IRR(内部収益率)とは?利回りとの違いや計算方法、不動産投資におけるメリットや注意点を分かりやすく解説
不動産事業、特に空き家を活用した投資に挑戦したいとお考えの皆さんにとって、投資の収益性を正確に評価する指標は欠かせません。
IRR(内部収益率)は、単なる利回り計算では見落としがちな「お金の時間的な価値」を考慮し、投資資金の回収効率を測る上で重要な指標となります。資金が限られている方や大規模な融資が難しい方でも、効率的な投資先を見極めるために役立ちます。
本記事では、IRRの基本概念からその計算方法、不動産投資におけるメリットやデメリット、そして具体的な活用方法まで詳しく解説します。
特に、副業として不動産事業を始めたい一般的なサラリーマンの方や、限られた資金で起業を目指す方はぜひ参考にしてみてください。
- IRR(内部収益率)が時間的な価値を考慮した利回りであること
- IRRと利回りの違い
- IRRの具体的な計算方法とExcelでの算出
- 不動産投資におけるIRRのメリットと注意点
- IRRの目安とNPV(正味現在価値)との使い分け

IRR(内部収益率)とはお金の時間的な価値を考慮して計算した利回り
IRR(Internal Rate of Return:内部収益率)は、投資の収益性を評価する重要な指標です。これは、将来得られるキャッシュフローの現在価値が、投資額と等しくなる割引率を指します。
時間の経過によってお金の価値が変わるという考え方を取り入れているため、早く得られる利益ほど価値が高いと評価します。そのため、IRRの数値が高いほど、投資効率が良く収益性が高いと判断されます。
特に、長期投資において資金の有効活用度を示す点がメリットです。
参考:ファイナンス、不確実性・リスクの考え方の活用26頁|文部科学省
IRRと利回りの違い
IRRと利回りはどちらも投資の収益性を示す割合ですが、計算方法に大きな違いがあります。
利回りは年間の利益率を単純に算出し、「表面利回り」や「実質利回り」が代表例です。これらは収益が発生する時期やお金の時間価値を考慮せず、1年後も3年後も同じ価値として扱います。
一方、IRRは将来のキャッシュフローを現在価値に換算し、時間的な価値を反映します。早期のキャッシュフローは再投資効果を持つため価値が高いと見なすことを覚えておいてください。
戸建て投資のように毎年の収益が変動しやすく、売却も視野に入れた長期運用では、単年度収益を示す利回りより、投資期間全体の効率を示すIRRの方が適しています。
なお、利回りについては下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
割引率とは
IRRの理解には「割引率」の概念が欠かせません。割引率は、将来の金額を現在価値に換算する際に使う利率で、金利や期待収益率の影響を反映します。
たとえば、現在の100万円を年1%で運用すると、1年後には101万円になります。この場合、1年後の101万円は現在の100万円と同じ価値として扱われます。
将来のキャッシュフローを現在価値に割り引く際に、この割引率が使われます。1年後の101万円を年1%で割り引くと、現在価値は100万円となります。
不動産投資では、将来の家賃収入や売却益を評価する際に割引率を使い、お金の時間的価値を正確に計算することを覚えておいてください。
IRR(内部収益率)の計算方法
IRR(内部収益率)は、投資の収益性を客観的に評価するための重要な指標です。
特に戸建て投資のような不動産投資で役立ちます。将来得られるキャッシュフローの時間的価値を考慮し、投資額と将来キャッシュフローの現在価値が一致する割引率を算出します。
戸建て投資では家賃収入や売却益など複数の収入があるため、IRRを使うことで投資期間全体の効率性を把握可能です。IRRの理解は、投資効率や収益性を多角的に判断し、適切な投資案件を選ぶうえで欠かせません。
複数の投資案件を同一基準で比較でき、収益性の高い物件を見極める手助けとなります。
IRRの計算式
IRRを算出するには、初期投資額と将来にわたる各期間のキャッシュフローを正確に把握する必要があります。計算式は次の通りです。
0 = ∑ (CF_t ÷ (1 + r)^t) − 初期投資額
・CF_t:t期目のキャッシュフロー
・r:求めるIRR(割引率)
・t:年数
・∑:合計
この式は将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いた合計と初期投資額の差がゼロになる割引率を求めます。
早期に収益が得られるほどIRRが高くなる時間的価値を反映しているため、単年度の利回りより投資効率を正確に表します。
手計算は複雑ですが、専用ツールを活用すると簡単に算出可能です。
