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重要事項説明書とは?初心者でも失敗しない“見るべきポイント”をわかりやすく解説

空家ベース編集部

不動産の売買契約では、契約前に「重要事項説明書」を受け取り、物件の状態や法的な制限を正確に理解する必要があります。

 

内容を把握できていないまま契約すると、境界問題や再建築不可などの思わぬリスクに気づけず、購入後に予想外の費用が発生する可能性があります。

 

本記事では、重要事項説明書とは何か、確認すべきポイント、初心者が見落としやすい注意点、安心して契約するための進め方を紹介しますので、不動産事業に初めて挑戦する人は参考にしてください。

 

【この記事でわかること】

・重要事項説明書の目的と確認ポイント

・初心者が見落とすリスクと対策

・安全に契約を進めるための準備

重要事項説明書とは?交付の目的と説明のタイミング

 

重要事項説明書とは、物件の条件を契約前に確認するための法律上の必須書類です。

 

契約可否を判断する材料として、宅地建物取引士が物件の状態や法令制限を整理して説明します。内容を把握すると、境界やインフラ状況などの見落としを防げます。

 

不動産購入投資の経験が浅い場合でも、事前に理解することで取引への不安を和らげられます。

 

なぜ「重要事項説明書」が必要なのか(法律上の義務)

 

重要事項説明書が必要なのは、宅建業法第35条で説明と交付が義務化されており、買主を保護する仕組みとして位置づけられているためです。

 

宅地建物取引士は、権利関係や法令制限などを整理した書面を提示し、契約判断に必要な情報を明確に説明します。説明不足が紛争につながる事例が多いため、この制度は認識の差を防ぐ役割も果たします。

 

売却時の記載漏れは契約解除や損害賠償につながるおそれがあるため、売主も内容の把握が欠かせません。

 

参考:宅地建物取引業法第35条|国土交通省

 

説明を受けるタイミングと宅地建物取引士の役割

 

重要事項の説明は、契約前に“書面と口頭”の両方で受ける必要があり、判断材料を整理するための必須手続きです。

 

説明を担当できるのは宅地建物取引士で、説明時には取引士証の提示と記名が求められます。事前に書類を送付するなど条件を満たせば、オンラインのIT重説も利用できます。2022年の宅建業法改正により、重要事項説明書および契約書の電子交付が恒久的に認められています。

現在は、対面だけでなくオンライン(IT重説)で説明を受けることも可能です。

 

売主への説明は義務ではありませんが、確認を依頼するとトラブルの防止に役立ちます。

 

参考:ITを活用した重要事項説明及び書面の電子化について|国土交通省

 

書類を受け取ったらまず確認すべき項目とは

 

優先して確認すべき項目は、法令制限と物件の属性に関する内容です。

 

用途地域、建ぺい率、容積率を整理し、希望どおりに利用できるか判断します。災害リスクは警戒区域の有無をハザードマップで照合し、安全性や保険料への影響を把握します。

 

インフラ状況やアスベスト調査の有無も費用面に直結します。契約条件は売買契約書と比較し、差がないかを確認し、疑問点は宅地建物取引士に相談するのがおすすめです。

 

 

重要事項説明書の主な内容と「ここだけは絶対に見る」ポイント

 

重要事項説明書では、将来の運用に関わる権利関係や法令制限、インフラ状況を中心に整理します。

 

記載の見落としは費用負担や活用の制約につながるため、内容が投資計画へ与える影響を意識して確認します。

 

宅地建物取引士の説明では、専門用語に惑わされず、物件の特徴と契約条件を読み解く姿勢が欠かせません。

 

参考:重要事項説明における各法令に基づく制限等についての概要一覧|国土交通省

 

物件の基本情報(所在地・地目・面積など)

 

最初に整理したい項目は、所在地や地目、面積などの基本情報です。

 

土地の所在地・地番・地目・地積、建物の構造や床面積、建築時期を登記事項証明書や図面で照合し、記載のずれを排除します。登記と実測が異なる場合は、どの面積で取引するかを早めに確定します。増改築によって床面積が異なる例もあるため、図面と現況の確認も必要です。

 

基本情報の誤りは融資や税額、売却評価に影響するため、違和感があれば宅地建物取引士へ質問します。

 

法令制限(建ぺい率・容積率・都市計画・接道状況)

 

