、新築後1年以内(同時取得を含む。)に同じ方が取得していること

    【中古住宅用の土地の場合】
    以下のアもしくはイに該当する場合が適用条件を満たしています。
    ア:土地を先に取得した場合(同時を含む)
    土地を取得した方が、当該土地を取得した日から1年以内(同時取得を含む。)にその土地上の中古住宅を取得していること

    イ:中古住宅を先に取得した場合
    中古住宅を取得した方が、当該住宅を取得後1年以内にその敷地を取得していること
    適用条件を満たし、軽減制度に該当する場合は、「不動産取得税申告書」を記載し、添付書類と併せて、所管の都税事務所(都税支所)・支庁に申告することで軽減措置を受けることができます。

    60日を過ぎてしまった場合の不動産取得税の対応策

    不動産取得税の申告と同時に軽減措置の申告をし忘れたという場合でも、一定期間内であれば、払い過ぎた税額を還付してもらうことが可能です。

    ここからは、60日を過ぎてしまった場合の不動産取得税の対応方法について解説します。

    60日以内の申請が原則とは?

    都道府県ごとに決まりは異なりますが、基本的に不動産取得税は不動産取得後60日以内に申告する必要があります。

    60日を過ぎた場合の軽減措置可能性と手続き

    申告を忘れて納税してしまった際、あとで還付請求する場合の期限は、不動産取得から5年以内のため、申告忘れに気づいたら早めに対応を行いましょう。
    申告を忘れて納税してしまった場合でも、後日還付請求をすることができます。 「不動産取得税減額申請書」と必要書類を提出し、各都道府県税事務所に還付請求を行います。

    納税遅延によるペナルティ

    不動産取得税の納税の遅延をしてしまうと、ペナルティが発生する場合があります。

    追徴税と延滞税の適用

    不動産取得税を納税期限までに納付しなかった場合、延滞税が課されます。延滞税は、税金の納付期限の翌日から納付する日までの期間に応じて、年7.3%または14.6%の割合で加算されます。

    延滞税を納付しなかった場合、さらに督促手続きが取られ、最終的には差し押さえなどの強制執行が行われることもあります。

    過料の対象となる行為

    不動産取得税を納税期限までに納付しなかった場合は延滞税が課されますが、過料の対象となる行為もあります。

    申告の遅延や虚偽の申告

    過料とは、法律に定められた義務を守らなかった場合に課される罰金のことです。不動産取得税の過料の額は、10万円以下です。

    正当な事由なく不動産取得税の申告をしなかったり、虚偽の申告をした場合などに過料の対象となります。

    不動産取得税の過料を防ぐためには、不動産取得税の納税期限を守り、正しく申告することが大切です。

    過去の納税猶予措置の実例

    不動産取得税の納税猶予措置は、経済情勢や災害などの状況に応じて実施されます。

    過去の実例として、リーマンショック後の景気悪化や2011年の東日本大震災の被災者を支援するため不動産取得税の納税猶予措置が実施されました。

    不動産取得税の納税猶予措置を受けるためには、都道府県の税務署に申請する必要があります。

    不動産取得税の還付について

    ここでは、不動産取得税の還付について見ていきましょう。

    還付とは?還付を受ける流れ

    不動産取得税の還付とは、不動産取得時に支払った税金の一部または全部を返還してもらうことです。

    不動産取得税の還付を受ける流れは、以下のとおりです。

    STEP.1
    都道府県の税務署に不動産取得税の還付申請書を提出する
    STEP.2
    税務署が申請書の内容を審査する
    STEP.3
    申請書の内容が認められれば、税務署から不動産取得税の還付がされる

    不動産取得税の還付を受けるためには、申請書の内容を正しく記載し、必要書類を添付することが大切です。また、申請期限を過ぎると、不動産取得税の還付を受けることができませんので注意しましょう。

    必要な書類とその準備方法

    還付請求の際に添付する必要書類は以下のとおりです。

    不動産の登記事項証明書と固定資産税評価証明書は、法務局と市役所、区役所などの役所で取得することができます。軽減措置の適用要件を満たしていることを証明する書類は、軽減措置の種類によって異なるため、各都道府県の税務署に問い合わせましょう。

    還付制度の適用条件

    不動産取得税の還付を受けられる場合としては、以下のとおりです。

    還付請求の方法と必要書類

    不動産取得税の還付を受けるためには、都道府県の税務署に申請する必要があります。

    不動産取得税の還付申請書は、都道府県の税務署のホームページからダウンロードすることができ、不動産取得税の還付申請書に必要書類を合わせて手続きをします。

    不動産取得税が免除される特例について

    不動産を相続した場合は、相続税の対象となるので不動産取得税がかかることはありません。
    また、その他に、不動産取得税が免除されるケースがあります。

    不動産取得税が免除されるケースは下記のとおりです。

    不動産取得税の具体的なケーススタディ

    最後に、不動産取得税の具体的な計算方法を種類別に見ていきましょう。

    新築住宅の取得ケース

    例えば、建物の固定資産税評価額が1,600万円の新築住宅だとします。

    軽減措置を受けないときは、

    「不動産取得税額=固定資産税評価額×税率」

    で、居住目的の場合の税率は3%でしたので、1,600万円×3%=48万円です。

    しかし、新築住宅の軽減措置を受けると、(1,600万円–1,200万円)×3%=12万円となります。

    認定長期優良住宅なら、1,300万円の控除を受けられるので、不動産取得税額は(1,600万円–1,300万円)×3%=9万円となります。

    中古住宅の取得ケース

    例えば、延べ床面積140㎡の建物で、建物の固定資産評価額が1,500万円であった場合の中古住宅だとします。

    「不動産取得税額=固定資産評価額×税率」

    で、1,500万円×3%=45万円です。

    延べ床面積は140㎡で、「50㎡以上かつ240㎡以内」の条件を満たし、「昭和57年以降に建てられ」ており、さらに「新耐震基準に適合」している場合は、軽減税率が適用されて、以下のように計算することが可能です。

    不動産取得税額=(1,500万円-建築された年月日に応じた控除額)×3%

    の計算式になります。

    土地の取得ケース

    例えば1,700万円で土地を購入した場合、売買価格の1,700万円に税率をかけるのではありません。固定資産税評価額は時価の7割程度が多いので、ここでは固定資産税評価額1,200万円の前提で計算してみましょう。
    軽減措置を受けないと、「

    不動産取得税額=固定資産税評価額×1/2×税率」ですから、1,200万円×1/2×3%=18万円

    となります。
    土地の軽減措置を受けると、

    「不動産取得税額=固定資産税評価額×1/2×税率-軽減額」=1,200万円×1/2×3%-軽減額

    となります。

    まとめ

    不動産取得税は固定資産税評価額の3%と言っても大きな金額です。したがって不動産を取得したら、不動産取得の申告を忘れずに行い、同時に軽減措置の手続きも行うようにしましょう。もし、軽減措置の手続きをし忘れてしまっても、納税通知書に記載された金額を納め、後で申告をすれば還付を受けられるため、手続きをし忘れたからといって還付を諦めるのではなく、きちんと節税をしていきましょう。

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    登録免許税とは、登記に伴い支払う税金です。

    法務局で手続きをする際に納める税金ですが、司法書士に手続きと支払いのいずれも代行してもらうことが一般的であるため、多くの方はあまり支払った実感がないかもしれません。

    本記事では、不動産取引で発生する登録免許税の概要、計算方法や軽減措置などを解説します。不動産売却時の注意点についても整理していきます。不動産取引を検討中の方や、取引が進行中の方はぜひ参考にしてみてください。

    この記事でわかること

    不動産登録免許税とは?

