個人売買で家を売却するには?メリット・デメリットや注意すべきポイント
戸建てや土地、マンションを売買する際には一般的に不動産会社が売主と買主を仲介することになりますが、個人間売買を希望する人も少なくありません。
宅地建物取引業者を介さずに不動産取引を行うことにはメリットがあり、インターネットでも個人売買の流れや注意点が公開されていることから積極的に検討する売主も多いです。
その一方で個人売買にはデメリットとリスクがあり、トラブルを避けるためにも慎重に判断しなければならないポイントもいくつかあります。
この記事では不動産を個人売買で進める際のメリットとデメリットについて、解説します。
個人売買が向いているケースと不向きなケース、トラブル事例と対処法も紹介しますので、これから不動産を個人売買する予定のある人は参考にしてください。
この記事で分かること
- 不動産売却を個人売買で進めるメリットとデメリット
- 個人売買が向いているケース・向いていないケース
- 個人売買で想定されるトラブル事例と対処法
- よくある質問(FAQ)
個人売買で家を売ることは可能?
不動産売買において必ずしも不動産会社に仲介してもらう必要はなく、当事者が全ての必要書類を準備して適切に手続きを進められるのであれば個人売買であっても問題ありません。
また、所有権移転登記を法務局で申請する場合や農地転用の申請も司法書士や行政書士に依頼することなく、自分で手続きすることも可能です。
このように専門家に依頼をしなくても不動産取引を完了することができることから、不動産関連の専門知識を有している人であればスムーズに個人売買を進められる可能性は高いといえます。
家の個人売買で得られるメリット
家の個人売買には多くのメリットがあり、不動産会社に仲介してもらうことなく自分で買い手を見つけて取引を進める売主もいます。
この章では家の個人売買で得られるメリットについて、解説します。
仲介手数料を節約できる
不動産会社に仲介を依頼した場合、売買契約が締結された時点で仲介手数料の支払い義務が発生します。
仲介手数料は国土交通省によって上限が設定されており、上限額の計算方法は次の通りです。
売買価格が200万円を超え400万円以下:売買価格×4%+2万円+消費税
売買価格が400万円を超える:売買価格×3%+6万円+消費税
低廉な空家等の売買:30万円+消費税
一般的に不動産会社からは報酬額の上限で仲介手数料を請求されることになり、たとえば1,000万円の不動産を売買すると1,000万円×3%+ 6万円=39万円(税抜)を支払うことになります。
売買価格が高額になるにつれ仲介手数料も高額になることから、個人売買によって仲介手数料が節約できるという点は大きなメリットといえます。
【引用サイト:仲介手数料の基本的な考え方】
【引用サイト:空き家等に係る媒介報酬規制の見直し】
売却活動や交渉を自分のペースで進められる
売主と買主のペースに合わせて契約や引渡しの準備を進められるのも、個人売買のメリットです。
仲介の場合は不動産会社が契約と決済日を設定し、それに合わせて売買契約書を作成します。
そのため契約のスケジュールによっては慌てて事前準備しなければならないこともあり、時間がない売主だと大きな負担になってしまうケースも少なくありません。
その点、個人売買であれば当事者が合意したペースで進めることができ、スケジュールの微調整も容易です。
このことからも、焦ることなくゆっくりと自分のペースで手続きをしたい人に、個人売買はおすすめだといえます。
知人間取引なら早期に話がまとまりやすい
買主が知り合いであれば細かな調整もしやすく、個人売買を安全に進められる可能性が高くなります。
たとえば仲介の場合だと内覧の予定調整や価格調整などを不動産会社が行うため、調整にタイムラグが発生してしまいます。
その点知り合い同士の個人売買であればストレスを感じることなく直接話し合って決められますので、大きなメリットとなります。
家を個人売買するデメリット
家の個人売買は仲介手数料を節約することができ、さらに自由に価格設定や売却スケジュールを決められるというメリットがありますが、デメリットもありますので注意が必要です。
この章では家を個人売買するデメリットについて解説しますので、前述したメリットと合わせてチェックしてください。
売り出し価格の設定が難しい
仲介の場合は不動産会社に査定を依頼して相場を確認し、そのうえで売却価格を設定することになります。