建て替えや増改築の可能性を判断するため、法令制限の整理が欠かせません。

 

用途地域、建ぺい率、容積率が都市計画法や建築基準法で定められ、建築できる規模が決まります。低層住居専用地域では高さ制限が厳しく、希望の建築が難しい場合があります。

 

幅4メートル未満の道路にしか接していない土地は再建築不可となる可能性があり、セットバックが必要になる場合もあります(※セットバックとは、道路幅が4メートルに満たない場合に道路中心線から後退して敷地の一部を道路として提供することです)。利用の自由度に影響するため、役所で内容を確認し、宅地建物取引士にも相談します。

 

権利関係(所有権・抵当権・地役権など)

 

購入後の安全性を確保するため、権利関係の確認を優先します。

 

登記簿の甲区では所有者情報や差押えの有無を整理し、乙区では抵当権や根抵当権、地役権などを確認します。引渡し時に抹消されるかを契約条件と比較し、私道負担がある場合は利用範囲や維持費の扱いも整理します(※私道負担とは、接する私道の通行や管理のために土地所有者が一定の権利や費用負担を持つ状態です)。

 

登記事項証明書と説明書の記載が一致しているかを確認し、不明点は宅地建物取引士へ相談します。

 

設備・インフラ・管理状況(上下水道、ガス、電気など)

 

将来の費用負担を予測するため、上下水道やガスの整備状況を整理します。

 

公営か私設かで負担額が変わるため、整備予定や工事費の見通しを確認します。古い戸建てではアスベスト調査や耐震診断の有無が重要で、残存建材がある場合は改装時の除去費用が発生します。

 

設計図書や検査済証の有無も管理状態を判断する材料となるため、保存状況を把握します。

 

契約条件(手付金・引渡し時期・解除条件)

 

想定外の負担を避けるため、契約条件の整理が欠かせません。

 

手付解除期限やローン特約の期日を確認し、期限後の解約で発生する違約金リスクを把握します。損害賠償額や違約金は売買代金の2割が上限のため、設定額が適切か確認が必要です。

 

契約不適合責任の範囲や、建物状況調査・既存住宅売買瑕疵保険の対象などや保証、保険の対象範囲も説明されるため、売主の責任範囲を整理します。記載内容は売買契約書と比較し、条件の差がないかを早めに確認します。

 

契約条件は売買契約書と比較し、差がないかを確認し、疑問点は宅地建物取引士に相談するのがおすすめです。

 

過去のトラブル・心理的瑕疵・事故履歴の記載

 

瑕疵や事故履歴は修繕費や入居募集の難易度に影響するため、丁寧な確認が必要です。

 

雨漏りやシロアリ被害など補修済みでも再発の可能性がある内容は重点的に整理します。説明が必要な事実を隠す行為は法律違反で、契約解除や損害賠償につながります。

 

仲介業者による説明の省略がないかも確認し、売主側も内容を把握します。不明点が残る場合は宅地建物取引士に質問し、判断材料を整えます。

 

 

初心者が見落としがちなリスクと注意点

 

初心者がつまずきやすいのは、重要事項説明書に整理された制限や負担を十分に理解しないまま契約へ進む点です。

 

書類には権利関係や法令制限、インフラ状況、契約条件が網羅されており、読み込み方によって将来の運用・費用が大きく変わります。

 

購入者戸建て投資家として、投資目的にどのような権利・義務・制約が生じるかを見極める姿勢が欠かせません。

 

境界線・私道負担の有無を確認する

 

境界線や私道負担を把握しないと、利用制限や維持費で想定外の支出につながります。

 

重要事項説明書の「私道に関する負担」に、負担の有無や利用制限が整理されているため、登記事項証明書と照合し、記載漏れや誤りを排除します。私道負担がある場合は、所有権や通行権の範囲、維持管理費の扱いを事前に確認します。

 

私道に接する土地では建て替え時に他の所有者の同意を求められる場合があり、権利関係の理解がトラブル防止につながります。

 

建築制限・再建築不可物件のチェック

 

建て替えや増改築を想定するなら、建築制限と再建築の可否を早めに整理します。

 

重要事項説明書には用途地域、建ぺい率、容積率などが記載され、建築可能な規模を判断できます。幅4メートル未満の道路にしか接していない土地は接道要件を満たさず、再建築不可になるリスクがあります。

 