    はじめに不動産登録免許税とは何なのか見ていきましょう。

    不動産登録免許税の概要

    例えば、住宅を購入するときは、売主から買主へ、土地や建物の所有権の移転登記をします。所有権移転登記の手続きは、法務局(登記所)にある登記簿に土地や建物の所有権を記録して公示するために行います。登録免許税は、この登記手続きの際に国に納める税金のことです。一般的には、登記を依頼する司法書士を通じて法務局に支払ってもらうことが多いです。

    登記時に課される税金とその特性

    登記時に課される税金はいくつか種類があり、税率もそれぞれ異なります(表1)。

    (表1)
    登記時に課される税金

    税額は基本的に土地や建物の固定資産税評価額に税率をかけて計算します。ただし、新築の場合は、建物に固定資産税評価額がまだ付けられていないため、法務局で認定した課税標準価格に税率をかけます。また、住宅ローンの借入をした際も、金融機関が土地や建物に抵当権を設定する登記が必要になるため、登録免許税がかかります。その他、登記の目的(地上権設定、抵当権抹消登記など)によって、計算方法や税率が異なります。

    不動産取得税との違い

    不動産取得税とは、不動産を購入や贈与によって取得した時や、新築・増築した時に生じる都道府県に納める税金のことです。

    登録免許税の計算方法と手続き

    ここでは、具体的な登録免許税の計算方法と手続きの流れを見ていきましょう。

    所有権移転や抵当権設定時の計算方法

    【所有権移転登記】
    所有権移転登記は、不動産の所有権を誰か他の人に移すときの登記で、主に中古物件を売買したときに行います。計算方法は、次のとおりです。

    式:登録免許税=課税標準価格×2.0%

    建物、土地いずれも上記の税率を用います。

    【抵当権設定登記】
    抵当権は、住宅ローンを借りる際に、住宅ローンの返済滞納が起こった場合の対策として設定されます。そして、抵当権を設定するためには抵当権設定登記を行わなければなりません。計算方法は、次のとおりです。

    式:登録免許税=借入金(債権額)×0.4%

    所有権保存や抵当権抹消時の計算方法

    【所有権保存登記】
    所有権保存登記は、誰のものでもない不動産に所有権を設定するときの登記で、新築物件を購入したときに必ず行います。計算方法は、次のとおりです。

    式:登録免許税=課税標準価格×0.4%

    建物、土地いずれも上記の税率を用います。なお、軽減税率が適用されれば税率は0.15%に軽減され、さらに、認定長期優良住宅もしくは認定低炭素住宅の場合には税率が0.1%にまで軽減されます。

    【抵当権抹消登記】
    抵当権抹消登記は、登記簿に記載された抵当権情報を削除するときに行う登記で、主に住宅ローンを完済した場合に行います。計算方法は、次のとおりです。

    式:登録免許税=不動産の個数×1,000円

    登録免許税の納付方法とタイミング

    登録免許税は、登記申請の際に納めます。原則、現金による納付となり、国税の収納機関である日本銀行、日本銀行歳入代理店(銀行や郵便局)や税務署で納付し、領収証書を登記申請書に貼り付けて法務局に提出します。その他に、オンライン申請でインターネットバンキング・モバイルバンキングやATMで納付(電子納付)することもできます。電子納付の場合も領収証書を法務局に提出します。なお、登録免許税額が30,000円以下の場合は、法務局で収入印紙を購入し、申請書に貼り付けて提出することができます。

    納付書の入手方法と手続きの流れ

    登録免許税の納付書は、最寄りの税務署、金融機関、または郵便局で入手できます。登録免許税の納付手続きの流れは納付書を入手したら、必要事項を記入し、納付書に記載の金額を納付し、領収書を受領します。

    登録免許税の軽減措置と適用例

    不動産購入の際にかかる登録免許税の税率について、軽減措置が設けられています。

    軽減措置の内容と対象条件

    令和8年3月31日まで土地の売買による所有権移転登記および土地の所有権信託登記に係る登録免許税の税率と、令和6年3月31日まで自己居住の用に供する家屋について、家屋を新築・取得した場合の所有権保存・移転登記またはその家屋の取得資金の貸付等を受けた場合の抵当権設定登記に係る登録免許税について、時限措置として税率が軽減されます。

    詳しい税率は下記の表で押さえていきましょう。

    土地と建物に適用される軽減措置の違い

    【土地の売買等に係る登録免許税の特例】
    土地の売買等に係る登録免許税の特例

    参照:登録免許税に関する資料|財務省

    【住宅に係る登録免許税の軽減措置】
    住宅に係る登録免許税の軽減措置
    参照:登録免許税に関する資料|財務省

    住宅用家屋証明と軽減措置の関係

    住宅用家屋証明とは、個人が自己の居住のための住宅を新築又は取得した際に、その住宅の所在地の市区町村に申請し交付される書類です。一定の要件に該当する場合、登記(所有権保存登記、所有権移転登記等)をする際に、住宅用家屋証明書を添付して登記を行うことで、登録免許税が軽減されます。

    住宅用家屋証明書を添付して登録免許税の軽減措置を受けるためには、例えば、
    ・住宅を新築・取得した日から1年以内に登記を行うこと。
    ・住宅用家屋証明書を添付して登記を行うこと。
    などの要件を満たすことが必要です。

    登録免許税の軽減措置を受けるために必要な要件については、各市区町村に問い合わせるようにしましょう。

    不動産取引の事例と登録免許税の計算

    ここからは、新築住宅と中古住宅、抵当権設定の場合の事例に分けて登録免許税の具体的な計算について見ていきましょう。

    新築住宅の取得事例と登録免許税の計算

    新築住宅を購入した場合、新築住宅には固定資産課税台帳の価額がないため、各都道府県の法務官と税務署が「新築建物課税標準価格」を定め、それを基準に税率を掛けます。新築住宅の所有権保存登記の税率は0.4%です。これらのことから、課税標準価格が3,000万円の場合の登録免許税は、次のとおり計算します。

    式:登録免許税=課税標準価格×0.4%=3,000万円×0.4%=12万円
    ※軽減措置が適用される場合は、税率が0.4%→0.15%となります

    参考:東京法務局管内新築建物課税標準価格認定基準表|東京法務局

    中古住宅の取得事例と登録免許税の計算

    中古住宅を購入した場合、固定資産課税台帳の価額に対して税率を掛けます。所有権移転登記を行うため、税率は2.0%です。固定資産税評価額が1,000万円の場合の登録免許税は、次のとおり計算します。

    式:登録免許税=固定資産税評価額×2.0%=1,000万円×2.0%=2万円
    ※軽減措置が適用される場合は、税率が2.0%→0.3%となり、特定増改築等がされた買取再販住宅を取得する場合は、税率が0.1%となります

    抵当権設定の事例と登録免許税の計算

    2,000万円の住宅ローンを組んだという事例を見ていきましょう。住宅ローンにおける抵当権設定登記にかかる登録免許税は、次のとおり計算します。

    式:登録免許税=抵当権設定金額×0.4%=2,000万円×0.4%=8万円
    ※軽減措置が適用される場合は、税率が0.4%→0.1%となります

    抵当権設定金額とは、債権額や借入金のことです。

    不動産取引と関連するその他の情報

    最後に、登録免許税以外の不動産取引に関するその他の情報について紹介します。

    不動産売却時の税金とその計算方法

    不動産売却時に、売却益(譲渡所得)が出た場合は、譲渡所得税がかかります。計算方法は以下のとおりです。

    「土地を売却した価格(譲渡価格)」から、「売却するための必要経費(取得費と譲渡費用)」を差し引き、「売却益(譲渡所得)」を求め、所定の税率を掛ければ算出できます(図4)。

