所有者不明土地を買いたい!土地の持ち主がわからない時の売買方法をわかりやすく解説
日本では、所有者不明土地が全国的に増加しており、今後も増えていくと言われています。本記事では「空き地になっている土地があり購入したいけど所有者が分からない」「所有者が不明の土地でも購入ができるの」など、所有者不明の土地を購入を考えている方向けに、所有者不明土地の売買方法について、解説します。
- 所有者不明土地は相続登記がされず、所有者が判明しないか、連絡が取れない土地。
- 売買には、登記内容の確認や所有者の調査が必要。
- 購入には所有者の確認、及び連絡が必要。
- 共有土地で一部の所有者が不明な場合、裁判所の決定により共有者の持分を取得する制度がある。
- 政府は相続登記の義務化や所有者不明土地による経済的損失の対策として法改正を進めている。
所有者不明土地とは
所有者不明の土地とは、相続登記がされないことなどにより、以下のいずれかの状態となっている土地のことをいいます。
1.不動産登記簿等を参照しても、所有者が直ちに判明しない土地
2.所有者が判明しても、所有者に連絡がつかない土地
なぜ所有者不明の土地が増えるのか
所有者不明の土地が増える理由は、人口減少や高齢化が進んでいること、地方から都市部への人口移動を背景に土地を利用するニーズが減っていることや、土地の所有意識の希薄化による土地を相続する際に所有者を明らかにする相続登記の手続きが行われていないことなどで、所有者不明の土地が増加しています。
所有者不明土地のリスク
所有者不明土地には様ざまなリスクが伴います。
例えば、
上記のようなリスクの可能性があります。所有者不明の土地は、誰が所有者なのか分からないため土地の管理に関して改善してもらおうと思っても誰に言えばいいのか分からないですし、かといって勝手に立ち入りや対処することもできないため、手を付けられない状態のままになってしまいます。
所有者不明土地の売買は可能?
所有者不明土地を売買するには、はじめに登記内容の確認や、現所有者の調査を事前に行うことが必要になります。
登記内容の確認
まずは、全部事項証明書から土地や建物の権利関係を把握します。全部事項証明書には、所有者の氏名、抵当権などの担保設定の有無などが確認できます。
所有者・相続人の調査
登記事項証明書には、現在の登記簿上の所有者の氏名と住所が記載されますが、必ずしも所有者が今現在も登記簿に記載されている住所に住んでいるとは限りません。また、すでに所有者が亡くなっており相続が発生しているが、相続登記がされておらず放置されているケースもあります。
そのような場合は所有者の住民票を取得し、現在の住所を調べたり、所有者に相続が発生している場合は、戸籍を取得して相続人を調査する必要があります。
ただし、登記事項証明書とは違い、基本的に他人の戸籍情報などを他人が取得することはできませんので、専門家に手続きを依頼することを検討しなければなりません。
不在者財産管理人の選任
所有者不明の土地を売却するための手続きとして、不在者管財管理人の選任を申し立てる方法があります。
不在者財産管理人の選任制度は、土地所有者が不在である場合に、家庭裁判所により選任された不在者財産管理人により、土地などの管理及び保存を行う制度のことです。
例えば、共有している土地を売りたいときに、その共有者のうちの一人の行方が分からず所在が不明な場合など、所有者不在の財産の売却処分を行う必要がある場合に、家庭裁判所に申し立てを行い、不在者財産管理人を選任してもらいます。選任された不在者財産管理人は、家庭裁判所の権限外行為の許可の申し立てを行い、その許可を得て、所在不明の所有者に代わって他の共有者とともに土地を売却することができます。
相続財産管理人の選任
不在者財産管理人選任のほか、相続財産管理人の選任の申立てが必要な場合があります。
例えば、土地の所有者に相続が発生しているまたは共有者の中に相続が発生しているが、法定相続人となるべき者がいない場合や遺言書がない場合には、家庭裁判所に相続財産管理人を選任してもらいます。この相続財産管理人は、相続財産の管理を行い、相続人の調査や債権者に対して債務の弁済等を行います。
また、相続人はいるが相続人全員が相続放棄をした場合も同様に相続財産管理人選任の申立てが必要となります。
所有者不明土地を購入する方法
所有者土地を購入するには、まずは土地の所有者を確認する必要があります。
土地所有者と連絡を取る方法
土地の所有者と連絡する方法は主に2つあります。一つずつ見ていきましょう。
全部事項証明書の所有者を確認する
まず、その土地の全部事項証明書を取得します。 全部事項証明書は、誰でも全国にある登記所または法務局で、全部事項証明書の交付請求をすることができます。
土地所有者が、現住所への住所変更登記がきちんとしていれば、全部事項証明書で土地所有者の住所と氏名が分かるため、原則としてここへ文書を送ることで連絡を取ることができるでしょう。
相続人を調査する
全部事項証明書に記載の住所に所有者が住んでいない場合には、周囲への聞き込みなどを行いましょう。そのうえで、土地の所有者がすでに亡くなっているようであれば、その土地の相続人を探さなければなりません。相続人が1人でも見つかった場合には、その相続人に土地を買いたい旨の話を持ちかけるとよいでしょう。