不動産会社から価格設定のサポートを受けるため不動産の価値と売却価格が大きく乖離することは少ないですが、個人売買の場合は売主が全て判断しなければなりません。
そのため価格設定が難しい物件では適切でない価格で売り出してしまうこともあり、買い手が見つかりにくい不動産売却になってしまうこともあります。
このように売り出し価格の設定が難しいという点が、個人売買のデメリットです。
住宅ローン審査のハードルが上がる
不動産売買において不動産会社は当事者の代わりに売買契約書を作成することになりますが、合わせて重要事項説明書も作成します。
この書類は物件の所在や法令制限、特約などが記載されており、宅地建物取引士が買主に対して説明する重要書類となっています。
金融機関は契約書と重要事項説明書の内容をチェックし、融資に問題がないか確認することになりますが、重要事項説明書がなければ融資のリスクが高くなり、その結果住宅ローン審査が通らない可能性が高くなってしまいます。
特に前面道路が狭い物件や公道でない場合は再建築に影響が出る可能性が高く、融資を断る金融機関も多いです。
融資を受けられないと物件の購入資金が用意できなくなり契約が白紙になってしまいますので、個人売買の大きなデメリットといえます。
トラブル発生時の責任が重くなる
不動産の取引は動産と違って予想外のトラブルが発生することも多く、不動産会社にとってこうしたトラブルに対応することが役割の一つとなります。
確定測量時の隣人トラブルや町内会長への説明、雨漏りやシロアリ被害の責任負担など、専門知識と豊富な経験がなければ解決できないトラブルも多いです。
また、買主が住宅ローン融資を受ける場合は期限内に融資を通す必要があり、通らなければ契約内容によっては違約金を売主に支払わなければなりません。
このように不動産取引は売主と買主のどちらにも責任とリスクが発生することになり、不動産会社が調整しなければ取引を完了できなくなることもあります。
特に知り合い同士で個人売買を行いこのようなトラブルが発生すると関係性に影響が出てしまいますので、注意が必要です。
物件の売却期間が長引く可能性もある
不動産会社は売主から販売の委託を受けると物件を不動産ポータルサイトやレインズに公開し、新聞折込やポスティングによって近隣住民に物件の公開を周知します。
このように物件の露出を増やすことで購入予定者からの反響を獲得し、契約の確度を高めることができます。
一方、個人売買では不動産ポータルサイトやレインズを使うことができず、ポスティングスタッフを自分で手配することになります。
その結果不動産会社に依頼するよりも反響数が少なくなってしまいますので、売却期間が長くなりやすいです。
また、内覧や物件説明も売主自ら対応することになり、うまく説明できなかったり内覧の都合がつかずに商談自体がなくなってしまう機会損失が起こりやすいという点が、個人売買のデメリットです。
個人売買が向いているケース・不向きなケース
個人売買にはメリットもデメリットもありますので、個人売買が自分に合っているかどうかの見極めが重要です。
実際に個人で不動産取引をしている人もいますので、どのようなケースであれば個人売買を選択しても問題ないか知っておく必要があります。
この章では個人売買が向いているケースと不向きなケースについて、詳しく解説します。
親戚・友人など信頼関係がある相手への売却
たとえば実家を売却する場合で親戚や友人が買い手となる場合、家の状態や間取りをよく知っている人が購入することになります。
このような関係性であればトラブルが起こりにくく、さらに音信不通になる可能性も低いのでリスクを下げつつ取引することができます。
内覧の都合もつけやすく契約の準備や場所の設定もしやすいことから、個人売買で進めやすい代表的なケースです。
一方、「家を買いたい」と突然訪ねて来た人やメールだけのやり取りで本人確認が難しい人との契約は非常にリスクが高く、個人売買は向いていないといえます。
売主・買主双方に不動産売買の知識や資格がある場合
個人売買のリスクとして「不動産関連の専門知識がない」という点がありますが、売主と買主のどちらにも知識があればリスクを抱えることなく個人売買を進めることができます。
特に宅地建物取引士や司法書士の資格を所有しているのであれば不動産会社に依頼した場合と変わらない内容で取引できますので、安心です。