    (図4)
    譲渡所得税の計算方法

    ローン返済中の家を売る際の注意点と対処法

    住宅ローン返済中の不動産を売却するためには、
    ・住宅ローンを完済すること
    ・不動産に設定されている抵当権を抹消すること
    この上記2つを満たすことで、売却が可能となります。

    基本的に、抵当権が付いたままだと売却することができません。抵当権とは、金融機関が住宅ローンを貸し付ける際に不動産を担保にする権利のことです。

    住宅ローン返済中に家を売却するには、ローンの残債がいくらなのか、家を売却したお金や自己資金で完済は可能なのかを確認する必要があります。

    エコ住宅への補助金制度とその利用方法

    エコ住宅とは、住まいの気密性や断熱性を高め、家庭の消費エネルギーを抑えた住宅のことです。
    エコ住宅の補助金制度は、省エネ性能の高い住宅を新築・購入・リフォームする際に、国や自治体から補助金を支給する制度です。補助金の額は、住宅の省エネ性能や工事費などによって異なります。例えば、地域型住宅グリーン化事業、ZEH住宅補助金、長期優良住宅化リフォーム推進事業、低炭素住宅に対する所得税軽減、長期優良住宅の住宅ローン減税などがあります。

    エコ住宅への補助金制度を利用するには、次の手順を踏みます。
    1.補助金の対象となる住宅を探す。
    2.補助金を申請する。
    3.補助金の審査を受ける。
    4.補助金が支給される。
    補助金の申請方法は、自治体によって異なるため、自治体の担当窓口で確認しましょう。

    まとめ

    本記事では、不動産の登録免許税について解説しました。登録免許税は登記の目的によって税率が異なり、登記内容によっては高額になる場合もありますが、軽減措置が設けられている場合もあり、適用されれば税金負担が大きく軽減できます。

    「空家ベース」では、全国の空き家を売りたい人・再生したい人を繋ぎ、これまで数多くの空き家の売却のサポートをしてきました。空き家の売却はもちろん、不動産売買についてお困りごとやお悩みがあればお気軽にご相談ください。

    土地購入において、セットバックが必要な土地は注意が必要です。建築基準法では、土地は幅4m以上の道路に接する接道義務を果たさなければ建物を建てることが原則建築不可と定められています。この場合、道路から距離を空けて後退しなければなりません。
    そこで本記事では、セットバックに関するポイントを紹介します。

    この記事で分かること

    セットバックとは

    セットバックとは、道路幅員を広げることを目的として、敷地境界線から後退して建物を建築することを指します。
    後退した部分はオーナー自身の所有のままですが、道路として整備し、活用することができなくなります。ただし、自治体によっては、後退によって生じた道路となる私有地を、自治体が買取もしくは寄付により譲り受ける場合もあります。
    古家付きの土地を探している際、不動産会社の不動産広告に「要セットバック物件」と記載があるのを見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。

    なぜセットバックが必要なのか

    セットバックが必要な理由は、道路の幅員を確保するためです。建築基準法では、消防車や救急車などの緊急車両が滞りなく通行することなどを目的として、建物が道路に接する上で果たすべき義務(接道義務)を定めています。この接道義務において、建物は「道路」に2メートル以上接しなければならないとされています。建築基準法上、正式な「道路」は幅員4メートル以上であることから、道路幅が4メートル未満の道路に接する建物は、建て替える際に道路が4メートル以上となるよう、セットバックしなければならないのです。

    地域安全・環境保全のためのセットバック

    セットバックで適切な道路間隔ができることは、緊急車両の通行のほか、地域安全や環境保全の目的にも効果があります。建物間の間隔が広がることで、日当たりや風通しはよくなります。また、火事や地震で建物が倒壊した場合でも、隣地へ影響が及ぶ可能性が低くなります。見通しがよくなることで、防犯面でも効果が期待できるでしょう。

    セットバックにかかる費用の詳細

    セットバックが必要になるのは、建物を建て替えるタイミングです。建物の建て替え費用とは別途、以下の費用が発生します。

    費用項目の詳細

    ・土地測量費用
    土地の一部を道路にする上で、まずはセットバックをどれだけしなければならないかの面積を確定させる必要があります。

    ・分筆登記費用
    もともと一筆であった土地を分筆し、一部を道路にするためには、不動産登記簿謄本の変更登記が必要となります。土地の分筆登記を行うためには、登録免許税を支払う必要があります。司法書士事務所に手続きを依頼する場合には、司法書士の報酬が別途必要となります。

    ・道路用地の仮整備費用
    セットバックして道路とした部分について、道路として利用するためにアスファルトで舗装する必要があります。この整備費用が必要となります。

    セットバック費用の相場と負担者

    セットバック費用の相場は、30~80万円程度といわれています。
    ・土地測量費用:境界確定測量として25万円~ほどかかります。
    ・分筆登記費用:100㎡程度の土地を二筆に分割する場合で、6万円ほどかかります。
    ・道路用地の仮整備費用:1平方メートルあたり、5千円ほどかかります。

    もちろん、土地の形や隣地との境界画定ができているかどうかで、費用は増減します。
    費用のの負担者は原則土地の所有者ですが、自治体によっては自治体が寄付を受ける代わりにそれらの費用を負担する場合もあります。詳しくは、土地のある自治体に問い合わせを行うと良いでしょう。

    費用補助や非課税のメリット

    自治体からセットバックの費用補助を受けることで、負担額を減らすことができます。
    また、多くの自治体では、セットバックで道路にした自己所有の土地について、道路部分の固定資産税を課税対象外とする制度を設けています。固定資産税非課税とするためには非課税の申告が必要ですので、忘れずに行いましょう。

    セットバックが必要となる土地面積の計算方法

    セットバックが必要な土地について、現行からどれだけ後退しなければならないかは状況により異なります。ここでは、その計算方法について説明します。

    道路の反対側の状況による影響

    建物をどれだけ後退させなければならないかは、道路を挟んだ向かい側が建物なのか、川や崖地なのかによって異なります。
    ・道路を挟む反対側が建物のある土地の場合
    反対側に別の所有者が所有する土地がある場合は、それぞれの土地所有者が平等に土地を提供することとなります。そのため、4メートルの道路を確保するためには、それぞれの所有者が「道路中心線から水平線で2メートルの位置」までセットバックする必要があります。この際、反対側の土地所有者の建物がすでにセットバックを行ったのか否かで、自分が現状からどれだけ後退しなければならないかは変わります。自治体へ確認するようにしましょう。

    ・道路を挟む反対側が川・崖の場合
    道路を挟む反対側が川・崖などの水路の場合は、土地所有者が単独で4メートルの道路を作るために土地を提供する必要があります。この場合、「川・崖と道路の境界線から水平線で4メートルの位置」まで、セットバックを行います。なお、道路は通常4メートルですが、自治体によっては4メートルより広い道路で設定される場合もあります。

    計算方法と特殊なケースで考慮すべきこと

    新しい建物を建築する上では、建ぺい率・容積率の範囲内で計画しなければなりません。
    セットバックを行った場合、建ぺい率・容積率の敷地面積にカウントできるのは、セットバックした後に残った土地のみとなります。
    例えば建ぺい率50%の100平方メートルの土地では、本来「100平方メートル×建ぺい率50%=50平方メートル」の建物を建てることができます。しかし、1mセットバックし利用できる土地が90平方メートルになった場合、建てられる建物は「90平方メートル×建ぺい率50%=45平方メートル」と小さくなってしまいます。

