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建物の耐用年数は何年?構造別年数と減価償却費の計算方法を解説

空家ベース編集部

不動産を使って賃貸経営する際には購入した物件の内、建物の減価償却をどのように計上するのかで収益計画が変わります。
建物が持つ会計上の資産は法定耐用年数までの年数によって大きく変わり、さらにRC造や木造など構造によって耐用年数は異なります。
そのため中古物件は新築よりも減価償却がしにくいというデメリットがありますので、償却資産としての価値と価格のバランスを見極めることが大事です。
この記事では賃貸経営や土地活用をする際に税務上知っておくべき知識として、建物の耐用年数と減価償却を計算する方法について解説します。
住宅用ではなく不動産投資を目的として木造アパートや中古住宅の購入を検討している人は、参考にしてください。

この記事で分かること

  • 法定耐用年数と寿命の違い
  • 建物の構造・種類別耐用年数の一覧
  • 減価償却費の計算方法と耐用年数の関係

建物の耐用年数は何年?

住宅やアパート、マンションといった建物には耐用年数という考え方があり、構造や使用の仕方によって年数は異なり国税庁の耐用年数表によって確認することができます。
別の考え方に「寿命」がありますが厳密にいえば建物に寿命はなく、耐震工事や大規模修繕といったメンテナンスをすることで何十年経っても安全に利用することができます。
そのため耐用年数と寿命は全く別であることを理解し、耐用年数は経過年数によってどのくらい資産価値が減価したのかを判断する指標であることを知っておきましょう。

法定耐用年数とは

法定耐用年数とは、不動産などの固定資産において会計上の資産価値が残存する期間のことです。
固定資産は使用頻度や経過した期間によって劣化するため資産価値も減少することから、一定の価値を永久に担保できるものではありません。
そこで国税庁は固定資産の価値が消滅してしまう期間を構造別・用途別に定めており、耐用年数表を公開しています。
これにより期間中は減価償却できることが可能となり事業経営者は税金を節税できることから、設備投資しやすくなるというメリットがあります。
耐用年数表をあらかじめ確認し物件の購入を検討することで償却費を収益計画に組み込むことができ、より精度の高い経営ができるようになるでしょう。
このことからも法定耐用年数と減価償却について正しく理解することは、費用とリスクを分散するという意味でも必要なポイントといえます。
【参考サイト:耐用年数表

中古住宅の耐用年数

中古住宅の耐用年数には「物理的耐用年数」「法定耐用年数」「経済的残存耐用年数」の3つがあり、それぞれ次のような特徴となります。

耐用年数の種類
物理的耐用年数:建物が劣化して使えなくなる年数のことで、メンテナンスすることで年数を伸ばすことが可能
法定耐用年数:減価償却資産が残存する年数のことで、耐用年数超過後は会計以上の資産価値はゼロになる
経済的残存耐用年数:購入してから市場での不動産的価値がなくなるまでの年数のことで、法定耐用年数と同じような位置づけで利用されるのが一般的

減価償却の計算式では法定耐用年数のみを利用することになりますが、中古住宅の場合は構造によっては法定耐用年数を購入時点で既に超過しているケースもあるため、注意が必要です。
超過していた場合は法定耐用年数の20%に相当する年数を見積耐用年数とすることになり、例えば法定耐用年数22年の住宅で10年超過していた場合の見積耐用年数は次のようになります。

22年×20%=4.4年=4年

なお、計算上の見積耐用年数は2年以下の場合は2年とし、小数点は切り捨てになるというルールがあることを知っておきましょう。
【参考サイト:No.5404 中古資産の耐用年数|国税庁

事業用不動産の耐用年数

事業用不動産とは事務所用や店舗用などに利用する不動産のことで、貸付用物件ともいわれます。
不動産の取得費用を減価償却によって耐用年数分のみ経費に計上できることから事業用不動産を保有している人にとって大きな経費削減となるため必ず利用しておきたい方法といえ、メリットも多いです。
さらに中古資産を事業用に変更する場合は法定耐用年数ではなく事業用として利用開始した以降の使用可能期間を見積年数に加算することができます。
これにより償却期間を住宅用よりも長く設定することができ、長期間償却することが可能となります。
使用可能期間の年数を見積もることが難しい場合は簡便法と呼ばれる方法がおすすめで、資産の全部が超過するかどうかで計算方法が次のように異なります。

法定耐用年数の一部を経過した資産:(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20/100
法定耐用年数の全部を経過した資産:法定耐用年数×20/100

ただし購入時に取得価額の50%を超える資本的支出を行った場合は上記の方法は使えませんので、注意しましょう。

建物の構造・種類別耐用年数の一覧

国税庁が公開している耐用年数表によると建物の構造と種類によって法定耐用年数は異なることが分かるため、所有している固定資産をあらかじめチェックしておくことをおすすめします。
また同じ構造であっても仕様や利用用途によっても変わり、特に鉄筋コンクリート造は鉄骨材の厚みが耐用年数に大きく影響します。
この章では建物の構造別、種類別耐用年数について国税庁の公開データを基に紹介しますので、不動産を所有し減価償却する予定がある人はチェックしてください。