前面道路の幅員によっては将来セットバックが必要となり、有効面積が減少します。容積率を超える既存住宅では増改築が認められない可能性があるため、役所での確認と宅地建物取引士への相談を組み合わせて判断材料を整えます。

 

参考:既存建築物の活用の促進について|国土交通省

 

住宅ローン利用予定なら金融機関提出用に写しを保管

 

融資を検討する場合は、重要事項説明書の写しを保管しておくと手続きが進めやすくなります。

 

書類には金融機関名、融資額、金利、借入期間などの条件が整理されており、契約内容との相違を早めに確認できます。ローン特約の期限を把握すると、期限内に承認が得られない場合の対応を判断しやすくなります。

 

写しを準備しておくと、金融機関とのやり取りや日程管理が円滑になり、承認が下りないリスクへの備えにもつながります。

 

事故・告知事項が“抜けていないか”を質問で確認

 

物件の欠陥や周辺環境に関する情報が揃っているかの確認は、購入後のトラブル防止に直結します。

 

雨漏りやシロアリ被害などの瑕疵、嫌悪施設の有無は資産価値や入居募集に影響するため、記載漏れの有無を丁寧に整理します。告知漏れは法律違反で、契約解除や損害賠償につながるため、売主の告知書と重要事項説明書を比較し、不一致があれば宅地建物取引士へ質問します。

 

不明点を残さず内容を把握する姿勢が、安全な取引につながります。

 

 

重要事項説明書を“読むだけ”で終わらせない!安全な契約の進め方

 

安全に契約へ進むためには、重要事項説明書を形式的に読むだけでなく、疑問点を整理しながら活用する姿勢が欠かせません。

 

重要事項説明書は契約判断の中心資料であり、署名後は記載内容に同意した扱いになります。

 

専門用語が多くても、事前に確認したい項目を洗い出し、契約前に整理しておくと不安を軽減できます。高額な取引ほど、内容を深く理解したうえで進める準備が必要です。

 

気になる点は「必ず質問」する(記録を残す)

 

契約後の紛争を避けるためには、不明点をその場で質問し、やり取りを記録として残す姿勢が欠かせません。

 

重要事項説明には専門用語が多く、理解が難しい項目も含まれるため、疑問は宅地建物取引士に必ず確認します。水害リスクや瑕疵履歴など将来の負担につながる項目は重点的に整理します。口頭での補足情報はメールや議事録として残すと証拠になります。

 

IT重説ではページや項目名を示す質問が録画で確認しやすくなります。

 

説明内容は営業担当ではなく“宅建士”本人に確認

 

説明を担当できるのは宅地建物取引士のため、資格者証の提示を必ず確認します。

 

宅建士の記名は法律で求められており、省略はできません。説明を受ける際は、書面と照らし合わせながら所在地・権利関係・法令制限が正確に伝えられているかを確認します。

 

資格者から直接説明を受けることで、物件に関する法的リスクを正確に把握できます。

 

家族や第三者にも一度目を通してもらう

 

専門的な項目が多い重要事項説明書は、一人で判断すると見落としが生じやすくなります。

 

事前にコピーを受け取り、不動産コンサルタントや経験者、家族に確認してもらうとチェック精度が高まります。

 

特に、法令制限、契約不適合責任、費用に関わる項目を重点的に見てもらうと、判断材料が増えます。

 

「わからない」を放置しないのが失敗を防ぐ最善策

 

疑問を残したまま契約へ進まない姿勢が、失敗を防ぐ確実な方法です。

 

署名後は記載内容に同意した扱いとなり、説明不足の主張は難しくなります。耐震診断、インフラ整備、接道など費用に直結する項目は慎重に確認します。

 

疑問点は宅地建物取引士へ相談し、理解した内容を自分の言葉で整理して確認すると、認識のずれを防ぎやすくなります。

 

まとめ|重要事項説明書は「安心して契約するための地図」

 

重要事項説明書は、不動産契約の安全性を確保するために設けられた重要な書類であり、物件の状況や法的制限、契約条件を事前に把握するための基礎資料です。

 

内容を読み流すのではなく、境界、再建築の可否、権利関係、事故履歴など気になる点は必ず確認し、不明点は宅建士へ質問することが、不動産投資の失敗を避けるための最善策になります。

 

今回の内容を参考に、安心して判断できる準備を進めてください。

 

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