    セットバックをするときの手続き流れ

    セットバックの手続きは、新しい建物を建築する建築会社が主導して調整してくれるのが一般的です。ただし、土地のオーナーも固定資産税免除の申告をする必要があるため、全体の流れを押さえておくことは重要です。流れは以下の通りです。
    ・道路調査と事前協議書の提出
    ・建築確認申請とセットバックの工事
    ・助成金や固定資産税免除の申告
    それぞれ具体的に解説します。

    道路の調査と事前協議書の提出

    まずは、所有する土地について、セットバックの必要性を確認します。役所の建築指導課などに、接する道路がセットバックの対象となっているかを確認します。この際、補助金などの制度の有無を確認しておくようにしましょう。
    セットバックが必要な場合は、事前協議書を作成して提出します。この協議書を受け、自治体職員は現地で現況測量などの調査を実施します。

    建築確認申請とセットバックの工事

    新築する建物について、図面を作成し自治体へ建築確認申請を行います。この建築確認申請は工事着工前にその建物が建築基準法などの法令を順守しているかを確認するもので、事前協議の通りにセットバックが行われているかもチェックされます。
    建築確認申請が通れば、セットバック工事および建物の新築工事を実施します。

    助成金や固定資産税免除の申告方法

    工事が完了したのち、補助金が適用される場合はその申請を行います。自治体によっては、工事前に補助金申請をする必要もあるため、事前協議でしっかり確認しておきましょう。
    その後、土地のオーナーは、セットバック部分の固定資産税を非課税にする申告を行います。必要書類は、「固定資産税・都市計画税非課税申告書」という書類と地積測量図です。この申告を行わないと、セットバックした敷地についても引き続き固定資産税が発生してしまいます。所有する土地を管轄する税務署に確認の上、申告を行いましょう。

    セットバックのメリットとデメリット

    セットバックにより土地の使い勝手は悪くなりますが、風通しや日当たりが良くなるというメリットもあります。ここではメリットとデメリットを説明します。

    土地の売値や資産価値、防災・防犯への影響

    まずはメリットです。セットバックが必要な土地は、使える面積が少ないことから価格が安くなる傾向にあります。物件購入にお金をかけたくない人にとってはメリットとなるでしょう。
    また、セットバックを実施すれば、緊急車両が通れるようになることから、火災や非常事態の発生時でも安心です。

    自己負担の問題や建てられる住宅サイズの制限

    セットバックのデメリットは、セットバックにかかる費用を負担しなければならないこと、新築できる住宅のサイズに制限があることです。これらのデメリットにより建築計画に制限が加わってしまいます。

    要セットバックの土地を購入する場合の注意点

    セットバック必要な土地は安価に購入できますが、前述したデメリットをきちんと認識しておかなければなりません。ここでは注意点を説明します。

    希望の家が建てられない可能性がある

    セットバックにより土地の一部を道路として拠出しなければならないことから、希望通りの家が建てられない可能性があります。現況の古家と同じ大きさの家を建てられるわけではないので、注意しましょう。

    セットバック後の有効面積や売却リスク

    購入時に確認しておきたいのが、セットバック後の有効面積がどの程度の広さ・形になるかということです。セットバックにより面積が狭小になってしまったり、不整形になってしまうと、売却時に買い手がつかない可能性があります。

    セットバックに関するよくある質問

    最後に、セットバックに関するよくある質問を見ていきましょう。

    セットバックした土地の所有権について

    セットバックにより道路となった土地についても、所有権はもとの土地所有者が保有したままとなります。ただし、自治体によっては、道路部分の土地を寄付などで譲渡することもできます。土地を所管する自治体へ問い合わせるようにしましょう。

    セットバック部分の活用について

    セットバックで道路となった部分については、工事後、駐車場、倉庫、花壇などどの使い方であっても使用することができません。自らの所有物として、何かしら所有物を置くと罰則を受ける可能性があるため、注意しましょう。

    まとめ

    今回は、土地の前面道路が4メートルを満たしていなかった場合に必要となるセットバックについて説明しました。
    セットバック必要な土地は安い金額で購入できる傾向にありますが、再建築の際にはセットバックするための費用負担が発生します。購入を検討する際には、それらにいくら必要かをきちんと検討した上で判断するようにしましょう。
    セットバックなど、訳あり物件に関する相談は、ノウハウ豊富な不動産業者にするのがおすすめです。空家ベースでは、空き家を紹介し売りたい人と買いたい人をつないでいます。こういった訳あり物件の売却でお悩みの場合は、是非お気軽にお問い合わせください。

    「将来は田舎に移住してのんびり暮らしたい」
    「空き家を改装して古民家カフェを経営したい」

    近年、空き家を再利用し、さまざまな用途に活用される事例が増えていることはご存じでしょうか。

    この記事を見ている方の中にも、空き家の活用に興味がある方がいるかもしれません。そんな時は「空き家バンク」を利用して空き家を探すと便利です。ただし、「空き家バンク」にはメリットだけではなく、デメリットも存在します。上手に利用しないと、失敗する可能性もあります。

    本記事では、空き家バンクのメリット・デメリットと、空き家バンクで失敗しないための注意点と対策について解説します。失敗例もあわせて紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

    この記事でわかること

    空き家バンクとは

    そもそも、「空き家バンク」とは、自治体や民間企業が主体となって空き家の情報を提供しているサービスのことです。

    所有している空き家を貸したい人や、売りたい人が登録し、空き家バンクを介して自治体や民間企業が情報を提供しています。空き家を買いたい人や、借りたい人は空き家バンクから物件を見つけて申し込み、空き家バンクを介して購入や賃貸ができるといった仕組みです。

    地方への移住定住の促進による地域の活性化や年々増加し深刻化する空き家問題を解決するために国がはじめた制度です。

    空き家バンクのメリットとデメリット

    空き家を売りたい・貸したい人と、買いたい・借りたい人にとって、空き家バンクの制度は情報取集をするための便利なツールといえますが、空き家バンク制度にもメリットとデメリットがあります。空き家バンク制度を利用する前にメリット・デメリットを確認しておきましょう。

    空き家バンクのメリット

    空き家バンクのメリットは以下のとおりです。

  • 売りにくい、貸しにくい空き家でも広く周知できる
  • 地域の活性化につながる
  • 補助金を利用できる
  • 不動産業者に売却や賃貸の依頼をしてもなかなか買主・借主が見つからない物件でも、空き家バンクに登録することで空き家に興味のある多くの人に周知できます。また、空き家を古民家カフェやレンタルスペースなど人が集まるコミュニティの場に再生することは、地域の活性化につながるといえます。さらに、自治体によっては、空き家の購入費用や建物のリフォーム費用の一部を補助する制度を設けている場合もあります。補助金制度の条件をクリアすることで更に初期費用を抑えることが可能です。

    空き家バンクのデメリット

    空き家バンクのデメリットは以下のとおりです。

  • 宅建業者を通さない場合はトラブルになりやすい
  • 買い手、借り手が見つかるまで時間がかかる可能性がある
  • 空き家バンクは空き家の情報提供を行っているだけで、運営している自治体は売買・賃貸契約や仲介に関与はしてくれません。

    そのため、自分で直接買主や借主と条件を交渉する必要があります。宅建業者が仲介に入らない場合は仲介手数料を支払う必要はありませんが、その分、当事者間で契約を行う場合にトラブルになりやすいデメリットがあります。