鉄筋コンクリート造(RC造)の耐用年数

鉄筋コンクリート造は鉄筋によって補強されたコンクリートのことで、柱や梁がコンクリートによって強度アップされた建物です。
使用方法によって次のように耐用年数が異なりますので、どのように建物を使うのかが減価償却において重要なポイントといえるでしょう。

使用方法 耐用年数
事務所用 50年
住宅用 47年
飲食店用
(延べ面積のうちに占める木造内装部分の面積が30%を超えるもの)
34年
飲食店用
(上記以外)
41年
旅館用・ホテル用
(延べ面積のうちに占める木造内装部分の面積が30%を超えるもの)
31年
旅館用・ホテル用
(上記以外)
39年
店舗用・病院用 39年
車庫用 38年
公衆浴場用 31年
工場用・倉庫用のもの
(一般用)
38年

鉄骨造(S造)の耐用年数

鋼で柱や梁といった重要な躯体が鉄骨造となっており、コンクリートをさらに追加すると前述した鉄筋コンクリート造となります。
強度は骨格材が大きく影響することから耐用年数は骨格材の厚みによって分けられるという特徴があります。
鉄骨を主軸としたハウスメーカーはそれほど多くありませんが、テナントが多い賃貸マンションなどは鉄骨造で建築されがちです。
そのため、耐用年数の違いは知っておく必要があるでしょう。

使用方法 耐用年数
事務所用
(骨格材の肉厚:4㎜超)
38年
事務所用
(骨格材の肉厚:3㎜超4㎜以下)
30年
事務所用
(骨格材の肉厚:3㎜以下)
22年
店舗用・住宅用
(骨格材の肉厚:4㎜超)
34年
店舗用・住宅用
(骨格材の肉厚:3㎜超4㎜以下)
27年
店舗用・住宅用
(骨格材の肉厚:3㎜以下)
19年
飲食店用・車庫用
(骨格材の肉厚:4㎜超)
31年
飲食店用・車庫用
(骨格材の肉厚:3㎜超4㎜以下)
25年
飲食店用・車庫用
(骨格材の肉厚:3㎜以下)
19年
旅館用・ホテル用・病院用
(骨格材の肉厚:4㎜超)
29年
旅館用・ホテル用・病院用
(骨格材の肉厚:3㎜超4㎜以下)
24年
旅館用・ホテル用・病院用
(骨格材の肉厚:3㎜以下)
17年
公衆浴場用
(骨格材の肉厚:4㎜超)
27年
公衆浴場用
(骨格材の肉厚:3㎜超4㎜以下)
19年
公衆浴場用
(骨格材の肉厚:3㎜以下)
15年
工場用・倉庫用(一般用)
(骨格材の肉厚:4㎜超)
31年
工場用・倉庫用(一般用)
(骨格材の肉厚:3㎜超4㎜以下)
24年
工場用・倉庫用(一般用)
(骨格材の肉厚:3㎜以下)
17年

木造・合成樹脂造の耐用年数

木造や合成樹脂によって作られた一戸建てやアパートは多く不動産投資用の物件を探している人によっては頻繁に見かける構造といえますが、鉄骨よりも全体的に耐用年数は短い傾向にあります。
耐火性も鉄骨やレンガ造よりも劣るケースが多いことから、火災保険などの諸費用も確認した上で購入を検討すべきといえます。
他の構造と同様に、木造・合成樹脂造も使用方法によって耐用年数は次のように異なります。

使用方法 耐用年数
事務所用 24年
店舗用・住宅用 22年
飲食店用 20年
旅館用・ホテル用・病院用・車庫用 17年
公衆浴場用 12年
工場用・倉庫用(一般用) 15年

レンガ造・石造・ブロック造の耐用年数

レンガや石、ブロックによって作られた建築物は木造やRC、SRC造ほどみかけることはありませんが比較的耐用年数が長いという特徴があるため、投資に向いている構造です。
また耐火性や耐久性に優れていることからメンテナンス費用が少なくてすむというメリットもありおすすめですが、購入費用が高額になりやすいというデメリットもあります。
そのため購入を検討する際には次の耐用年数を使ってどのくらい減価償却できるのかをチェックし、収益計画が成立することを確認しておくことが大切です。

使用方法 耐用年数
事務所用 41年
店舗用・住宅用・飲食店用 38年
旅館用・ホテル用・病院用 36年
車庫用 34年
公衆浴場用 30年
工場用・倉庫用(一般用) 34年