IRRはエクセルで簡単に計算できる
IRRの計算はExcelの「IRR関数」を利用すると簡単です。手計算で時間がかかる計算も以下の手順で素早く求められます。
・各期間のキャッシュフローをプラス(収入)で入力する
・セル範囲を選び「=IRR(セル範囲)」を入力する
・EnterキーでIRRが表示される
この方法で複数の不動産案件のIRRを比較でき、効率的な投資先を短時間で判断できます。
IRRの計算例
具体例を紹介します。初期投資額1,900万円の戸建て物件を3年間運用し、家賃収入と売却益を得るケースです。
・物件A:年間120万円のキャッシュフローがあり、3年後に1,940万円で売却(3年目のキャッシュフローは120万円+1,940万円=2,060万円)
・物件B:家賃収入なし、3年後に2,300万円で売却
両物件とも総収益は2,300万円ですが、期間中の収益発生タイミングが異なります。
この条件で計算すると、物件AのIRRは6.97%、物件Bは6.58%となります。
IRRは投資資金を早期に回収できる案件ほど高くなる特性があります。したがって、同じ総収益でも早期に収益がある物件Aのほうが効率的な投資です。
このシミュレーションから、戸建て投資家は利益総額だけでなく収益発生時期も加味し、IRRを活用して物件選定することが大切だとわかります。
IRR(内部収益率)のメリット
IRR(内部収益率)は、投資の収益性を客観的に評価できる重要な指標です。
特に戸建て投資のようにキャッシュフローが年ごとに変動しやすい事業では、その有効性が際立ちます。IRRは、将来発生するキャッシュフローの時間的価値を考慮し、初期投資額とキャッシュフローの現在価値の合計が等しくなる割引率を算出します。
この考え方によって、IRRは投資期間全体を通じた収益性を評価でき、複数の投資案件を同じ基準で比較する際にも役立ちます。
キャッシュフローが不安定な物件であっても、投資効率を定量的に把握できるため、IRRは物件選定や資金配分の判断に活用しやすい指標です。
キャッシュフローを総合的に評価できる
IRRの強みは、投資期間全体で得られるキャッシュフローを総合的に評価できる点にあります。
不動産投資では、空室や賃料変動、大規模修繕などによって年間の収支が安定しないケースが珍しくありません。IRRはこうした収支の変動を加味し、初期投資から売却までの全期間における収益性を算出します。
IRRは将来のお金の価値を現在の価値へと割り引いて計算するため、早期に得たキャッシュフローほど高く評価されます。この特徴は、再投資によって資金を増やす機会があることも含めて、投資効率を的確に反映しています。
収益が不安定な物件でも、IRRを用いれば本質的な収益力を数値で確認でき、より合理的な判断が可能になります。
投資期間を考慮した収益率がわかる
IRRは、投資期間や条件が異なる案件でも同一の基準で収益率を比較できる点が特徴です。
戸建て投資では、物件によって保有期間やキャッシュフローの発生時期が大きく異なる場合がありますが、IRRを使えばそれぞれの投資効率を公平に評価できます。
また、IRRは資金の回収スピードが速いほど数値が高くなる特性を持っています。早期に得られたキャッシュフローを再投資に回せば、元本を増やす機会が生まれ、結果的に全体の収益率を高めることが可能です。
限られた資金で効率的な運用を目指すサラリーマン投資家にとっては、IRRの比較によって有望な物件を選びやすくなり、投資判断の精度を高められます。
IRR(内部収益率)のデメリット
IRRは投資判断に有効な指標ですが、性質を十分に理解しないまま活用すると、かえって誤った意思決定を招く可能性があります。特に、将来の予測が難しい戸建て投資では、IRRだけで判断材料を完結させるのは危険です。
IRRは投資規模やリスクの大きさを直接的に示すものではなく、たとえ数値が高くても、最適な投資先とは限りません。
そのため、戸建て投資家がIRRを活用する際は、メリットだけでなく限界にも目を向ける必要があります。他の指標とあわせて多角的に評価すれば、より実態に即した投資判断が可能になります。
投資規模を考慮できない
IRRは収益率をパーセンテージで示す指標であり、投資規模を直接評価できません。
たとえば、少額投資でIRRが高い物件と、多額の投資が必要ではあるものの総収益が大きい物件を比較した場合、IRRの数値だけを重視すると、後者のような大きな利益機会を見落とすおそれがあります。
戸建て投資では、限られた自己資金で効率の良い運用を目指すケースが多く見られますが、最終的に目指すべきは利益の最大化です。IRRの数値だけでなく、見込める利益額や総キャッシュフローも把握することが欠かせません。