    空き家バンクを介して契約を行う場合、提携を結んだ地元の宅建業者に仲介に入ってもらう自治体もあります。また、空き家バンクでは条件を満たせば不動産価値がほとんどないような物件でも登録することは可能ですが、そもそも営利目的ではないため、自治体が積極的な営業活動をしてくれるわけではありません。

    「早く売却したい」「すぐに賃貸に出したい」と考えている人にとっては、空き家バンクは向いていないといえます。

    空き家バンクで失敗する原因

    ここでは空き家バンクで失敗する主な原因として、次の3つを紹介します。

  • 情報収集不足
  • 活用方法を間違える
  • リフォーム・リノベーション費用の見積もりミス
  • 失敗する原因を事前に把握し、空き家バンクを利用する際の参考にしましょう。

    情報収集不足

    空き家や古家付き土地には、一定の需要がありますが、エリア・地勢・金額・築年数などの諸条件によって買主や借主が見つからないことがあります。

    だからといって、相手の属性をしっかりと調査・情報収集せずに空き家や土地を処分すると、以下のような失敗やトラブルにつながりやすいため注意が必要です。

  • 一戸建てを若者向けのシェアハウスとして貸し出したものの、犯罪に使われていた
  • 郊外の古家付き土地を外国人に貸し出したら、賃料支払いの滞納が続いた
  • 活用方法を間違える

    一口に空き家や古家付き土地といっても、物件ごとに最適な活用方法は異なるため、活用方法を見極めることが大切です。

    例えば、商業エリアや主要ターミナルに近い空き家なら、店舗活用や賃貸として貸し出すと、一定程度の需要が見込めます。

    落ち着いたエリアや地方に古家付き土地があるなら、リフォームをして「古民家カフェ」や「古民家レストラン」として売り出せば、買主や借主が見つかる可能性が高まります。

    売買あるいは賃貸いずれにおいても、希望者の用途や目的とミスマッチした活用方法を選択すると、失敗につながるでしょう。

    リフォーム・リノベーション費用の見積もりミス

    長年放置された家屋は、老朽化や設備の劣化などが進んでいます。市街化調整区域にある家屋や再建築不可物件などに該当しなければ、空き家や古家付き土地をリフォーム・リノベーションすることも可能です。

    ただ、気付かないうちに、将来的なリターンに見合わない改修費用を支払っていることもあります。見積もりはしっかりと確認し、複数業者に依頼するようにしましょう。

    >>市街化調整区域にある家屋や空き家については、こちらの記事で詳しく解説しています
    市街化調整区域は建て替えや増改築ができる条件は?活用方法や売買まで解説!

    空き家バンクの失敗例と対策方法

    空き家バンクの失敗例とその対策をご紹介します。

  • 売主と買主間のトラブル
  • 空き家が犯罪の拠点になるケースがある
  • 修繕費用が予想以上にかかってしまうことも
  • ひとつずつ紹介していきます。

    売主と買主間のトラブル

    空き家バンクを利用して当事者間で売買契約を行う場合でも売買契約書の作成は必要です。専門知識のない個人が売買契約書を作成するのは難しく、「書類の不備を理由に契約を無効にされた」といったトラブルや、引き渡し後に「売買契約時には説明がなかった欠陥があった」「心理的瑕疵があったことが判明した」といったトラブルが発生する場合があります。売主と買主間のトラブルを防ぐために、基本的には空き家バンクを介して売買する場合でも、自治体と提携している不動産会社に仲介を依頼することをおすすめします。

    空き家が犯罪の拠点になるケースがある

    空き家バンクを介して物件を貸し出していたら大麻栽培や特殊詐欺などの犯罪の拠点として利用されていたケースもあります。このような犯罪の場に利用されていますと、その後空き家の売却や貸し出しに悪影響を及ぼす可能性もあるため、貸借希望者の審査はしっかりと行うことが重要です。

    修繕費用が予想以上にかかってしまうことも

    空き家バンクで空き家を安く購入できたが建物のリフォーム費用が予想以上にかかったという失敗のケースも多いです。空き家バンクに掲載されている物件の価格は相場よりも低めに設定されており、購入費用を安く抑えることができますが、基本的に築年数が古く、改築して再利用するにはリフォーム費用がかかります。中には、シロアリの被害にあっていて建物の基礎部分の大規模な修繕が必要になる場合もあります。空き家バンクで空き家の購入を検討する場合は、購入価格だけでなく、リフォーム費用も見据えた購入計画をすることが大切です。

    空き家バンクを使って土地活用を成功させるために

    効率的に空き家を売買・賃貸借できる空き家バンクを使って土地活用を成功させるために、空き家バンクを利用するときは、以下のポイントも念頭に置いておきましょう。

  • 情報収集と活用法の検討
  • 専門家や不動産会社との連携
  • 自治体の補助金・助成金制度の活用
  • 空き家の売却方法と税制優遇
  • ひとつずつ見ていきましょう。

    情報収集と活用法の検討

    空き家バンクには、全国各地の空き家や古家付き土地などの物件情報が掲載されています。

    所有する空き家や古家付き土地の具体的な活用法を検討したり、近隣エリアの物件の情報収集をしたりすると、具体的な活用法や土地活用のイメージを膨らませることができるでしょう。

    専門家や不動産会社との連携

    空き家バンクは、登録や物件情報の掲載は無料です。ただ、すぐに買主や借主が現われるわけではありません。待っているだけでは、家屋は老朽化してしまいます。その期間も、建物の維持管理や、固定資産税や都市計画税の納付などは必要です。

    「空き家を早く処分したい」「古家付き土地をすぐに売りたい」とお考えの方は、よりスムーズに空き家売却や土地活用ができるように、空き家を専門に取り扱う不動産会社や、買手の付きにくい不動産処分に強みを持つ専門家と連携しておくと安心です。

    また、空き家バンクは物件の売買や賃貸借の契約には介入しません。個人間での売買契約や賃貸借契約では、後々トラブルになる可能性が高いため、専門家や不動産会社と連携し、契約を進めるとトラブルを避けられるでしょう。

    自治体の補助金・助成金制度の活用

    自治体によっては、空き家バンクの利用を条件とした補助金・助成金制度を設けています。主に、設備や建物、防災・防犯対策などにかかった改修費用が補助対象です。

    「補助金・助成金が出るなら」と、空き家の改修や移住を検討する方も多いため、スムーズに空き家を売却できます。空き家や古家付き土地のある自治体の窓口やホームページを確認してみましょう。

    参考:空き家バンク助成金|茨城県利根町
    参考:空き家改修等事業補助金|熊本県宇城市
    参考:『空き家改修費助成事業補助金』制度|佐賀県小城市

    空き家の売却方法と税制優遇

    空き家の売却方法には、以下の方法があります。

  • そのままの状態で売却
  • 取り壊してから売却
  • 買取を利用して売却
  • 空き家バンクを利用して売却
  • そして、空き家の売却では、税制優遇を受けることができます。特に多くの方が活用できる税制優遇制度が「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」です。

    一般的には、3000万円特別控除の特例と呼ばれ、不動産売却で発生する譲渡所得が、一定の条件を満たすことで最高3000万円まで非課税になる、という税制優遇制度です(図1)。

    【図1】
    居住用財産を譲渡した場合の3000万円特別控除の特例

    条件を満たし3000万円特別控除の特例が適用されれば、売却益が3000万円以内であれば税金が発生しません。空き家の売却をする際は、適用条件を満たしているか必ず確認するようにしましょう。