ただし重要事項説明書は宅地建物取引士ではなく宅地建物取引業者が作成しますので、資格があっても金融機関の融資に影響が出てしまう可能性があり、注意点といえます。
買主が現金一括購入を検討している場合
重要事項説明書がない個人売買は住宅ローン審査が大きなネックとなりますが、買主が現金で一括購入するのであれば心配ありません。
現金一括購入は契約から決済までの期間を短くできるというメリットもあり、個人売買の方がスムーズに進められることもあります。
特に郊外にある空き家を売却する場合は現金で購入するというケースも多く、積極的に個人売買を進める売主も多いです。
想定されるトラブル事例と対処法
個人売買は不動産取引を全て当事者間で進めることになり、不動産会社のサポートを受けられません。
そのためできる限り起こり得るトラブルを想定し、対処できるよう準備しておくことが重要です。
この章では想定されるトラブル事例と対処法を紹介しますので、チェックしてください。
契約不適合責任(瑕疵担保)をめぐるトラブル
契約不適合責任とは、引き渡した後に一定期間売主が負う責任のことで、期間内に雨漏りやシロアリ被害が発生すると売主の責任で対応しなければなりません。
期間は売主と買主の合意によって設定することができますが、万が一契約書類に期間を記載し忘れた場合、「買主が知ってから1年間」が期間になります。
売主にとって契約不適合責任は大きなリスクとなりますが、契約不適合責任に対する解釈が当事者間で異なり、その結果トラブルになることもあります。
そのため内覧時には売主と買主のどちらも設備の不具合や建物の劣化についてできるだけ細かくチェックし、書類にまとめたうえで責任の所在を明確にすることが重要です。
場合によってはインスペクションを利用し、建物の状態を第三者機関に確認してもらうのもおすすめの対処法です。
価格や物件状態の行き違い
不動産の販売価格はあくまでも「本体価格」という位置づけであり、引き渡し条件を満たすために追加でかかる費用もあります。
たとえば古家付き土地として販売している物件を中古戸建として購入する場合、売主は解体費や測量費がかからないことになりますが、その分値引きできると決まっているわけではありません。
また、現存している戸建てが建築される前の状態は内覧で確認することは難しく、契約後に「実は井戸が埋まっている」と知らされることもあります。
個人売買の場合、売主はどこまで買主に説明すればいいか分からず重要な項目を伝え忘れることもあり、その結果重大な行き違いが発生することも少なくありません。
こうしたトラブルを防ぐためにも、内覧時に家の状態を伝えるポイントをまとめておくことをおすすめします。
引き渡し後の修繕・クレーム対応
契約不適合責任に該当するトラブルだけでなく、給湯器の破損や太陽光発電の不備など引き渡し後に発生する問題は多いです。
破損個所を売主が把握できていないことも多いですが、「騙された」と感じる買主もいます。
親戚や知人同士の場合だとトラブルが原因で関係性が悪化してしまうこともありますので、自治体やNPO法人など相談できる窓口をあらかじめ調べておくことが大切です。
個人売買のリスクを抑えるための対策
不動産会社が仲介していれば起こらないトラブルも、個人売買では頻繁に発生することもあります。
そのため起こり得るリスクをイメージして発生時に対応できるよう準備しておくことも大切ですが、そもそもリスクを抑える対策も重要です。
この章では個人売買を進めるうえでやっておきたいリスク対策を紹介します。
物件情報を正直に開示し、書面で残す
売主が知っている物件情報は全て買主に開示し、物件状況告知書や付帯設備表にまとめて買主に渡すことで、大部分のトラブルを防ぐことができます。
特に水回り設備や外壁の状態、火災や雨漏り、シロアリ被害、家の傾き、浸水被害、近隣住民とのトラブル有無などは契約前に必ず伝えておきたいポイントです。
これ以外にも町内会のルールや近隣にクリーンセンターや産業廃棄物を処理する施設などの建築が予定されている情報なども、積極的に伝えることをおすすめします。
契約書類を専門家にチェックしてもらう
売買契約書は本来、売主と買主の解釈がズレないよう注意しながら作成しますが、契約書類の作成に不慣れな売主の場合、正しくない表現が使われてしまうこともあります。
契約条項や特約条項の解釈が異なることで発生するトラブルも多いことから、契約締結前に契約書類を専門家にチェックしてもらうことがポイントです。