減価償却費の計算方法と耐用年数の関係

減価償却費を計算する方法には定額法と定率法があり、基本的な計算方法は次のようになります。

定額法:取得価額×定額法の償却率(2007年4月1日以降に取得した建物の場合)
定率法:未償却残高×定率法の償却率

2007年4月1日以前に取得した建物を定額法で計算する場合、取得価額×90%×旧定額法の償却率という計算方法が採用されます。
そのためどのタイミングで取得したのかが重要といえ、物件の取得金額は事前にチェックしておきましょう。
なお、平成28年度の法改正によって2016年4月1日以降に取得した建物と建物付属設備の償却は定額法を採用することが決まっており、定率法は利用できなくなりました。
これにより定率法を使って減価償却の計算ができるのは機械及び装置、船舶、航空機、車両運搬具、工具並びに器具、備品ということになります。
つまり不動産投資を目的として購入した物件であれば全て定額法で計算することになるため、定額法の計算方法をメインに把握することをおすすめします。
【参考サイト:減価償却に関する改正

減価償却の基本的な計算方法

定額法で減価償却を計算するためには建物の取得金額と経過年数、耐用年数、償却率を調べる必要があります。
建物の取得金額が分からない場合、消費税が分かっていれば「消費税÷購入時の消費税率」で算出することができますが、居住用であれば国税庁が公開している建物の標準的な建築価額表を使って調べる方法もあります。

その後、これにより定額法の計算で必要となる取得金額と償却率を求めることができ、掛け合わせることで減価償却費を算出することができます。
【参考サイト:建物の標準的な建築価額表
【参考サイト:「減価償却費」の計算について|国税庁

中古不動産の減価償却費の計算方法

中古不動産と新築不動産では減価償却に大きな違いがあり、新築不動産は耐用年数が長いため減価償却はゆっくり進み、中古不動産は急激に進みます。
これは法定耐用年数における残存期間が少ないことが理由となっており、中古不動産を購入する際には残存期間がどのくらいあるのかが重要な判断材料になるといえます。
そのためなるべく築浅の中古不動産を購入したいと考える人は多いですが、築浅になると購入金額が高くなるため、バランスの見極めが大切です。
購入価格と減価償却の最適なバランスを知るという意味でも、中古不動産における減価償却の計算方法は正しく理解しておくことをおすすめします。
具体的な計算方法のステップは、次のようになります。

  1. 国税庁の法定耐用年数表を使って法定耐用年数と残存期間を調べる
  2. 減価償却資産の償却率表を使って耐用年数に合わせた償却率を調べる

中古不動産は新築とは別の計算式が用意されており、事業所得や不動産所得といった必要経費に算入される償却費の累積額を考慮することになります。
将来不動産を売却する際には売却益に応じて譲渡所得税が発生し、譲渡所得課税額の計算をする際には減価償却費を差し引くことになります。
居住用財産を売却する場合は譲渡所得税が高くなりすぎないよう減価償却費は小さく計算されることで取得費を多く計上できるようになっていますが、中古の事業用不動産、賃貸用不動産の減価償却計算においては経過年数が耐用年数を超えるかどうかが重要なポイントです。
たとえば鉄筋コンクリート造で建物の取得金額が4,000万円だった場合、経過年数によって法定耐用年数は次のようになります。

経過年数10年:47年‐10年=37年
経過年数20年:47年×20%=9.4年=9年

鉄筋コンクリート造の償却率は0.015であることから、それぞれの経過年数で計算した場合の減価償却費は次の通りです。

経過年数10年:4,000万円×0.015×37年=2,220万円
経過年数20年:4,000万円×0.015×9年=540万円

このように中古不動産は耐用年数の残存期間によって償却費用が大きく異なることが分かり、購入するタイミングまでに償却費をある程度イメージしておくことが大切だといえるでしょう。

まとめ

不動産を購入した賃貸経営や事務所、店舗として活用する人にとって、減価償却費は経営における重要な判断材料です。
購入費用が高額になっても長期間減価償却できるのであれば所得税を減らすことができるため結果的に多くの利益を見込むことができ、減価償却費が少ないと購入金額が安くても損をすることもあります。
また減価償却は建物の構造や使用方法によって耐用年数が大きく変わり、耐用年数と残存期間が償却期間を決める要素であることから、不動産を購入する時点であらかじめチェックしておくべきポイントといえるでしょう。
特に中古不動産の購入は残存期間が元々短いだけでなく耐用年数を超過するかどうかで計算方法が変わるため、中古不動産ならではの注意点といえます。
減価償却をうまく活用することで所得税を節税し、投資資金を増やすことが不動産投資のセオリーといえます。
このことからも不動産投資をこれから始める人は勿論ですが、現在様々な固定資産を保有し経営を実践している人も減価償却に関する法律はチェックし、節税に関連する最近の情報として習得することをおすすめします。