    参考:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁

    まとめ

    空き家を貸したい・売りたい人と借りたい・買いたい人にとって空き家に特化した情報を集められる空き家バンクは便利な制度ですが、活用方法を間違えると、空き家の活用を失敗してしまう恐れがあることも事実です。空き家を上手に利用したい方は、空き家バンクのメリット・デメリットや具体的な活用方法をしっかりと把握したうえで、空き家バンク制度を活用していきましょう。

    「空家ベース」では、空き家を売りたい人と再生したい人を繋ぐポータルサイトとして全国の空き家物件の情報を数多く掲載しています。空き家売買に興味のある方は是非お気軽にご相談ください。

    「相続した空き家が市街化調整区域にあり、対処に困っている」
    「市街化調整区域の戸建て住宅を購入したけど、老朽化しているから建て替えしたい」

    市街化調整区域にある建物は建て替えができるものの、一定の条件を満たす必要があります。また、いざ売ろうと考えても、買主が見つからずなかなか売却できないといったデメリットもあり、売買の場面では慎重に判断しなければなりません。

    本記事では、市街化調整区域での建て替えや増改築が可能になる一定の条件や、その他の活用方法について解説します。

    この記事でわかること

    市街化調整区域とは

    土地、管轄する自治体によって都市計画で「都市計画区域」と「それ以外の区域」を定めています。

    そして、都市計画区域は、市街化区域と市街化調整区域、非線引き区域に分かれます。

    市街化調整区域とは?

    市街化区域と市街化調整区域

    「市街化区域」は、街の活性化を目的とする地域で、人々が住みやすくなるように、インフラ整備や開発などが積極的に行われます。

    一方、「市街化調整区域」は、都市化・市街化を抑制する地域です。原則として、積極的なインフラ整備や開発は行われず、人々が住むための住宅や商業施設などの建築が認められないエリアです。

    「非線引き区域」は、区域区分が定められていない区域で、市街化区域でも市街化調整区域でもない区域を指します。

    このなかでも「市街化調整区域」は、自分が所有する土地でも、自治体の許可がなければ自由に建物を建てたり、建て替えたりできません。中古住宅を安く購入した後に「再建築不可だった」と気付く方も一定数存在します。

    市街化調整区域の特徴と目的

    市街化調整区域の特徴は、大きく以下の4つです。

  • 静かな環境で過ごせる
  • 土地価格が安い傾向にある
  • インフラ整備が十分でないことが多い
  • 利便性の高い施設が近隣にないこともある多い
  • 市街化調整区域の目的は、都市化・市街化の抑制です。無秩序な発展や市街拡大を防ぐために上記のような特徴を持っています。

    市街化調整区域での建て替え・増築はできるの?

    積極的なインフラ整備や開発が行われない市街化調整区域では、条件さえ満たせば、建物の建て替えや増改築、リフォームが可能です。

    建て替えや増築が可能なケース

    市街化調整区域で、建物の建て替えや増築を行うには、都市計画法第34条に定められた要件を満たし、都道府県知事などから許可を得なければなりません。

    条文のままでは表現が難しいため、条文の一部を簡単に要約したものをご確認ください。

  • 居住中の住民に有益な店舗の建築
  • 危険物の貯蔵や処理を目的とする施設
  • 既存の工場に関連する事業場や中小企業を振興する施設
  • 市街化区域に隣接または近接し、市街地の一部と認められる地域への建築
  • そのほか、開発審査会からの許可を得たもの
  • 要件を満たし、市街化調整区域への建築が止むを得ないと判断される場合に、建築許可が下ります。もちろん、立地や自治体の都市計画などによって要件は異なります。管轄する自治体の窓口で確認するようにしましょう。

    参考:都市計画法第34条|e-Gov法令検索

    建て替えや増築が難しいケース

    「市街化調整区域にもともと建っている既存の住宅でも、建て替えや増築はできないの?」と疑問に思うかもしれませんが、このようなケースでも都道府県知事からの許可を得る必要があります。

    ただし、絶対に許可が下りず建て替えや増築ができないというわけではありません。建て替えや増築を検討中の方は、自治体の窓口や市街化調整区域内で不動産売買に実績のある不動産会社に確認するとよいでしょう。

    市街化調整区域での建て替え手続き

    市街化調整区域において、既存の居住住宅や相続により取得した空き家などを建て替える際の手続きの流れは以下のとおりです。

  • 自治体への事前相談・事前協議
  • 開発許可申請の手続き
  • 建築許可申請の手続き
  • ひとつずつ見ていきましょう。

    自治体への事前相談・事前協議

    市街化調整区域に建築物を建てる場合、まずは自治体に事前相談します。

    事前相談の際は、「位置図」「住民票」「現況写真」など各書類が必要です。相談の結果、建て替えの計画が具体化されたら、市街化調整区域で実際に建築可能か、許可手続きが必要かなど、自治体と事前協議を行います。

    協議後、自治体から開発許可を取得できるかどうかの回答があり、問題がなければ、開発許可や建築許可などの手続きを進めていきます。

    事前相談や事前協議では、必要書類の提出を求められるため、あらかじめ自治体の担当窓口に確認しておくと安心です。また、不動産関連の専門知識も必要になるため、市街化調整区域の土地活用や建物に詳しい不動産業者に相談すれば、サポートやアドバイスを受けられるでしょう。

    開発許可申請の手続き

    開発許可申請は、建て替えや建築に先立ち、土地の掘削や整備工事などの許可が必要と判断された場合に行います。

    開発許可を申請し、申請に伴う手数料の納付を済ませ、開発許可書の交付を受けます。

    建築許可申請の手続き

    開発許可を得て、開発行為が完了した後に、建て替えや建築する建物に関して建築許可申請が必要です。

    建築許可とは、建築物の新築や、既存建築物の建て替えや増改築、第一種特定工作物の新設などで必要な手続きです。もちろん、開発許可同様、建築許可が不要な場合もあります。

    建築許可は、建築計画に関する自治体との事前相談や、敷地内権利者との同意、建築基準法を含む各種法令の違反確認などが済むことで、申請に移ることができます。

    必要書類を提出し、審査で問題がなければ、手数料の納付を行い、受理後に建築許可が下ります。

    市街化調整区域での建て替えのメリットとデメリット

    市街化調整区域内で、建て替えをするメリットとデメリットを見ていきましょう。

    建て替えのメリット

    市街化調整区域に建て替えや増築を行い、住むことで得られるメリットは以下の4つです。

  • 土地の価格が安く、広い敷地を確保しやすい
  • 固定資産税が安く、家計への負担が少ない
  • 都市計画税が課税されない
  • 静かな環境で過ごせる
  • 市街化調整区域は、土地の評価額が低いため固定資産税が安く、都市計画税はそもそも課税されません。また、近隣に商業施設が少ないため、広い敷地を確保でき、騒音に悩むことなく静かな環境で過ごせるというメリットがあります。

    建て替えのデメリット

    一方、デメリットとして以下のようなことが挙げられます。

  • 近隣に学校や病院、利便性の高い商業施設などがないことがある
  • 新築や増改築、リフォームなどに制限がかかる
  • インフラ整備が遅れる
  • 市街化調整区域は、インフラの整備や開発が積極的に行われないことが多く、「生活上、不便かもしれない」と懸念する人は少なくありません。そのため、将来的に売却を考えている場合は、上記のデメリットをあらかじめ念頭に置いておきましょう。

    市街化調整区域で建て替える際の注意点

    市街化調整区域に住む方や移住を検討している方、相続や遺贈によって地方の空き家や古家付き土地を取得した方が、もしも建て替えや増改築を検討しているのであれば、押さえておくべき注意点が3つあります。