NPV(正味現在価値)など金額ベースの指標と組み合わせて評価すれば、投資の本質をより正確に捉えられます。
リスクや不確実性を反映しにくい
IRRは収益性を測る指標であっても、リスクの大きさまでは判断できません。
数値が高い場合ほど魅力的に見えますが、高リスクな案件であるケースも少なくないからです。戸建て投資では、借入を活用することでIRRを高める手法が取られますが、レバレッジが大きくなるほど、失敗時の損失も膨らみます。
IRRの算出には将来のキャッシュフロー予測が必要です。空室、家賃滞納、修繕費用の増加、金利上昇など、想定外の事態が発生すれば、計算時の前提が崩れ、信頼性が下がります。
IRRは不動産投資におけるあらゆるリスクを反映する指標ではないため、市場動向や物件固有のリスク要因を把握したうえで、慎重に判断する必要があります。
期間を定めて活用する必要がある
IRRは、将来のキャッシュフローと売却益を含めたうえで、投資期間全体の収益率を算出する指標です。そのため、物件を売却するタイミングが未定である場合や、売却を前提としない長期保有を考えている場合は、IRRが適さないケースもあります。
たとえば、短期間でキャッシュフローを得て資金回収したい投資家には、IRRが高い築古物件が選択肢になります。一方、長期的に安定した賃料収入を重視する場合には、IRRが低めでも新築や築浅物件が適している可能性があります。
IRRの特性を正しく理解し、自身の投資スタイルや目的と照らし合わせたうえで、他の指標とあわせて判断材料とすれば、堅実な物件選定につながります。
不動産投資でのIRR(内部収益率)活用方法
不動産投資で成果を出すには、事前に収益性を正確に把握することが欠かせません。
その判断材料として有効なのが、IRR(内部収益率)です。IRRは、将来発生するキャッシュフローを時間的価値として捉え、投資期間全体での収益効率を示します。
毎年の収支が変動しやすい不動産投資では、単年度の利回りでは把握しきれない収益性をIRRによって補えます。どれだけ効率よく投資資金を回収できるか、複数の投資先を比較する際にもIRRは有効です。
数値だけでなく、投資目標との整合性や資金回収スピードも可視化できるため、IRRを活用すれば、目的に合った物件選びや運用戦略が明確になります。
IRRの目安
不動産投資においてIRRの目安として「5%以上」が一つの参考数値になる場合があります。
ただし、投資対象となる不動産には、立地・築年数・建物構造・融資条件など、多様な要因が絡んでいます。どの物件も異なる性質を持つため、単にIRRが高いという理由だけで優良案件とは言い切れません。
IRRの数値が高い場合でも、リスクが大きい可能性を含んでいるケースもあります。
たとえば、短期でキャッシュフローを得やすいが、空室や修繕リスクが高い物件などです。投資判断ではIRRだけに頼らず、自己資金に対するリスク許容度や市況の変化、さらにはNPV(正味現在価値)などの他指標も併用し、総合的に検討することが求められます。
戸建て物件への投資を検討している方も、こうした複眼的な視点を持てば、安定的かつ目的に合った選択が可能になります。
IRRが高い物件の特徴
IRRが高くなりやすい物件には、いくつか共通する要素があります。もっとも大きな特徴は、初期段階から安定したキャッシュフローが期待できる点です。
たとえば、築古の木造アパートなどは、購入後すぐに多額の減価償却を計上できるため、所得税の還付によって手元資金が増えやすく、IRRの向上につながります。
売却時の価格維持が期待できる物件もIRRの押し上げ要因となります。駅近で交通利便性の高いエリアや、人口減少の影響が限定的な地域にある中古物件などは、資産価値が落ちにくいため、将来的に高い売却価格を見込むことが可能です。
自己資金の投入を抑えて融資を活用すれば、自己資本に対するリターンであるエクイティIRRを高められる場合があります。
とはいえ、過度な借入は返済リスクを高めるため、全体の収益性を示すプロジェクトIRRと併せて評価し、資金調達と収益のバランスを意識するのが大切です。
IRR(内部収益率)についてよくある質問
不動産投資を成功させるには、事前に収益性を正確に評価することが欠かせません。
IRR(内部収益率)は、投資期間全体で得られるキャッシュフローを、時間的価値を踏まえて評価する重要な指標です。
特に、家賃収入や支出が年ごとに変動しやすい戸建て投資では、資金の回収効率を把握するうえでIRRが有効です。この指標を理解して活用することは、副業として不動産投資を始めたい方や、少ない資金で成果を出したい戸建て投資家にとって欠かせません。
ここでは、IRRに関してよくある質問に答えながら、投資判断にどう役立つかを具体的に解説します。
IRRとは簡単に言うと何ですか?