ただし、複数の相続人がいる場合は、相続人の間で遺産分割協議を行う必要があります。一部の相続人の居場所が分からず遺産分割協議が進められない場合には、戸籍謄本などを調査して、所在不明の相続人の現住所を調べるところから始める必要があります。
連絡が取れない場合の対応策
土地の所有者と連絡が取れない場合は、各制度を利用した対応策があります。主な対応策を一つずつ解説していきます。
不在者財産管理人制度を活用する
1つ目の方法は、不在者財産管理人制度を活用することです。不在者財産管理人制度は、前述のとおり、土地所有者が不在である場合に所在不明の所有者に代わって、家庭裁判所が選任した不在者財産管理人が財産の管理を行う制度です。
不在者財産管理人は、必要に応じて、所有者不在の不動産の売却をすることも可能です。ただし、そもそも、この制度を利用して裁判所に不在者財産管理人選任の申立てができる人は、不在者の配偶者や一定の関係がある親族、債権者などに限定されます。
そのため、この制度の利用は、所有者が不在の親族などから協力を得る必要があります。
土地・建物に特化した財産管理制度を活用する
土地・建物に特化した財産管理制度は改正で新たに誕生した制度であり、令和5年(2023年)4月1日から段階的に施行されました。
この制度のうちの1つに「所有者不明土地・建物管理制度」があります。この制度は、利害関係人が裁判所に申し立てることで、土地や建物の管理者を選任してもらうことができる制度です。
選任された管理者は裁判所の許可を得ることにより、所有者不明土地の売却をすることもできます。
この制度は、対象としたい土地や建物のみを単体で管理する制度です。不在者財産管理人の選任制度と違い、不在者の所有する財産を包括的に管理するものではないため、不在者財産管理人制度より活用しやすいといえます。
また、所有者がまったく分からない場合であっても、活用することができます。この制度では、土地や建物の効率的かつ適切な管理の実現が期待できるといえます。
所在等不明共有者の不動産の持分の取得・譲渡制度を利用する
共有された土地の所有者の一部と連絡が取れない場合は、不動産の持分の取得・譲渡制度を利用する方法があります。
共有者が他の共有者を知ることができないときや、その所在を知ることができないときは、裁判所の決定を得ることで、裁判所に申し立てた共有者に所在等不明共有者(氏名さえ分からない者を含みます)の持分を取得させられる制度のことです。
所在等不明共有者の不動産の持分の取得制度とは、裁判所の決定を得ることにより、他の共有者が、所在等不明共有者(氏名さえ分からない者を含む)の不動産の持分を取得することができる制度です。これまでも、共有者の一部と連絡が取れない場合に裁判所の決定によって共有物を分割する制度はありましたが、共有者の氏名などさえ分からない場合には、判決による共有物分割は不可能でした。
この新たに誕生した所在等不明共有者の不動産の持分の取得制度では、これまでの制度よりも比較的負担の軽い手続きで、所在不明となっている共有者の持分を、他の共有者が取得が可能になります。
政府による所有者不明土地対策
所有者不明土地の増加による問題を解決するために、国は相続登記義務化などの対策を進めています。
2024年をめどに登記の義務づけ
所有者不明土地は相続登記が行われずに発生するケースも多いため、2024年6月1日から相続登記が義務化されることになりました。これまで相続登記は義務ではありませんでしたが、この義務化によって、2024年以降は相続した不動産を3年以内に登記しなかった場合は、10万円以内の過料が発生する恐れがあります。
相続登記の期限と罰則が明記されたことにより、相続登記は相続人全員による共同申請ではなく、土地を相続する相続人のみの単独申請がしやすいように、いくつかの点も同時に法改正されています。
所有者不明土地による経済的損失の対策
所有者不明土地が原因で生じる経済損失額は2040年までに6兆円規模に上ると試算されています。こうした所有者不明土地による経済的損失の対策として、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が、2019年6月に全面施行されています。
この特別措置法では、名義人の死亡後長期間にわたり相続登記がされていない土地について、法定相続人等を探索した上で登記官の職権により長期間相続登記未了の旨等を登記に付記し、法定相続人等に登記手続を直接促すなどの特例が設けられています。
2021年4月に可決・成立した相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律案では、条件を満たす土地を対象に、法務局による審査を経て、10年分に相当する土地の管理費を納めれば国庫に納付する形で相続した土地を手放せる相続土地国庫帰属制度の導入も決まっています。
まとめ
本記事では、所有者不明土地の売買方法について解説しました。年々増加し続ける所有者不明土地に対して、国もさまざまな制度を導入しはじめていることで、所有者不明の土地であっても、今後は売買がスムーズになることが期待できます。
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