  • 既存住宅制度の廃止に伴う影響
  • インフラ整備が不十分な土地の対処法
  • 将来的に売却を考える場合の注意点
  • ひとつずつ見ていきましょう。

    既存宅地制度の廃止に伴う影響

    以前は、例外的に一定の条件を満たせば開発許可を得ることなく、開発や建築を行える「既存宅地制度」がありました。

    しかし、既存宅地制度は2001年に廃止され、現在では特例措置を設けている一部の都道府県を除き、既存宅地であっても開発や建築を行うことは難しくなっています。

    建て替えや増改築を検討中の方は、所有する土地や建物のある市区町村では既存住宅制度の特例措置が設けられているかどうか、自治体の窓口に確認してみましょう。

    インフラ整備が不十分な土地の対処法

    市街化調整区域の土地活用例

    インフラ整備が不十分な土地は、建て替えや増改築以外でも十分に有効活用できます。

    以下は、土地活用の一例です。

  • 駐車場
  • 医療施設
  • 墓地や霊園
  • 資材置き場(トランクルーム不可)
  • ソーラーパネル設置(太陽光発電)
  • 社会福祉施設(特養老人ホームなど)
  • 高齢者施設(サービス付き高齢者向け住宅、住宅型有料老人ホームなど)
  • 老朽化で住むことが困難になった戸建てや、相続や遺贈で取得した空き家を増改築するつもりがなく持て余している場合は、更地にして別の方法で土地を活用することも検討しましょう。

    将来的に売却を考える場合の注意点

    市街化調整区域内の不動産売買は、不動産会社によっては仲介に難色を示されることも多く、売却が不利になることもあります。ただ「絶対に売れない」というわけではありません。

    市街化調整区域でも、開発許可の要件が緩和されていれば、その土地は比較的売却しやすい傾向にあります。特に、土地の地目が宅地の場合や、農地ではない場合、などは売却しやすいため、将来的に売却を考えるのであれば、開発許可要件の緩和や、地目などを確認しておくと安心です。

    また、建て替えや増改築が許可されにくい土地であっても、敷地が広く、周辺環境が良好であれば、事業用に土地を購入したいという買主も一定数存在します。ただ、そのような買主を自ら探すのはとても手間と時間がかかるため、市街化調整区域の売買や仲介に詳しい不動産会社を頼るという方法もおすすめです。

    まとめ

    本記事では、市街化調整区域における建て替えや増築が可能になる条件や、その他の土地活用方法、市街化調整区域で建て替えを行う際の注意点について解説しました。

    市街化調整区域にある土地は、自分の土地や建物であっても、都道府県知事からの許可がなければ自由に行えないなど、制限が設けられています。購入時の費用や固定資産税の負担は少ないものの、不動産売却という面では不利に働くケースもあります。買主からの声が掛かるのを待っているだけでは、なかなか難航するでしょう。

    市街化調整区域内の不動産売却を検討している方は、区域内にある土地や建物の売買実績が豊富な不動産会社に相談した方が、スムーズに売却できます。ただ、取扱実績がない不動産会社も多く、最初から「市街化調整区域内の物件はお断り」ということもあるでしょう。

    そこでおすすめしたいのが、売主と買主のマッチングができる仲介サイトです。「空家ベース」は、全国各地の空き家や再建築不可物件などの「売れにくい」と烙印を押された不動産の売買実績が豊富で、これまでも数多くの売りたい人と買いたい人をつなげてきました。

    不動産売買について相談がある方やお困りごとをお持ちの方は、お気軽にご相談・お問い合わせください。

    不動産売却の検討や、不動産の売買価格を知りたいときに、
    「路線価と実勢価格のどちらを参考・目安にすれば良いのか」
    「路線価と実勢価格がいくらになるか、調べ方を知りたい」
    「路線価は固定資産税評価額や相続税評価額と関係があるのか」
    などについて、疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。

    本記事では、路線価と実勢価格の違いや、路線価と実勢価格の調べ方、不動産投資における路線価と実勢価格の活用方法について解説します。戸建てや土地などの不動産査定・売却を検討中の方は、基礎知識として理解を深めておきましょう。

    路線価と実勢価格

    この記事でわかること

    路線価の定義と計算方法

    路線価とは、国税庁が定める主要な道路に面した1平方メートルあたりの土地の評価額です。簡単にいえば、土地ごとの基準価格のことです。相続税や固定資産税などの税金を計算する基準となります。路線価には「相続税路線価」と「固定資産税路線価」の2種類があり、路線価といえば一般的には「相続税路線価」を指します。

    より正確で具体的な路線価は、国税庁のホームページを利用のうえご確認ください。路線価は毎年公表されるため、所有不動産の売却や土地取引を検討中の方は、過去の取引実績だけを参考価格とせず、定期的にチェックすることをおすすめします。

    参考:財産評価基準書路線価図・評価倍率表|国税庁

    国税庁による路線価の公表

    路線価は、国税庁が毎年1月1日を評価時点とし、7月1日に発表される価格です。その土地が面している道路ごとに設定されており、相続税路線価と固定資産税路線価の2種類があります。相続税路線価は公示価格の8割(80%)程度、固定資産税路線価は公示価格の7割(70%)程度となっています。

    路線価の算出要素
    路線価を算出する要素は、土地の面積・形状・周辺環境・利便性などです。土地の形状が不整形な場合や、出入口が狭い場合などは、減額補正が適用され評価額が減額されます。

    実際の評価額は「路線価×土地面積×補正率」の3つの数値を掛け合わせた計算式で求めます。

    例えば、路線価は1平方メートルあたりの価額であるため、路線価20万円の道路に面している200㎡の土地の評価額は、路線価20万円×面積200㎡=4000万円です(図1)。

    【図1】
    路線価を基にした評価額の例

    地勢

    路線価を算出する要素の一つに、地勢があります。地勢とは、土地の形状や位置を表す言葉です。地勢が悪い場合、基本的には土地の評価額は下がります。

    例えば、傾斜地にある土地は、平地にある土地に比べて評価額が低いです。傾斜地にある土地は、平地にある土地よりも開発が難しく、利便性が低いためです。また、地盤が弱い土地、洪水や土砂災害など生命が脅かされる危険がある土地も、土地評価額が低くなる傾向があります。

    そのほか、土地評価額に影響する要素が、奥行・形状・間口などです。旗竿地などの奥行きが長い土地には、ビル街地区では「1.00」、普通住宅地区では「0.81」などの奥行価格補正率が適用されます。整った四角形でない土地は不整形地補正、道路に接している間口部分が狭い土地には間口狭小補正が適用され、土地評価額が算定されます。

    複数の要素が重なる場合は、どうなるのでしょうか。実は、複数の補正が反映され、土地評価額がさらに調整計算されます。「想像以上に査定価格が低い」とならないように、念頭に置いておきましょう。

    利便性

    路線価の算出要素の一つである利便性とは、土地の交通の便の良し悪しを意味します。利便性が高い土地は評価額が高くなります。例えば、「公共交通機関の駅やバス停に近い」「主要道路に面している」「商業施設が近くにあり生活環境が充実している」などは、利便性の高い土地です。

    利便性が高い土地であれば、加算補正を適用して評価額を上げることが可能です。加算補正の方法として、「二方路線影響加算」と「側方路線影響加算」があります。

    二方路線影響加算は、土地の正面と裏面が道路に接している場合に適用される補正です。側方路線影響加算は、角地や複数の道路に面していて利用しやすい土地に適用される補正です。複数の道路と接している場合は、二方路線影響加算と側方路線影響加算を組み合わせて評価額を計算します。