IRRは「Internal Rate of Return」の略で、内部収益率と訳されます。
これは、将来発生するキャッシュフローの現在価値と、初期投資額の現在価値が等しくなる割引率を意味します。わかりやすく言えば、将来の利益を現在の価値に換算し、投資がどれだけ効率的かを判断するための指標です。
現在手元にある資金は、運用によって増やせる可能性があるため、将来のお金とは価値が異なります。
IRRはこの考え方をもとに、すべてのキャッシュフローを割り引いて計算されます。数値が高いほど、資金の回収効率が高い投資と評価できます。
戸建て投資では、家賃収入や売却益の金額・タイミングが変動しやすく、IRRを使えば長期的な収益性を客観的に測ることが可能です。計算にはExcelのIRR関数を使えば簡単に求められます。
不動産投資でIRRは何パーセントが目安ですか?
IRRの目安として、一般的に5%以上が参考値として言及される場合があります。
ただし、不動産は物件ごとの条件が大きく異なるため、単に数値だけで良し悪しを判断できません。築年数や構造、立地、融資条件など、多くの要因がIRRに影響を与えます。
IRRが高い場合でも、必ずしもリスクが低いとは限りません。自己資金を抑えて借入割合を増やすと、数値は高くなりやすいですが、同時に返済リスクも大きくなります。
戸建て投資家が判断する際には、IRRだけを見るのではなく、将来の市場動向や地域の賃貸需要、自分が取れるリスクの範囲などもあわせて検討する必要があります。
NPV(正味現在価値)などの他の指標と組み合わせれば、自身の投資スタイルに合った物件選定がしやすくなります。
NPVとIRRはどう使い分けますか?
IRRとあわせて活用されるNPV(Net Present Value/正味現在価値)は、投資によって得られる将来のキャッシュフローを現在価値に換算し、初期投資額との差額を金額で示す指標です。
NPVがプラスであれば、その投資は資金的にプラスの価値を生むと判断できます。
一方、IRRは収益率をパーセンテージで表し、資金の効率的な回収度合いを示します。
つまり、IRRは「どれだけ効率よく増やせるか」、NPVは「どれだけの利益が見込めるか」にフォーカスした指標です。
投資すべきかを判断したいときや、複数の投資案件のうち最大の収益が期待できるものを選びたい場合はNPVが役立ちます。逆に、限られた資金を効率的に回したいときはIRRが有効です。
投資目的や資金状況に応じて、これらの指標を併用すれば、より精度の高い判断ができます。
参考:ファイナンス、不確実性・リスクの考え方の活用26頁|文部科学省
IRRと利回りの違いは何ですか?
IRRと利回りはどちらも収益性を表す指標ですが、大きな違いは「時間的価値」を考慮しているかどうかです。
利回りは、特定の1年間に得られる収益を投資額で割って算出する単純な指標で、キャッシュフローが発生するタイミングは加味されていません。
それに対して、IRRはすべてのキャッシュフローを現在価値に割り引いて計算します。たとえば、初期段階で得られる利益の方が、数年後の利益よりも価値が高いと判断されるのがIRRの特徴です。再投資を想定した収益の循環も含まれるため、将来的な資金運用を含めた投資評価が可能になります。
戸建て投資では、家賃収入や修繕、空室の発生などによって年ごとの収支が変動するケースが多いため、IRRは特に相性の良い指標です。表面利回りだけを見て判断すると、実際の収益性を見誤る場合があります。
販売資料に利回りしか記載がない場合でも、IRRを自ら計算する習慣をつけておくと、より正確で戦略的な投資判断が可能になります。
まとめ
IRR(内部収益率)は、お金の時間的な価値を考慮し、投資期間全体の収益性を評価するための強力な指標です。
特にキャッシュフローが変動しやすい不動産投資において、投資資金の回収効率を測り、複数の投資案件を比較する際に役立ちます。しかし、IRRの数値が高いからといって必ずしも最適な投資とは限らず、投資規模やリスクを考慮しないというデメリットもあります。
そのため、NPV(正味現在価値)などの他の指標と組み合わせて、多角的な視点から総合的に投資判断することが重要です。自身の投資スタイルや目標に合った物件を見つけるために、IRRの概念と特徴を理解し、賢く活用してください。
空家ベースは空き家を売りたい人と買いたい人を繋ぐプラットフォームです。全国の物件が対象となっているため、都市部に限らず、郊外の不動産も公開・掲載ができます。不動産事業に興味のある方は、ぜひ一度お問い合わせください。
また、限られた資金で効率的な不動産投資を始めたい方にも、空家ベースはおすすめです。収益物件としての可能性を持つ空き家を見つけたい場合は、ぜひ空家ベースの掲載情報をご覧ください。




空家ベース編集部です。空家と書いて「ソライエ」と読みます。Twitter・Instagram・公式LINEなどでも物件情報を随時配信しています。空き家を買って再生したい方、他では売れないと言われてしまった空き家をご所有の方はぜひご相談ください!