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因縁の私道 #2問題解決編

FAP

前回のコラムでは、私道持分権のない物件に潜むリスクが顕在化した体験をご紹介しました。

▼購入した物件の私道問題の発端編からお読みください!

因縁の私道 #1問題の発端編

 

不動産業者から因縁の私道についての突然の電話に言葉を失いました。

 

FAP:「どういう風の吹き回しでしょうか?」

どうやら、僕が賃貸客付けをお願いしていた不動産業者が、地主さんの仲介さんから因縁の私道を売りたがっているとの話を持ちかけられたとのことでした。

 

・売却理由:自分が使っているわけでないため必要ない。

・売却金額:60万円希望

 

 

「前向きに検討します!」と勢いよく電話を切りました。

てっきり地主さんは、柵を立てる気満々なのでは、と戦々恐々した日々を送っていたため、一安心しました。

とはいえ、僕が購入したボロ戸建ては40万円だったのに対し、ただの道に60万とは…。

私道を持っているから家賃が上がるわけではありません。

僕自身の手持資金も乏しく何とか安く購入したいと考えました。

 

そこで、どうやったら値下げをしてもらえるか策略を練りました。

因縁の私道の通行権を持っていないので、僕がこの私道が喉から手が出るほど欲しいということは値下交渉の弱みです。

しかし、逆に僕以外の周辺の住民は通行権を持っているということは強みになることにも気付きました。

つまり、売主さん出口を考えると、僕しか買い手がいないのです。

地主さんは自分が使うわけではない私道を持っていても毎年固定資産税を払うだけ。

だからこそ手放して現金化したいのではないか。

値下げ交渉がうまく行く気がしてきました。

 

案の定、仲介さんに値引きを依頼した結果、30万円まで下がることに。

そこで納得しないのがFAP。

「30万でも高いな・・・。そうだ!道に接している人みんなで共有で購入すれば負担額が少なくなるぞ!私道JV(ジョイントベンチャー)発足だ!」

うまくいけば一人当たり5〜10万で済むと思って私道JV交渉に乗り出しました。

 

まず、現地で仲良くなり、かつ,近くに住む息子さんがたまに私道に車を止めているのを見かけていたお隣のAさんにいの一番にお電話。

 

FAP:「カクカクシカジカで道が購入出来そうなんです。一緒に購入しませんか?」

Aさん:「良いよ!」

 

これは幸先が良い!!行けるぞ!

 

…と思った矢先、

お隣さんE:「わたしは別の道から出れるからお断りします。」

 

 

そう、お隣さんE・Fさんは反対側に道があるので私道を購入する必要がない。

Cさんは市道から直接入れるように自分で橋をかけており、辞退。

 

残るはDさんとBさん。

Dさん:「必要ない。」

FAP:「でしたら、もし私が道を購入して、誰かに売却したとします。その際に、私道を通る際に

通行料なども請求されるケースもあり得ます。それでも良いのですか?」

Dさん:「だったら、側溝に橋を自分でかけるよ。」

FAP:「…。(心の声:車が通れる橋をかけるより持分権を買った方が安く済むやろ!!)」

 

なんと、現在成功しているのは5分の1。まだ2人で15万円です。

せめてあと1人いれば10万円。しかし残ったのは、空家のBさん。

Bさんが今どこにいるか、近隣住民も分からないとのこと…。

 

ここで、「登記情報提供サービス」でBさんの所在を検索しました。

登記情報提供サービス

 

このサイトで一時利用ボタンを押し、仮登録→請求をすると、約300円/1件程度で登記簿情報を取得ができます。

(※登記簿謄本は更新されておらず現状と異なることも多いので都度確認が必要です。)

 

Bさんの登記簿を調べてみました。

すると、Bさんは神奈川在住のマリコさん(仮名)というお方でした。

 

当時東京在住だったFAPは、「おお!!近い、これは直接行ける!」とテンションがMAXに。

住所をグーグルマップで調べてみると、駅から徒歩15分くらいの山の手エリア、芦屋のような高台の良い住宅街でした。

自然と期待度が上がり、勝利を確信したFAP。

持分権購入のために出してもらう予定金額は10万円。余裕でOKでしょ!

 

登記簿には電話番号は書いていないので、平日に仕事を早めに切り上げ、突撃訪問しました。

大きなお屋敷とBMWを横目に、ドキドキしながらインターホンを鳴らし、 ご挨拶。

 

FAP:「突然すみません。FAPと申します。新居浜の道の件でお伺いしたい事があるのですが、

マリコさんはいらっしゃいますか?カクカクシカジカで持分権を一緒に購入できないかと考えておりまして…。」

インターホン越しの旦那さん:「ああ、あの家ね。確か以前親族に貸したとか言っていたなぁ。」

FAP:「そうなんですね。その辺りも含めてマリコさんとお話したいのですが…。」

旦那さん:「…。マリコは遠くへ行ったよ…。」

FAP:「遠く、ですか…。」

 

「不在ですよ。」とか、「今、手が離せない。」とか数多の不在の言い訳がある。

その中で初めて出会った回答に言葉を失ったFAP。お礼を言い、その場を立ち去るしかできませんでした。

 

そこへ一台のレクサスが隣の家に駐車。由緒正しい制服を着た小学生が降りてきて、次に運転席から品の良いマダムが降りてきたため、すかさず声をかけました。

FAP:「すみません、カクカクシカジカで、マリコさんにお会いしたのですが、最近お会いされましたか?」

隣のマダム:「ああ、確かに最近見かけないわね。」

 

どうやら居留守や不在の言い訳ではなく、本当に遠くへ行ってしまったようだ。

段々自分の私道JVよりも、マリコの所在が心配になってきた。

マリコ、一度話をしたかった…。

マリコの身を案じながらA4の手持ちのノートにJVの思いをしたため、マリコ家のポストに投函して帰宅しました。

 

それから2週間。

マリコからは何の音沙汰がなく、1人15万円の負担でお隣さんAと一緒に道を購入するか…と思いを固めた頃に、一本の電話が鳴りました。

 

お隣さんA:「あの道購入するのやめるわ!」

FAP:「え!?何でですか?持ち分を持っていたほうが良いですよ!カクカクシカジカ〜」

お隣さんA:「知り合いの司法書士に聞いたら、あんな道に価値は無いって言ってた最悪は家の裏の農道(幅1m)から出入りできるし。そもそもあの道は昔から~~~~~」

FAP :「・・・。」

 

私道JVは失敗に終わり、結局1人で40万円の物件に対して30万円の私道を購入しました。

動き回った収穫がゼロだったことには肩を落としましたが、以下の通り所有物件の価値が上がったので良としました。

 

・40万円の再建築不可物件→70万円の再建築可の物件に

・軽自動車1台分の駐車スペース→私道単独所有のため私道に追加の駐車スペースを確保

 

●ここからFAPが学んだこと

・私道持ち分のない物件購入後、私道を購入できることもある

・所有者が私道を使っていない場合はむしろ所有者が処分を希望しているケースもある

・しかし、私道の所有者が私道を使っているケースでは購入は難しい可能性が高い

・私道の持分権がなくてもせめて通行(掘削)権があることを確認すべし

・不動産関係者以外には土地の価値を理解してもらうことは難しく、一緒に私道の持ち分を購入しようと思っても、なかなかうまくいかない

 

次回は、FAPおなじみ「遠方物件のノールック買付」の方法・注意点について。

デンジャラスな方法ですので良い子は真似しないように(笑)次回もお楽しみに!