ただし個人売買の場合は不動産会社にチェックしてもらうことは難しく、司法書士や行政書士は専門外のため正しいアドバイスを受けられないこともあります。
そのため費用はかかっても不動産を専門としている弁護士に相談し、チェックしてもらうことをおすすめします。
個人売買と不動産仲介・不動産買取の比較
不動産売却の方法として個人売買と不動産仲介がありますが、不動産買取という方法もあります。
どの方法を選ぶのかでリスクや売却価格が異なりますので、それぞれの売却方法について正しく知っておくことが大切です。
それぞれの売却方法について特徴をまとめると、次のようになります。
| 売却方法 | 価格設定 | スケジュール | 書類の作成 | 契約のリスク |
|---|---|---|---|---|
| 個人売買 | 自由 | 当事者間で調整 | 当事者が作成 | 高い |
| 不動産仲介 | 自由 | 不動産会社が調整 | 不動産会社 | 普通 |
| 不動産買取 | 買取価格=売却価格 | 不動産会社が調整 | 不動産会社 | 低い |
この章では個人売買と不動産仲介、不動産買取の違いについて解説します。
仲介売却との違いと向き・不向き
不動産会社に何も依頼しないのが「個人売買」で、不動産会社に仲介や買取を依頼するという点が異なります。
個人売買は価格設定もスケジュール調整も自由ですが、契約書類を作成する手間がかかり内容に不備があることでトラブルが起きることもあります。
また、契約前に買主と音信不通になることもあり、契約後のクレームに自分で対応することになるのも大きなリスクです。
不動産買取との違いとメリット・デメリット
不動産仲介と不動産買取は契約書を自分で作成する必要がないため手間はかかりませんが、不動産会社が調整したスケジュールで進めることになります。
さらに不動産仲介の場合であっても契約不適合責任などのトラブルは発生し、対応しなければなりませんので注意が必要です。
その点、不動産買取の場合は契約不適合責任を免責で進めることもでき、家屋の解体や不用品の処分をすることなく引き渡しできるというメリットもあります。
ただし、不動産買取は買取業者が提示する買取価格が売却価格となるため価格調整がしにくく、個人売買や仲介よりも安くなるケースも少なくありません。
このようにどの売却方法にもメリットとデメリットがありますので、自分に合った方法を選ぶことが重要です。
よくある質問(FAQ)
この章では個人売買でよくある質問を紹介します。
Q1. 個人売買で必要な資格や免許はある?
個人売買を制限する法律はなく、資格や免許も不要です。
ただし宅地建物取引士や司法書士、行政書士、弁護士といった資格があれば安全に進めることができます。
Q2. 個人売買で司法書士や行政書士への依頼は必須?
司法書士は所有権移転登記、行政書士は農地転用など公的書類の作成時に依頼する士業ですが、どちらの作業も個人で行えますので必須ではありません。
ただし所有権移転登記も農地転用も非常に複雑な申請書類となっていますので、依頼した方が手間がかからないケースも多いです。
Q3. 価格交渉はどのように進めればいい?
個人売買で価格交渉をする場合、理由を明確にするのがポイントです。
住宅ローンの審査結果やリフォームの見積書などを売主に開示し、誠実に相談することで価格交渉が成功する可能性を高めることができます。
Q4. 買主が見つからないときの対処法は?
どうしても買主が見つからない場合は不動産会社に仲介や買取を依頼し、スピーディーに売却してしまうのがおすすめです。
まずは個人売買で売却できないかチャレンジして買い手が見つからなければ不動産会社に仲介してもらい、それでも見つからないのであれば買取を依頼するという売主も多いです。
まとめ
不動産売買において不動産会社に仲介を依頼しない個人売買はメリットが大きく、不動産取引に慣れた売主であればおすすめの方法です。
ただし個人売買はメリットと同じくらいデメリットも多く、大きなトラブルが発生することも少なくありません。
そのため想定されるリスクのピックアップと対処方法、リスクを未然に防ぐ対策が重要なポイントといえ、十分に時間をかけて準備することが重要です。
空家ベース編集部です。空家と書いて「ソライエ」と読みます。Twitter・Instagram・公式LINEなどでも物件情報を随時配信しています。空き家を買って再生したい方、他では売れないと言われてしまった空き家をご所有の方はぜひご相談ください!