    周辺環境

    周辺環境とは、土地の周りの景観や治安などのことをいいます。周辺環境が優れている土地であれば路線価評価額が高くなります。例えば、近くに公園や緑地などの自然が多い場合や、学校や病院などの日常生活に欠かせない公共施設が多い場合も、評価額が高くなる傾向があります。

    実勢価格とその決定要因

    次に、実勢価格について解説します。実勢価格の定義や決定要因は路線価とは異なります。

    不動産取引の実状に基づく価格

    実勢価格とは、実際に取引された価格のことです。売主と買主が実際に取引した価格であり、実例として参考になる価格と言えますが、売買する時点の経済状況や需要関係を考慮する必要があります。

    実勢価格は、国土交通省が運営する「不動産取引価格情報検索」を使って自分で調べることも可能ですし、不動産会社に依頼して、不動産会社のみが利用できる不動産情報ネットワーク・REINS(レインズ)を使って調べることも可能です。

    実勢価格の要因

    不動産は、「同じ不動産など一つとして存在しない」と言えるほど、立地条件や建物の築年数、劣化具合などの条件が異なり、それらが個々の価格の要因にもなります。また、その時の不動産市場における需要と供給のバランスによっても不動産の価格は変動します。ここからは実勢価格の主な要因を見ていきましょう。

    立地条件

    土地価格に影響を与える要素の一つ目が、立地や周辺環境です。

    「公共交通機関の駅までの距離が近い」「周辺に買い物ができる商業施設やショッピングモールがある」など、生活環境が整っている立地は価格も上がります。

    反対に、墓地や火葬場、工場など、一般的に居住者が避ける傾向のある施設が近くにある場合は価格が下がる傾向にあります。そのほか、高圧線下にある土地は、電力会社の「地役権」が設定されており、利用が制限されたり、電波障害が発生したりする可能性があるため、価格が下がりやすいです。

    建物の構造・築年数

    建物の構造や築年数によって不動産の価格はさまざまです。建物は経過年数にしたがって古くなるため、建物自体の価値は下がっていきますが、築年数、構造、間取りなど、個別要因によって価格が変動します。一般的には同じエリア、広さ、間取りなど類似条件下では、築浅であるほど、価格は高くなります。

    市場動向

    もう一つの実勢価格の要因が、その時の市場動向です。例えば、「住みたい街ランキング」の上位に入っていたり、再開発をしていたりするようなエリアは、全国からの注目が集まるため、需要が高まります。

    需要が供給を上回れば、そのエリアの不動産価格は上昇していき、実勢価格に影響を与えます。

    路線価と実勢価格の関係

    ここからは、路線価と実勢価格の関係について解説します。

    路線価も実勢価格も、不動産の価値を決めるうえでの指標になりますが、同じ土地であっても、その土地の立地条件や周辺環境、建物の状態などによってその算出方法や特徴は異なります。

    相場判断の基準としての路線価

    路線価は、相場判断の基準として利用することができますが、あくまでも税務上の評価価格であるため、実際の取引価格と必ずしも一致するとは限りません。そのため、土地の売買を行う際には、路線価だけでなく、実勢価格も考慮する必要があります。

    実勢価格と路線価の乖離

    実勢価格と路線価の乖離とは、路線価と実勢価格の差額のことを意味します。路線価は、市街地に面している宅地の1㎡あたりの価格で、相続税や贈与税の課税価格を計算する基準となっていますが、実際の取引価格と必ずしも一致するとは限りません。

    一方、実勢価格とは、実際に取引されている土地の価格です。路線価は時価の8割程度に設定されており、土地の一般的な取引相場である時価とは乖離しているケースが大半といえます。

    路線価と実勢価格の乖離は、立地条件、周辺環境、土地の面積や形状、建物の状態など、さまざまな要因によって発生します。

    供給・需要のバランス

    路線価は土地の立地条件や周辺環境などの要素を考慮して決定されていますが、実勢価格は、これらの要素に加えて需要と供給のバランスなども考慮して決定されます。

    例えば、立地の良い土地は、路線価も高くなる傾向にありますが、その土地が実際に取引される際には、需要と供給のバランスによって、路線価よりも高い価格で取引されるケースが多いです。これは、その土地が実際には需要が高く、供給が少なくなっているためです。

    特殊な土地利用

    特殊な土地利用とは、一般的ではない土地を利用することを指します。例えば、「住宅地に工場を建設する」「山林に別荘を建てる」などの利用方法です。このような土地利用は、一般的に需要が少なく、供給が多いため、路線価よりも実勢価格が低くなる傾向にあります。
    実勢価格と路線価の特殊な土地利用は、一般的ではないため、土地の価格を評価する際には、注意が必要です。

    路線価と実勢価格を活用した不動産投資

    ここからは路線価と実勢価格を活用した不動産投資について解説します。

    失敗しない不動産投資のコツは、適切な物件選びと投資リスクの軽減です。

    適切な物件選びのポイント

    適切な物件選びを行ううえでは、将来性のあるエリアを選ぶことと適正な価格で不動産投資を行うことが大切です。

    将来性のあるエリア選び

    不動産投資で最も重要なことは、物件の立地です。国税庁が公表する路線価が高ければ、資産価値の高いエリアだといえるでしょう。

    また、不動産投資を行う場合、金融機関から融資を受けるケースも多いですが、路線価の高いエリアの物件であれば、金融機関からの担保の評価も高くなります。

    仮に、高い費用を支払って投資用マンションを購入しても、物件選びを誤れば、借り手が見つからず収益性は上がりにくいでしょう。また、その物件を売り出そうにも、相場の市場価格より低い販売価格を設定せざるを得ず、結果として赤字になる可能性もあります。

    適正な価格帯を見極める

    実勢価格は、路線価と異なり、取引当事者の事情や土地の条件、売却方法によって売り手と買い手で合意された金額です。そのため、相続による売り急ぎや、前面道路の開発事業など、その時の不動産取引におけるさまざまな要因によって変動します。

    実勢価格は、毎年公表される路線価よりも先に変動します。そのため、 不動産投資を検討する場合、その地域の地価の動向を定点観測し、不動産購入の適正な価格を見極めることが大切です。

    投資リスクを軽減するために

    最後に投資リスクを軽減するためのポイント・注意点を押さえておきましょう。

    市場動向を把握する

    不動産投資リスクを軽減するためには、まず、市場動向を把握することが大切です。市場動向を把握する方法は、不動産業者に相談する、不動産に関するウェブサイトや情報誌をチェックするなどが挙げられます。

    専門家の意見を参考にする

    不動産投資には、空室リスクや災害リスクなどさまざまなリスクが伴います。これらのリスクを軽減するためには、専門家の意見を参考にすることも重要です。専門家とは、不動産コンサルタントや不動産投資を行っている専門の買取業者などが挙げられます。専門家の意見を参考にすることで、リスクを軽減していくことが不動産投資で成功できる確率を高めます。

    まとめ

    本記事では、路線価と実勢価格の違いや、路線価と実勢価格を活用した不動産投資の方法について解説しました。不動産取引においては、路線価の評価額も実勢価格も、取引価格を決める重要な指標になるため、どちらの動向も押さえておくことが重要です。

    「空家ベース」では、空き家をメインに物件を紹介しており、空き家を活用した不動産投資を検討中の方からの購入実績もあります。物件の登録・掲載は無料で、物件情報の入力も簡単です。不動産売買について相談がある方や不動産投資に興味のある方はお気軽にご相談・お問い合わせください。